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2020.08.27

コロナ禍で飲食店は進化する!市場の変化に対応し、外食の未来を創る注目の取り組みとは?

緊急事態宣言解除以降も、新型コロナウイルスの感染者数が再拡大しており、第二波といえる状態が全国各地で起きています。その影響で多くの飲食店が苦難を強いられている状況です。「ピークを越えたか?」という報道も一部あるものの、感染拡大は大都市圏だけでなく、全国へ拡大し、県によっては緊急事態宣言も出される事態となっています。

一方、こうした状況の中で、新たな取り組みによって売り上げ減少を最小限に食い止めている店も少なからず存在します。

未曽有の市場環境の中で、飲食店はどう戦っていけば良いのでしょうか。リクルートライフスタイルの調査機関「ホットペッパーグルメ外食総研」エヴァンジェリストで、長年飲食業界を取材している外食マーケティングコンサルタントの竹田クニさんにお話を伺いました。

(取材・文:Marketing Native編集部・岩崎 多)

目次

市場の回復には短くて1年、長くて2年

緊急事態宣言が解除され、外出の自粛期間が終わった後も消費者の外食行動は減少しています。

リクルートライフスタイルのホットペッパーグルメ外食総研の調べによると、70%台で推移していた外食実施率(1カ月以内に外食した人の割合)は、4月に28.8%まで大きく落ち込みましたが、その後6月には53.8%まで回復しました。この外食実施率における「外食」とは、夕方以降にお店で食事をした場合を対象にしており、コンビニやスーパーのイートインスペースも含みます。

▲表は株式会社リクルートライフスタイル ホットペッパーグルメ外食総研「外食市場調査(2020年6月度)」より。https://www.hotpepper.jp/ggs/research/article/marketing/202006

コロナ前と比べて、現状の外食産業の売り上げはどの程度まで戻ったのでしょうか。外食マーケティングコンサルタントの竹田クニさんはこう語ります。

「私は多くの飲食店経営者と交流がありますが、皆さんの話を聞いていると、6月以降、7月、8月の売り上げは概ね5~6割といった店が多いと思います。特に厳しいのは居酒屋やバルに代表される飲酒主体業態で、7~8月の売り上げは対前年比で2~3割といったお店も少なくありません。コロナ前の売り上げに戻る時期の予測は、個人的見解を述べると、楽観的に捉えて1年、厳しく見積もって2年になるだろうと考えています。話を聞く限り、多くの飲食店経営者もその意見で一致しています」

ただし、業態や業種、立地条件によっても差があります。竹田さんによると、落ち幅が大きい飲酒主体業態の中でも、オフィス街に近い立地でアフター5の飲み会や歓送迎会などで利用する規模の大きな居酒屋が特にコロナの影響を強く受けているそうです。

ホットペッパーグルメ外食総研の調べによれば、居酒屋の外食市場規模は2020年6月時点で1873億円ですが、これは前年同月の市場規模の約半分となっています(首都圏・関西圏・東海圏の3圏域を合計したもの)。緊急事態宣言解除以降も、夜の外食に対する自粛要請が続いていることから、飲酒主体業態は引き続き厳しい状況が続いているものと見られます。

「居酒屋のほかにも、単価の高い料亭やレストランなど、接待需要が多かった業態も売り上げ減少幅は大きくなっている傾向があります。また企業によっては『会食禁止令』的な要請が従業員に対してなされている企業もあり、こうした会社行事での利用をターゲットにした飲食店には厳しい状況が続いています」(竹田さん)

前年対比の売り上げ減少幅が小さい業態は?

(写真はイメージ)

こうした中でも比較的、前年対比の売り上げ減少幅が小さい業種があります。竹田さんによれば、「ファミリーレストラン、回転寿司等」「焼肉、ステーキ、ハンバーグ等の専業店」「ファストフード(ハンバーガー、サンドイッチ等)」「牛丼、カレー等、一品物の専売業態」などは、前年比の下落幅が比較的小さい傾向にあるそうです。

「特に焼肉、ステーキなどの肉業態は、消費者が家で『自分で焼く』ことのハードルが高く、手軽に焼きたてを美味しく、安全に食べられるという点も消費者の行動を促していると言えそうです」(竹田さん)

また、ファミリーレストラン、回転寿司、ファストフード、牛丼、カレーの専業店などにみられる「非接触型店舗」も注目です。

「こうした業態にはチェーン店も多く、券売機やタブレットオーダーなど人との接触が少なく食事ができる設備を持っていることが、この時期の消費者の心理的なハードルを下げていると考えられます」(竹田さん)

例えば、大手回転寿司チェーン「くら寿司」浅草店では、受付、注文、配膳、会計など来店から退店までほぼ対人非接触で食事ができるシステムを導入しています。また、居酒屋チェーン・ワタミの新業態「かみむら牧場」は、回転寿司と同じく料理をレーンで運ぶ方式を導入。定食チェーンの「やよい軒」はご飯のおかわりを自動で盛り付けるロボットの全店導入を開始、などといった取り組みが増えています。

