スマホひとつで手軽にあと払いができる「ペイディ」(サービス名、社名は「Paidy」と表記)。2014年のサービス開始以降、手続きの容易さなどが好感されて着実にユーザー数を伸ばし、現在では1,300万アプリダウンロードを超えています(2024年2月28日現在)。
そのPaidyでCSO(最高戦略責任者)とCMO(最高マーケティング責任者)を務めるのがハンガリー出身のコバリ・クレチマーリ・シルビアさんです。
まだまだ「現金主義」の多い日本で、シルビアさんはどのようにペイディのシェアを拡大しようとしているのでしょうか。今回はPaidyのコバリ・クレチマーリ・シルビアさんに話を聞きました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)
目次
競合は現金。日本人の「現金主義」に行動変容を
――シルビアさんがどんな方なのか、どういう経緯でPaidyに入社されたのかを教えてください。
私はハンガリー出身で、幼稚園の頃に折り紙が好きになったことをきっかけに日本の文化に興味を持ちました。最初は外交官を目指していたのですが、心境の変化でビジネスの世界に進むことを決め、東大卒業後は広告代理店に戦略プランナーとして入社しました。その後、ニューヨークに渡ったり、イギリスの大学でMBAを取ったり、Netflixで働いたりして、Paidyには2019年12月にジョインしました。私のキャリアは基本的にストラテジストで、これまではグローバルで有名な国内外の大手・有名企業各社のビジネス戦略策定やマーケティングを担当してきました。
――すごい経歴ですね。
経歴はそう見えるかもしれませんが、私はむしろその時代ならではの面白い課題に挑戦してきたキャリアだと考えています。例えば私がNetflixに入社した当時はまだDVDが主流で、ビデオストリーミング、動画ストリーミングの時代が来るとは想像もしていませんでした。その状態でどのように日本の皆さんに行動変容を促してストリーミングの良さを伝え、Netflixのビジネスを成長させるのか。難しい課題ではありましたが、難しければ難しいほどやりがいを感じるタイプです。
Paidyに入るときも同様で、よく「ペイディの競合は何ですか?QR決済ですか?」と聞かれるのですが、ペイディの最も大きな競合は現金です。
――ペイディの競合は現金ですか。
はい、断言していいと思います。日本の皆さんは現金が大好きで信頼もしています。そんな生活者たちにキャッシュレス、しかもペイディのような「Buy Now Pay Later」(バイナウペイレーター、BNPL=あと払い)という新しい決済手段を浸透、定着させるのは大変なことです。でも私は、そういうある種の“文化”や“習慣”を変えて、ユーザーの意識や行動にペイディを追加するいう大きな課題に挑戦することをとても興味深く思います。それがマーケティングの醍醐味です。
――CSO&CMOを務めているとのこと。重責だと思いますが、具体的にどういう仕事をしているのですか。
マーケティングというと、プロジェクトの工程の最後のほうに位置するプロモーションだけを担っているイメージがある人もいると思います。しかし、私はCSO&CMOとして顧客体験全体の責任者を務めていますので、上流から下流まで、つまりプロダクトのアイデアや戦略設計からプロモーションまで主体的に携わって、生活者の皆さまの態度変容、行動変容につなげて、ビジネスの成長に貢献するのが役割です。上流から下流まで一気通貫に全部責任を持って取り組めるから、マーケティングにおいても認識のブレなく、十分に力を発揮して、良い結果が出せるのだと思います。ですからペイディというプロダクトの戦略立案からエグゼキューションまで全責任を取る形で毎日楽しんで仕事をしております。
認知獲得のために注力する3つの施策
――現在アプリが1,300万ダウンロードまで来たとのこと。とはいえ、まだペイディのことを知らない人も多いと思います。認知獲得のために主にどんなことを行っていますか。
主に3つの手段を講じています。1つめはテレビCM。流す時期があったりなかったりしますが、年間を通して定期的に流しています。おっしゃる通り日本では認知が低いと、ブランドやサービスに対する信頼度もなかなか獲得できないですし、テレビも他の先進国と比べるとまだまだ力があります。
ただ、我々としては戦略的にいろいろな媒体に投資するようにしています。理由は、認知度を上げれば質を問わないわけではなく、信頼につながる認知獲得が重要と考えているからです。その観点で2つめに投資しているのがコンシューマーPR(※)です。
※コンシューマーPRの例:「みんなの推し活大調査 2023年」
https://corp.paidy.com/news/article/45YFdnJDoTAAXkI4CIthHY
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