2018年末ごろから10代・20代を中心に人気を集めている、3Dソーシャルアバターアプリ「ZEPETO」。TwitterやLINEのアイコンに使っている人もいるので、アプリ自体をご存じの方は多いのではないでしょうか。
実際に私もアプリを使用してみたのですが、自分とそっくりのアバターを作ったり、着せ替えしたりできるのは、確かに面白い。でも、なぜこんなに流行しているのか理由を知りたくなったので、ユーザーとSNOW Japanの方に聞いてみました。
今回はZEPETOの魅力と流行の理由に迫ります。
目次
ZEPETOの特徴と楽しみ方
そもそもZEPETOはどのようなアプリなのでしょうか。まずは、ZEPETOの基本情報と楽しみ方をご紹介します。
若者を中心に流行るZEPETOとは
ZEPETOはSNOW Corp.が提供している3Dアバターソーシャルアプリです。若い世代を中心に流行中で、アメリカや中国、日本を含む、世界35カ国のAppStoreランキングで1位を獲得し、ユーザー数は5000万人を突破しています(2019年1月時点)。
画像提供:SNOW Japan株式会社
SNOW Japanマーケティングチームの担当者によると、「これまで提供してきたSNOWやB612、Foodieなどのカメラアプリと比較しても、速いスピードでユーザーが拡大しています」とのこと。Instagramで「#ZEPETO」と検索すると、投稿数は148万件にも上ります(2019年2月19日時点)。
ZEPETOは自分にそっくりなかわいいアバターを簡単に作成できるのが特徴です。アプリを立ち上げて自分の顔を撮影すれば、簡単にアバターを作成できます。自動作成後に髪型や顔のパーツを変更したり、顔の大きさ、目と目の距離といったバランスを微調整したりすることも可能です。
アプリのホーム画面は部屋のようになっており、自分が作成したアバターが立っています。始めは真っ白な部屋にシンプルな服装のアバターが立っているだけですが、アプリ内で発行されたコインを使って、洋服やアクセサリー、インテリアをカスタマイズできます。
ZEPETOの楽しみ方
自分そっくりのアバターを作成して着せ替えをする以外に、ZEPETOには以下のような楽しみ方があります。
好きなユーザーやキャラクターと写真を撮る
ポーズを選択し、自分がフォローしているユーザーのアバターや、キャラクター(BT21※)と写真を撮って遊ぶことができます。
画像提供:SNOW Japan株式会社
※BT21:韓国のアイドルグループ防衛少年団(BTS)とLINE FRIENDSのコラボレーションにより誕生したキャラクター。
▲編集長とツーショットを撮ってみました。
(左:當摩のアバター、右:Marketing Native編集長のアバター)
アバターのポーズは「#パパラッチ風」「#アイドルポーズ」など、さまざまです。
ZEPETOではユーザーをフォローする際に相手の承認が必要ないため、気になったアバターと好きなポーズで写真を残すことができます。また、グループショットだけでなくピンショットの撮影も可能です。
画像提供:SNOW Japan株式会社
自分が撮影した画像を背景に加工することもできます。
▲自分のアバターを撮影していた写真と組み合わせ、
まるでアバターがその場にいたかのようにすることもできます。
絵文字を作成して楽しむ
ZEPETOでは、アバターを使って絵文字(ZEPETO内の名称で、どちらかというとLINEのスタンプに近い)も作れます。あらかじめ用意されたテンプレートのほかに、アバターの表情やポーズ、背景などを調整し、オリジナルの絵文字を一から作って楽しむこともできます。作成した絵文字は画像として保存したり、LINEでスタンプのように送ったりして遊びます。
▲自分のアバターで作成した絵文字。
ストリートで気になる人を見つける
ZEPETOでユーザーをフォローするには、「友達コードを入力する」と「ストリートで探す」という2つの方法があります。ストリートは街の通りをイメージした機能で、知らないユーザーが行き交います。
▲「BT21 Street」や「ゼペットタウンストリート」など行きたいストリートを選びます。
画像出典:ZEPETO
▲試しに「ゼペットタウンストリート」を
歩いてみる編集長のアバター。
画像出典:ZEPETO
気になるアバターをタップすると立ち止まり、フォローしたり、そのアバターのホームに訪問したりすることができます。かわいいアバターを偶然見つけたり、知らないユーザーからフォローされたりと、ZEPETO内でのつながりを広げられる楽しさがあります。
