「PLAZA(プラザ)」はお菓子やコスメ、生活雑貨などを取り扱う専門店です。女性を中心に幅広い年齢層に利用されていますが、メインは10代~20代となっており、近年はZ世代の集客に注力しています。
昨年(2022年)末、PLAZAはクリスマス時季のホリデープロモーションで、女性向けメディア「Sucle(シュクレ)」とコラボレーション施策を実施し、Z世代の集客強化に成功しました。
成果を上げたPLAZAとSucleの施策は再現性があり、同様にZ世代を集客したいほかのビジネスでも応用しやすい内容です。
具体的にはどのような施策を行ったのか、株式会社スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー 販促宣伝部 宣伝課 課長の安東明日美さん、販促宣伝部 宣伝課の山中あずささん、株式会社FinT Sucle編集部の久我茉由夏さんに話を聞きました。
(文:工藤 麻里子、取材・構成:Marketing Native編集長・佐藤 綾美、撮影:永山 昌克)
目次
Z世代への情報波及力を期待したコラボ企画
――Z世代向けの施策を企画しようと考えた背景を教えてください。
安東 PLAZAはさまざまな商品を扱っていることから、お客さまの年齢層も幅広いのですが、Z世代が一つの大きなボリュームとなっています。以前からZ世代をターゲットとした施策をしっかりやっていきたいと考えていました。
▲株式会社スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー 販促宣伝部 宣伝課 課長の安東明日美(あんどう・あすみ)さん。
――メディアとのコラボレーションはこれまでも積極的に行っていたのでしょうか。
安東 コロナ禍でここ2年くらいは実施していませんでしたが、それ以前は美容系のWebメディアとのコラボレーション企画を行ったことがあります。新作コスメ販売のタイミングでメディアさんにおすすめのコスメをピックアップして情報発信をしていただいたり、PLAZAの店舗にプロデュースコーナーを設置したりもしました。
▲株式会社スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー 販促宣伝部 宣伝課の山中あずさ(やまなか・あずさ)さん。
山中 今回Sucleさんと行ったようなプロモーションを目的としたコラボレーションは、過去に女性向けのWebメディアさんと実施して以来です。メディアとのコラボレーションは、そのメディアの読者さんを中心に自社だけではリーチできない層に情報を届けることができるので、外へ外へと広めてもらえる波及力を期待しています。
――数あるメディアの中でも、Sucleとコラボレーションすることになったきっかけは何でしょうか。
安東 例年クリスマスに実施しているホリデープロモーションは、PLAZAにとっても特に大きな施策です。Sucleさんは我々の主要顧客であるZ世代に特化したメディアなので、何か一緒にできないかと考えたのが始まりです。
また、Sucle編集部の方々自身がZ世代ということもあり、施策の提案内容に説得力がありました。例えば「鏡越しにスマホで写真を撮るのが流行っています」「コストコのように大きなショッピングカートを押している写真がかわいいです」「フォトスポットでは自分の足元だけ写すのがおすすめです」など、Z世代ならではのリアリティのある提案をいただきました。
山中 自分たちではうまく言語化できないZ世代特有の感覚を的確に言葉にしていただいたので、「確かに今のZ世代の方ってこうだよね」と納得感がありました。
あとは、原色系のカラフルなイメージが強いであろうPLAZAが、Sucleさんのような優しい色合いのトーンのメディアと組むことで、どのような化学反応が起こるのか期待する気持ちもありました。白っぽく柔らかい色合いがZ世代のトレンドの一つであることは認識していたのですが、例えばPLAZA内にある淡い色合いの商品を前面に打ち出すような施策はこれまで実施してきませんでした。
どのような感じになるのか不安な部分はありましたが、2022年はコロナも以前に比べて落ち着いてきているなかでのホリデープロモーションで、社員が「新しいこと」「何かやれること」を考えなければいけないという共通認識を持っていたこともあり、自社であまりやってこなかったトーンの施策でも挑戦しやすい雰囲気があったように思います。
「身にまとっている世界観」をアピールしたい気持ちに注目
――では、2022年12月3日~12月25日にPLAZA東京店で実施したコラボレーション企画について伺います。今回のコラボ企画では具体的にどのような施策を行ったのでしょうか。
▲株式会社FinT Sucle編集部 久我茉由夏(くが・まゆか)さん。
