業績の好調さが話題のカンロ。2024年1~9月期の税引き利益は前年同期比50.5%増となり、予想を大きく上回る伸びを見せました。
皆さんが食べている飴やグミの中にもカンロの商品がありませんか。その商品がカンロのものだと気づいていましたか。
カンロでは顧客とのコミュニケーションを深化・発展させ、企業ブランドの価値を向上させるために、マーケティング本部内に「CX(カスタマーエクスペリエンス)推進部」を立ち上げました。その上で、顧客起点マーケティングの推進に会社全体で取り組んでいます。
今回はマーケティング本部を統括するカンロ 常務執行役員 マーケティング本部長の内山妙子さんに話を聞きました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)
目次
カンロ飴のV字回復で気づいた企業ブランドの価値
――飴やグミがよく売れていて、業績が好調です。そこで、マーケティングがどんな形で業績向上に貢献しているのか、内山さんがマーケティング本部長就任後に始まった新しい取り組みなどについて伺います。
まず、常務執行役員でマーケティング本部長を務める内山さんご自身のことをお聞きします。最初はデザイナーとしてカンロに入社し、そこからマーケティングへ移ったとのこと。結構異色と思いますが、いかがですか。
カンロ入社前はデザイン事務所に就職が決まって、そこでバイトをしていました。ただ、将来に少し疑問を感じることもあって入社を取りやめたのです。その後、カンロが中途採用でデザイナーを募集していると知り、試験を受けて入社しました。そのため1社目ではありますが、新卒採用ではなく、いきなり中途採用です。
カンロでのデザイナー業務は、自分で絵を描くわけではなく、商品を作るときにデザイン会社に説明するようなディレクションが大半でした。しかもデザイン自体に特化した部門がその後閉鎖されてしまい、当時まだ新設だったマーケティングの部署に異動になりました。
――デザイナーの仕事がなくなったから、とりあえず新組織であるマーケティングの部署に移ったという感じですか。それが花開くわけですから人生、わからないですね。マーケティングの部署ではどんな仕事をしていましたか。
最初はデータの分析や調査です。会社が取得していたデータや店頭のPOSデータなどを分析していました。その後、広告宣伝のプロジェクトチームに入り、少しずつ領域が広がっていきました。
――ご自身の中で転機になったことは何ですか。
いくつかあります。例えば、できないことができるようになったときや、自分がしたいことと会社が求めていることが合致したときなどが該当すると思います。いくら自分が好きで望んでいることでも、会社の方向性と異なるとなかなかうまくいきません。
振り返って転機になったと思うのは、カンロ飴という商品を担当していた20年前のことです。それまでは例えば、のど飴担当のときなら健康のど飴のCM作りなどをしていたのですが、企業の名前のついた商品であるカンロ飴を担当したときに初めて、カンロという企業ブランド、コーポレートのブランドを意識するようになりました。当時はカンロ飴の調子が良くなく、少しずつ売り上げが落ちている時代だったのですが、ちょうどカンロ飴が50周年を迎えるにあたって打ったキャンペーンが功を奏する形で社内のスイッチが入り、営業がカンロ飴を強力に売り込んでくれたり、地方でもキャンペーンを盛り上げてくれたりして、売り上げがV字回復するのを経験しました。結果として商品だけでなく、カンロという企業のブランド価値をどのように上げていくかに目を向けられたのは良いきっかけになりましたし、そこで良い成果を出し、ブランドの回復、向上に貢献できたことは自分の中で転機になりました。
トレンドになったピュレグミの人気と課題
――常務執行役員 マーケティング本部長として、日頃どんな仕事をしているのですか。
マーケティング本部の傘下に商品開発の部隊を持っているので、ピュレグミなどそれぞれのブランドの商品に関する打ち合わせが多めです。プロモーションやデザインなど各所の希望を踏まえながら意思決定をしていきます。
ほかには中期経営計画に基づく商品作りやマーケットの選定といった戦略の立案をはじめ、カンロがコーポレートとして外部に発信するメッセージやストーリーを作ったり提言したりすることにも携わっています。
あとは、部外とのプロジェクトチームにも参加しています。例えばピュレグミの海外進出を強化するための分科会や、サステナブル委員会の食の安全・安心分科会でリーダーをしているので、サステナ文脈で顧客起点から商品をどう変えていくかといったプロジェクトに出席しています。
――聞いているだけでも幅広くて、毎日の充実ぶりが伺えます。そんな日頃の業務の主軸となるカンロのマーケティング戦略の特徴とは、どんなことですか。
2016年ごろから「ブランド基軸経営」を打ち出して、新商品の点数を絞り、既存の商品ブランドにリソースを集中させました。おそらくその選択と集中が今、芽となって出ているのだと思います。
画像:カンロ株式会社
――「ピュレグミ」などの人気ブランドもそうですか。
グミについてはおかげさまで今ブームであり、トレンドになっていますので、特別な施策を打たなくてもオーガニックで伸びている状態です。グミは以前から新しい商品が出ては消え…というカテゴリなのですが、カンロはピュレグミほか数ブランドに絞って、コミュニケーションをし続けた結果、定番として残ることができました。
定番になる商品が多いと安定した売り上げとなり、安定した生産体制が整って、利益につながります。これまでも強力そうな競合商品がいろいろと出てきては皆で対応を検討したこともありましたが、結局勝ち残るという経験を何度もしました。だから一喜一憂しないほうがいいし、またこの状況を良しとして思考停止しないようにとも言っています。
――なぜカンロの商品は勝ち残ったのでしょうか。味ですか。
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