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インタビュー

糖質制限ブーム、人口減少・高齢化時代でも成長を続ける亀田製菓の戦略とは? 亀田製菓 CMO荒生均インタビュー

最終更新日:2023.11.09

The Marketing Native #37

亀田製菓 常務執行役員 CMO 商品本部長

荒生 均

「亀田の柿の種」「ハッピーターン」「ソフトサラダ」をはじめ、強力なロングセラー商品で知られる亀田製菓。新商品も昨年(2021年)「無限エビ」が大ヒットするなど、若年層から高齢者まで幅広い世代から支持されています。

その亀田製菓が昨年、新たにCMOの役職を設け、ロッテ勤務時代に飲むアイス「クーリッシュ」の商品開発担当として同社の世界的な評価獲得に成功した荒生均さんが就任しました。荒生さんは「お客さま起点の戦略設計」を掲げ、亀田製菓でも新たな需要の創造に取り組んでいます。

今回は亀田製菓 常務執行役員 CMO 商品本部長の荒生均さんに話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧 撮影:矢島 宏樹)

※肩書、内容などは記事公開時点のものです。

目次

米菓が迎える今後の需要減とCMOの役割

――亀田製菓にCMO職が新設されたのは昨年(2021年)4月。荒生さんご自身は、なぜCMO職が必要になったとお考えですか。

需要を新しく作り出す必要があるからです。私なりの考えですが、世の中にたくさんの食べ物があふれ、需要より供給が大きく上回っている時代にあって、「新しく飲食する人の数」と「喫食シーン」の2つをどう増やすかが食品業界の課題になっています。その課題解決のために必要なことのひとつは需要の創造です。需要の創造は供給側が従来行っていた4P視点のような商品開発やブランド作りだけでは不十分で、今の時代は「お客さま起点」であることが大前提になります。「お客さま起点」に基づく商品開発、プロモーション、広報などはこれまでのようにそれぞれの部署機能ごとではなく、横串で総合的に対応する必要があり、その目的で設置されるのがCMOなどCxOの役職です。亀田製菓がCMOを新たに設置したのは「お客さま起点で新たな需要を創造しなければ、これからの時代にさらなる成長を続けられない」という危機感が背景にあると考えています。

――「業績が低迷していてV字回復をさせる必要があるからCMO職を設けました」というわけではなく、需要の創造が求められている、と。

そうですね。実は菓子食品の中で今後の需要減が見込まれる最後のカテゴリーが米菓なのです。米菓は60代以上、特に70歳以上の団塊の世代がメインユーザーになっています。亀田製菓の創業は1946年で、米菓産業が大きく成長したのも戦後すぐのこと。1947~49年に生まれた団塊の世代がメインユーザーなのはある意味、当然と言えます。

その下の60代はまだおせんべいを食べますが、50代以下の世代は圧倒的にポテトチップスなどのスナックを好みます。私は前職でロッテにいましたが、ガムやチョコレートは10代、20代のユーザーが多いので、先に少子化による人口減少の影響を受け、需要が減少しています。こうした消費量の減少を「プレミアム」「大人品質」などのコンセプトでターゲットを広げることで売り上げの減少を防いでいました。

一方、団塊の世代に関しては、これまで食品の消費という点で需要が減ったことがほとんどありません。団塊の世代は15年ほど前に定年を迎えましたが、在宅時間が長くなったことで逆に米菓を食べていただける消費シーンが増え、需要を下支えして盛り上がる傾向さえあったくらいです。

その団塊の世代も後期高齢者の75歳をこれから迎えるようになり、米菓を食べる頻度も、1回に食べる量も減っていきます。つまりメインユーザーの需要が減少して回復する見込みが薄い上、次の世代である50代以下は圧倒的にスナックを好むという厳しい局面を初めて経験しているのが米菓業界なのです。新しい需要を作り出して右肩上がりの成長を担保するには「お客さま起点での戦略設計と実行」が極めて重要であり、それをCMOは求められていると認識しています。

亀田製菓で販売されたさまざまな商品のパッケージが同社・東京オフィス内に掲示されている。

――よくわかりました。50代以下に作る新たな需要は米菓が対象ですか、それとも米菓周辺や米菓以外も含めてという認識ですか。

難しいのですが、米菓の周辺には「ちょっとおなかが空いたので何か食べたい」という食シーンでセレクトするスナックやフライドチキン・フランクフルトのようなお惣菜など、いろいろなカテゴリーがあります。このカテゴリーが競合関係になっていますので、そこからどのように米菓の需要を作るかがポイントです。例えば10代、20代の若年層はチョコレートなどの甘い物をよく消費しますが、それなら「米菓とチョコレート」「米菓とキャラメル」のような組み合わせはどうかと考えることもできます。スイーツ系の米菓が少ない現状は、やはり市場の中心が団塊の世代だったためで、若年層に向けた商品開発という意識が十分でなかったことも背景のひとつにあると思います。

米菓に求められる「楽しさ」のベネフィット

――ありがとうございます。先ほど「お客さま起点での需要創造」という話がありましたが、具体的にはどのように取り組まれていますか。

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・逆に「チャンス」に転換できる糖質制限ブームの捉え方
・未来のCMOを目指す若手マーケターに学んでほしいこと

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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