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2020.04.01

緊急企画「新型コロナ不況にどう立ち向かうべきか?」トップマーケター&経営者8人に聞く(後編)

「新型コロナ不況」への対応策を聞く緊急企画の後編です。

後編では、マーケティングに詳しい経営者の方々に、現在のビジネスへの影響と、マーケターが今すべきこと、今後の展望についてお聞きしました。

ぜひお読みください。

(紹介は五十音順)

(構成:Marketing Native編集部)

※前編はこちら

目次

企業と個人が今すぐ行うべき5つのこと―菅原健一

【経営者】
株式会社Moonshot 代表取締役社長 菅原健一

Q.ご自身のビジネスへの影響と今後の予測は?

株式会社Moonshotとしては特に影響がないです。業務内容のアドバイザーとしては海外含め10社程度のクライアントと契約していますが、コロナを起点とした不景気には、1月の時点でアドバイスと対応が済んでおり、クライアントの状況も横ばいか、伸びているところもあります。

今後、景気はさらに悪化してしまうと思うので4月以降はそうも言っていられませんが、大半のクライアントはすでに高利益体質でキャッシュリッチなので2年は大丈夫だと思います。

Q.この状況下でご自身がすべきことは?

一つ後悔をしているのは、うちの会社自体をあと10倍に成長できていればもっと寄付や投資で救える会社は多かったと思います。

まずは企業であれ個人であれ

  • 現金を確保してください
  • 利益率の高いビジネスをしてください、個人で言えば時給を上げる努力をしてください
  • 持っているものを現金化してください
  • 固定費を下げてください
  • 多様な選択肢を持ってください

危機になってからやるには遅いものもありますが、やらないよりマシです。

Q.現状に対しマーケターはどのように考えて行動すべきか?

マーケターの仕事はなんでしょうか?
広告宣伝費を使うことではありません。
マーケティングとはなんでしょうか?
商売そのものです。

お金を得るというのはどういう事でしょうか?
困っている人がいたら助けて対価を得るということです。

以上の原理原則にそって行動すべきだと思います。
この原則で考えると、世界中で困っている人が増えている今、自分のお金が増えないのは人を助けていないからです。

まずは一刻も早く事態の収束に役立つことをし、一人の国民、一人の地球人として周りに迷惑をかけない生き方、出来るだけ自給自足の生き方にしましょう。コロナ後もこの考え方に向かうと思います。

豊かさの再定義をしましょう。

マーケティングは横断組織であることが多いので、自社やユーザーに対して多くの「問い」を持ちましょう。

個人としての時間は、次の成長タイミングに向けて広い勉強をすると良いと思います。
(寄稿)

Profile
菅原 健一(すがわら・けんいち)

株式会社Moonshot代表取締役社長。企業の10倍成長のためのアドバイザー業を創業。社会や企業内に存在する「難しい問題を解く」専門家。グローバル企業含めクライアント10社、エンジェル投資先20社の計30社のプロジェクトを並行して進めている。過去に取締役 CMO で参画した企業を KDDI子会社へ売却し、そのまま経営を継続し売上が数百億円規模へ成長。スマートニュースを経て現職。20代のマーケター600人が参加する「#20代マーケピザ」を主催。

景気に関係なく対価が得られる仕組みを作る―枌谷力

株式会社ベイジ 代表取締役社長 枌谷力

Q.ご自身のビジネスへの影響と、今後の予測は?

大きく影響があったのは働き方についてです。リモートワークが一気に浸透し、働き方についての社員の考え方や価値観が急速に変わったように思います。

顧客獲得および採用を含む事業については、今のところは影響が出ていません。私たちの顧客の多くがBtoB企業であるため、現時点での直接的な影響を免れているのではないかと思います。ただ、我々の購買プロセスはオンラインだけでは完結しないため、今のオンライン中心の働き方は、セールスのクロージングに影響を与えてくると思います。

また、今の状況が続いて景気が本格的に後退すると、売上などの影響が出始めると思っています。市況を踏まえて各社が来年度予算を決めるはずなので、来年度までに次の一手を打つべきと思っています。

Q.この状況下でご自身がすべきことは?

