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2020.09.01

WACUL垣内勇威が語る、コンバージョン率改善の勝ちパターン【ビタミンゼミレポート#04】

スタートアップのマーケティングを支援するコミュニティ「ビタミンゼミ」(※)の朝ゼミレポート第4回。今回のテーマは、スタートアップのマーケティング担当者が気になっているテーマの一つ、コンバージョン率の改善についてです。講師は株式会社WACUL(ワカル)取締役CIO垣内勇威さんが務めました。

LPを運用しているスタートアップの中には、コンバージョン率の低迷に頭を抱えているものの、具体的な改善方法や適切なコンバージョン率がわからず、行き詰まっている企業もあるのではないでしょうか。LPには必勝パターンがあり、その型を利用すればコンバージョン率を改善できると垣内さんは言います。必勝パターンを用いてLPを改善できれば、浮いた分の工数をほかの施策に充てることができます。

今回は垣内さんの講義内容と、参加したスタートアップのLPに関するフィードバックの一部をご紹介します。

(取材・文:Marketing Native編集長・佐藤 綾美)

※ビタミンゼミ:ビタミン株式会社が運営。詳細は【ビタミンゼミレポート#01】をご参照ください。

目次

「車輪の再発明」が続くデジタルマーケティング業界

垣内さん(以降、垣内) デジタルマーケティング業界の悪しき慣習について、まずはお話しします。人材紹介業のLPのうち、次に挙げるAとB、どちらのほうがコンバージョン率は高いでしょうか。

※講義時の資料を参考に編集部で作成。

Aは会員登録しかできないので、「会員登録型」と私は呼んでいます。Bは求人を検索できるタイプのLPで、地域や職種を絞り込んでいくうちに、自分に適した求人を見つけて会員登録に至るようになっています。

答えの前に一つ申し上げておくと、主要な人材紹介業のLPのうち、Bの求人を検索できるタイプのほうが少し多いと思います。しかし、コンバージョン率が高いのはAです。15年くらい前から、何度やってもAのコンバージョン率のほうが高くなります。

それはなぜか。転職しようと考えているユーザーの多くはネガティブな感情を抱えています。査定で嫌なことがあったり、上司に怒られたりして、転職サイトに登録しようとするためです。キャリアを前向きに捉えて転職サイトを訪れる人はそれほど多くないと思います。そうしたネガティブな感情のときに求人を検索してみても、応募したいと思える情報にはなかなか出合えないのではないでしょうか。一方、会員登録型のLPは登録すればエージェントに求人情報を提供してもらえますから、ユーザーはネガティブな感情でも関係なく登録します。

昔からこの傾向は変わらないのに、なぜか会員登録型のLPは少ないのが実情です。営業力が高いゆえに掲載求人に自信があり、「露出させたい」という意欲が強くて求人検索型になっているケースが見受けられます。私がコンサルティングをして会員登録型に変えたにもかかわらず、しばらくして求人検索型に戻っていたこともありました。

こうした事象を私は「車輪の再発明」と言っています。デジタルマーケティング業界では、すでに確立された勝ちパターンに基づいていないケースが多く存在します。インターネットであらゆる知見が公開されている中で、いまだに求人検索型のサイトがあることが歯がゆいです。

私は「車輪の再発明」は永遠の初心者とバズワードの横行によって助長されると考えています。デジタルマーケティングの達人と呼べる人はあまりいません。なぜなら、頻繁な異動や転職によって初めてデジタルマーケティングの担当者になる人が多いためです。そして、そうした初心者ほど、新たなツールなどが流行ると飛びついて失敗しがちです。地道にPDCAを回して失敗から少しずつ立て直していくものの、再び異動や転職が発生して知見がクリアされる…こうした流れが車輪の再発明を助長していると思います。

※画像提供:株式会社WACUL

100点を取る必要はありません。WACULは誰でも80点を取れる世界を作りたいと考えています。「AIアナリスト」のようなプロダクトを提供したり、私が書籍を出版したりするのはそのためです。

デジタルマーケティングの勝ちパターンとその例

垣内 勝ちパターンとは、我々がコンサルティングをしていて得た知見を類型化したもので、全部で18個あります。ビジネスモデルが次の図の左右どちらに当てはまるかによって大きく方法が異なるため、最初の分岐が重要です。左側はWebで完結するビジネスで、右側がWebから営業につなぐビジネスです。