久我 店頭(PLAZA東京店)では、Z世代に人気のインスタレーションに着目し、来店したお客さまが中に入って楽しめる体験型ブースを設計しました。コロナが落ち着いてきたとはいえ、まだ「おうちクリスマス」が主流だろうと想定し、自宅では再現が難しく、ブースでこそ体験できる「憧れの韓国風おうちクリスマス」をメインテーマとしました。
▲憧れの「韓国カフェ風おうちクリスマス」を体験できるフォトブース『Flurry Hearts by Sucle』(画像提供:Sucle編集部)。
・撮影スポットの設置
ブース内には友人同士で撮影したくなるような小物を置いたほか、「photo point」と記したシールを足元に貼り、撮影スポットを用意しました。店頭のブースを撮影したUGCを促進するために、SucleのSNSアカウントではブースの案内だけでなく、「こういう撮り方をしたらかわいいよ」と具体的な写真の撮り方も提案しました。
参考:https://www.instagram.com/p/Cl_Cdrdh4dQ/
・二次元コードの設置
Sucle編集部が選んだおすすめのPLAZAアイテムを展示し、二次元コードを設置しました。二次元コードを読み込むとSucleが商品を紹介しているツイートに遷移する仕組みで、編集部のおすすめポイントがブース内でも見られるようになっています。
参考:https://www.instagram.com/p/Cl_Cdrdh4dQ/
・読者からの反応をメッセージとともに引用
ブースで写真を撮影し、InstagramでSucleにメンションしてくれた読者さんのストーリーズやフィード投稿には、「ご来場いただきありがとうございました」「ブースを楽しんでいただけたでしょうか」などのメッセージとともにSucleのアカウントで引用し、シェアさせていただきました。
安東 施策を実施したPLAZA東京店は東京国際フォーラムの中にある店舗で、日頃から頻繁にインスタライブを行うなど、情報発信の場として使用しています。Sucle編集部のフィルターを通しておすすめのアイテムをセレクトしてもらうことにより、Sucleの読者さんに刺さる商品選定、世界観になったのではないかと思います。
あとは、ノベルティとして来店者向けにオリジナルショップカードを数量限定で用意し、来店してもらうためのフックにしました。表面はPLAZAのホリデープロモーションのキービジュアル、裏面はSucleデザインの韓国で流行しているセンイルケーキ(誕生日ケーキ)の絵柄で、スマホカバーに入るサイズです。
参考:https://www.instagram.com/p/Cl_Cdrdh4dQ/
SNSでは、Sucleさんと同様にPLAZAのアカウントでもコラボ企画に関する投稿をしたり、インスタライブでブースを紹介したりと、来店につなげる施策を行いました。
――さまざまなZ世代のトレンドがあるなかで、「シンプル×韓国風」のテイストに着目したのはなぜでしょうか。
山中 2022年のPLAZAのホリデープロモーションを表現するキービジュアルが先行して決まっていたので、そのイメージとも親和性を持たせる形で考えていただきました。
▲先行して決まっていたホリデープロモーションのビジュアル。
久我 世界観を損なわないことと、Sucleの色も出せるデザインをいくつか検討した結果、最適だと感じたのが「シンプル」と「韓国風」を掛け合わせたテイストでした。また、シンプル×韓国風の世界観からイメージされる淡い白っぽさやゴールドの色味を用いることで、クリスマスにふさわしい「ホリデー感」も演出できると考えました。
――インスタレーションについてはどうでしょうか。
久我 Z世代は「この場所で、この角度で撮影すればおしゃれな写真が撮れる」と知っているスポットにSNS映えする写真を撮る目的で訪れる傾向があります。例えば、おしゃれな写真を撮れる現代アートの美術展などが人気です。花を持って手だけを写したり、鏡越しで自撮りをしたり、足元だけ撮影したりと、被写体を変えて写真自体にオリジナリティを出しつつ、画角が決まっていることから一定のクオリティも担保できるため、Z世代に受けやすいのだと思います。
また、写真を撮るときは自分自身を見せたいというよりも、「身にまとっている世界観」をアピールしたい気持ちが強いのもZ世代の特徴といえます。あえてお花で顔を隠したり、横顔や後ろ姿を撮ってもらったりしているのは、自分の顔はあまり出したくないけれど、周りの風景も含めた世界観を見せたいからなんです。
山中 ブースの設営で久我さんとご一緒したとき、ちょうど顔が隠れるように鏡の角度を細かく調整している姿が印象的でした。
PLAZAでは過去にもフォトブースを設置する施策を行ったことがありますが、利用者のターゲットや目的を明確に決めて実施したことはなかったように思います。実際に中に入ることで空間が完成するような体験型のインスタレーションがZ世代に人気という着眼からのフォトブースの提案はとても面白いと感じましたし、顔が映らないように撮ることはお客さまの写真撮影のハードルを下げることにもつながったと思います。