政治家や医療関係者でもない自分が、現在の状況に対して直接的にできる特別なことはないと考えています。クライアントの事業に貢献することで、間接的に社会貢献するというのが、現実的にできる行動だと思います。

Q.マーケターはどのように考えて行動すべきか?

今回のコロナウイルスと景気悪化について、一マーケターの手に負える話ではないように思います。ヒトモノカネのすべてを駆使し、法制度なども利用しながらの解決が不可欠でしょう。業種業態によっては、行政の支援も必要です。そんな中でマーケターができるのは、意思決定をする経営者やリーダーたちを、これまで以上にサポートすることだと思います。

とはいえ、マーケターがやるべきことは本質的には変わらないようにも思います。不景気によって選択する打ち手や実行のスピードは変わるでしょうが、市場と顧客に向き合い、本質的な価値を提供し、それによって対価が得られる仕組みを作ることは、景気と関係なく常にやるべきことで、その思考自体は変わらないように思います。
(寄稿)

Profile
枌谷力(そぎたに・つとむ)

1972年生まれ。1997年にNTTデータに入社し、4年間の営業経験の後、Webデザイナーへ転身。Webディレクターを兼務するようになった後、2007年にフリーランスとして独立。2010年にweb制作会社のベイジを設立。2017年にはマーケティング会社・ナイルの顧問に就任。経営全般に関わりながら、クライアント企業のBtoBマーケティングや採用戦略の整理・立案、UXリサーチ、コンテンツ企画、情報設計、UIデザイン、ライティング、自社のマーケティングや広報、SNS運用、ブログ執筆など、デザイナー/マーケター/ライターの顔を持つ経営者として活動している。

死なないこと、1次情報で判断すること、止まらないこと―高梨大輔

ビタミン株式会社 CEO 高梨大輔

Q.ご自身のビジネスへの影響と、今後の予測は?

僕の周囲はスタートアップです。その中で感じてるのは、大なり小なりとも影響はあり、大変さを抱えてないという人は少ないと思います。海外とのビジネスモデルは影響が大きいですし、そうでない場合も社員の安全をどうするかなど、意思決定する数は増えています。

メディアからは悲観的な情報が多く流れてきますが、僕自身は不確実な環境を経験できるのはラッキーだなと切り替えています。不謹慎といわれるかもしれませんが、こういう気持ちでいたいなと思っています。僕はインハウスマーケのアドバイザリー業もしているのですが、その中の大切な仕事の一つが、励ましたり背中を押してあげたりすること、安心感を持ってもらうことだったりします。そういう僕が悲観的になっていたらマズイです(笑)

真面目な話、どんな状況でもラッキーと考える視点は、生命力だと思っていて、自分や会社を生かすこと、そして社会に影響を与えることに繋がると思っています。

あと、僕のアドバイザリー業への影響についてですが、マーケティング以上の枠組みで考えるきっかけになりました。例えば、お金は経営上重要な資源ですが、いま出ている補助金関連の情報は、残念ながら多忙なスタートアップがキャッチアップすることは難しいです。なので、僕らが皆の代わりに、経営に必要な情報をまとめる動きをはじめています。

余談になりますが、去年の段階で、2020年のオリンピック後の不況シナリオについて、マーケターの方たちと予測しあっていました。「テロが起きるのではないか」と予測をしている人はいましたが、まさかウイルスとだったとは……。錚々たる有名マーケターの方々の、誰一人としてこの事態の予測は難しかった、それくらい未来は不確実だということで、僕もあらためて柔軟性の大切さを学びました。きっとコロナが収束したとしても、また別の予想できない未来がやってきます。だからこそ、変化に対応しやすい組織にしておこうね、という学びを得られたことは財産だなと。

Q.この状況下でご自身がすべきことは?