※画像提供:株式会社WACUL

では、具体的に勝ちパターンの例をご紹介しましょう。

法人向けソリューションの場合

LPで重視すべきポイント

Webから営業につなぐビジネスのうち、BtoBの中でも代表的なサイトのタイプである法人向けソリューションの話をします。人が介在して最終的な契約につなぐビジネスであれば、勝ちパターンはほぼ同じだと思ってください。

※画像提供:株式会社WACUL

勝ちパターンにはユーザーの基本的な購買プロセスと、それぞれの段階ですべきことがたくさんありますが、これをすべて取り上げると合宿で教えるレベルの内容になるため、本日は面白い部分だけピックアップしてお伝えします。法人向けソリューションで最も重要なのはコンバージョン設計です。何をゴールにするかが重要なポイントになります。

ここで再びクイズです。営業担当者にリードを渡す前に、Web上でしっかりとサービスを理解させるべきか否か。

  • A:サービスを理解させるよりもコンバージョン数を重視する
  • B:リード数が増えても営業が回らないので、コンバージョン数よりもサービスを理解させることを優先する

AとB、どちらでしょうか。マーケティング担当者はAで、営業担当者はBを主張する傾向にありますが…。

高松裕美(ビタミンゼミ) これは部署間でも問題になるレベルの「あるある」ですね。

高梨大輔(ビタミンゼミ) CV数を重視すると、営業側から「(リードの)質が悪い」といった話が来ることもあります。

垣内 そうですね、大体営業の人の意見が強い気がします。答えはAの「サービスを理解させるよりもコンバージョン数を重視する」です。なぜなら、Webでユーザーの説得はできないからです。「セルフサービスチャネル」と私はよく呼びますが、Webはユーザーが自ら好き勝手に使うもので、何の強制力もありません。対面の営業であれば、たとえつまらない話をしても、お客様が怒らない限り逃げられないでしょう。しかし、Web上でつまらない話をすれば、お客様は一瞬で逃げ出します。ウェビナーだったら、すぐに閉じられてしまう。ユーザーは興味のあるものしか見ないので、Web上では説得できない前提に立ったほうが良いのです。

そうした状況で「Webサイトの説明で理解してもらってから…」と言うのはおこがましい話ですし、説明過多になると本来そのサービスを求めていたはずの人も逃げてしまうおそれがあります。まずは、数を取る。薄いリードでも良いので、最速で営業につなぐのです。お客様に選ばせるのではなく、「企業が選ぶ」というのが一番のポイントで、リードの質を確かめる方法はいくらでもあります。インサイドセールスの担当者が電話で確度を確認しても良いですし、フォームを利用して確度を確かめるための情報を取得しても良いでしょう。

営業につなぐタイプのWebサイトですべきことはシンプルで、「フォーム直行」もしくは「ゴール直行」です。説明も回遊も不要で、すべてのページからゴール直行にすることが、コンバージョン率が確実に上がる方法です。入り口ページの最も目立つメインビジュアルにコンバージョンボタンを置くか、フォームを露出させましょう。

例えば料金に関するページなら、「料金表ダウンロード」や「お見積もり」をゴールにします。機能に関するページは、機能の説明を羅列するのではなく、「機能のことが3分でわかる資料をダウンロードできます」というボタンを設置しましょう。ユーザーが期待する内容をゴールに設定して一番上に置き、「もっと情報を見たい」「楽をしたい」「後で見たい」などのニーズを喚起するのがポイントです。このタイプのビジネスではゴールを決めること自体が重要で、加えてコンバージョンの障壁に関する論点も重視されます。

ファーストビューで完結しているように見えるLPのほうが、成果は出やすいでしょう。縦長のLPにするなとは言いませんが、縦長にしてもほとんど読まれないので、作る時間がもったいないです。また、流入経路別にコンバージョンポイントの障壁は調整したほうが良いと思います。例えば指名検索で流入した人には、少しハードルの高い「資料請求」や「無料トライアル」で良いですが、リターゲティング広告で流入している人なら一度訪問しているので、期間を区切った「キャンペーンの応募」などをコンバージョンにするのがおすすめです。

