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才流・栗原康太が教える「BtoBマーケティングにおける商材タイプごとの施策のセオリー」【ビタミンゼミレポート#15】

最終更新日:2021.12.23

2020年からスタートしたMarketing Nativeの「ビタミンゼミ」(※)レポートも第15回を迎えました。今回のテーマは、BtoBマーケティングのコンサルティング事業を提供する株式会社才流 代表取締役社長 栗原康太さんによる「商材タイプごとの施策のセオリー」です。

栗原さんによると、BtoB企業のマーケティング施策は商材タイプごとにセオリーがあり、4つに分けられると言います。そこで具体的な分類や、それぞれに有効な施策をご紹介します。

(構成:Marketing Native編集長・佐藤綾美)

※ビタミンゼミ:ビタミン株式会社が運営し、スタートアップ企業の経営者やCMO候補のマーケターがゼミ生として参加するコミュニティ。参加は有料で紹介制。Marketing Nativeでは、月1回開催される「朝ゼミ」の内容を不定期でレポートしている。

目次

    商材タイプの分類にはトランザクショナルクエリの有無が大きく影響

    栗原さん(以下、栗原) 本日は、最近弊社で作成した「BtoBマーケティングにおける商材タイプごとの施策のセオリー」をご紹介します。

    BtoB企業は、商材タイプに応じて、攻めるべき施策のパターンに一定の傾向があります。我々はさまざまな企業を支援する中でその傾向に気付き、商材タイプから施策のセオリーを4つのパターンに分類しました。

    画像提供:株式会社才流

    商材タイプはまず「新規顧客を開拓」か「既存顧客に販売」で大きく分かれ、スタートアップを含む多くの企業が該当する「新規顧客を開拓」からさらに分岐します。

    新規顧客の開拓が必要な商材において、最初の大きな分岐となるのが、トランザクショナルクエリの有無です。トランザクショナルクエリとは、GoogleやYahoo!で検索する際に、購買・申し込みなどの取引を目的とする検索キーワードのことで、クエリの種類にはほかに情報収集を目的とするインフォメーショナルクエリ、ブランド名検索・指名検索と言われるナビゲーショナルクエリがあります。トランザクショナルクエリの数が多いか少ないかによって、選定される施策が変化します。

    例えば、「組織コンサル」「Webサイト制作」「新卒研修」など、検索されやすいサービスがある一方で、我々BtoBマーケティングのコンサルのようにほとんど検索されないサービスも存在します。潜在的に課題はあるものの、お客さまの頭の中に該当するワードが存在しないため、検索されにくいのです。

    なお、トランザクショナルクエリの多さは、自社がターゲットとするキーワードの月間検索回数から上位獲得時の想定流入数を算出し、コンバージョン率をかけあわせた際に、目標とする売り上げやリード数に対して十分な数があるかどうかで判断します。

    画像提供:株式会社才流

    トランザクショナルクエリが少ない商材はさらにターゲットの広さで分類できます。幅広くターゲティングしている場合、ターゲットが情報収集に主体的か受け身かによって施策のパターンが異なります。

    例えば、経営者やマーケティング部門、DX部門の方、営業担当者などは、新しいツールやソリューションを求めて主体的に情報を収集する傾向にあります。一方、主体的に情報を収集する傾向が低いと感じるのが、経理や財務、総務、法務、採用担当の方などです。決まった業務が多く、新しいツールやソリューションを求める機会が頻繁にあるわけではないことから、情報を主体的に収集する傾向が相対的に低いと感じます。ただし、上記はあくまで私が感じている傾向ですので、スタートアップの採用担当者や総務担当者など、当てはまらない場合もあります。皆さんもユーザーインタビューや定量調査でぜひ調べてみてください。

    トランザクショナルクエリが多いパターンのセオリー

    施策のセオリーパターン1は、トランザクショナルクエリが多い商材を扱っているケースです。このパターンは、SEM(検索連動型広告やSEO)とランディングページの改善に投資すると、成果が出やすくなります。検索連動型広告とSEOで検索結果の面を取りに行き、ランディングする先(LP)を愚直に改善します。

    例えば研修関連のキーワードは検索ボリュームが大きく、種類も豊富なため、研修事業を展開するインソースは関連キーワードをSEOで対策し、「企業研修」で1位を獲得しています(2021年12月時点)。

    ちなみに、ランディングページの改善には、我々の作成したチェックリストを参考にしていただくと、成果が出やすいと思います。

    株式会社才流「Webサイト改善に役立つチェックリストとワイヤーフレーム」

    トランザクショナルクエリが多いと、競合企業との競争も激化する場合があります。そうしたケースでは、第一想起を獲得するため、マス広告を打ち出すなどの認知系の施策への投資も有効です。代表的な例としては、ネット印刷で知られるラクスルが挙げられます。同社が参入した当初、「ネット印刷」というキーワードはレッドオーシャンでした。そのため、ブランド名である「ラクスル」の検索数増加を目的にマス広告を出稿したところ、「ネット印刷」よりも「ラクスル」の検索数が上回るようになりました。ラクスルの場合は累計で50億円以上を投資したと聞きますので、容易に真似できる手法ではありませんが、このように第一想起を獲得しに行くのもセオリーの一つです。

