『顧客起点マーケティング』などのヒット作で知られる西口一希さん。これまでの著書がマーケターを中心に好評を博してきたものの、一部のマーケティング初心者にとっては少々難しさを感じるところもあったようです。
そうした事情を考慮して出版された西口さんの最新刊『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』は、マーケティングの基本の中でも特に重要なポイントに絞って解説されていて、初心者だけでなく、なかなか成果が上がらずに悩んでいるマーケターにも評判になっています。
今回はマーケティングを学んでいるけれど、実務にどう活かせばいいかわからない人や、成果が出ずに伸び悩んでいる人向けに、成長するためのポイントについて株式会社Strategy Partners代表取締役の西口一希さんに著書の内容を踏まえてお聞きしました。
(取材・文:Marketing Native編集長・佐藤綾美)
目次
執筆スタイルも顧客起点マーケティング
――西口さんと言えば、これまでも『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(翔泳社)、『企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営』(日経BP)など、マーケティングに関する多数の著書がありますが、今回あらためて初心者の方々向けに執筆を決意した背景を教えてください。
『企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営』(日経BP、以下『顧客起点の経営』)を執筆した後、「本を書くのはこれで最後にしよう」と考えていました。しかし、2022年6月にその本が出る前に日本実業出版社の方から「マーケティング初心者向けの本を書きませんか」とお声がけいただいたのがきっかけの1つです。それまで初心者向けの書籍を出すことはあまり考えていませんでしたが、初心者の方々のマーケティングに対する理解を統一させる必要性を実務上で感じ始めていたタイミングと合致したこともあり、お受けしました。
私はこれまでP&G、ロート製薬、ロクシタン、スマートニュースとマーケティングを中心に経営にも携わり、ここ5年ほどはアドバイザーやコンサルタント、顧問などの形でさまざまな企業の事業支援を行っています。ご相談いただいた企業は累計で250社を超えており、毎週1~2回、1回あたり1時間ほどの相談を受け、その中からご縁のある企業を支援していますが、スタートアップの経営者、営業担当者などマーケティングをメインに扱わない方々との関わりも増えていく中で、マーケティングに誤解されている部分があり、無駄な費用や時間、労力が発生していると感じるようになりました。
また、マーケティングやビジネスについて誤解があると、いくら学習しても空回りしてしまうケースを過去に何度も見てきました。そのため、入社後間もないうちから、マーケティングやビジネスに関する一定レベルの理解があれば、その後の学習スピードや効果、経験したことを自分の力にする速さなどが違ってくるだろうとも考えていたのです。
そこで、マーケティング初心者から経営者の方まで、ビジネスに関わる全員に知っておいていただいたほうが、無駄が減って仕事も面白くなるであろう内容を言語化し、学生の方でも理解できるレベルにまで落とし込もうと考えたのが半年前のことです。
――書籍には、マーケティング初心者の方々との質疑応答を経て作られたとありました。
編集担当や出版のサポートスタッフをはじめ、中小企業の経営者、若手マーケター、マーケティングに興味はあるけれど詳しくは知らない方々累計250名以上に、セミナーを実施して質問を受けるなどの形で徹底的にヒアリングを行いました。そもそも私が「マーケティング初心者の方々がわからないこと」をわからなくなっていたためです。
――まさにこの本の制作過程で「顧客起点マーケティング」を実践されていたのですね。
そうですね。顧客起点をテーマにしたもう1冊の著書『顧客起点の経営』を執筆する際は、幸いこの5年間で経営者の方々とお話しする機会があり、何を誤解されているか把握できていたので、伝えるべきことが大体わかっていました。しかし、今回はお客さまとなり得る方々に話を聞かなければ半分くらいわからない状態でしたので、執筆にかかる時間や労力はこれまでで最も要したと思います。
失敗ばかりのP&G時代に気付いた、お客さまと向き合う重要性
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