[最終更新日]

2019/03/05

 

KFCのキーパーソン・小山典孝氏を直撃! 仲良くなんて無理! マーケティングと営業のシナジーを最大化させる仕組みとは?

マネジメントに悩んでいる人はいませんか?例えばスタートアップなら、会社の規模が大きくなり、いろいろな部署ができて、腕に覚えのある実力者が中途入社したり育ってきたりすると、セクショナリズムが生じたりして、1つの指示を通すことさえままならなくなりがちです。

そんなときは、どのように解決へ導くのが良いのでしょうか?

「The Marketing Native」第2回は、営業とマーケティングという、何かとぶつかることが多い部署の間に立って指揮を執る、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社(以下KFC)営業戦略統括部・部長の小山典孝さんをインタビュー。いわゆる「不機嫌な職場」にしないための方法や、どこの会社にもいる「うるさ型」タイプと向き合いながら物事を前に進めるポイントについて聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、人物撮影:稲垣純也)

 

    

目次

バイト出身、叩き上げのマーケター

――元マクドナルドCMOの足立光さんにインタビューした記事が、おかげさまで結構好評でして。

拝見しました。

――それで、記事のどこが良かったのかと考えたんですけど、足立さんの人となりですとか考え方をストレートに表現できたところが読者に届いたのかな、と。ですので、今回も小山さんの人間的な部分や本音が読者に伝わればいいな、と思っております。

なるほど。

――早速なんですが、小山さんはKFCのマーケティング部長を経て、現在は営業戦略統括部の部長を務める執行役員とのことですけど、もともとは高校時代のアルバイトからKFC一筋で上り詰めてきた典型的な「叩き上げ」ですよね。ハイマーケターのキャリアとしては異色ではないですか?

よく言われます。確かにマーケターの中には、頻繁に会社を変わっている方も多いですから、マーケターの集まりに行くと、「小山さんは以前、どこでマーケティングをやられてたんですか?」と聞かれることがあります。それで「いや、お店からずっとですよ」と答えると、「え、そんな人いるんだ」と驚かれますね。「辞めないんですか?」と聞かれると、「自分はそんなに異質かな」と思うこともありますが、決してネガティブには捉えていません。むしろ、そんなふうに思っていただける存在になれたのだと考え、褒め言葉だと受け止めています。

――高校生のアルバイト時代に見えていたKFCの風景と、営業戦略統括部部長として見ているKFC。何が変わり、逆に変わらないものは何ですか?

変わらないのは、「現場が全て」ということです。お店は全国に1100店舗以上ありますが、お客様から見えているお店の姿が、まさにKFCのブランドそのものであり、お店で起きている課題がブランドの課題です。チキンを手作りすることへのこだわりも同様です。こうした点はいくらテクノロジーが進化しても、変わりませんし、大きく変えてはいけないことだと考えています。

一方、KFCの本部に入って変わった点は、「現場が全て」という考え方は根底にありながらも、お店にいるときにはわからなかった指示の背景が見えるようになったことです。月並みな言い方ですが、今考えると、お店に指示が来たときに、なぜそれをやるのか、十分に理解できていなかったと言えます。お店にいるときは「戦略」だと思っていたのが、実は「戦術」だったり、戦闘の「手段」でしかなかったりするわけです。ポジションが上がるにつれて、指示の背景や目的がわかったことで、点が線になったというか、くっきりと見えてきました。

――営業戦略統括部は2018年にできた新しい組織のようです。何をするところなんですか?

経営と、店舗を持っている営業本部とのパイプ役というか、「ハブ」になる部署です。組織が大きくなってくると、専門性が強くなる一方で、どうしても縦割りの弊害が出てきます。それぞれが専門性を極めながら一生懸命働く中で、我々は今、横串を刺して交通整理をしているところです。

KFCのプロフィットセンターはお店です。そのお店にいろんな部署からさまざまな指示がバラバラに行くと、お店は混乱します。各部署にとっては最優先なことも、お店にとっては「どれが本当の最優先なの?」となりますので、我々の部署が調整しているのです。

――事業部長的な感じですか?

いや、営業企画業務に近いですね。全社最適を行う経営企画部は別にありますから、我々はあくまでも営業と他の部署とのパイプ役です。

変化を嫌う人との「落としどころ」の見つけ方

――なぜ営業戦略統括部を新設したんですか?