定量的なことは後述しますが、僕の大事な仕事は「絶対大丈夫!」「きっと達成できる!」と励ましたり、迷ってるときに背中を押したりすることなんですが、ただ言っていればいいというわけではなく、その裏付けも必要です。そのために僕自身ができることは、この状況下で1次情報をどれくらい収集できるかだと考えています。僕は2009年の3.11のとき、自社の対応に追われるカオスな状況の中で、情報収集が難しかった。だから、あのときの自分が欲しかったこと、1次情報を集める役割を担おうと思っています。

Q.現状に対し、マーケターはどのように考えて行動すべきか?

ここからはマーケの大事な役割、数字をいかに達成するかという定量的な面を、スタートアップや新規事業系のマーケ現場の方を想定してお話しします。

シンプルに1つを提案すると「施策数をKPIにする」ことです。これは不確実な状況ではより効果的です。例えばインプレッション数やCVRなどをKPIにすると、具体的な施策を実行できないまま、気づいたら1カ月が経過、というケースをよく見ます。大きなKPIでは、どうしても意思決定が難しいことがあり、しかもこの状況下では初動が遅れます。

スタートアップや新規事業系は、施策が当たらないのは当然です。それよりもチャレンジ数を増やして、打率を上げていく方が、結果的にKPIへの貢献が高いということは、僕自身が現場で実感しています。だから、今月はこの5個をなんとしても達成する!とまず決めることです。そうすると確実に前進することができます。数をこなしていると、勘所も磨かれますし、効果がない施策のナレッジもたまるので、見えない資産の積み上げにもなります。

あとは、現場が動いているということは、サービスが生き物になります。ニュアンスが難しいのですが、中の人のテンションはそのままサービスに反映されるものだと思います。意思決定できずに時間だけが過ぎてしまうと、サービスに停滞感が出てくるんです、不思議なんですが(笑)

だから、僕は数字達成にも、サービスに停滞感を出さないことにも効果的な「アクション数をKPIにすること」をおすすめしています。もし、この状況下でにっちもさっちもいかない、どうしたらいいかわからない……そんなスタートアップの方がいたら気軽にご連絡ください。一緒に乗り切りましょう!
(寄稿)

Profile
高梨大輔(たかなし・だいすけ)
1984生まれ。静岡県出身。ビタミン株式会社CEO。株式会社リジョブ(現・株式会社じげんグループ:東証一部)の創業役員で、元取締役副社長/CMO。創業から株式会社じげん社へのM&Aまでプロダクトを統括し、ロックアップ期間を経て独立。スタートアップマーケティングのサポートと並行してエンジェル投資家としても活動。2018年末からエクイティ・ファイナンスをしているスタートアップの経営層対象としたビタミンゼミ運営している。

 

人の心の潮目を見極める―柳澤大輔

面白法人カヤック 代表取締役CEO 柳澤大輔

Q.新型コロナウイルスの流行によるご自身のビジネスへの影響と、今後の予測は?

会社が手掛けている事業としては、eスポーツのオフラインイベントや、不動産事業などに少し影響が出てきています。オンライン系の事業は現在のところはさほど影響を受けておりません。

働き方という観点で言いますと、弊社は、どこでも働ける環境を整備することを実践してきているので、今回の新型コロナウイルスに関しても政府の提案を踏まえて、可能なかぎり、リモートワークを活用しています。IT企業ということもあり、社員のリモートへの移行はスムーズにできています。また、職住近接型の会社ということもあって、家に来る感覚で会社に来ている社員もいます。

今回の新型コロナウイルスに関して、心理的な状況は3.11、経済はリーマンショック、感染症の拡大としてはSARSというように過去の事例と比較されています。ただ、このすべてが世界規模で一気に起こった現在のような状況は初めての体験です。近い状況は大昔に流行した疫病なのかもしれませんが、古過ぎて参考にできません。

状況は刻一刻と変わってきているため、今後の影響は未知数です。想定よりも常に悪い状態で状況が動いている印象です。リーマンショックの頃よりも経済状況が悪いという実感もありますから、これからさらに不景気になることを前提に打ち手を検討しています。

Q.この状況下でご自身がすべきことは?

