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スタートアップこそブランディングを急げ!原体験を深掘りし、ブレない軸を見つける方法とは?【ビタミンゼミレポート#02】

最終更新日:2022.03.15

スタートアップの経営者、あるいはこれから起業を考えている人の中に、ブランディングを後回しにしてしまっている人はいませんか?もしかすると、それが企業成長の足かせになるかもしれません。

スタートアップのマーケティングを支援するコミュニティ「ビタミンゼミ」(※)が月1回開催している朝ゼミのレポート第2回です。2月27日に東京・渋谷で行われた朝ゼミのテーマは「スタートアップこそやるべきブランディング」。CBO(最高ブランディング責任者)として企業のブランディングを支援するPERSONAL VENTURE CAPITAL . LLC代表のチカイケ秀夫さんが講師を務めました。

スタートアップがブランディングを行う上で重要となる、ブレない軸の見つけ方をご紹介します。

(取材・文:Marketing Native編集長 佐藤綾美)

※ビタミンゼミ:ビタミン株式会社が運営。詳細は【ビタミンゼミレポート#01】をご参照ください。

目次

    ブランディングとは「一貫性」

    体系的に学べる機会が少なく、予算や人に限りもあることから、スタートアップにおいてブランディングは後回しにされがちです。しかし、「ブランディングができていればマーケティング施策に良い効果を生むため、スタートアップこそ早めに着手すべき」とビタミンCEOの高梨大輔さんは言います。経営者が自社のブランディングを言語化できていないと、マーケターにうまく伝えられず、施策やクリエイティブなどにズレが生じるおそれがあるからです。

    講師のチカイケさんは「自分がスタートアップのブランディングを支援しているのは、ヒトやモノ、お金に加えて時間も限られていて、自身が本当に喜ばせたいユーザーを笑顔にできないまま消えていく企業が多いからです」と述べた上で、まずブランディングの重要性を説明しました。

    ▲講師のチカイケ秀夫さん。
    画像提供:ビタミン

    「正直なところ、手段は刻々と変わりますから、いろいろな手が打てると思っています。私がお手伝いをするときは、その人が『なぜ起業したのか』『誰を笑顔にしたいのか』という根幹の部分を突き詰め、ブラッシュアップしていきます。

    例えば競合他社と商品やサービスが似ているとき、機能や価格で勝負するのは限界がありますが、思想や源泉の部分をきちんと伝えることで、差別化を図ることが可能です。

    スタートアップは新しいビジネスを立ち上げて社会に貢献したいという想いや原体験を基に起業するだけでなく、成長市場で勝負することが大切です。そのどちらかだけに偏っても良くないと思います」(チカイケさん)

    ▲ブランディングを決める際に使用するフレームワーク。それぞれに当てはまる項目や重要性(「変わっていい」など)が記載されている。
    画像提供:チカイケ秀夫氏

    上図のフレームワークを基に、チカイケさんはまず「何をやっているのか(手段)」(SERVICE IDENTITYとMIND IDENTITYが交わるところ)を聞き、次に「なぜ会社を立ち上げたのか(思想)」(CEO IDENTITYとMIND IDENTITYが交わるところ)を質問するそうです。たいていの人は、自社が対象としているユーザーや課題、提供しているソリューションといった「SERVICE IDENTITY」の行に関しては答えられるものの、それ以外の部分はうまく言葉にできないと言います。

    「この図の縦・横・斜めのラインが一貫している状態が、いいブランディングの状態だと我々は定義しています。スタートアップの多くはブランディングがなく、特に『PUBLIC RELATIONS』の列が弱い傾向にあります。ユーザーや企業、社会、それぞれの階層に合わせたコミュニケーションが設計できていないんです。例えば、社会に対する自社の存在意義をユーザーに訴えたとしても、うまく伝わりません。そのため、我々がヒアリングを行って全体を整備していきます。次の図のような流れで、ホワイトボードを使いながら1時間~1時間30分くらいヒアリングするんです」(チカイケさん)

    ▲ヒアリングする順番と内容のイメージ。STEP1「原体験の全体のヒアリング」に始まり、STEP2「思想の言語化」、STEP3「関係者の定義」、STEP4「コミュニケーション(認知)、STEP5「ブランド(体験)」、STEP6「イメージの統合」と進めていく。
    画像提供:チカイケ秀夫氏

    ▲現状と目標を把握する上で使用するシート。
    画像提供:チカイケ秀夫氏

    原体験を深掘りし、ブレない軸を探し出す

    次に、朝ゼミの参加者1名とのライブセッションと、原体験を深掘りするペアワークが行われました。

    ライブセッション

    参加者の中から希望者1名を募り、質問していく形式で、チカイケさんが普段行っているヒアリングが披露されました。ヒアリングを受けたのは、オンラインでキャリア相談ができるサービス「そうだんドットミー」などを運営しているポジウィル株式会社の金井芽衣さんです。

    ▲ライブセッションの様子。
    画像提供:ビタミン

    「会社では今どんなことをやっていますか?」「この会社を立ち上げた想いは?」「ポジウィルで『こういう体験をしてほしいな』と考えていることは?」などの質問をチカイケさんが投げかけ、金井さんの回答をホワイトボードに落とし込んでいきました。