KFCはスペシャリスト構想でずっとやってきました。営業から入ってきて、クロスファンクションで異動していくケースもたまにあるのですが、基本的には専門性を高めるという意味で、同じ部署にずっといることが多かったんです。

しかし、幹部候補を育てるためには、ジェネラリストを一定数作る必要があります。営業戦略統括部はそういうジェネラリスト育成という目的もあって、新設された部署です。「オペレーションマーケター」と私は呼んでいるのですが、各部署が一生懸命やろうとしている目的に対して横串を刺し、整理してから店舗に渡すという業務をしています。

何か解決すべき課題があるときや、経営層が新しく手掛けたいことがある場合でも、新しい仕事をなかなかやりたがらない人がいます。新しく人が増えるわけでもないし、今やっている仕事も大変だ、という理由からです。

その気持ちもある程度理解できるのですが、とはいえ、そんなことを言っていたら何も進みませんから、我々がやるべき価値があると判断したものについては一旦引き取って、ある程度の形にまで揉んでから、しかるべき部署に渡していくという業務を行っています。

社内マーケティングのようなものです。当然、我々のスピードが上がれば課題解決も速くなります。

部下には次の営業戦略統括部部長になってもらうために、そうしたプロジェクトマネジメントを日夜回してもらっているところです。

――新しいことをやりたがらない人って、どこの会社にもいるわけですが、小山さんはそういう人たちとどのように向き合っているのですか?

経営層が持っている本来の意図をそれぞれの部署に通訳するというか、咀嚼してわかりやすく伝えることを意識しています。ただし、部署によっても人によっても咀嚼の方法は異なります。それぞれの部署と人のポジション、役割、立ち位置、プライドなどをよく考えながら伝えるようにしています。

――気を使いますよね。その辺は得意なんですか?何かコツがあれば教えてください。

マーケティングの部署にいた経験が生きています。マーケティング部にいたときは、顔が見えないお客様に対してオファーをして、チキンを購入していただき、継続して利益を上げていく仕組みを作る仕事をしていました。一方、社内マーケティングの場合は顔も名前もわかっていますし、過去の実績や人物像も大体把握しています。その点では、まだやりやすいと思います。

マーケティング部長時代、キャンペーンの企画や新たな施策の立案の際に、テレビ局や広告代理店、制作会社の方々と接する機会がたくさんありました。成功体験はそれほどないですが、失敗はいくつかありますので、「こういうパターンは失敗する」ということが感覚的にわかります。「場数を踏む」とは、そういうことだと思います。

ですから、プランニングするときも、いきなり指示を出すのではなくて、ちょっと溜めるんです。「どの部署から話すのがいいか?」「ボトムアップで行くべきか、部長から落としてもらうのがいいか」「それとも、ある程度お膳立てしてから、皆で一斉にやるべきか」などと、よく考えてから各部署の人たちと話をするようにしています。

――判断基準は人ベースですか?

人ですね、私の場合は。

――部署ごとにデータがあって、それを基に対応を変えているわけではないんですね?

そういうのはないですね。本部にいる人たちは、店舗からある程度成績を上げたとか、何か秀でたところのある人がプロモートされて入ってきていますから、そこにいる人たちがベスト・オブ・ベストだと思ってやっています。ないものねだりをしても、物事は進みません。たまに「現場にもっといい人がいるんじゃないのか?」という会話はありますけど(笑)

――「この人はなかなか言うことを聞かない」という人は、どこの会社にもいますけど、そういう人に動いてもらうために気をつけていることはありますか?

そういう人がキーマンの場合は、物事が進みませんから、やはり1対1で話すことが大切です。仮にその人がやってくれなくても、「やりたいことはわかった」と言ってもらえれば、進んだことにはなりますから。ベストではないですけど、ベターですね。「落としどころ」とよく言いますけど、ベストのプランと「最低限ここはやってもらわなきゃいけない」というレベルの間にしか答えはないので、この落としどころをできるだけ高い位置で落とし込むということがポイントになります。

――それが小山さんは得意だと。

得意というか、やらざるを得ないからやっているという面が大きいです(笑)

ファシリテーターにはならない

――その点と大いに関係するのですが、小山さんは営業とマーケティングの連携にご苦労されたと伺っています。これも多くの会社で課題となっていることですから、ぜひお聞きしたいのですが、具体的にどのような点でご苦労され、どのように解決したのでしょうか?

