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2021.11.25

「ブランディングって売り上げに結びつくの?」と聞かれたら何と答えればいい?――みる兄さんとフラクタ河野貴伸が視聴者の質問に真っ向勝負!――Marketing Native Live vol.5

Marketing Native Live vol.5後編では、視聴者から寄せられた質問に匿名マーケターのみる兄さんと、フラクタ代表の河野貴伸さんが答えます。

「ブランディングって、いつまでやればいいの?」「売り上げや利益とブランディングの相関性は?」「どのタイミングで支援会社に入ってもらえばいい?」――など、企業のブランド担当者として日夜奮闘する視聴者の方ならではの実践的な質問に、2人はどう答えたのでしょうか。

ぜひご一読ください。

(構成・文:Marketing Native編集部・早川 巧)

※前編はこちら

目次

ブランディングにゴールはあるのか?

みる兄さん 後半は事前に頂いたものも含めて視聴者の方からの質問にお答えする形で会話をしていきたいと思います。まず1つ目です。

みる兄さん 「ブランディングはゴールがあるんでしょうか?目指したブランディングで(一定のゴールに)到達し、さらにブランディングを実施し続ける仕組みが完成しているということがゴールという認識でしょうか?」。確かにそうですね、成果やゴール、またはそこから先についてはどうお考えですか。

河野 例えば、お客さまにこう思っていただきたいと考えてブランディングし、達成したと実感した段階で「よし、自分たちのブランドができた」と思ったとします。ところが実際は社会もお客さまの年齢も変化していきますので、ずっとその状態でいられるかというと難しいわけです。ですから、厳しい言い方かもしれませんが、「ブランディングはずっと続けなければいけない」が1つの答えだと思います。

みる兄さん そうですね。フラクタさんの場合、支援するクライアント自身がブランディングできるようになるのが1つのプロジェクトのゴールかもしれませんが、ブランドとしてはお客さまの入れ替わりもありますし、いろいろな社会トレンドによって体験や共感、交換などの価値の強弱も変わってきます。そう考えると、やはり継続が大事ですし、私もブランドに関する仕事を10年弱やっていますが、終わらないどころか、やるべきことがどんどん増えていますので、永遠に続くという感じですね。事業活動イコールブランドづくりだと思います。

ブランディングと売り上げや利益との相関性は?

みる兄さん 次の質問は…出ました!「ブランディングと売り上げや利益との相関性はどの程度あると思われますか?」「逆に売り上げや利益につながらないブランド、ブランディングは存在しますか?」という質問です。いかがですか。

河野 いろいろな考え方がありますので、私の話すことが絶対の正解とは思いません。1つの解として考えているのは、ブランディングは企業が生き残るために必要だということです。「生き残る」とは、その企業が生み出した商品・サービスの価値がビジネスとして維持・継続されている状態だと考えます。昨今はD2CなどECが起点のブランドが出てきたおかげで、それほどコストをかけずにある程度ビジネスを回せるようになってきました。そう考えると、売り上げや利益をスケールさせることだけがゴールではなく、ブランドが少なくともファンのお客さまと長い間一緒に過ごしていける状態が達成できれば、目指すべきポイントに到達しているのではないかと考えています。そういう意味で言うと、売り上げや利益につながらないという考え方はおかしくて、仮に微細であっても、ビジネスとしてのエコシステムが維持・継続できていればブランティングとの相関性はあると言えると思います。

みる兄さん そうですよね。この話は私もよくするのですが、投資対効果というか、いわゆるCPA的な計算をブランド、ブランディングに求められるケースもあるとは思う一方で、では「その広告をクリックする前に見たSNSの口コミは寄与しないのですか」「そのブランドの広告を見たことで優秀な人材が入社して、組織が強化されたことはどう数字化するのですか」などとポイントがいくつも絡み合っていますので、ブランディングと売り上げや利益との相関性を厳密な形で割り出すことに時間を割くのは個人的にはあまり意味がないと思います。もちろん、予算を獲得するときにはいろいろ言われますよ。例えば「こういうムービーを作って広告展開したいので、数百万円の広告宣伝費がかかります」と言うと、「それで売り上げにどれだけ寄与するの?」と当然聞かれます。その際に「トータルの判断で会社にとって有益な資産になる」と経営者を説得できる担当者の力量や覚悟は必要ですし、そこを握れるかどうかでブランドの魅力に影響もすれば、パートナーとの関係性も変わってくると思います。

河野 売り上げや利益とブランディングとの直接相関性の証明は難しいですが、シンプルに「それでも何か直接的な相関性が欲しいです」と言われたときは、「CPAは確実に下がる」と答えています。あとは極端な例を言うと、売り上げや利益にその時はつながっていないように見えたけど、100年後につながっていたという話もなくはないです。

