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ブランド認知施策でROI10倍を実現!認知拡大施策の成果を最大化する「インテントジェネレーション」とは?【小笠原羽恭×田岡凌】

最終更新日:2024.09.26

サービス開始から約2年でARR(年間経常収益)20億円を達成したSales Marker(セールスマーカー)。導入企業数は400社を突破、今年(2024年)7月には累計資金調達額が23.5億円に上り、今も急成長中です。同社が提供する「Sales Marker」は、購買意欲を示唆する意図=インテントに関するデータを活用し、潜在層に対してAIが自動でセールスアプローチを行うサービスです。

Sales Markerの成長はいかにして実現できたのか。株式会社Sales Marker 代表取締役 CEOの小笠原羽恭さんが、同社で外部顧問を務めるsuswork株式会社 代表取締役 田岡凌さんをゲストに迎え、新市場創出の戦略と、認知施策の成果最大化を実現した新概念「インテントジェネレーション」について、具体的な事例を交えて語り合いました。

(文:星 久美子)

※本記事は、Marketing Native Fes 2024 Summerで配信された講演内容について、登壇者の方々の許可を得たうえで読みやすく編集したものです。

目次

顧客起点で行う営業手法「インテントセールス」とは?

Sales Marker 小笠原(以下、小笠原) Sales Markerの小笠原です。私は野村総合研究所で新規事業開発に従事し、その後コンサルティングファームで大手企業の新規事業全体における戦略や営業戦略の策定を支援してきました。コンサルティングする中で、特にターゲティングに課題を抱える企業が多かったことから、行動データ分析に基づくインテントセールスSaaS「Sales Marker」を開発し、提供しています。

suswork 田岡(以下、田岡) 私はネスレでネスカフェ ドルチェ グスト、ミロのブランドマネージャーを経験したのち、外資系スタートアップのブランドマーケティング責任者、マーケティング系SaaSを提供するスタートアップの CMOを務めてきました。現在はsuswork(サスワーク)の代表取締役として、スタートアップから大手までBtoB企業を中心にマーケティング戦略支援を行っています。

小笠原 本セッションのテーマは、『「Sales Marker」によるブランド認知施策で、どのようにROI10倍を実現したか』です。まずは「Sales Marker」のサービス概要についてご説明します。

「Sales Marker」は2022年にリリースした、国内初(※1)「インテントセールス」を実現するSaaSです。「インテントセールス」とは、ターゲット企業の検索行動からわかるニーズに基づき、適切なタイミングでアプローチ行う顧客起点の営業手法です。Web行動履歴データの解析によって顧客の興味関心や検討段階を可視化し、営業活動を効率化するとともに、商談獲得から成約までの成果を向上します。

現在、弊社は“T2D3”(※2)の2倍の成長速度を達成しており、スタートアップから大手企業まで400社以上の導入実績があります。

※1:Sales Marker社が自社における「インテントセールス」でリサーチした結果に基づく。
※2:Product-Market Fitの後、売り上げがトリプル2回、ダブル3回と5年で72倍伸びるのが良いSaaSスタートアップであるとする考え方。

「インテントセールス」で成果を出すためには、4つのポイントを押さえることが重要です。

1つ目はニーズに基づいた企業のターゲティングです。膨大なWeb行動履歴データから独自のアルゴリズムで購買意欲を示唆する意図(インテント)を可視化し、「どの企業に対して今アプローチするべきか」を特定します。

2つ目はアプローチする部署・人物の選定です。ニーズが高まっている企業の部署・人物情報から自社サービスの導入を検討してくれそうな対象者を選定し、キーパーソンに直接アプローチします。

3つ目はニーズに合わせた訴求内容の作成です。ターゲットの事業やニーズに合わせた訴求内容をAIなども活用して作成し、アプローチの反応率を高めます。

4つ目はマルチチャネルアプローチです。運用型広告やメール、架電など、多様なアプローチ手法を最適な形で組み合わせて、商談獲得率をアップします。

インテントセールスを実現するSaaS「Sales Marker」の主な特徴は4つあります。1つは日本最大規模のデータベースで、510万社の法人データベースをはじめ、人物データ572万件、部署データ30万社分を保有しています。