正確に言うと、まだ解決していないと思っています。そもそも、営業とマーケティングが仲良くやることは無理だと思います。だから我々の部署ができたという背景もあります。

以前、スタートアップの友人らと話していて、ハッと思ったことがあるんです。ベンチャー企業って、立ち上げからマーケティング部と営業部なんて作らないですよね。分けるのは直接部門と間接部門、攻めと守りくらいだと思います。また、イケイケの社長の場合は、守りの人をサブに付けたりして、それぞれの弱いところを補い合いながら会社を成長させていくというパターンが多いでしょう。それで会社がある程度の規模になったら、目の前の課題をすぐに解決する部隊だけでなく、少し先を見据えて、利益を継続的に出すためにどうすればいいかを考える部隊を作るわけです。その2つの部隊は、目的やゴールは一緒なんだけど、プロセスやアプローチは違うということです。

その話を聞いたときに、「営業とマーケティングの違いもこれだな」と気づかされました。それまでは目的の異なる2つの部署を連携させるって、なんてハードなことなんだと思っていたのですが、スタートアップの友人の話を聞いて気が晴れたというか、「目的は一緒だよ」「利益を上げるための仕組みを作るか、それを実行するかという違いだけなんだ」とわかったんですね。

私は営業部にもマーケティング部にもいたことがありますから、お互いの言い分もわからなくはないですし、それぞれに利害があるので、ぶつかることがあるのもわかります。

やはり営業の人たちは、最短ルートを行きたがります。当然ですよね。一方、マーケティングの人たちは、必ずしも最短ルートを行こうとはしないんです。そこなんですよ。

例えると、同じ山でも急勾配の最短ルートを登る方法もあれば、体力や予算に応じて、なだらかな道を少しずつ登っていくという方法もマーケティング部の場合はあるということです。

そもそも、ただ「仲良くやりなさい」というのなら、営業部とマーケティング部という分け方をやめて一緒の部署にすればいいんです。でも、なかなかそうはいきません。だから間に入る交通整理が必要なんです。

――両方の部署を経験されたからこそわかるポイントですね。

各部署がそれぞれの目的に向かって勝手に動き出したら、それはどこかでぶつかります。そのとき、「ここは左側通行ですよ」「一時停止ですよ」と、ルールに基づいて交通整理をすれば、衝突は減るはずです。

もちろん、議論は必要ですよ。しかし、社会がどんどんスピードアップしていく中で、衝突が新しいことをやらないための言い訳になってしまったり、ぶつかっているうちに時間だけがいたずらに過ぎていったりすると、無駄なコストだけが膨れ上がっていくことになります。それは避けるべきです。営業戦略統括部は、その問題を解決しようとしています。

――その際の交通整理のコツのようなものはありますか?

気をつけていることは大きく2つあります。1つは、会議の際に前提とゴールを整理して、今日は何を決めなければならないのかという点をきちんと伝えることです。「今まではこういう議論がありましたね」「昨年こんなことがあって、ここに至ったんですよね」という前提をはっきりさせた上で、「だから今日はこれをやるのか、やらないのかを決めましょう」とゴールを明確にするわけです。

当たり前のように感じるかもしれませんが、案外できていないんですよ。みんなわかっているつもりで会議に出てくるのですが、わかっているようでわかっていなかったり、理解の仕方もそれぞれ自分の視点で消化していたりするので、何となく大きな矢印は合っているけど、中の細かいベクトルが微妙に違っているということがよくあるわけです。そのベクトルの向きをある程度、一緒にしてあげることが大事です。

――つまりファシリテーターですか?

いや、そうではなく、ファシリテーターにならないことがもう1つのポイントです。

――えっ!交通整理だから、ファシリテーターじゃないんですか?

ファシリテーターというか、会議の進行役のようにやると、「じゃあ営業戦略統括部で決めてよ」という感じになりがちなんです。我々の部署は便利屋ではありません。「全部、営業戦略統括部に言っておけばいい」というふうになると、物事は進むかもしれませんが、継続性という点で問題が生じます。ですから、我々は会議の事務局的なことはしません。自分事として捉えてもらうという意味でも、会議を招集するのはあくまでマーケティング部であり、営業部です。我々は営業の中の一部署だったり、第三の部署として出席しつつ、交通整理をしています。

猛反発の中で導入したネット予約システム

――なるほど…。営業とマーケティングの両方を経験されている小山さんの強みが出ていますね。マーケティングについてはどのように勉強されたのですか?

当時子会社だったピザハット在籍時に、「マーケティング部長をやりなさい」と言われたときは、「そもそもマーケティングって何だ?」と思いました。

私は結構、理屈っぽいので、最初は図書館へ行って、マーケティングの本を何冊か読んで勉強しました。最初にぶつかったのは、マーケティングとブランディングの違いです。

――マーケティングとブランディングの違いって、どのように認識されていますか?