このようにLPの勝ちパターンはシンプルですから、あまり時間をかけず、クロージングのかけ方など後工程のPDCAを回したほうが良いと思います。

掘り起こしのポイント

LPでリードを大量に獲得していくと、失注や未対応などのリストがたまってきます。受注につなげるためには、そうしたリストをきちんと掘り起こしてアポを獲得していく活動が重要になりますが、その際に有効なメールは次のAとB、どちらでしょうか。

  • A:ユーザー別に丁寧なメールを月に1回送る
  • B:全員に同じメールを毎週送る

AとBのどちらのほうが、アポ数を獲得できると思いますか。

これも圧倒的に成果が違っていて、答えはB「全員に同じメールを毎週送る」です。大量のリストに配信するメールで重要なのは、頻度のみです。開封されてもほとんど読まれませんし、メールを開封した人を配信ごとに比較してみると、10%程度しか重複しないでしょう。メールマガジンは「そもそも見ない」という前提にあるため、大量に送らないと見てもらえないのが現状です。

また、メールでナーチャリングもできないと思っています。営業担当者が通ってもなかなかナーチャリングできないのに、メールを送るだけでそれを成し遂げるのは難しいでしょう。

メールを送る目的はリマインドとシグナル検知の2つです。リマインドは、メールによって、ユーザーにきっかけを与える効果です。人が何かを欲しいと思うタイミングは企業側で操作できるものではなく、外部要因で発生します。例えば車が壊れて新車が欲しくなったり、上司に指示されてMA(マーケティングオートメーション)の導入を考えたりしたとします。ちょうどそのタイミングでメールが来て、「そういえば」と思い出させるのがリマインドです。もう1つは、メールを開封してリンクをクリックした人を見つける、シグナル検知の機能です。リンクをクリックするということは、よほどそのサービスに興味があると考えられるので、その人には電話をかけます。

掘り起こしのメールは、工数をかけずに毎週送りましょう。htmlメールでも見た目はテキストでよく、タイトルに製品名など認知させたいワードを入れて、シグナル検知できるリンクを設定してください。その際の文言は、「このリンクをクリックしているから、電話を掛けてほしい」と営業担当者を説得できる内容にします。ただし、ファンが多いサイトの場合はメールの内容も重要になるため、リンクが設定されているだけのようなテキストメールは避けたほうが良いでしょう。

理性型モールの場合

パソコンや書籍などの理性型の商品を複数販売していて、サイトはECパッケージを導入しているような企業の勝ちパターンをご紹介します。我々はECサイトの商材を理性型と感性型に分けていて、理性型はスペックで選ぶ商品を指します。感性型は主観的に画像だけでも選べる商品のことで、アパレルやグルメなどが例として挙げられます。

商品一覧ページを作る際、理性型の商材は写真だけでは選べないので、情報量を減らしてバイアスをかけるのがコンバージョン率を上げるポイントです。ユーザーは理性的に選びたくても選び方がわからないので、選択肢の動線上にある商品数を極力減らし、他者による評価やランキング、口コミで感覚的に選べるようにします。ほかには、選び方に関する説明を記載して、きちんと解説する手法もあります。

反対に感性型の商材は、商品数を減らすとコンバージョン率が下がります。Instagramのようにタイル表示で写真をたくさん並べてユーザーに選ばせてあげたほうが、コンバージョン率は上がります。アパレルの商品を想像いただくとわかりやすいかと思いますが、同じようなランキングがあっても「みんなと被りそうで嫌だな」という気持ちが働くためです。

悩めるスタートアップへのアドバイス

講義の後は、事前に応募のあったスタートアップ4社のLPに垣内さんがフィードバックや質問への回答を行う「ライブクリニック」が開催されました。その一部をご紹介します。

※企業名や具体的なサイトの詳細は伏せてお届けします。

A社(toC企業)

A社はサブスクリプション形式でtoC向けに食品を販売している企業です。ブランドサイトを兼ねたLPを運用しており、ページの上部には診断ページにリンクするボタンが設置されています。

Q.ブランドサイトとLPは分けたほうが良いでしょうか。

垣内 ブランドサイトとLPを分ける必要はありません。SEOの観点からドメインを分けるのは一番避けたほうが良いです。基本的にはサービスサイトに寄せてしまって、コーポレート機能としてリンクを設置すれば十分だと思います。今後、上場を目指すタイミングでコーポレート側のメッセージを変える必要が出てきたら、ブランドサイトとLPを分けるのも一つの手です。