「こうしたテクノロジーを活用した取り組みは、もともとは人材不足、生産性向上に向けた取り組みとして近年導入が増えていましたが、コロナ禍の中、ますます加速していくものと考えられます」(竹田さん)

いち早く「おうち需要」に対応したファストフード

緊急事態宣言中の4~5月は、多くの飲食店の前年同月比が下がる中、日本マクドナルドと、ケンタッキーフライドチキンを販売する日本KFCホールディングス、モスバーガーを運営するモスフードサービスが売り上げを伸ばして話題となりました。この3社に共通するのは、客単価が上がったことによって売り上げが向上している点です。この客単価アップは、いずれもコロナ自粛の中で生じる家庭内での食事シーンやニーズに対応した商品の投入などが効果を発揮したものと見られます。この3社が好調な売り上げを記録した理由について、竹田さんは次のように分析します。

「KFCの場合は自粛期間中の『おうち』でのニーズをふまえて、子供と一緒の食事に向けた2~3名用のセット商品を充実させたこと、マクドナルドは玩具付きのセットなどを充実させたことが要因として考えられます。おうち需要という“シーン”にむけた、消費者視点での商品投入をいち早く行ったことが奏功したと言えるでしょう」

また、3社の業績が上がったもう1つの理由は、デリバリーサイトの特性によるものだと竹田さんは指摘します。

「デリバリーサイトの多くは注文機能に特化しているため、お店の情報はシンプルでやや少なくなっています。評判や店のこだわりなど細かいところまではわからないため、店の違いを判断しにくくなるのです。そんな時に人間は初めてのお店よりも、知っている味、慣れ親しんだ味を選ぶという傾向が見られます」

テイクアウトやデリバリー活用のポイント

(写真はイメージ)

テイクアウトやデリバリー、通信販売など、お店が商品提供の手段を増やすことは、売り上げの増加につながります。竹田さんはこれらの商品提供の手段を「提供態」と呼んでおり、以下の3要素を考慮して導入すべきと述べます。

① 自分の店の商圏および商圏特性・・・オフィス街隣接、繁華街、住宅地隣接etc.
② お店のターゲット・・・性年代、職業、収入etc.
③ シーン(飲食機会)の想定・・・サラリーマンの仕事帰り、ファミリーの普段の食事、ひとりめし、友人同士、デートetc.

「これら3要素を踏まえて、自分のお店の特性に合った提供態を併用して売り上げを最大化していくことが重要です」(竹田さん)

また、テイクアウトやデリバリーを始めても商品がなかなか売れないという場合、3要素に提供する商品が合っていないケースが多いそうです。

「デリバリーを始めると商圏が広がりターゲットも増えるため、これまでのリアル店舗での商品だけでなく、商圏のターゲットの飲食シーンに合わせた商品を提供することが重要になります。例えば、『炭水化物を控えたい』『夜の飲みのつまみにしたい』『多様な種類の料理を少しずつ食べたい』といったニーズに対しては、『弁当』ではなく、惣菜メニューやポーションの小さなサイドメニューなどが適しています。デリバリーやテイクアウトも、プロダクトアウトではなく、消費者のニーズ・ウォンツから商品設計をしていくべきです」(竹田さん)

アフターコロナで予想される外食産業の変化

今後、外食産業の市場はどのように変化するのでしょうか。竹田さんは、「外食」「中食」「内食」の3つのボーダーレス化が加速すると予測しています。外食はお店で店員が調理した食事を食べること、中食は惣菜や弁当などテイクアウトメニューを売ること、内食は購入者が家で調理する前提の食材の小売を指しています。

▲画像作成:Marketing Native編集部

「この3つの境界線はもともとボーダーレス化が進んでいたのですが、さらに加速すると思います。コロナをきっかけに、これまでテイクアウトやデリバリーを行わなかった飲食店もデリバリーサービスを始め、さらに一部の飲食店では、ミールキット(家での調理用にレシピとともに必要な食材をパッケージしたもの)の販売や、通販(ECなど)を開始しており、外食が内食の領域にもリーチしています」(竹田さん)

集客を最大化するための取り組み

飲食店がコロナ禍でも集客を増やすためには、どのような点に留意すべきなのでしょうか。

「基本は、お店に足を運んでもらえるその店ならではの『価値』を磨くことが重要で、これはコロナ前から変わらない本質だと言えます」(竹田さん)

竹田さんによれば、ポイントは以下の3つにまとめられるそうです。

① お店のターゲット客に支持されている「看板商品」を磨く
② テイクアウト、デリバリー、通販などの「提供態」を商圏に合わせて積極的に取り入れる
③ SNS、グルメサイト、デリバリーサイト、通販などネット上の露出を最大化する

以下、ポイント別に説明していきます。

 

① お店のターゲット客に支持されている「看板商品」を磨く

竹田さんによれば、「看板商品があり、ファンがついてくれている店は戻りが早い」そうです。他店では味わえない商品を持ち、有事のさ中であっても「あれが食べたい!」と思ってもらえる商品を持つ店は強いと言えます。

