BtoB企業のマーケティング組織は、組織の成熟度によって5つの世代に分けることができ、世代ごとに見られる課題が共通していると言います。BtoBマーケティング×営業変革コンサルティングに従事する株式会社Nexal代表取締役の上島千鶴さんによると、日本の上場企業の約8割はマーケティング機能がさまざまな部署に分散した第1世代に当たり、未成熟な状態です。では、マーケティング組織を第2世代、第3世代へと成長させ、事業への貢献度を高めていくには、どのような点を重視するとよいのでしょうか。
「Marketing Native Fes 2024 Summer」(マーケティング・ネイティブ・フェス)の特別セッション3では、株式会社Nexal 代表取締役の上島千鶴さんに、モデレーターのパーソルテンプスタッフ株式会社 執行役員CMOの友澤大輔さんが、BtoBマーケティング組織の成熟度による5つの世代と、組織の成長に欠かせない3つの要素などを聞きました。「自社の立ち位置を知ることができた」「説明がわかりやすかった」と視聴者からも好評だったトーク内容の一部をお届けします。
(文:和泉ゆかり、構成:Marketing Native編集長・佐藤綾美)
※本記事は、Marketing Native Fes 2024 Summer 特別セッション3の内容について、登壇者の方々の許可を得た上で読みやすく編集したものです。
目次
マーケティング組織を持つ上場企業は約11.4%※
※2023年5月末時点
友澤 このセッションでモデレーターを務める友澤です。私は現在、パーソルテンプスタッフの執行役員CMOとして、BtoBとBtoCの両方のマーケティング責任者を務めています。
上島 Nexalで代表取締役を務める上島です。弊社の顧客の約8割はBtoB企業で、250事業体を超えるBtoBマーケティング組織の立ち上げや戦略策定、内製化を支援してきました。本日はこれまでの知見をもとに、BtoBマーケティング組織に必要なことをお伝えしたいと思います。
友澤 最初に、BtoBマーケティングに取り組む企業の傾向や最近の潮流について、上島さんが考えていることをお聞かせください。
上島 「日本のマーケティングは欧米と比較して遅れている」とよく揶揄されますが、国内BtoB企業ではそもそもマーケティング組織が設置されているのか否か、その実態すら明らかになっていません。そこでNexalでは、定期的に公開されている人事異動ニュースのプレスリリースを分析し、マーケティングという名称の組織有無を調査しています。その結果、上場企業のうちマーケティング組織を持つ企業は2023年5月末時点で約11.4%でした。
画像提供:株式会社Nexal
マーケティング組織について考える際に切り離せないのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。DX組織についても上記と同様の調査を実施したところ、2023年5月末時点の組織設置率は11.7%と、マーケティング組織を持つ企業の割合を上回っていることがわかりました。
友澤 新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに、増えたのでしょうか。
上島 要因はいくつかありますが、簡単にいえば、そうだと思います。
もう1つ、私たちはマーケティングオートメーション(MA)ツールの実装率も企業のマーケティング実態を示す重要な指標として定点観測しています。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う2020年の第1回緊急事態宣言を機に、MAツールの導入が一気に増加しました。つまり、コロナ禍をきっかけにウェビナーなどのデジタルシフトを推進するため、MAツールの導入やマーケティング組織の新設を行う企業が増えたわけですが、ツールや組織先行で設立されたマーケティング部門は現在、課題に直面しているだろうと考えています。
友澤 BtoBマーケティング組織の立ち上げについて、理想的なパターンはありますか。
上島 推奨しているのは「トップダウン」型です。現状、BtoBマーケティング組織の取り組み方にはさまざまな傾向がありますが、大切なのは、事業部ごとに戦略が異なる場合でも、デジタル・データ基盤やマーケティングの評価指標定義、方法論については経営企画などから成る本部が平準化や型化をすることです。
友澤 まず、センターオブエクセレンス(CoE)と呼ばれる専門部隊を設立し、知見や技術を集約するところから始めるということですね。とはいえ、DXやマーケティングの機能は現場の近くにある状態が望ましいため、しかるべきタイミングでCoEから各部門に機能を分散させたり、全社的な取り組みが必要になった際にまた集約させたりするような動きが、企業には本来求められるのだと思います。
BtoBマーケティング組織の成熟度による5つの世代とは?
友澤 続いてのテーマは「BtoBマーケティング組織の成熟度による5つの世代とは?」です。この考え方は上島さんオリジナルだと伺いました。
上島 これまで数多くの業種・業態・事業体と関わってきた経験をもとに、組織の成熟度にあわせて第1世代から第5世代まで5つのパターンに分類しています。
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