「アサヒスーパードライ」などのビール類で知られるアサヒビール。そのアサヒビールがビールを普段あまり飲まないライト層を開拓するため、2023年6月に首都圏・信越エリアの1都9県で販売開始したのが「アサヒ ホワイトビール」です。「商品の手に取りやすさ」や「飲む人の気持ちに寄りそうこと」を意識したパッケージは、日没前後に夕焼けが美しく見える時間帯「マジックアワー」をイメージしています。
6月6日の発売時にはSNSを中心としたプロモーション施策を複数実施し、若年層やライトユーザーの獲得につなげました。
今回は、アサヒ ホワイトビールのプロモーション施策について、アサヒビール株式会社 マーケティング本部 ビールマーケティング部 副主任の宮西桃子さんと、施策の一部を支援した株式会社FinT マーケティングパートナー事業部 食品飲料チーム マネージャーの田中隼輔さんに話を聞きました。
(文:工藤 麻里子、取材・構成:Marketing Native編集長・佐藤 綾美、撮影:矢島 宏樹)
※肩書、内容などは記事公開時点のものです。
目次
新たなビールユーザーの獲得を目指して開発
――スーパーの売り場で商品を見たとき、パッケージが目を引きました。「アサヒスーパードライ」「アサヒ生ビール(通称マルエフ)」などの既存商品に比べると、かわいらしい印象を受けますが、アサヒ ホワイトビールを開発した背景を教えてください。
アサヒビール 宮西(以下、宮西) 若年層のビール離れが進んでいるとされるなかで、「Z世代やミレニアル世代へのアプローチが必要」という危機感のような社内の共通認識があり、新たなユーザーを獲得するために開発したのがアサヒ ホワイトビールです。この商品では、若年層やビールを普段あまり飲まないライトユーザーをメインターゲットとしています。
商品開発にあたっては、若年層にユーザーインタビューを実施しました。これまで発売した商品はビールを好んでよく飲む人がターゲットのものが多かったので、週1回以上はビールを必ず飲むユーザーを対象にユーザーインタビューを行っていたのですが、今回はビールを全く飲まない人、苦手な人にも調査を実施しています。
その結果、ビールを飲まない人や苦手な人のなかにも、「夏にビアガーデンで飲んでいる人たちを見ると羨ましい」「幼い頃の記憶から、ビールを飲むことができると『大人』という印象を抱いている」などのビールに対する「憧れ」を抱いている方がいるとわかり、そこに商品開発の可能性を感じました。
また、ビールが好きな人へのユーザーインタビューで聞いた「心がほどける」という表現にも商品のヒントを得ています。その方は、日々忙しい時間を過ごしていても、ビールを飲む時間だけは忙しさを忘れられるそうで、その瞬間を「心がほどける」と表現していたのです。商品を通じて、この「心がほどける」という価値を届けられれば、ビールをあまり飲まない若年層の方々にも、ビールの存在をもっと身近に感じてもらえるのではと考え、商品開発を始めました。
▲画像左:アサヒビール株式会社 宮西桃子さん、画像右:株式会社FinT 田中隼輔さん
――今年(2023年)6月の発売前に、昨年(2022年)5月にも商品をテスト販売しており、その際は予想外の売れ行きだったと他社の記事で拝見しました。どんなところが予想外でしたか。
宮西 パッケージに対する反応は想定通りでした。あえてビールらしくないパッケージにすることで「手に取りやすさ」を意識した結果、購入いただいた方から「かわいらしいパッケージが目を引いた」との声があったので、狙い通りだったと思います。
一方、良い意味で想定外だったのは、予想以上の売れ行きを示したことです。実際に購入いただいた方のデータを見ると、弊社で販売している他のビールよりも新規ユーザーや20代、30代の割合が多いことがわかりました。また、さらに想定外だったのが、日常的にビールを楽しんでいるビールユーザーにもアサヒ ホワイトビールを手に取っていただけていたことです。商品を購入してくれたビールユーザーの方にヒアリングしたところ、弊社がX(旧Twitter)の公式アカウントで発信していた情報などを見て、「アサヒビールからホワイトビールタイプの新商品が出るらしい」と期待感を持って購入したとおっしゃっていました。
マス広告は使わず、SNSを中心にアプローチ
――ここからはアサヒ ホワイトビールのプロモーション施策についてお伺いします。これまでにどのような施策を実施してきましたか。
宮西 若年層がターゲットなので、テレビでマス広告を出稿するのではなく、若年層の利用率が高いSNSなどを活用したデジタルマーケティング中心のプロモーションに注力しています。昨年のテスト販売と比べ、今年6月からの先行販売は首都圏・信越エリアの1都9県にエリアを拡大し、プロモーションに使用できる費用も増えたため、デジタルマーケティングをより強化しました。
弊社独自で行ったプロモーションには次のようなものがあります。
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