本を読んでも、社内外の方に話を聞いてもあまり腹落ちするものはありませんでした。そこで私が行き着いた考えは、ブランドというのは、我々が作って提供できるものではなく、お客様が作っていくというか、お客様から見たお店の姿であり、企業の様子だということです。だから、変えようと思ってもなかなか変えられません。信用と実績を少しずつ積み重ねて作り上げていくしかないということです。

一方、キャンペーンなどのマーケティングは風邪薬のようなもので、鼻風邪なのに喉用の薬を飲んでも効きませんから、まず病気を特定することから始めます。ブランディングは漢方薬のようなものですね。信じて飲み続けていると、何かクライシスがあったときに初めて効き目を実感します。西洋医学と東洋医学、両方が大事だと部下にもよく言っています。

――では、マーケティングの定義については、どのように理解されたのですか?

私が考えるマーケティングの定義は「商い全部」です。
それでは少しわかりにくいので、マーケティング部に初めて配属された人には、「今日からマーケティング頑張ってね」「マーケティングって何をやると思う?」といろいろ質問した上で、「私の定義は、モノを売る仕組みを作ることだよ」と伝えています。

いわば仕組みを作る「川上」がマーケティングで、看板をくぐってお店に入ってきたお客様に良い商品を出したり、良い体験をしてもらって、「またケンタッキーに行きたい」と思っていただくのが営業部隊の仕事です。だから部下には「営業の人たちが気持ちよく仕事ができるように、想定できる課題は全て整理して解決した上で、なるべくミスがないように、仕組みにして渡すことがマーケティングの仕事だよ」とか「しっかりとした仕組みを作るためには、買っていただくお客様のことを知らなければいけないよね。そのために仮説に基づいてお客様の購買行動を確認するのが調査だよ」と説明しています。

――小山さんがマーケターとして手掛けられた施策の中で、最も成功したことを教えてください。

クリスマスのネット予約導入です。KFCにとってクリスマスはとても大きなイベントです。それまではクリスマスの予約を店頭で受けていました。店頭で前払いをしていただき、クリスマス当日にまたご来店いただいて商品をお渡しするというシステムです。要するにお店に行かないと予約ができなかったところをネット予約に移行したのです。

最初は強い反対を受けました。予約のためにご来店されたとき、ついでにその日に食べるチキンを買ってくださるお客様がいます。それで、クリスマスにはまた予約したチキンを引き取りに来てくださる。つまり12月に2回来ていただけるはずのお客様が1回来なくていいことになるわけで、「それでは売り上げが下がるじゃないか」と言われました。さらに、ネット予約のシステムについてもKFCはクレジット決算だけなので、手数料が上がるだろう、と。同じ量の売り上げで、クレジットカードの手数料というコストが上がったら利益が下がるじゃないかというわけです。賛成してくれたのは、デジタルリテラシーが高い一部の人くらいでした。

ただ、私には自信がありました。なぜならピザハット時代に、宅配ピザ業界ではネット予約のクレジット決済が当たり前ということを経験していたからです。絶対にうまくいくし、手数料のところは単価を上げることで補えると信じていました。結果的には1年足らずでかなりのシェアをネット予約に移行できました。もちろん、今はもう何も言われないです(笑)

――そのときは「自分の経験上、うまくいくから」という感じで押し切ったんですか?

そうですね。通常はテストをして、結果が出て、それを示して納得してもらった上で、一部の「仕方ないから、ちょっとやってみるか」という人からやってもらって、2年から3年かけて全店に導入にしていくパターンが多いんです。特にクリスマスはそうですね。

しかし、ネット予約については、「テストって、世の中もうみんなネット予約の時代ですよ」「そんなことを言っているから乗り遅れるんですよ」と話して、押し切りました。

――「あるある」な話ですねー(笑)

そのときは社内以上にフランチャイズさんのご支持を頂けたのが大きかったですね。かなりハードなことが意外とスムーズにいったというパターンです。

全ての道はオリジナルチキンに通ず

――KFCは定番商品が多いと思うのですが、定番商品ならではのマーケティングについては、どうお考えですか?

