前編に続いて、𠮷野家常務取締役・伊東正明さんのインタビューをお届けします。
後編では、ヒット商品の舞台裏で伊東さんが経験した2つの「失敗」と、そこからの逆転劇、さらにはマーケティング・スキルを鍛える方法、伊東さんが描くキャリアの方向性についてお話を伺いました。
まさに「伊東塾Marketing Native特別編」になっています。ぜひお読みください。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)
※肩書、内容などは記事公開時点のものです。
目次
P&Gのヴァイスプレジデントまで昇格できた理由
――個人的なキャリアのお話を伺います。伊東さんは1996年にP&Gに新卒で入社され、ヴァイスプレジデントまで務められたとのこと。他のマーケターと比べて、自分はどこが優れていたとご自身で分析していますか。
2つあると思います。1つは、マーケティングで外れが少なかったことです。マーケターとして頭角を現せたきっかけは液体洗剤「アリエール」の成功ですが、これについてはもっとすごい実績を残している先輩方がたくさんいます。
もう1つは、社内調整力です。私はマーケターとしてではなく、ある意味、サラリーマンとして一番優秀だったことが社内で昇格できた理由だと思います。
――どういう意味でしょうか。
組織を動かす力に加えて、会社のアジェンダを満たしながら結果に最短でつなげる力に、私は優れていたんだと思います。マーケティングで新しいブレイクスルーのきっかけを作ることは、私より優れた方々がいます。しかし、あらゆる部署の人と一定程度、良好な関係性を築くことは、ほかの方より得意だった気がします。大きな組織の中で、相手が外国人でも、一度もお会いしたことがなくてビデオ会議でしか話したことがない人でも、みんなから信頼を勝ち取って、やるべきことを伝え、きちんとやってもらう。そんな社内調整力は私が一番得意だったと思います。
――それはマネジメントということですか。
そうです。はっきり言うと「社内政治」ですが、すごく得意です(笑)。だから組織人として出世できたと捉えています。
――マネジメント的なところで意識して実行していたことはございますか。
相手のアジェンダをきちんと理解してあげることです。その人が何をミッションにしているかを理解した上で、やってほしいことを気持ちよくやってもらう。この「気持ちよく」がとても大事です。やらせるのではダメです。
あとは、できる限りフェアでいること。公明正大さに欠けて、裏表があると思われると、信用されることはありません。また、信用されたいがあまり、好かれようとしていろんな人に媚びてしまうのも、裏表があるように受け取られやすく、角が立って逆に信用を傷つけてしまうものです。そういう行動を取らないように気をつけていました。
「特撰すきやき重」の“失敗”から学んだこと
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