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2021.06.10

フィンランド発のフードデリバリー・ウォルト 日本のニーズを満たせるか

コロナ禍で広がりを見せる、出前やフードデリバリーのサービス。さまざまなサービスが生まれるなかで、2020年3月に、フィンランド発のフードデリバリーサービス・Wolt(ウォルト)が日本に上陸しました。広島市からスタートし、10月には東京に進出。「フィンランド発」という特徴を生かし、既存のサービスとどのように差別化していくのでしょうか。ウォルト日本第一号社員でカントリーマーケティングマネージャーの新宅暁さんにお話を伺いました。

(取材・文 Marketing Native記者 梶塚美帆)

目次

ウォルトの強みは「サービスの質」

フィンランドのデリバリーサービス「Wolt(以下、ウォルト)」が2020年3月に日本でのサービスを開始しました。最初に広島市へ上陸し、札幌、仙台、呉、東京と、エリアを広げてきました。

ウォルトの強みは、「サービスの質」であると新宅さんは言います。サービスの質が高い理由は、ユーザー・飲食店・配達パートナーの間に、ウォルトが入ってサポートしているからです。

▲三者の間に入り、丁寧にサポートしている(画像提供:ウォルト)

「『冷めていた』『注文したものと違うものが届いた』『オーダーを変えたいけど、どこに連絡すればいいかわからない』といった場合、従来のサービスでは『飲食店に直接問い合わせてください』と言われることが多いと思います。

ウォルトのサービスは、サポートチームが三者の間に入っているので、ユーザーが飲食店や配達パートナーと直接やり取りする必要がありません。ユーザーから入ったクレームを、サポートチームが噛み砕いて、飲食店にお伝えします。

そして、ケースバイケースですが、飲食店ではなくウォルトからユーザーに返金することもあります。配達スタッフが遅延してしまったというケースでは、次回から配達料金が安くなるクーポンをお渡しするなどの対応を取っています」(新宅さん)

ユーザー、飲食店、配達パートナーの関係がよくなるように、丁寧なフィードバックも行っているそうです。

「例えば、注文した食べ物がこぼれていた場合。飲食店のラップの巻き方がよくないか、配達パートナーの持ち方がよくない可能性が考えられます。これを両者に『次回から改善していただけますか』とフィードバックをして、サービスの質を上げていきます」(新宅さん)

サポートはウォルトの社員が直接行っているそうです。アプリ内で問い合わせて、営業時間内なら数秒で返事が来るシステムになっています。

ウォルトを利用したユーザーは「神対応」「(対応が)爆速」などの感想をSNSに書き込んでいます。また、配達パートナーからは「サポートチームがついてくれるので、安心して配達の仕事ができる」、飲食店からは「サポートが厚くて親切だった」といったフィードバックが寄せられているのだとか。

それから、サービスの質を高めるために、配達パートナーの選定にも力を入れています。デリバリーサービスでは、配達パートナーの中に交通ルールやマナーを守らない人がいることが課題となっています。その点でウォルトは、厳しいテストを行っているそうです。

「交通ルールを含む説明会にご参加いただき、適正テストを受けてもらっています。このテストが高得点でなければ配達パートナーにはなれません。さらに(現時点では)一度落ちると二度と配達パートナーにはなれないシステムになっています」(新宅さん)

実際にユーザーからは「ウォルトの配達パートナーはマナーがいい」という声が上がっています。これらのサポート体制や品質体制によって、ウォルトでは質の高いサービスが生まれているのでしょう。

▲ウォルトの配達パートナー(画像提供:ウォルト)

ウォルトの強みは、フィンランドだからこそ生まれた

ウォルトは現在、23カ国でサービスを展開しています。新宅さんによると、「数あるフードデリバリーアプリの中で、Google PlayとAppストアの評価がそれぞれ4.8、4.9と世界一(2021年5月時点)」だそう。もちろん、フィンランドでの知名度も高いといいます。では、ウォルトはなぜ、世界でも成功することができたのでしょうか。

「フィンランドの首都であり最大の都市であるヘルシンキは、デリバリーが向いていない地域なんです。理由は、雨や雪が多い気候であり、さらに人口密度が低いため、Amazonもフィンランドには進出していません。