    画像提供:株式会社才流

    トランザクショナルクエリは少ないが、ターゲットが広く主体的なパターンのセオリー

    続いては、トランザクショナルクエリが少ないものの、ターゲットは幅広く、かつ情報収集に主体的な商材の施策のセオリーです。このパターンの商材では、軸をずらした情報提供で見込み客を集客し、階段設計のコミュニケーションで商談化を促進します。商品やサービスそのものではなく、ターゲットが興味関心のある情報を提供する方法は、ウェビナー、Webサイトのコンテンツ、お役立ち資料、記事広告、広報活動、展示会など、さまざまです。それぞれ例を紹介します。

    ウェビナーで集客する

    ユーザベースが提供するBtoB事業向け顧客戦略プラットフォーム「FORCAS(フォーカス)」も、トランザクショナルクエリが少ない商材の一つです。そのため、「データ×アウトバウンド戦略」「オンラインセールス」「組織変革」など、ターゲットが興味を持ちそうなテーマでウェビナーを実施しています。ウェビナーからリードを獲得し、見込み客にアプローチするような組み立てです。

    FORCAS「イベント

    コンテンツで集客する

    弊社の場合は、自社サイトでコンテンツを発信しています。中でも、SNSなどで拡散されて3万PV以上を獲得し、多数の問い合わせにもつながったのが「キーエンスのWebマーケティング」に関する記事です。「才流」や「BtoBマーケティングのコンサル」と検索する人は少なくても、「キーエンスのWebマーケティング」に興味がある人は多いだろうと考え、コンテンツを提供し、リード獲得へつなげました。

    お役立ち資料で集客する

    健康管理システムの「Carely(ケアリィ)」は、「健康経営」や「定期健康診断」「メンタル不調」などターゲットが興味を持ちそうなテーマでセミナーを実施しているほか、無料でダウンロード可能なお役立ち資料を配布し、リードを獲得しています。

    Carely「お役立ち資料

    記事広告で集客する

    セールス・フォースドットコムが提供するBtoB特化型MAツール「Pardot(パードット)」は、商品の直接的な宣伝ではなく導入企業のマーケティング活動をテーマにしたインタビュー記事で記事広告を出稿し、リード獲得へつなげています。Pardotそのものに興味がなくても、先進企業のマーケティング活動に関心が高い方に記事を読んでもらうのが狙いです。

    広報活動で集客する

    経費管理クラウドサービスを提供するコンカーは、日本市場への参入時(2016年)に日本のビジネスパーソンの経費精算に関する実態調査を行い、生産性の低さなどを取り上げたニュースリリースを配信し、見込み客の獲得につなげています。当時の日本では働き方改革に向けた取り組みが始まっており、ちょうど生産性の向上に対する関心が高まっているタイミングでした。

    展示会で集客する

    個人的には、展示会も軸ずらしの施策の一つと考えています。来場者の中には、プロダクトを探しに来たというより、最新のソリューションや業界の動向に関する情報を求めて訪れている方もいると思われるからです。

    軸をずらして認知やリードを獲得すること自体はそれほど難易度が高くないものの、そこから案件へとつなげるにはハードルがあります。そこで、弊社では「階段設計」と称する段階的なコミュニケーションを行っています。具体的には、セミナーやお役立ち資料経由で獲得した見込み客に対し、少人数の勉強会を実施してカスタマイズした情報を提供し、商談へとつなげる手法です。

    画像提供:株式会社才流

    ターゲットが限定的、もしくは情報収集に主体的ではないパターンのセオリー

    3つめのセオリーは、ターゲットが限定的、もしくはターゲットが幅広いものの情報収集には受け身のパターンです。ターゲットが限定的な商材とは、特定企業のみにアプローチするタイプで、主に次のようなケースを指します。

    • 特定業界に特化している
    • 東証一部上場上位500社のみをターゲットとしている
    • 過去にテレビCMを出稿したことがある

    このタイプの商材では、ターゲット企業を定義した後、そのターゲット企業の関心事を把握し、「一本釣り施策」と「投網施策」2つのアプローチを実施するのが有効です。

    よく行われているのが「CXOレター」と呼ばれる施策です。ターゲットを決めてカスタマイズした内容の手紙を送付し、後日電話で商談を依頼します。商材や企業の知名度にもよりますが、アポ率は2~10%程度です。

    また、紙の冊子やマガジンを発行し、ターゲットに送付する手法もあります。例えば歯科医院や弁護士などを対象とするような、バーティカルなサービスを提供している場合に有効です。