周辺のスポット情報を合わせて取り上げるのが集客のコツ
――リアル店舗まで来ていただくのはなかなか難しいと思います。店舗に誘導するためにどのような工夫をしましたか。
久我 今回のコラボレーションを実施したPLAZA東京店は東京国際フォーラムの1階にあるので、まずは東京国際フォーラム付近で行われているイベントについての情報発信を行いました。例えば、Sucle編集部が週1回更新しているストーリーズ「編集部diary」で、東京国際フォーラム地上広場で開催されている「大江戸骨董市」に行ったことを投稿した際に、下のほうで小さく「ついでに行ってみてね」とPLAZAのブースを紹介しました。
また、プロモーション開始1週間後くらいからは、「推し活」に関連した施策も取り入れました。同時期にPLAZA東京店の近くにある帝国劇場でジャニーズの舞台が行われていたので、観劇のついでにブースまで足を延ばしてもらうのがねらいです。Z世代の間で、推しのアクリルスタンドやトレーディングカードと一緒に写真を撮るのが流行っていることもあり、さらなる集客アップを図るために推し活の要素を施策に追加しました。
▲PLAZA東京店でSucle編集部がそれぞれの推しカラーのグッズを購入して交換したり、コラボブースでアクリルスタンドを撮影したりする様子をSucleのTikTokアカウントで投稿。
参考:https://www.tiktok.com/@sucle_/video/7178071363448622337
そのほかにも、Sucle編集部が選んだPLAZA商品3点セットが当たるプレゼントキャンペーンを12月15日から実施し、ブースの写真をストーリーに載せると当選確率がアップするように工夫してUGCの創出を促しました。
参考:https://www.instagram.com/p/CmL6aQyJb3M/
山中 ただ「お店に来てね」と訴求するだけでは簡単に来店してもらえないことを経験上理解していました。PLAZA東京店がある東京国際フォーラムは、有楽町駅や東京駅周辺の魅力的なスポットが集まっているエリアにあります。付近にあるカフェやイルミネーション、体験型スポットなどをSucleさんのInstagramで紹介し、PLAZA東京店への来店にもつなげるというアイデアは斬新でした。
安東 「わざわざ来てくれない」「地図アプリなどで行きたいところをマッピングしておき、そのエリアを効率よくまわる」とも聞いていました。
久我 そうですね。複数のスポットを一気にまわれるお得感はZ世代に刺さりやすく、訪れるエリアを選ぶうえでも重要な指標になっています。
安東 コラボレーションのブースを立ち上げて終わりではなく、プロモーション期間を通じて施策をアップデートしていただいたのはありがたかったです。
売り上げ好調、随所に施策の効果あり
――今回の企画を提案するにあたり、Sucle編集部ではカスタマージャーニーマップを作ったと伺いました。どのようにして制作したのでしょうか。
久我 Sucle編集部は全員Z世代なので、自分たちが話題になっているスポットを見つけて、足を運び、投稿するまでの過程をカスタマージャーニーマップに反映させました。フェーズの分け方は施策によっても異なりますが、今回は「見つける」「調べる」「検討する」「行く」「拡散する」の5つで考案しています。
カスタマージャーニーマップの制作で重視したのは、ユーザーの思考には「ネガティブ」と「ポジティブ」の両方があることです。「検討する」のフェーズを例に挙げると、ポジティブな思考では「なんだか楽しそう」「近いし行ってみよう」などがあると思いますが、「ちょっと腰が重いな」「遠くて行けないな」「映えなさそうだな」といったネガティブな思考もいくらでもあります。このようなネガティブなポイントも踏まえたうえで、店舗周辺の施設やイベントを紹介したり、ブース内でおしゃれな写真を撮る方法を提案したりと、一つひとつ打ち手を検討していきました。
山中 我々もブレストは行いますが、PLAZAのブランディングありきで考えなければならないところがあります。その点、Sucle編集部の皆さんはそうした先入観がなく、Z世代の感覚をベースにブレストできるので、私たちが普段思いつかないようなアイデアを提案していただけたのだと思います。
――Sucleとのコラボレーション施策の反響はいかがでしたか。
山中 店舗スタッフから「みんな撮ってくれていますよ」との声がありました。推し活グッズを持ってきて撮影していた方、鏡を使って自撮りしていた方がいたとも聞いています。通常は店舗内での写真撮影を楽しむような機会はあまりないと思うので、お客さまに楽しんでいただける施策になったのかなと感じています。
また、ノベルティとして用意した数量限定のショップカードもすべて配布できました。