例えば、都心部を中心にカジュアルイタリアン「トスカーナ」、イタリアン居酒屋の「東京MEAT酒場」などを展開するイタリアンイノベーションクッチーナ。これらの店には「日本一おいしいミートソース」という看板商品があり、固定ファンが多くついています。そのため、自粛モードの市場の中でも、6月には対前年同月比8割前後まで戻してきているそうです(テイクアウト、デリバリー、通販含む)。

▲「東京MEAT酒場」公式サイトより https://tokyomeat-sakaba.com/

② テイクアウト、デリバリー、通販などの「提供態」を商圏に合わせて積極的に取り入れる

「このコロナ禍で消費者に定着した、オンライン消費(デリバリーやテイクアウト、通販など)のスタイルに合わせて、『提供態』をうまく組み合わせていくことが重要です」(竹田さん)

新たに通販に取り組んだ東京・御徒町にある「下町バル ながおか屋」はラムチョップで有名なお店ですが、コロナによる営業自粛を機に食肉の製造販売の免許を取得し、生肉を販売できるようになり反響を呼びました。

以前から「バーベキューでラムチョップを焼きたい」「家でも食べたい」という要望はあったそうです。コロナがきっかけとなってお店の提供態を拡げた一例と言えます。

▲「下町バル ながおか屋」公式サイトより https://nagaoka-ya.com/

また、提供態を組み合わせるメリットはさらにあります。テイクアウトやデリバリー、通販を導入することで、もともとのお店のファンが購入してくれるだけでなく、「来店以外での利用を機に、気に入ってくれたお客様が『お店にも行きたい!』と来店してくれるといった消費者の還流・循環も起こる」(竹田さん)と考えられるためです。

③ SNS、グルメサイト、デリバリーサイト、通販etc.ネット上の露出を最大化する

オンライン消費が定着する中、SNSやグルメサイト、デリバリーサイト、通販など、ネット上での露出を最大化することはますます重要となるでしょう。従来のSEO、MEOを含め、ネット上での露出は、店舗でいえば「看板を出す行為」に匹敵すると言えます。

「ネット上の露出強化はコロナ前から重要でしたが、オンライン消費が普及してゆく中、より重要かつ『立体的』に取り組むことが必要になってきています。例えば、テイクアウトやデリバリーにはショップカードを必ず入れ、QRコードからのサイトやアプリへの誘導や、次回来店時のサービスを告知したり、また通販商品があるのであれば、チラシを同封したりすることも有効でしょう」(竹田さん)

市場は「戻ることはなく、進化する」

厳しい状況が続いている外食産業や飲食店は「未曾有の危機」に瀕しています。こうした中では、「まずは止血(キャッシュが出て行くのを抑えること)、輸血(資金を導入すること)、命(経営を存続すること)が最優先課題」(竹田さん)です。

ただ、この厳しい状況下で工夫をし続け、新たな取り組みを行うことこそが、未来につながると竹田さんは指摘します。

「この苦難は、外食産業が20世紀の成功体験から脱却し、イノベーションを起こして、新たな進化と発展につながると信じています。コロナ禍での取り組みは、その現象がそのまま延伸して未来になるわけではなく、背景で進む『消費者の変化』や、『飲食店が苦難の中で獲得する知見』の中に、次代の進化があると考えます」

はたして、これからの外食産業の市場は、コロナ以前の状態に戻ることはあるのでしょうか。竹田さんによれば、「市場は完全に元に戻るということはなく、変化・進化していく」そうです。

「未曽有の危機から生まれた知恵や勇気が、技術や産業のあり方、人々の意識を変え、それが後の時代を作るイノベーションに繋がっていく。そういうことは歴史上何度も人類が体験してきたことです。今の外食産業や飲食店の頑張りは、必ず未来の進化に繋がると思います」(竹田さん)

コロナ禍という危機をどう乗り越えていくのか、外食産業の進化が期待されています。

Profile
竹田クニ(たけだ・くに)

1963年神奈川県横浜市生まれ。日本フードサービス学会会員、一般社団法人日本フードビジネスコンサルタント協会専務理事、株式会社リクルートライフスタイル ホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリストを務める。株式会社リクルートに新卒入社後、人材採用・教育事業、旅行情報事業、飲食情報事業など計29年間在籍後、2016年に独立して株式会社ケイノーツを設立。外食産業の進化発展に貢献することをミッションとして、マーケティングを中心にコンサルティング、セミナー・勉強会、食のBtoBマッチングなどを行っている。著書に増補改訂版『外食マーケティングの極意』がある。

岩崎多

記事執筆者

岩崎多

いわさき・まさる 出版社2社でビジネス誌やモノ・グッズ誌の編集、週刊誌の編集記者を経験し、2019年1月CINCにジョイン。編集長として文房具ムックシリーズを立ち上げ、累計30万部以上を記録。 Twitter:@iwasaki_mn
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