    ▲ホワイトボードの内容。今回は15分ほどで行われた。
    画像提供:チカイケ秀夫氏

    金井さんからヒアリングした内容を受けて、チカイケさんは次のようにアドバイスをしました。

    「提供しているサービスを『オンラインで相談できるサービス』と表現するのはもったいないです。すべての『オンラインで相談できるサービス』が競合になってしまいます。『人生が変わる体験』というキーワードがあったので、ポジウィルのサービスを通して『人生が変わる体験』ができることを伝えると良いかもしれません」

    原体験を深掘りするペアワーク

    続いて行われたのは、2人1組でペアになり、お互いの原体験を深掘りするワークです。

    原体験を深掘りする意義

    原体験とは、その人の「一番の原点」であり、ルーツを指します。

    「原体験は嘘をつきません。起業家は常に『なぜ』を問われますが、仮に『かっこいいから』などと浅い理由だとしたら、周りの人やユーザーは離れていってしまうでしょう。だから、自分の命をかけてでも、一生を賭してやりたいことがあるほうがいいんです」(チカイケさん)

    ▲原体験とミッションのイメージ。
    画像提供:チカイケ秀夫氏

    原体験に基づいて自身のブレない軸を見つけられると、自分の選択に自信を持てるようになったり、自分が取った行動の理由を説明できるようになったりします。そのため、スタートアップのブランディングには、原体験に基づくブレない軸を探し出すことが重要だとチカイケさんは言います。

    画像提供:チカイケ秀夫氏

    原体験を深掘りしていく方法

    今回の朝ゼミで行われたペアワークのやり方をご紹介します。

    【進め方】
    1.紙とペンを用意する。
    2.紙の右側に「今やっているサービス名」「会社名」「時間を忘れてできること」「好きなこと」「苦手なこと」「将来やりたいこと」を書く(3~5分程度)。
    3.ペアの人と紙を交換し、書いてあることについて質問していく(15分程度)。
    4.15分経ったら役割を交代する。

    【ヒアリングするときのポイント】
    ・傾聴する。
    ・とにかくメモを取る。
    ・自分が興味のあることを聞く。
    ・相手が考えているときは待つ。
    ・自分の主観で答えない。
    ・トラウマになっているようなつらいことは無理に聞かない。
    ・本人の同意なく原体験を人に話さない。

    好きなことや嫌いなことなど、紙に書かれている内容は本人が普段から意識していることなので、「なぜですか?」「どんな体験があったのですか?」と質問を繰り返し、相手の無意識の部分を深掘りしていきます。

    ▲原体験を深掘りするワークのイメージ。
    画像提供:チカイケ秀夫氏

    今回の朝ゼミで実践したのは、原体験を深掘りするところまででしたが、通常はこの後に振り返りを行います。原体験を掘り下げたときの内容を見ながら、過去の自分に対してアドバイスをしてみましょう。原体験が現在の自分の価値観につながっていることを確認できるはずです。

    ▲原体験振り返りワークの例。
    画像提供:チカイケ秀夫氏

    思想に共感してくれる人と仕事を

    チカイケさんと朝ゼミの参加者による質疑応答のうち、いくつかをピックアップしてご紹介します。

    Q.BRAND IDENTITYとCORPORATE IDENTITYはどう違うのでしょうか。

    チカイケさん(以下、チカイケ) BRAND IDENTITYが事業レベルで、CORPORATE IDENTITYは経営レベルです。

    Q.会社のメンバーには、どのタイミングから思想を共有したほうが良いでしょうか。

    チカイケ 採用時からです。思想についてはTwitterなどでも発信し、入社前から知っておいてもらいましょう。条件にマッチして入社した人は、条件が変わると辞めてしまう可能性があります。商品やサービスを体験したことがあり、思想に共感してくれる人に入社してもらったほうがいいでしょう。その人と会社の実現したいことが一致している状態が最もいいと思います。

    講義の終わりに、チカイケさんは「自分は起業も手段の一つだと思っています。急成長市場で勝負をする前に、決してブレない軸をぜひ作ってください」とあらためて語りました。ブレない軸が決まっていれば、社内外で施策を打ち出す際もその軸に沿って判断でき、例えば経営者とマーケターの間のディスコミュニケーションも軽減されるはずです。ブランディングに本腰を入れられていない方は、今回の朝ゼミで行われたワークのように、原体験の深掘りから始めてみると良いかもしれません。

    画像提供:チカイケ秀夫氏

    【今回の講師Profile】
    チカイケ秀夫(ちかいけ・ひでお)
    PERSONAL VENTURE CAPITAL . LLC代表
    GMOグループ上場企業にて、企業理念策定や社内新党に参画。2008年よりGMOグループにて、ベンチャー企業の立ち上げと全グループ5,000人に関わるプロジェクトのリーダーとして、グループ内ブランディングを経験。その後、ブランディングを通じてスタートアップを支援するベンチャー・キャピタル代表として独立。CBO(最高ブランディング責任者)として、計100社近くをブランディングで支援している。

    【ビタミン株式会社】
    高梨大輔(たかなし・だいすけ)@dtakanashi
    高松裕美(たかまつ・ひろみ)@_romihee_

    株式会社リジョブ(現株式会社じげんグループ)の創業役員の2人が2015年に創業し、エクイティファイナンス型のスタートアップを専門に、インハウスマーケティング支援やエンジェル投資活動を行う。100名を超える紹介制ビタミンゼミでは、信頼できる専門家から「一次情報」をスタートアップに届ける活動をしている。

     

    佐藤綾美

    記事執筆者

    佐藤綾美

    株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。
    Twitter:@sleepy_as
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