みる兄さん そうですね。数値をどこで取るかによっても変わりますし、例えば店頭ベースでの販売という数値を計測しづらいときにブランディングがどれだけ影響するかを割り出すのは難しいですが、諦めずにチャレンジすることが大事です。

売り上げや利益との相関性は複合的な要素が多いのは確かですが、良い影響が間接的にでも表れ、それで社内外ともに納得感が出るのであれば継続すべきと思います。一方、ブランド担当者も上長も納得感を得られないままずっと「かっこいいから」などの形で続けるのだけはやめたほうがいいですね。

河野 そうです。「免罪符」問題です。

みる兄さん ありがとうございます。売り上げと利益の話はいつも出てきて、あまりそこに固執しないほうがいいと言うと、「そういうことを言える恵まれた立場がうらやましいです」みたいに言われてしまうケースもあるので、なかなか難しいなと思います。

ブランディングの上手な中小企業やベンチャーは?

次の質問です。

みる兄さん これはいいですね。AppleやNikeなど有名企業とは違う事例を知りたいという意味でしょうか。

河野 これはみる兄さんのほうがたくさんご存じなんじゃないですか。

みる兄さん ベンチャーやD2Cなら、オールユアーズさんがすごく好きですね。クリエイティブももちろんですが、お客さまとの共創関係の作り方、時代を捉える活動、ステートメント、ロゴなどの重要な部分がプロダクトにこもっていると感じます。実際に購入して、リピートがすごく増えるだろうと思いました。一貫した言動でコツコツとブランドづくりをしている会社はとても魅力的です。

売り上げもそれなりの規模がありますが、マス広告を打っているわけではありません。ブランドとしてのストーリーの作り方が非常にうまい事例だといつも思っています。

河野 私は最近ですと、木村石鹸さんに注目しています。ブランディングがうまいというより、等身大のメッセージを発信されていらっしゃるのが素敵だなと感じます。

みる兄さん 「うまい・うまくない」ももちろんありますが、「らしさ」が伝わるのが大事ですね。背伸びしたクリエイティブにすると短期的には少し魅力が出るかもしれませんが、2~3年もすれば違和感が生じるところもあると思います。「真摯にコツコツ」が、やはり大事ですね。

有形サービスと無形サービスで気をつけるべき違いは?

次の質問です。

みる兄さん 有形サービスと無形サービス…なるほどですね。これは難しいな。

河野 いろいろな解釈があるのでなかなか賛同は得られないのですが、無形サービスの場合、実際に販売する人や紹介する人に憑依してしまうことがあります。

みる兄さん と言いますと?

河野 例えばAdobeさんならソフト自体は無形ですが、実際に使用しているクリエイターの人たちを通してブランドを感じるところがあって、そうなると無形サービスはそこに関わる人に憑依をした上で伝わる要素が結構出てしまうと感じます。ですから、無形サービスのほうがエバンジェリスト的な人やCM、メディアに出る人の選定を誤るとまずいことになると思います。

みる兄さん なるほど、外資のサービスがいくつか思い浮かんだのですが、エバンジェリストを置いているところが多いかもしれませんね。セミナーなどを通じて、価値を伝えるエバンジェリストから話を聞いたり、実際に相談したりするとブランドの人格というか、「らしさ」が伝わりやすくなるのは確かにありますね。有形のプロダクトにもインフルエンサーはいますが、そういう人たちは入り口にはなっても商品自体の体験のほうが強くなりますので、無形と有形ではその点で人の介在の仕方が違うのかなという気がしました。

河野 ですからビジネス系のサービス、SaaSのサービスはCMに出る人がすごく重要らしいです。

みる兄さん 確かにタレントさんのイメージが強固に付いているツールがいくつか頭に浮かびますね。

お客さまと自分たちがずれてきたと感じる兆候は?

次の質問です。

みる兄さん 「お客さまと自分たちのブランド、ブランディングがずれてきたと感じる兆候と、売り上げやリピート率など見える数字以外にずれを確認するものはありますか?」と。

河野 実際にずれ始めてくると、ブランド側がお願いしたアンケートなどにお客さまが答えてくれなくなってきます。

みる兄さん わかりやすいですね(笑)。協力してくれる人がまず減る、と。

河野 そこまで愛されなくなってくるんです。恋愛に例えると怒られるかもしれませんが、仲が良かったのにお互いだんだん興味が薄れてきてリアクションが少なくなり、LINEの返事も遅れがちになるのと似ています。それと同じようなことがブランドとお客さまの関係性にもあって、以前は販売開始と同時にお客さまが熱狂的なまでに殺到して喜んでくれていたのに、ブランドとお客さまの方向性がずれてくると、だんだんみんなが喜んでくれなくなるのを感じると思います。