2つ目、3つ目はSales Marker独自の機能「セールスシグナル」と「マルチチャネルアプローチ」です。「セールスシグナル」はWeb行動履歴データの分析に基づいて「今まさにニーズが高い企業」を特定する機能で、「マルチチャネルアプローチ」で手間なく広告配信・メール送信など複数のアプローチを実現できます。さらに4つ目の「AIセールス×ワークフロー」も活用することで、少ない営業リソースでも、最大の成果を上げられます。「インテント」を起点に、セールスマーケティングをより円滑に進めることができるツールです。

Sales Marker 南原(以下、南原) 「Sales Maker」は「インテント」が大きなポイントになっています。ブランドの認知拡大にあたってはどのような課題、戦略があったのでしょうか。

小笠原 リリースした2022年当時、日本では「インテントセールス」という概念があまり浸透していなかったため、広く知ってもらう必要があると考えました。米国の調査会社・TOPO(現Gartner)が2020年に行った調査によると、米国では、約6割のBtoB企業がインテントセールスを実践していると言われていますが、日本では「広範囲かつ多様なインテントデータの取得」「膨大なデータからのインサイトの抽出」などのハードルが高く、なかなか実現されなかった背景があります。

こうした環境下で「Sales Marker」と「インテントセールス」を理解してもらうためには、新しいカテゴリを創出して、私たちのサービスを選んでいただくことが重要だと考え、採用したのが「カテゴリ戦略」です。「Sales Markerとは一言で表すと何か?」という独自性を的確に表現して伝えていくことが市場の創出につながり、より多くの企業の課題解決につながるだろうと考えました。

南原 田岡さんは、カテゴリ戦略の重要性についてどうお考えですか。

田岡 新規事業においては企業規模に限らず、新しいサービスやプロダクトが「そもそもなぜあるのか?」「どのカテゴリに当てはまるのか?」を認知してもらい、想起を獲得するために、カテゴリのキーワードを設定することが重要だと考えています。米国では異なるカテゴリがあったと思いますが、今回Sales Markerが「インテントセールス」と日本の顧客視点でカテゴリを創造できたのは、大きな成功につながった要因の1つではないでしょうか。

顧客インテントをうまく捉え、車輪のように施策を回す重要性

南原 次に、「インテントジェネレーション」という概念について教えてください。

小笠原 Sales Markerでは顧客起点の持続可能な事業成長を支援するため「インテントジェネレーション」「インテントシグナル」「インテントアプローチ」からなる「インテントホイール」というモデルを提唱しています。

画像提供:Sales Marker

「インテントジェネレーション」とは、マーケティング施策を通して、顧客の興味関心を生み出すことです。主な施策として「ブランド認知施策」「PR施策」「コンテンツマーケティング」「デジタル施策」の4つがあります。

  • ブランド認知施策:テレビCMやタクシー広告、オフライン広告、展示会など
  •  PR施策:プレスリリースや調査PR、寄稿、取材記事など
  • コンテンツマーケティング:書籍出版や記事制作、ホワイトペーパー、メルマガ、YouTubeでの動画配信など
  • デジタル施策:Meta広告やLinkedIn広告、SNS運用など

上記のような施策について、何となく認知を拡大できた気はしても、ROIが高いのか否か計測しづらさを感じたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここで重要になるのが、ターゲット企業が「現在どのような興味関心フェーズなのか」をタイムリーに捉える「インテントシグナル」です。

例えば、ブランド認知施策を実施すると、テレビCMやタクシー広告などで製品やサービスについて知ったターゲット企業がWebで情報を検索します。ターゲット企業が課題を特定しようとしている「課題認知フェーズ」であれば、課題を言語化して有益な情報を提供することが大切です。あらゆる解決策のうち、どれが最適か探している「解決策探索フェーズ」なら、ターゲット企業にとって適切な解決策を判断するための選定軸を提供し、自社のベネフィットを伝えます。どのサービスが最適かを比較していく「比較検討フェーズ」なら、ターゲット企業が抱える課題を解決するために自社のサービスが最適である理由を伝えることが大切です。

ターゲット企業の興味関心フェーズを「Sales Marker」の機能「セールスシグナル」で検知することで、営業アプローチがしやすくなり、マーケティング施策をセールスにつなげられます。

