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インタビュー

テレビ界も世代交代の動き急!台頭し始めた「Z世代」の消費意欲のつかみ方と、企業が採用・育成する際の注意点――信州大学特任教授・原田曜平インタビュー

最終更新日:2023.05.18

Marketing Studies #04

信州大学特任教授

原田 曜平

ベテランのタレントがMCを務めていた長寿番組が続々と終了し、テレビ界の世代交代が進んでいます。

背景の1つに挙げられるのは、長く消費の主役的存在だった団塊の世代が後期高齢者に入るのを前に、企業の目が若者に向けられ始めていることです。中でもアベノミクスの好景気の中で育ったZ世代(10代前半から25歳くらいまで)は、これからの消費の鍵を握る存在として、にわかに注目を集めています。

では、Z世代にはどのような特徴があるのでしょうか。今回は若者研究の第一人者として知られ、『Z世代』(光文社新書)の著書がある信州大学特任教授でマーケティングアナリストの原田曜平さんに話を聞きました。

※なお、世代ごとにひとくくりにして批評するのが目的ではなく、「最近の若者の趣味嗜好の傾向や考え方がわからない」とお悩みのビジネスパーソンの皆さんに少しでも参考にしていただければ、と考えています。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧)

目次

後期高齢者に向かう団塊の世代と、「第7世代」の台頭

――「Z世代」という言葉をよく目にするようになりました。今なぜZ世代への注目が高まっているのですか。

団塊の世代が後期高齢者に達するのを前に消費意欲に陰りが見え始め、企業も団塊の世代をターゲットにしていても消費があまり動かないと気づきだしたことが要因の1つに挙げられます。

象徴的な事象の1つがテレビ局の動きで、従来の世帯視聴率からコア視聴率(13~49歳 ※局によって名称や対象年齢は多少異なる)を重視する姿勢に変わり始めました。その結果、昭和から平成にかけて主役を張ってきた方々の長寿番組が相次ぎ終了し、代わって「お笑い第7世代」と呼ばれる芸人ら若い世代の台頭が見られます。これは注目すべき変化です。

※原田さんの著書『Z世代』より引用し、編集部で作成。年数は生まれた年。

Z世代:1990年代中盤〜2010年頃に生まれた世代で、現在の10代前半から25~26歳くらい。一人っ子が多く、少子高齢化による人手不足の影響で人材の希少性が高い。必然的に競争の少ない生活を送ってきたため、マイペースに居心地よく過ごす「チル」な価値観を好む傾向がある。また、幼い頃からスマホに触れ、中高時代からInstagramやTikTok、Twitterなど複数のSNSを使用するスマホ第1世代。自己承認欲求と発信欲求が強く、「ミー」意識が高い。

私が若者研究を始めたのは2002年頃です。当時はまだ若者人口もそれなりのボリュームがあり、消費意欲も旺盛でしたから、若者をターゲットにした企業の製品やサービスもたくさん存在し、若者研究はマーケティングの1つのカテゴリとして主役感を保っていました。

ところが、人口ボリュームが減少するにつれて、若者の存在がマーケティングの世界で脇役的な存在になっていきました。私は当時博報堂にいたのですが、若者向けだけにマス広告を打つ機会が少なくなり、「中高年がメインの広告だけど、若者にも嫌われない表現にする」「中高年に人気のタレントをメインにしつつ、若者に人気のタレントもサブで起用する」というように、若者研究がチェックリスト的な扱いになっていったのを覚えています。

そう感じ始めたのが2009年から2010年くらいで、2009年には「草食男子」という言葉が新語・流行語大賞にノミネートされました。人口ボリュームが減ってきた上に、若者の元気がなくなってきてお金を使わなくなり、恋愛もしなくなり始めた頃で、20年間の若者研究のうち後半10年は自分がニッチな分野の専門家になったような、しんどい時期でした。

――原田さんの若者研究に再び脚光が当たるようになったのはいつ頃ですか。

この1年くらいです。ようやく企業が少しだけ本気を出して若者をターゲットにし始めたと感じます。コンビニエンスストアもユーザーの平均年齢は50代以上なのですが、最近ではスイーツを充実させたり、インスタ映えする商品や若者にウケそうなネーミングの商品が散見されるようになってきました。それらは必ずしも若者だけを狙った商品展開ではありませんが、確かな変化の兆しとして受け取っています。

――それは団塊の世代の後期高齢者が急増する「2025年問題」を前に、企業が危機意識を持ち始めたからだ、と。

重なる部分は大きいと思います。平成の30年間は、団塊の世代が中年期から「アクティブシニア」と呼ばれる前期高齢者になる時代と大体重なっていて、良くも悪くも団塊の世代に引っ張られてきた時代でした。企業の中でも、人口ボリュームの大きな団塊の世代が実権を握っていましたし、引退してからも元気で消費意欲も旺盛だったため、マーケティングのターゲットを団塊の世代を中心に据える傾向が強かったのはある意味、当然と言えます。

ところが、最近になってリタイアした団塊の世代に消費意欲の減退が隠せなくなり、広告を打っても商品の売れ行きがそれほど伸びなくなってきたため、企業がターゲットの年齢層を引き下げる動きを見せ始めました。それが令和の始まりと重なるように、おそらく到来しているのだと考えています。企業としては、将来消費の主役になるZ世代に今のうちから目を向けておくことで、先行投資をしたいと考えているのでしょう。

先ほど申し上げたように、テレビの世界もテレビ離れしている若者を取り戻そうとして、昭和から平成にかけて君臨していた大御所タレントの番組や多数存在した健康番組から、お笑い第7世代や東大生、QuizKnockらを起用して番組を作ったり、YouTubeやSNSを活用してTVerへの流入を狙ったりする動きが顕著になりました。

ただ、個人的にはテレビ局の動きは高齢者切り捨てが急すぎて、若い人を出演させれば若い人が見るという、本質から少しずれた考え方をしているのではないかと思います。

※原田さんの著書『Z世代』より一部引用し、編集部で作成。

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記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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