みる兄さん 以前読んだバルミューダの寺尾(玄)社長のインタビューに、ブランドが迎合して寄っていくと、ずれというかお客さまが離れていくので、憧れの存在としてちょっと遠くにいることと、信頼感やコミュニケーションの在り方として近づいていくところのバランスが難しいという趣旨のことが書いてあって、面白いと思いました。ブランドとして近寄りすぎず、離れすぎず、憧れの存在でいるために必要なコツはありますか。

河野 ブランドによって違いますが、大事な点として1つあるのはインディーズバンドを意識することです。極端にメジャーに迎合して大衆的な楽曲を作るわけにはいかないけど、ファンを増やすことも大事。こだわりの強い作品を出し続ける一方で、多くのお客さまに喜んでいただくことも必要、と。

みる兄さん なるほど。一定の距離感を保ちつつ、上手にファンとコミュニケーションを取る難しさですね。これもブランド担当者あるあるで、遠く離しすぎた後、独り善がりにしすぎた反動で今度は近寄りすぎてしまって、何かにつけていろんなお客さまに「どうしたらいいですか?」と意見を聞き始め、ブランドの魅力が消えていくことが割とありがちだと感じます。

河野 あとは担当者個人の感情が出すぎると、ブランドとお客さまのずれを感じ始めたときに自分が人格否定された気分になりがちなので、注意が必要です。そうしないと、お客さまにしつこく近づいていってしまう担当者もいますので…。

みる兄さん 過去に炎上例もありましたね。インディーズバンドも友達ではないのだから、やはり距離感が大事ですね。

河野 友達っぽくコミュニケーションすることはありですけど、友達ではないということです。

ブランディングのプロに入ってもらうタイミングは?

みる兄さん 最後の質問です。

みる兄さん オリジナル商品の卸と直販の自社ECをされている企業さんで、予算や売り上げ、知名度などを見て内製でブランディングするフェーズとプロに入ってもらうフェーズ、つまりどこまでは自前でやって、どのタイミングでパートナーにお願いするべきかという話ですね。

河野 外部のプロを入れる場合は、どこまで一緒に伴走してもらうかを最初に設計することが大切です。例えば、最初だけ素敵なクリエイティブやロゴを作ってくれたけど、そこで終わりでは継続性がなく厳しくなります。一方、その後も1~2年一緒に動いてくれて、会社としてお金もきちんと投資しながら良い関係性を築いていけるのであれば早い段階でプロを入れるのはありだと思います。ただ、本当は自分たちだけでブランディングを始められると血となり肉となり、その後もずっと継続しやすいのは確かなので、大変ではありますが、まずは自分たちでやってみるのもお勧めしたいですね。

みる兄さん そうですね。私もブランド担当者になって危機感を募らせたときにパートナーに相談する前に自分が力をつけるしかないと思って社会人大学院に行きました。もちろん、本に書いてあることをそのまま実践すれば成功するわけではないですが、それでも一度セオリー通り実践して、その上で難しいと感じたときにプロに頼むと、共通言語で会話がしやすくなるんですね。初めからプロにお願いすると情報格差が生じて、お願いする側と実行する側に分かれてしまいますので、まず知識をつけて一度実践してから、やっぱり難しいなと思うタイミングでプロを探すと、適切なパートナーに出会えて良い伴走関係を築ける確率が高くなると思います。

河野 そうですね。どんなパートナーに手伝ってもらうかの要件定義をするために、まず自分が要件定義できないと、結局は中途半端な依頼しかできずに満足度の低い成果しか得られないという結果になりがちです。私も自分の力をつけることが大事だと思います。

みる兄さん 皆さん勉強しましょうということで、丸く収まった感じですかね。良い話がいろいろと聞けて実践的になったと思います。ありがとうございました。

――河野さん、締めのひと言をお願いします。

河野 普段こういうご質問を頂いて私がお話しする機会は少ないのですが、今日はみる兄さんのおかげでたくさんお話しできました。視聴してくださった皆さま、ありがとうございました。

――本日はありがとうございました。

Profile
みる兄さん(みるにいさん)
匿名アカウントなマーケター。事業会社のマーケティング部門に所属している。
Twitter:@milnii_san

河野 貴伸(こうの・たかのぶ)
株式会社フラクタ代表取締役。
Shopify 日本初代エバンジェリスト、株式会社Zokei 社外CTO、ジャパンEコマースコンサルタント協会講師、元株式会社土屋鞄製造所デジタル戦略担当取締役(~2020/3/31)。
1982年生まれ。東京の下町生まれ、下町育ち。2000年からフリーランスのCGクリエイター、作曲家、デザイナーとして活動。美容室やアパレルを専門にデジタルコミュニケーション設計、ブランディングを手がける。
現在は「日本のブランド価値の総量を増やす」をミッションに、ブランドビジネス全体とD2Cブランドへの支援活動、およびコマース業界全体の発展とShopifyの普及をメインに全国でセミナーや執筆活動を行う。
Twitter:@TakaKouno

早川巧

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
Twitter:@hayakawaMN
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