シグナルが検知されたら、ターゲットに対してタイムリーにアプローチすることを「インテントアプローチ」と呼んでいます。手段は「インテント広告」「インテントコール」「インテントメール」「インテントフォーム」「インテントSNS」「インテントレター」の6つがあり、これらをタイムリーに組み合わせて実行することでセールスが円滑になり、商談獲得、クロージングに結びつくと考えています。

持続可能な売り上げを創出するためには、それぞれの施策を部分最適で行うのではなく、一貫性を持って実施することが大切です。そのため、顧客のインテントを起点に、車輪のようなホイールの形で施策を回すことを提案しています。

小笠原羽恭さん

田岡 新しい概念「インテントジェネレーション」の重要性について、私自身がさまざまなBtoB企業を支援してきた経験も踏まえてお話しします。

BtoBマーケティングにおいて急成長するには、いかにブランドの認知を向上させられるかが重要です。しかし、タクシー広告やエレベーター広告などで露出を増やしても、「認知は向上したが、リード獲得につながらない」「リードから商談につながりにくい」という声をよく聞きます。このボトルネックとして、多くの人が興味を持ったものの、検索して問い合わせをするアクションまでたどり着かないことが考えられます。

そのため、インテントジェネレーションで顧客の興味関心を生み出しながら、問い合わせに至っていなくても自社に興味を持っている企業を可視化できることは画期的だと思います。自社への興味関心が高い企業を可視化することによって、今後の事業戦略につながるヒントも得られるはずです。

機会損失を無くすという意味においても、今後BtoBマーケティングの施策では、インテントの概念が欠かせないものとなるでしょう。ブランド認知施策やPR施策などを「インテントジェネレーション」と捉え直して活用し、ROIを意識しながらグロースモデルを構築していくことが、企業にとって重要になると考えます。

1つ補足したいのは、タクシー広告やエレベーター広告のようにマーケティングに大きく投資している企業だけでなく、PR施策、コンテンツマーケティングなどに取り組んでいる企業にもインテントは十分存在しているということです。小笠原さん、実際にはいかがでしょうか。

小笠原 マーケティング予算が少ない企業でも、インテントセールスにより成果を上げているところがあります。例えば、調査リリースにより課題や共通認識を浮き彫りにすることで、新たなインテントの創出につなげている例や、インテントアプローチにより、さらにニーズが増えてお問い合わせ数が50倍になった例も出ています。

ブランド認知施策でROI10倍を実現した方法

南原 続いて、今回のテーマ「ブランド認知施策でROI10倍を実現した方法」についてもお聞きします。そもそも、どのような施策を実施して、どんな成果が出たのでしょうか。

小笠原 昨年(2023年)5月、私たちSales Markerはブランド認知施策を実施し、ビジネス映像メディア「PIVOT」への露出で費用対効果10倍、タクシー広告でROI9倍という成果を上げました。

まず、私たちが自社でいかに「インテントホイール」を回したかをご説明します。

そもそも昨年春の段階では、「インテントセールス」でキーワードを検索している企業はほとんどいませんでした。この課題を解決するため、「PIVOT」やエレベーター広告、タクシー広告などへの出稿によるブランド認知施策を実施したところ、「インテントセールス」の検索数が従来の80倍ほどに増加しました。

そこで、「Sales Maker」を使ってニーズが高い企業の「インテントシグナル」を捉え、エレベーター広告を見て検索した全ての企業にAIセールスを活用してアプローチしたところ、わずか2週間で受注を獲得することができました。

画像提供:Sales Marker

一般的に、ブランド認知施策は実施から売り上げにつながるまで半年〜1年かかるケースも少なくありません。しかし、私たちは2週間で売り上げにつなげることができ、かなり効率的に営業活動を行えました。

田岡 施策の実施からアプローチ、商談、成約まで、スピーディで素晴らしい結果が出ていると思います。

成功に至ったポイントは主に2つあると考えます。1つは「Sales Maker」を使って「インテントホイール」自体をしっかりと回せたことです。特に「インテントシグナル」でターゲット企業を見極め、アプローチに移る工程では、ターゲット企業の興味関心のフェーズに応じてメッセージを設定し、DMやメールなど多様なアプローチを行ったと思います。マルチチャネル×マルチメッセージでアプローチできたことが成果につながったのではないでしょうか。