イラスト:Marketing Native編集部
ZEPETOが流行している理由を調査&考察
ZEPETOはどのような背景で流行したのでしょうか。私の知り合いでZEPETOを使ったことがある10代~30代の男女にアンケート調査を行い、その結果を基に若者に人気の理由を考察してみました。
理想の自分を表現できる
利用頻度の高い機能を聞いたところ、「アイテムの着せ替え」が57.9%とダントツに多く、続いてフォローしているユーザーと写真を撮れる「フォトブース」、アバターに動きを付けられる「ジェスチャー」が挙がっています。
アイテムの着せ替えを利用する理由については、「普段着られない服を着られて楽しいから」(20代女性)、「コーディネートを考えるのが楽しい」(10代女性)、「着せ替えたキャラクターを画像として保存したり、知人に送ったりしている」(20代女性)といった意見が挙がりました。
また、ZEPETOの魅力については、以下のような回答が得られました。
「自分を多少美化できるところ」(10代女性)
「アバターが実物にかなり似ている。ジェスチャーのバリエーションが豊富」(20代女性)
「今日は顔が死んでいるなぁというときでも、とりあえず友達とZEPETOで写真を撮っておける」(20代女性)
「ただアバターを作るだけでなく、動きを付けたり、アバター同士にポーズをとらせて写真を撮れるところ。表情が細かく変わるので面白い」(30代女性)
上記の結果から考えられるZEPETOの人気の理由は、簡単に盛れることと、アバターを介して着飾れるという点が緩衝材の役割を果たしていることです。
アイテムの着せ替えで楽しむ人が多いことから、ZEPETOのユーザーは、ちょっと背伸びした自分をアバターで疑似体験しているのではないでしょうか。リアルな世界では、どうしても自身の年齢や見た目との兼ね合いで、服装や髪型などを決めがちです。ところがZEPETOなら、リアルではできない服装や髪型に挑戦したり、アバターをかわいく見せたり(盛ったり)することが簡単にできるため、気軽に楽しめます。
また、「リアリティがありつつも、2.5次元的にかわいいキャラクターをつくれる」(20代女性)という声があるように、ZEPETOならアバターを介して盛ることができるのも、もう一つのポイントです。
これまでInstagramはインスタ映えのような「盛れている写真」を投稿できる場として流行していましたが、近頃は投稿のハードルが高くなり、映える写真を投稿するために労力を費やしたり、リア充をアピールすることに抵抗を感じたりする「インスタ疲れ」という言葉も聞かれるようになりました。
しかし、ZEPETOなら、盛るのはアバターであって、リアルな自分ではありません。あくまでアバターが着飾っているということが盛ることに対する言い訳としての役割を果たし、ユーザーにウケているのではないでしょうか。
画像出典:ZEPETO
SNSでシェアしやすい
ZEPETOは、ほかのアプリやSNSでシェアしやすい設計になっています。例えば、絵文字はスタンプ感覚でメッセージのやり取りに使えますし、フォトブースで友人のアバターと撮影した面白い写真も気軽にシェアできます。若い世代は画像を加工、編集することにあまり抵抗のない人が多く、ZEPETOの自分オリジナルの絵文字を作れる機能なども受け入れられやすかったと考えられます。
実際にアンケートでは、ZEPETOの用途に関する回答として「画像を保存してストーリーの背景にする」(20代女性)、「フォトブースで撮った写真をLINEのアイコンなどにする」(30代女性)といった声が挙がっていたほか、ZEPETOの魅力を「友達と一緒に(勝手に)ポージングをさせてスタンプを作り、それをその友達に共有してネタにできる」(30代男性)と回答した人もいました。
また、今回のアンケートでは、ZEPETOを利用するきっかけはInstagramと答えた人が68.4%と最も多い結果となりました。
上記の結果から、ZEPETOがシェアされやすい設計であるために、ZEPETOを利用して作られたアバターがInstagramユーザーの目に入る機会が増え、シミュラークル型の情報拡散が行われたと考えられます。シミュラークル型とは、情報源が不明なまま発信された情報が、共感を抱く体験としてトレンドになり、伝播していく情報の広まり方のことです。