「アイデアいっぱいの人は決して深刻にならない」というフランスの詩人ポール・ヴァレリーの言葉があるのですが、私自身とても好きな一節で、社内でも大事にしています。こんな時だからこそ、やれることをどんどんやっていくという姿勢が重要です。

冠に「面白法人」を掲げている会社として、「楽しく働く」ということをしっかりやっていきたいと思います。例えば、弊社ではオンライン会議でカメラの設定をsnap cameraにして楽しんでいる社員が多くいます。

写真提供:面白法人カヤック

ある社員が、リモートワークで希薄になりがちなコミュニケーションを円滑に行いたいと始めたのですが、社内で流行っています。会社ごとに文化があるとは思いますが、弊社ではどうやったら面白く働けるか、社員自らが考えて実行する文化があります。このような状況でも働くプロセスはアイデア次第で楽しくすることはできるでしょう。アイデアが出なくなると、ますます深刻な状況になってしまいますから、まず楽しく働けるように工夫していく。工夫することでより打ち手が増えていくのではないかと思います。

早速、今日(取材時点の3月23日)も会議で新たに決まったのですが、4月から「KAYACLINIC(カヤックリニック)」という企業や自治体の事業やマーケティングに関する悩み相談をオンラインで受け付けるサービスを開始予定です。弊社にはアイデアとデジタル領域のノウハウ、技術力がありますので、現在の状況に悩んでいる経営者やマーケターの方たちのお手伝いができればと考えています。また、鎌倉の飲食店を応援するため『「ありがとう」お食事券』の販売を始めました(3月31日で終了)。

もう1つ、都市部など人口の多い場所で感染が広がっていることもあり、地方に注目が集まっています。今回の件で引っ越しを検討した人や、リモートワークが思ったよりスムーズなので「どこでも住める」と実感した人も多くいるでしょう。地方経済を発展させるという、ここ10~20年間の流れが加速化されるのではないかと思います。

カヤックはこれまでも、地方に移住したい人と自治体をつなぐ「SMOUT」というWebサービスや、「まちのコイン」という地域通貨サービスなど、地方創生に関わる事業をしています。現在は、各国が鎖国状態になっていますから、ローカルで経済を回していくことも重要になるでしょう。閉じた世界が良いわけではないですが、ひとつのきっかけとして、地域の魅力を改めて再発信できるのではないかと考えています。

Q.現状に対し、マーケターはどのように考えて行動すべきか?

過去と比較して、圧倒的に進化したことは「情報伝達の速さ」です。これにより、人の心がクルクルと変わりやすくなったという側面があると思います。心が不安な状態の場合は無意識に不安を煽る情報ばかりピックアップしてしまうし、楽観的な場合は希望的観測すぎる情報ばかり拾ってきてしまいます。情報伝達が速くなったことで心理状態のトレンドがさらに増幅されやすくなってしまうのではないでしょうか。

マーケターの仕事は「人の心のトレンドを読む」ことだと思います。人の心の潮目がどう切り変わっているのかを常に見極めておかないと、適切な施策を行うことはできません。そして、潮目を見極めた上で、自分がどういう方向づけをしたいかというビジョンが重要です。どこに着地させたいかという意思を持ち、発信して方向づけるのがマーケターの役割だと思います。(談)

Profile
柳澤大輔(やなさわ・だいすけ)

1974年生まれ。ソニー・ミュージックエンタテインメント入社後、1998年に学生時代の友人と共に面白法人カヤックを設立。鎌倉に本社を構え、鎌倉からオリジナリティのあるコンテンツをWebサイト、スマートフォンアプリ、ソーシャルゲーム市場に発信している。ユニークな人事制度(サイコロ給、スマイル給)や、ワークスタイル(旅する支社)を発信し、「面白法人」というキャッチコピーの名のもと新しい会社のスタイルに挑戦し続けている。まちづくりに興味のある人が集うオンラインサロン「地域資本主義サロン」(https://smout.jp/event/online-salon/about/)主宰。

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