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インタビュー

Visaマーケティング本部長(CMO)・里村明洋インタビュー「P&G、Google、Adobeで身につけた、個性を出すリーダーシップとVisaのマーケティング」

最終更新日:2025.01.29

The Marketing Native #68

ビザ・ワールドワイド・ジャパン

マーケティング本部長(CMO)

里村 明洋

世界最大級の決済ブランド「Visa」。その日本法人であるビザ・ワールドワイド・ジャパンでマーケティング本部長(CMO)を務めるのが里村明洋さんです。

里村さんは新卒でP&Gに入り、GoogleとAdobeでマーケティングの腕を磨いた後、Visaにジョイン。個性を打ち出したリーダーシップの取り方を自分の“ブランド”と捉え、マーケティングや社内の調整などで手腕を発揮しているそうです。

また、決して仕事一筋ではなく、豊かな人生を送ることにもリーダーシップが必要と考えているとのこと。どんなリーダーシップなのでしょうか。

今回はビザ・ワールドワイド・ジャパン マーケティング本部長(CMO)・里村明洋さんに話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)

目次

P&G、Google、Adobeで学んだリーダーシップ

――P&G出身の方をよくお見かけしますが、里村さんも新卒でP&Gに入社されたとのこと。ただ、当時は“異色のキャリア”と思われていたようですね。

異色だと思います。P&Gという会社は、「Promote from within」と言われて、中途採用をあまり行わず、新卒から職種別採用をして人材を育成し、プロモーションさせていく文化があります。一般的な日本の企業のように、いろいろな部署を配置転換してゼネラルにキャリアを積ませる、いわゆる“ローテーション”ではありません。つまりマーケティングで入社したらずっとマーケティング、営業ならそのまま営業で昇進・昇格していきます。一方、私は営業で入社し、戦略部に移った後、さらにマーケティングへと職種を2つ跨ぎました。1つ異動するのは同期で1人くらいいますが、2つ職種を跨いだ人はP&Gであまり聞いたことがなかったですね。

――確かに異例ですね。自分で強く志望したのか、それとも会社の判断ですか。

どちらとも言えると思います。営業訪問時、たまにマーケティングや戦略部の人が同行してくれたのですが、私の話を聞くうちに「もしかしたらマーケティングのほうが向いているかもしれない」と感じてくれたようです。私自身もP&Gがマーケティングに強いことは知っていたので興味を持ち、自分のキャリアにプラスになると考えて、自らマーケティングへの異動を志望しました。

――P&Gの後はGoogle、Adobeとキャリアを積み重ねてきたわけですが、それぞれでマーケティングについて学んだことは何ですか。

P&Gが一番長かったので、思考のベースになっていると思います。それはリーダーシップであり、自分の個性です。マーケティングは実践でも座学でも学べますが、物事をいかに進めていくかというリーダーシップには個性が色濃く現れます。

自分がリーダーになって方針や目標などを打ち出したとき、各所から反発を受けることがあると思います。そこでどのように関係者をエンゲージして説得し、納得してもらうか。その過程ではロジックを伝えることも、エモーショナルに訴えることも必要になり、それらをいかに組み合わせて自分のスタイルとして確立していくかをP&Gでは強く求められます。

それは自分のブランドとも言えます。“自分はこういうスタイルでリーダーシップを取っていく”というブランドを作り上げ、周囲に納得してもらえるかどうか。そこがP&Gの中で大きく学んだことです。

――P&Gマーケティングのリーダーシップの話は有名ですね。GoogleやAdobeではどうでしたか。

Googleは少し違います。Googleはマーケティング中心ではなく、プロダクト中心で、マーケティングはどちらかというとプロダクトを大きくするためにサポートをする役割です。しかもそのプロダクトは消費財と違って、ローカルとグローバルは基本同じ。だから良好な人間関係の構築が重要で、グローバルを含めていかに人を巻き込めるかという点で少し政治的な立ち回りを求められることもありました。Adobeも少し似ていましたが、Adobeはデジタル上でのユーザー獲得が多く、デジタル上での売り上げをデジタルマーケティングでリードできるところもありました。GoogleとP&Gの中間くらいのリーダーシップが求められていたと思います。

キャッシュレス社会を目指すVisaのマーケティング

――リーダーシップというのは、マーケティングに限らず、社内にいる部署も年齢も違う人たちの意見を統一して成果を出すという意味ですよね。

簡単に言うと、そういうことです。ただP&Gでは、ロジックとストラテジックなディレクションが合っていれば皆さん納得して進めることができます。GoogleやAdobeでは、もう少しソフトスキルが必要でした。マーケティング中心で動いていないので、「マーケティングではそうかもしれないけど、プロダクトとは戦略が違う」と言われたら、基本的にはできません。だからソフトな人間関係をつくっておくことが重要なのです。

特にP&Gでは自分の個性を出さなければいけない環境だったので、転職先でもついP&G時代の感覚で同じようにリーダーシップを取ろうとして失敗する人が結構います。私の場合、GoogleとAdobeでは自分の個性だけでなく、関係性をつくることの重要性を学びました。

――里村さんは転職先のGoogleで強めのリーダーシップを発揮しようとしてうまくいかなかった経験はありますか。

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・VisaのCMOの仕事と約1年の実績
・部下を信じて任せるマネジメントの意義と難しさ
・ビジョンだけで終わる人、ビジョンとビジネスを結びつけられる人
・仕事だけでなく、人生のリーダーに

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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