また、別の論点ですが、ブランドサイトと分けるのではなく、LPを複数作るという意味なら、やっておいたほうが良い場合があります。サイト流入時のユーザーの期待値によってコンバージョンの設定は変えたほうが良いためです。例えば指名検索で流入したユーザーには、サブスクリプションの申し込み動線を設ければ良いですが、潜在層の場合はコンバージョンポイントの障壁がより低いお試し用のLPを用意するといったイメージです。

Q.会員登録までの流れを「診断→診断結果表示→会員登録」としていますが、コンバージョン率をより向上させる改善ポイントはありますか。

垣内 例えば私なら、「診断する」をクリックして診断を開始するのではなく、最初の質問と選択肢をLPの冒頭に載せて、クリックすれば診断できるようにします。また、診断結果を表示して会員登録させる動線では離脱する可能性が高いため、私なら動線上で個人情報を獲得します。診断結果は表示せずにメールでお送りするようにして、名前やメールアドレス、住所などの情報を取得するようにしますね。

Q.コンバージョン率は何%くらいを目指せば良いでしょうか。

垣内 サブスクリプションの場合はLTVを見る必要があるので、コンバージョン率はそれほど重要な論点ではありません。無料でお試しできるならコンバージョン率は5%くらいまでいくでしょうし、有料の定期便なら1%を切ると思います。コンバージョン率にはあまりこだわらず、後ろから逆算して適切な数値を判断するのが良いでしょう。

B社(toB企業)

B社はオンラインで依頼できる企業向けの専門サービス(専門的な知識が必要で、自社で取り組むと工数を要する内容)を提供しています。

Q.LPの改善ポイントはありますか。

※イメージ(編集部作成)

垣内 「検索」をクリックした後、検索結果をすべて表示するのではなく、一部だけ表示したりモザイクをかけたりして、「もっと見る(会員登録無料)」というCTAを設置し、会員登録で見られるようにすると、よりコンバージョン率が伸びると思います。

あと、『お申込みは「アカウント登録」』というボタンは『お申込みは「アカウント登録(無料)」』と「(無料)」を付けるだけで、クリック率が変わるはずです。

Q.記事ページからのアカウント登録のコンバージョン率はまずまず良い状態ですが、さらに向上させるにはホワイトペーパーなどの施策を実施すべきでしょうか。

垣内 記事の文脈に合わせたコンバージョンを設けることが大切です。ユーザーが検索したキーワードに沿った内容のホワイトペーパーをダウンロードできるようにすれば、コンバージョン率も上がるでしょう。今すぐ登録してもらえそうなユーザーが訪れる記事には直コンバージョンを優先し、ニーズの低いユーザーしか獲得できない記事の場合は、コンバージョン障壁を下げてリードの数を稼げるようにしていくのが良いと思います。

 

【今回の講師Profile】
垣内 勇威(かきうち・ゆうい)@yuikakiuchi
株式会社WACUL取締役CIO
東京大学経済学部卒業後、株式会社ビービットに入社。2013年にWACULに入社し、改善提案から効果検証に至るまで、マーケティングのPDCAをサポートするSaaSツール「AIアナリスト」を立ち上げる。現在は、WACULテクノロジー&マーケティングラボ所長および取締役CIOとして、ノウハウの構築や新規プロダクトの創出などを担う。2020年9月に著書『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?』(日本実業出版社)を刊行予定。

トップ・プロフィール 画像提供:垣内勇威

【ビタミン株式会社】
高梨大輔(たかなし・だいすけ)@dtakanashi
高松裕美(たかまつ・ひろみ)@_romihee_
株式会社リジョブ(現株式会社じげんグループ)の創業役員の2人が2015年に創業し、エクイティファイナンス型のスタートアップを専門に、インハウスマーケティング支援やエンジェル投資活動を行う。100名を超える紹介制ビタミンゼミでは、信頼できる専門家から「一次情報」をスタートアップに届ける活動をしている。

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佐藤綾美

記事執筆者

佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。
Twitter:@sleepy_as
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