――Sucleの読者さんの反響はどうでしたか。
久我 Sucleのユーザーも、Instagramの投稿に対するエンゲージメントが普段の投稿よりも高く、いいねやリツイートなどの反応、好意的なコメントをいただく機会が多かったです。ブースの写真を載せてストーリーズに上げてくれる方もいらっしゃいました。さまざまな仕掛けで「ユーザーに楽しんでいただくこと」をメインに訴求できたところが、エンゲージメントの高さにつながったと感じています。
あとは、PLAZAさんのブースに設置した看板と同じデザインや写真を使ったオリジナルポストカードをネットプリントで用意したところ、2週間の配信で100枚近く印刷していただけました。
▲コンビニで予約番号を入力するとポストカードなどを印刷できる「ネットプリント(通称ネップリ)」もZ世代の間では人気。
参考:https://www.instagram.com/p/CmYy2IBJvR1/
――店頭への来客や商品の売り上げへの影響はありましたか。
安東 ホリデープロモーション全体で売り上げは好調で、昨年と比べて2桁の伸びとなりました。
山中 ブース展開を行った東京店の12月の売り上げは、全店舗の平均売り上げよりも伸長率がよかったので、Sucleさんとのコラボレーション施策の影響も十二分にあると思っています。
安東 Sucleさんがカフェやお菓子などのジャンルに強いこともあって、特にお菓子カテゴリーの商品が好調に動きました。
――施策を実施して課題に感じたことがあれば教えてください。
安東 リアル店舗に送客する施策は初めての試みだったので、とにかく実施してみなければわからないことが多かったのですが、反響を見て、さらにUGCを促す施策は必要だと感じました。
山中 KPIなど数値計測の仕方については、今後改善したいと考えています。今回は来店してくれたお客さまの人数をノベルティの配布枚数でしか計測できなかったためです。例えばUGCの収集に関しては、ハッシュタグを指定したうえで投稿を促すなど、どのくらいの件数の投稿があったか把握できるような工夫が必要になると思いました。
久我 Sucleにとっては初めての取り組みだったこともあり、初速で見込める集客数や追加で必要な施策の数など読み切れなかったところも多かったので、次回以降は今回の実績を踏まえてブラッシュアップしていきたいと思います。
――今後またコラボレーション施策を実施するとしたら、次はどのようなことに挑戦したいですか。
久我 ひと手間にも満たない「0.5手間」でオリジナリティを加えられるワークショップを開催してみたいです。ちょっと手を加えれば簡単にオリジナリティを出せる物事がZ世代に人気があるので、お菓子やコスメなどPLAZAさんの商品を使って、そこにSucle側が「0.5手間を加えること」を提案するようなワークショップができるのではないかと考えています。
安東 今回の「韓国風カフェ」のように、その時のトレンドとうまく掛け合わせた施策や、来店してくださったお客さまに購買まで促せるような施策を行っていきたいです。今回はリアル店舗への集客に注力していましたが、次はさらに購買まで踏み込んだ企画ができたらと思っています。
山中 今回はホリデープロモーションの一環としてコラボ施策を実施したのですが、プロモーションの縛りなしで久我さんが今おっしゃっていたワークショップを実施するのも面白そうです。お客さまに自宅まで持ち帰ってもらって、ご自身の生活に即した投稿を促していくような施策にも興味があります。
――ありがとうございました。
株式会社スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー
株式会社スタイリングライフ・ホールディングスの社内カンパニー。全国各地のPLAZAやMINiPLA、PLAZA OUTLET、PLAZA ONLINE STOREなど129店舗(2023年2月時点)を運営する。
輸入雑貨が珍しかった1966年当時、東京・銀座のソニービル(2017年3月31日に営業終了)に第1号店をオープンしたのが始まりで、食品や文房具、コスメ、アパレル、キャラクターグッズなどの輸入生活雑貨を販売している。
創立:1966年2月11日
本社:東京都新宿区
代表者:カンパニーエグゼクティブプレジデント 鈴木 顕
企業サイト:https://www.plazastyle.com/company/
PLAZA オンラインストア:https://www.plazastyle.com/
Sucle(シュクレ)
株式会社FinTが運営する、総フォロワー数90万人の女性向けSNSメディア。「きょうのわたし、愛しいわたし」をコンセプトにトレンド情報を発信している
株式会社FinT:https://fint.co.jp/
Sucle(Instagram):https://www.instagram.com/sucle_/