ZEPETOはシェアされやすい設計にアバターのかわいさが相まって、ユーザーがユーザーを呼びながら話題を集めたために、人気が出たのではないでしょうか。
SNOW社が考えるZEPETO好評の理由と今後の展開
SNOW Japanマーケティングチームの担当者に、今後考えているZEPETOの展開などを伺いました。
リリースの背景と想定ターゲット
ZEPETOをリリースした背景について、マーケティングチームの担当者は「人間の根源的なニーズとして『自分をよく見せたい、盛りたい』という感情があります」とし、次のように答えました。
SNOW Japan担当者「ZEPETOのコンセプトは、『もう一人のかわいい自分、 もう一つの新しい世界』です。自分自身をベースにしたおしゃれでかわいい3Dアバターを「誰でも簡単に作れる」ように開発しました。ZEPETOを使えば、SNSやデジタルメディア、ゲームなど、さまざまなプラットフォームで、コンテンツとしての『私』を楽しむことができます」
SNOW社が提供している「SNOW」も「誰でも簡単に盛れる」機能が人気となり、世界中で使われるカメラアプリの一つになりました。ZEPETOも、パーツやアイテムを選ぶだけで、誰でも簡単におしゃれでかわいい3Dアバターが作れます。
そして、ZEPETOは初めから若年層にターゲットを絞り、アプリを開発していたわけではなく、幅広い層に利用してほしいと考えていたそうです。マーケティングチームの担当者は、「若年層は新たな文化を受け入れるスピードが早いので、ほかの年齢層に比べていち早く利用してもらっています」と話します。
また、想定外ではないものの、自分にそっくりなアバターを作成して楽しむ以外の利用方法も広がっていると言います。
SNOW Japan担当者「アバターを『私』ではなく『私の好きな人』として作るのも人気のようです。例えば、「アイドル」や「家族」「好きな人」など、自分ではないZEPETOを生成し、遊ぶケースも非常に多く見受けられます」
ZEPETOで2体目のアバターを作成するには、料金を支払う必要があります。自分以外のアバターを作成する人は、初めからその目的で利用するか、2体目を作っているのでしょう。
人気の理由と今後模索している展開
ここまでZEPETOが人気を集めるにあたり、何か宣伝で工夫された点があるのでは…と聞いてみたところ、「宣伝したり、広告を打ったりはしていません。公式Instagramは運用しています」(SNOW Japan担当者)とのこと。利用しているユーザーの声でもInstagramをきっかけに知った人が多かったことから、やはりInstagramが大きな役割を果たしたと考えられます。
さらに、マーケティングチームの担当者はZEPETOが流行した理由を次のように答えました。
SNOW Japan担当者「ZEPETOが流行した理由は『人間の二面性』にあると考えています。服装・髪型などのリアルではなかなか実現できないことや、なりたい理想の自分(もう一人の自分)をアバター上で叶えるという『代理欲求』をZEPETOが満たしてくれるためではないでしょうか」
今後、ZEPETOは3Dアバターソーシャルアプリとしてだけでなく、さらにサービスを拡大していく予定です。
SNOW Japan担当者「オリジナルのファッションアイテム、フォトブースなど、他社やブランドなどとのコラボレーションを準備しています。また、ほかのサービスとの連携も検討中です。今よりさらに、デジタルとリアルの世界を融合させたような機能も幅広く提供していきたいと考えています」
進化し続けるアバター作成技術
「なりたい自分を表現できるツール」として話題呼んだZEPETOは、若者を中心に人気を集めています。しかし、「3Dソーシャルアバターアプリ」と銘打つようにアプリ上でほかのユーザーとつながれる機能も搭載していることから、アバターを介したコミュニケーションがさらに広がる可能性もあります。
ファッションアイテムやフォトブースでのコラボレーション企画が進められていることから、今後は若年層をターゲットとした企業による参入も増えるかもしれません。
また、アバター作成技術は日々進化しており、リアルなアバターを簡単に作れるようになってきています。2016年には、アメリカ・カリフォルニア州を拠点とし、パーソナル3Dアバターを制作するObENが770万ドルの資金調達を行うなど、市場としても注目を集めています。ZEPETOも含め、今後の動きから目が離せません。