定番商品を買っていただくきっかけを作ることは、やはりすごく難しいと感じます。KFCのブランド認知度は99%ありますので、皆さんほぼ知っていらっしゃいます。しかし、「では最近いつ買いましたか?」と聞くと、「そういえば、しばらく買ってないなあ」と答える人が少なくないわけです。

普通は知られていないから広告を打つなどして認知度を高めようとするのですが、十分知られているのに買っていただけないというのは、どういうことなのか?そこには定番商品の強さならではのジレンマもあります。

実は、レッドホットチキンなどのフレーバーチキンの新商品を出すのも、KFCの場合は新商品を広告することで、来店のきっかけを作り、新商品と一緒に定番のオリジナルチキンを買っていただくというのが成功のストーリーなんです。ですから、すべての道がオリジナルチキンに通じるように設計をしていくのが我々の戦略です。

アプローチはいろいろと存在します。フレーバーチキンもあれば、バリューパックもあり、ポットパイなどのサイドアイテムのときもあります。ただ、それぞれルートは違っても、全ての施策はオリジナルチキンを一緒に買っていただくために行っているのです。

テレビCMで「オリジナルチキン、美味しいですよ」と流しても、コアユーザーにはなかなか響きません。「そんなの知ってるよ」で終わりです。

そうではなく、今日お店に来ていただくきっかけを作ることが大事なんです。1回食べていただければ、ある程度常習性というか、無性に食べたくなるループが定期的に来る商品だという自信はあります。ですから、来店していただく最初のきっかけを作ることに注力しています。

マーケティングに強い人材の育て方

――最後に、人材育成について教えてください。マーケティングに強い人材、組織を作るために、小山さんはどのような指導や取り組みをされていますか?

指導というより、私はもう答えをあまり言わないようにしているんです。私が答えを言うと、部下は楽じゃないですか。「部長が右と言っているから右に行けばいいんだ」と思考停止してしまう。考えているふりをして何となく1時間やり過ごせば結論が出るという会議もありますが、それならメールでいいと思うんです。「なぜ部長は右に行くと言っているのか?」「右に行くと言っていたのに、今週になったら左に行くと言っているのはなぜなのか?」と、仮説思考で徹底的に考える訓練をしてもらっています。そうしないと、「部長は気まぐれだ」という結論で終わってしまいます。会社の重要事項を気まぐれで決めるわけがないですから。

慣れないと最初は面倒くさいと思います。「これ、右か左か、どっちだと思う?」と聞いて、部下が「右だと思います」と答えたら、「なぜ?」「根拠は?」と畳みかけ、根拠らしきものを出してきたら、「それは確率にすると何%?分母は何?」と聞いていくんです。そういうふうに毎回聞いていくと、部下は「どうせまた根拠を聞かれるだろう」「分母は何だっけ?」と学習するようになります。そういう訓練を重ねることで、「クリティカル・シンキング」なんて難しい言葉を持ち出さなくても、根拠に裏打ちされた考え方や企画立案ができるようになっていきます。また、他部署から相談があったときは、私がいなくても、「それって根拠は何ですか?」とか、「その調査結果の分母って何ですか」「今聞いているお話は、最初に言っていたことと論点が少し違いますよね」と言えるようになります。そうしたら、また次のステップへ進むということですね。

――そうした考え方を全社的に共有していくのがマーケティングに強い会社への道ということでしょうか?

そうですね。マーケティングに強くなると、経営も絶対強くなるはずです。マーケターと経営者は表裏一体だと思います。マーケターの仕事は利益を出し続ける仕組みを作ることであり、経営者は利益を出し続けて会社を潰さないことが仕事です。マーケティングに強い組織にするということが会社を強くすると言えるでしょう。

――自分では言いにくいかもしれませんが、小山さん自身は、どのような点が優れていたから、営業戦略統括部部長にまで上り詰めたんだと思いますか?

私ははっきりと物を言うタイプなんですよ。アウトプットを出すまでは考え込むのですが、一旦決めたら、秘めていても仕方がないので、言い方に気をつけつつもストレートに口に出すようにしています。それを嫌がる上長もいますが、私の場合は前向きに捉えてくださる上長にずっと恵まれてきたのが大きいと思います。

――それにしても、終始淡々とお話しされていましたけど、いつもこんなふうに冷静なんですか?

どうですかねえ。

――部下に激高したりとか?(笑)

ああ、それはありますよ。でも部下は喜んでいるみたいです。普段こういう感じなので、たまに怒ると、「あ、今日は怒り出した」って雰囲気が沸き立つのを感じます(笑)。ただし、機嫌が悪いとか、家で嫌なことがあったという理由で怒ることはありません。その辺は徹底しています。


小山 典孝(こやま・のりたか)

1990年、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社入社。営業、商品開発、経営企画、ピザハット事業部などを経て、2014年にKFCのマーケティング部長。2016年執行役員。2018年営業戦略統括部を新設し、部長に就任。グループ企業のケイ・フーズ株式会社取締役も兼任。

 

[記事執筆者] 早川巧
株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writerとして四半世紀以上のキャリアあり。Twitter:@hayakawaMN

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