もう1つは、意外と忘れられがちですが、「どんなインテントを立てるのか」が重要です。Sales Markerの場合、「インテントセールス」というカテゴリ自体の認知を拡大し、興味関心を持つ方を増やしていく方向性をブレさせずに、メッセージングや施策に落とし込むことができました。インテントは、クリエイティブや戦略とも密接に紐づくと思います。

田岡凌さん

小笠原 重要なのは、初めに「何を訴求するか」「誰に届けるか」を決めることだと思っています。

「何を訴求するか」は、キャッチーで「何だろう?」と興味関心を引く「ビビッドフレーズ」を作って施策で訴求していくことが大切です。

「誰に届けるか」では、私たちは主にBtoB企業の認知を高めたかったので、親和性の高い「PIVOT」やエレベーター広告、タクシー広告を選定しました。BtoC向けのサービスであれば、よりマスに近いテレビCMも有効でしょう。

南原 最後に、BtoBマーケティングにおけるインテントジェネレーションの未来について、2人の考えを教えてください。

田岡 BtoBマーケティングを推進するために、2つ重要なポイントがあります。1つは戦略の部分で、顧客にどんなインテントを持っていただくかを考えることです。小笠原さんの言葉を借りると「ビビッドフレーズ」ですが、自分たちのサービスやプロダクトを表すキーワードを設定することと、その前段としてWho・What・Howの戦略をしっかりと設計することがマーケティング活動の大前提となるでしょう。

もう1つは、BtoBマーケティングにおいて「マーケティングとインサイドセールス、セールスの間にそれぞれ壁がある」とよく言われますが、「インテントホイール」の概念に基づきマーケティングからセールスまで一気通貫で考えることが大切です。

一般的にリードは顧客の態度変容や意識変容に紐づかないケースがありますが、インテントは「検索」というターゲット企業の行動を追っているため、興味関心と密接に紐づいています。マーケティング、セールスのみならず、組織が横串でしっかりとつながるための鍵が、「インテントジェネレーション」と「インテントホイール」になるのではと考えています。

小笠原 営業・マーケティングのプロセスは、プロダクトの名前やキャッチフレーズ、カテゴリなどの設定段階からスタートします。「インテントジェネレーション」という概念を知っていると、マーケティングやセールスで成果が出ない時も、「インテントは生み出すものだ」という視点のもと、目指すべきアクションができているのか、振り返りが可能になるのではないでしょうか。マーケティングの成果向上につながる概念として、「インテントジェネレーション」の重要性がより高まることを期待します。

 

Profile
小笠原 羽恭(おがさわら・うきょう)
株式会社Sales Marker 代表取締役 CEO。
新卒で野村総合研究所に入社。基幹システム開発、新規事業開発に従事。その後経営コンサルティングファームにて営業戦略立案、AIを活用したDXプロジェクトに従事。2021年株式会社Sales Markerを創業。2022年国内初のインテントセールスSaaS「Sales Marker」の提供を開始。2023年Forbes 30 Under 30 Asia List選出、一般社団法人生成AI活用普及協会協議員就任。主な著書に『インテントセールス 米国企業の6割が実践する興味関心[インテント]データを活用して売上を伸ばし続けるための最先端モデル』(翔泳社)がある。

田岡 凌(たおか・りょう)
suswork株式会社 代表取締役。
京都大学卒業後、ネスレ社にてネスカフェドルチェグスト、ミロのブランド担当に。
外資系スタートアップのブランドマーケティング責任者を経て、マーケティングSaaSスタートアップ CMOとして広報&マーケティングを管掌および大手企業のデジタルマーケティング戦略を支援。現在は、suswork株式会社にて、スタートアップから大企業まで数十社のマーケティング戦略支援を行う。同時に急成長スタートアップ複数社にてマーケティング顧問を務める。

Sales Markerhttps://sales-marker.jp/

記事執筆者

星久美子

ほし・くみこ
フリーランスのライター/編集/広報。事業会社を経て独立。ビジネス、食やライフスタイル分野を中心に、取材や企業広報などを担当。
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