しかし、デリバリーが向いていない地域で、ウォルトのサービスを成功させることができました。なぜなら、まず、テクノロジーを使って配達のルート計算を緻密に行っているから。もうひとつは、顧客体験の向上を目指して突き詰めていったから。

サービスの質の高さは、フィンランドだからこそ必須だったと言えます」(新宅さん)

このサービスの質の高さが、日本のニーズを満たすと判断し、日本に上陸したのでしょうか。

「日本でデリバリーサービスが広がっていく中で、サポートや安全面の課題は、2年ほど前から言われてきていました。本来日本人は、世界のなかでも質の高いサービスを求める傾向にあります。にもかかわらず、『サポートや安全面の課題が解決されないままでいいのか?』という疑問が個人的にはありました。

そして、会社としても日本の調査を1年ほど行っていて、そうした課題を解決するソリューションが求められているということがわかりました。フィンランド人がサービスのベースを作って、現在は約200人の日本人が在籍し、より良いサービスを展開しています」(新宅さん)

これまでの日本のデリバリーサービスでは、サポートの質の低さが指摘されるケースも時々見受けられました。コロナ禍でデリバリーサービスが広がっていくなかで、「より高いスタンダードをウォルトが作っていきたい」と新宅さんは意気込みます。

新宅さんによると、日本のデリバリー市場の大きさは、アメリカ、中国に次いで世界3位(※)。しかしこれは、電話で出前を取るサービスを含めた場合です。デリバリー市場のデジタル化においては、世界と比べて遅れている方だそうです。

「そういった意味で、成熟していない市場であり、ポテンシャルがあるとも言えます。日本のデリバリーはこれから成長していくはずなので、質の高いサービスを提供することで、生き残っていけると考えています」(新宅さん)

最終目的は「地域のものが何でも30分程度で届く」こと

ウォルトの最終目的は、デリバリーサービスとしてのシェア拡大ではありません。「あらゆるものが30分で届くプラットフォーム」になることを目指していると新宅さんは言います。

「類似のデリバリーサービスを競合とは考えていません。それよりも我々は、新しいマーケットを捉えていくことを意識しています。同じパイを奪い合うのではなく、新しいエリアに進出し、これまでになかったものを注文できるようにしていきます。そういった新しい価値を作っていくことが、日本のマーケットでサービス展開をしていく目的です」(新宅さん)

Amazonなどの物流サービスとは競合にならないのでしょうか。

「最終的には、地域のあらゆるビジネスがウォルトと繋がって、30分程度で何でも届くようになることを目指しています。Amazonは大きな倉庫に一度集めて、倉庫から届けることが多いでしょう。我々はそうではなく、各地域のお店と繋がって、そこから直接配達するという形を作っていきます」(新宅さん)

フィンランドのウォルトのサイトを見てみると、食料品や生鮮食品、花、家具、おもちゃ、服など、実に多彩な商品が揃っています。日本ではすでに、「ツルハドラッグ」「ナチュラルローソン」「イオン」「そごう」などと連携を始めているそうです。

▲バースデー用の風船まで売っている。急遽デコレーションが足りなくなったときに便利そうだ(画像出典:ウォルト https://wolt.com/ja/fin/helsinki/discovery/juhlat-helsinki

これまで、ネットショッピングは最短でも数時間後に届くことが一般的で、すぐに必要なものはお店に直接買いに行く必要がありました。しかしウォルトは、「今ほしいものがすぐに届く」ことを目指していました。フードデリバリーからの事業拡大も期待できそうです。

※出典:UBS Bank Online Food Delivery Report 2018

梶塚美帆

記事執筆者

梶塚美帆

かじつか・みほ
編集者・ライター。児童書専門の編集プロダクションや、昭文社「ことりっぷWEB」編集部、日経BP「日経ウーマンオンライン」編集部に所属。2016年に株式会社ミアキスを立ち上げ、児童書、実用書、web記事などの編集や執筆を行う。
Twitter:@ kajipon__
ミアキス Webサイト:https://miacis.me/
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