    ほかに、商談中・失注・保有リードの中からターゲット企業を決めてバイネームで招待し、少人数の勉強会やワークショップを実施する方法もあります。ただし、実施には一定のコストがかかり、単価が高い商材でないと費用対効果が悪くなるおそれがあるので注意が必要です。少人数の勉強会やワークショップで人が集まりづらい場合は、カンファレンスまたは共催セミナーなどを実施し、大量に獲得したリードの中からターゲット企業をスクリーニングする方法もあります。

    画像提供:株式会社才流

    既存顧客に販売するパターンのセオリー

    スタートアップの皆さんにはあまり関係ないかもしれませんが、参考までに既存顧客に販売する商材の施策のセオリーをご紹介します。具体的には、既存の顧客に既存の商品をさらに販売するケース、既存の顧客に新しい商品を販売するケースがあります。

    こうした既存顧客に販売する商材では、純粋想起を目指し、課題やニーズが発生した際に声をかけてもらえるようにすることが大切です。そのため、メールや電話などで継続的に情報を発信することがセオリーとなります。

    画像提供:株式会社才流

    そのほか、中国の最新テック動向見学など顧客企業の役員を海外視察に招待して案件化したり、ネームバリューのある企業の導入事例を作成し、メールで既存顧客に案内したりする方法もあります。

    画像提供:株式会社才流

    今回は、日頃ご相談いただく際に私の頭の中で思考している内容を分解し、ご紹介しました。4つのパターンはもちろん大まかなもので、より細かくセオリーを分類することもできるでしょう。今年10月に発売した『マーケター1年目の教科書』では、「顧客を観察する」「ペルソナを明確にする」「顧客がいるチャネルを調査する」「顧客のニーズを把握する」など、成果を上げているマーケターの行動パターンをより細かく分類し、解説しています。そうした基本を押さえたうえで、ご紹介した4パターンのセオリーをヒューリスティックに活用いただくのが良いと思います。

    一度PMFした後は何をすべきか

    講義の後半では、参加者からの質問に栗原さんが回答しました。

    Q.トランザクショナルクエリはどれくらいが「多い」と言えますか。

    栗原 私の肌感ですが、月間で1,000に満たない、数100程度では売り上げの当てとなるようなチャネルにはなりづらいと感じます。

    Q.トランザクショナルクエリの数は多いけれど、商品が高価格帯でターゲットが限定的な場合は、どのパターンになりますか。

    栗原 経費精算システムのコンカーのようなケースですね。今回ご紹介したセオリーでは「トランザクショナルクエリが多い」の先に分岐がありませんが、ターゲットが限定的となるパターン3に当てはまると考えて良いでしょう。この場合は、自分から顧客にアプローチする必要があります。

    Q. パターン3のセオリーとして紹介されていた「CXOレター」の送付先リストを作成するのに良い方法はありますか。

    栗原 まず前提として、リストを作成する際は、業種の分類や売り上げ規模など、ターゲットの条件を明確にすることが大切です。ターゲットとしたいセグメントが決まったら、過去にそのセグメントを攻めたことのある方にエキスパートインタビューを行うと、調べ方やリストの作成方法などを教えてもらえるケースがあります。

    Q. 一度PMFした後は、どうすれば良いでしょうか。マーケティング施策に充てられる予算も増えてきており、次に何をするべきか迷っています。

    栗原  現状のセグメントでマーケティング施策が飽和した状態ならば、新しいセグメントを狙わなければならないと思います。セグメントを拡大すると、さらに次の施策を打てることがあります。あらためてユーザーインタビューを実施し直すところから始めてみると良いのではないでしょうか。

    【今回の講師Profile】
    栗原 康太(くりはら・こうた)
    株式会社 才流 代表取締役社長。
    東京大学文学部行動文化学科社会心理学専修課程卒業。2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。2016年に「才能を流通させる」をミッションに掲げる株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。カンファレンスでの登壇、主要業界紙での執筆、取材実績多数。著書は『事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践』(すばる舎)、『マーケター1年目の教科書』(黒澤友貴氏との共著、フォレスト出版)など。
    Twitter:@kotakurihara

    【ビタミン株式会社】
    高梨大輔(たかなし・だいすけ)@dtakanashi
    高松裕美(たかまつ・ひろみ)@_romihee_
    株式会社リジョブ(現株式会社じげんグループ)の創業役員の2人が2015年に創業し、エクイティファイナンス型のスタートアップを専門に、インハウスマーケティング支援やエンジェル投資活動を行う。100名を超える紹介制ビタミンゼミでは、信頼できる専門家から「一次情報」をスタートアップに届ける活動をしている。
    https://vitaminzemi.studio.site/

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    佐藤綾美

    記事執筆者

    佐藤綾美

    株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。
    Twitter:@sleepy_as
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