前編に引き続き、Minimal-Bean to Bar Chocolate-代表(株式会社βace代表取締役)山下貴嗣さんのインタビューをお届けします。
後編では、問題意識から生じた起業への情熱、ファン作りのポイント、マーケターが成長するために必要な考え方や行動についてお聞きしました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)
目次
ビジネスを成功へ導く再現性のポイント
――お話を伺っていると、山下さん自身がマニアックに突き詰めるタイプだと感じます。山下さんならプロダクトがチョコレートでなくても、同じようにビジネスを成功させられたと思いますが、再現性についてはどのようにお考えですか。
再現性については、我々自身の中に明確なポイントが1つあります。それは世の中に対する問題意識です。
日本という国をあらためて俯瞰してみると、少子高齢化でこれから労働人口が減少し、GDPも次第に落ち込んでいくと予想されています。一方、東アジアにおける中国の存在感はさらに増大し、東南アジア諸国の多くは成長スピードをますます加速させていくでしょう。
そうした状況にあって、日本がいくら労働生産性を上げたところで、内需の減少傾向に歯止めをかけるのは難しく、豊かな社会を維持する方法は外貨を稼ぐ人材をもっと増やす以外、ほとんど残されていないと思います。
では、どうすれば外貨を獲得できるのか。いろいろな方法が考えられますが、人口減少によって「量」では戦えなくなった日本を救うのが、日本人のきめ細やかさや繊細さに裏打ちされた「質」という武器だと思います。質こそがこれからの日本であらためて大きな価値となり、日本人がマニアックに深掘りしたプロダクトが、グローバル時代における日本のプレゼンスを再び押し上げる原動力となるでしょう。
高品質な日本のプロダクトが評価されるようになれば、日本の職人たちが織り成す技術の粋に世界中の注目が集まるはず。私はそういうことを実現したいんです。
社名にもそんな思いを込めました。「βace」の「β」はβ版、「ace」はエースで、最高級品、一級品を表しています。つまり、「試行錯誤しながら最高のプロダクトを作りたい」「トップレベルのプロダクトを発信する基地、プラットホーム、コミュニティハブでありたい」という願いを込めているんです。
我々の問題意識は「2050年、2100年になったときに、この国が豊かであってほしい」「そのために我々は今、何をなすべきか」という点にあります。その問題意識を基に設定したβaceの課題は、高品質なプロダクトを作り続けて、グローバルで評価されるブランドにすることです。その最初の挑戦がチョコレートだったと捉えています。
私は今年36歳になりますが、一番働ける30代から50代のうちに、面白いこと、興味を持てることをベースにしながら、この国の未来に対して少しでも貢献をしていきたい。その思いが起業の原点です。たまたま「Bean to Bar」との出合いがあり、さらに「Bean to Bar」が注目されるタイミングに合わせてお店をオープンできたのはラッキーだったと思います。ですから、再現性のポイントがあるとするならば、世の中に対する創業メンバーの問題意識であると言えます。
ビジネスとは、問題意識を持って課題を設定し解決すること
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