庶民のため息が聞こえてきそうな豪華なクレジットカードが話題です。ラグジュアリーカード(LUXURY CARD)が発行した「Mastercard Black Diamond」(マスターカード ブラックダイヤモンド)がそれで、入会金110万円、年会費66万円と初年度に必要な金額は締めて176万円。
とはいえ、高いポイント還元率をはじめ、1回15万円相当のギフトが年2回進呈されるほか、会員同士のコミュニティなどもあり、付帯特典は豪華そのもの。インビテーションが送られてくるステータスの高い富裕層にとっては意外とあっさり元が取れそうでもあります。
持っているだけでステータスになる「Mastercard Black Diamond」。手が届かないけど、何だか気になる謎の魅力について、ラグジュアリーカード事業開発本部長の菊地望さんに話を聞きました。
(取材・文:ライター・大正谷 成晴)
目次
そもそもラグジュアリーカードとは
「Mastercard Black Diamond」について説明する前に、簡単にラグジュアリーカードについて解説しておきます。
ラグジュアリーカードは2008年に米国で創業し、2016年に日本に上陸した金属製のクレジットカードです。これまでに「Mastercard Titanium Card」(チタン:年会費5万5000円)、「Mastercard Black Card」(ブラック:年会費11万円)、「Mastercard Gold Card」(ゴールド:年会費22万円)の3種類を発行し、最上位のゴールドカードには24金のコーティングが施されています。
「クレジットカードのグレードは通常、『一般』『ゴールド』『ブラック』の順番ですが、ラグジュアリーカードでは『ブラック』より『ゴールド』を上位にしました。業界の慣習にとらわれず、新たなチャレンジをしたいという精神を表現したものです」(菊地さん、以下同)
左からブラックダイヤモンドカード、ゴールドカード、ブラックカード、チタンカード。
カード会員の平均年齢は43歳で、平均年収は1700万円。経営者や会社役員、自営業者など経営層が会員の約6割を占め、9割以上が男性。2021年の入会者のおよそ半数は「ニューラグジュアリー」と呼ばれるミレニアル世代(1980年代~2000年に生まれたデジタルネイティブ世代)でした。
「豊富な付帯特典に加え、税金・公共料金のお支払いでもポイントの付与率が下がらないことや、イベントなどで会員の皆さまをつなぐ『ソーシャルアワー』、法人口座決済用カードのゴールド会員が独自の優待付き自社商品を紹介して、他の会員が購入できる『LCオーナーズコミュニティ』など、ビジネスをサポートするサービスもお申し込みの動機につながっています」
とのことで、日本上陸時からの5年間で会員数は約5倍に伸びています。
Mastercard® Black Diamond™
天然ダイヤモンドが埋め込まれた、ハイクラスのさらに上
そのラグジュアリーカードに新たに登場したのが「Mastercard Black Diamond」です。何とも魅力的な基本スペックと代表的な優待内容を紹介します。
「Mastercard Black Diamond(ブラックダイヤモンド)」
入会金:110万円
年会費:66万円
申し込み:完全招待制
ポイント還元率:2.0%
- 大手エアライン国際線特典航空券日本-ハワイ便往復ビジネスクラス相当のマイル進呈(年1回)
- ニューヨーク発のファッションサイト「GILT(ギルト)」の目利き担当者が行う個別のヒアリングによる1回15万円相当のカスタマイズギフト(年2回)
- 国内外で利用できるMarriott GiftCardや東急ホテルズと提携した選べるホテルギフト(最高20万円相当)
- 会員を熟知するコンシェルジュがチーム制で担当する「Black Diamond Assistant」
- 業界最高水準2.0%のポイントプログラムでは、25万円の利用ごとに1万1000円分のワインクーポン(賞品還元率最大4.4%)、1000万円の納税や経費決済で20万円のキャッシュバック、Amazonギフト券などに交換可能
- Black Diamond会員同士や経営者同士が交流できる場の提供
- パーク ハイアット 東京 スパ&フィットネス施設「クラブ オン ザ パーク」を入会金、保証金、年会費不要の都度料金(5500円/税込)で毎週1回、特別メンバーとして利用可能
- 予約困難なレストラン・会員制レストランなどを定期的に確保。Black Diamond会員を優先案内
カードは縦型で、色味は光沢を抑えたブラック。カード番号などの情報は裏面に集約されています。しかも券面左上部には、希少価値の高いハイジュエリーと同水準の透明度を誇る天然ダイヤモンドが埋め込まれています。職人が1時間ほど手作業で磨き上げていて、1日にできるのは10個ほど。そんな豪華なダイヤモンドが埋め込まれていて、カードの読み取りがスムーズにいくのか、使用時にポロリと落ちてしまわないかと心配になる人もいると思いますが、「着想からローンチまで2年間かかったのは、薄く、カード読み取り機に通しても大丈夫で、落ちないように加工する必要があったからです」とのことで、問題なさそうです。
また、もう1つのポイントは、ラグジュアリーカード発祥の米国より先に日本でローンチしたことです。
「2021年がラグジュアリーカードの日本上陸5周年だったことや、コロナ禍でも日本の会員は増え続け、2021年8月には利用額が過去最高額に達するなど、日本市場に顕著な伸びが見られたのが大きな理由です。法人向けゴールドカードの会員数は1年間で約2倍に増えています。そうした状況下で、ゴールドカードの会員の方々から“予約の取れないレストランの案内や宿泊優待枠をもっと広げてほしい”“経営者同士のビジネスマッチングを強化してほしい”など、よりサービスが充実したカードを出してほしいとの声を頂いていたため、ユーザーニーズをうまく捉えられている日本から発行するという決断に至りました」
入会金と年会費を合わせて176万円という金額は、競合の「ダイナースクラブ ロイヤルプレミアムカード」(計110万円)や「アメックス センチュリオン」(計93万5000円)より上ですが、それにも理由があります。
「ラグジュアリーカードはステイタスカード市場に参入してから、他にはないアイデアで会員の皆さまから支持を得てきました、そんな我々の在り方に共感・賛同し、価値を見いだしていただける方のみをお迎えしたく、こういった形を取っております。ユニークでパーソナルなサービスを提供する関係上、多くの方にご入会いただくのは難しく、横のつながりも大切にしたいことから、既存の会員を対象にした完全招待制にしています。我々としても目標は定めず、会員になっていただきたい方にのみ情報をお届けする方針で、招待基準や招待方法は非公開とさせてください」
画像はイメージ。
コスト以上に高い付加価値の提供
確かに一見、入会金と年会費は高額に見えます。しかし、日本とハワイをビジネスクラスで往復するのに相当するマイルのプレゼント、1000万円の納税や経費決済で行われる20万円のキャッシュバック、ホテルギフトやワインクーポン、会員をよく知るコンシェルジュチームなど、付加価値の高いサービスを見ると、「Mastercard Black Diamond」を利用する富裕層や経営層、自営業者らにとっては、意外とあっさり元が取れて、むしろお得に使える人も多そうです。中でも高額の支払いがある経営層にとって、高いポイント還元率は魅力的でしょう。
「優待に関しては、フレキシブルにお使いいただけるよう設計しました。マイルはハワイに限定するものではなく、国内旅行や出張にお使いいただいても結構ですし、貯まったマイルを複数回に分けて使用することも可能です。ホテルギフトも我々が場所を限定するのではなく、提携先から自由に選ぶことができます。付帯特典については会員の声をヒアリングし、よりご満足いただけるようチューニングも随時行う方針です」
既存会員から多く寄せられている会員同士のコミュニティ化については、会員が交流する場を提供することで、要望に応えたいとしています。ちなみに、付帯特典の選定に米国本社は関わっておらず、各国共通なのは券面やコンシェルジュサービスの内容くらい。年会費やポイント還元率、各種付帯特典の内容はローカライズされています。
「ロイヤルカスタマーのニーズを理解しているのはローカルのスタッフだからです。また、米国本社に稟議を上げたり、アンケートやリサーチをしたりすると時間がかかり、角が丸くなったサービスしか作ることができません。現在はユーザーに刺さるユニークなサービスをスピード感を持ってお届けすることを第一に考えています」
「Mastercard Black Diamond」はラグジュアリーカードの既存会員の一部を対象とした限定カードなので、広くPRをする必要はありません。ところが今回はSNSでティーザーを公開したり、リリース情報を発信したりするなど、存在をアピールしました。サービス内容を公開せず、中には存在さえも認めないと噂されるステイタスカードもある中で、異例の施策だったと言えます。
「せっかく素晴らしいプロダクト・サービスができたので、多くの方に知っていただきたいと考えました。サービス内容を一部公開したのは、最上位カードの情報を基本クローズドにしておくカード会社が多い中、あえて業界の慣例にとらわれないアプローチをしたいと思ったからです。入会自体は招待制ですが、革新的な会社だと知っていただきたいですし、既存会員の方には“自分にも届くかもしれない”と心待ちにしていただきたいと思います」
まさに「選ばれた人」だけが持てるステイタスカードの世界。「いつかは自分にもインビテーションが届くような存在になりたい」と、カードの所有を目標にする人もいるのではないでしょうか。
「当社が日本でステイタスカード市場に参入したとき、金属製のカードは1種類しかありませんでしたが、その後どんどん増えました。これからも業界に在り方に一石を投じ、多くの方に喜んでいただけるような、より良いサービスを提供していきたいと考えています」