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インタビュー

業績好調なバイク王が取り組むオンラインとオフラインの仕掛けとは?バイク王&カンパニー常務・大谷真樹インタビュー

最終更新日:2022.04.15

The Marketing Native #26

バイク王&カンパニー 取締役常務執行役員

大谷 真樹

中古オートバイの買い取りや販売などを行うバイク王&カンパニーの業績が好調です。

公共交通機関などの3密を回避したい人の移動手段としてオートバイが注目されているとはいえ、ライダー人口が今、大きく伸びているわけではありません。そのような状況でバイク王はどのように業績を伸ばしているのでしょうか。

今回はバイク王&カンパニー取締役常務執行役員・大谷真樹さんに話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、人物撮影:豊田 哲也)

目次

    バイク王がコロナ禍でも業績好調な理由

    ――バイク王の業績が好調です。2018年には業績低迷を指摘する記事がありましたが、その後すぐに立て直して、現在まで利益拡大を続けています。好調な決算の背景には何があるのでしょうか。

    大きく2つの要因があります。1つは「バイクを売るならバイク王」というキャッチコピーでバイクの買い取りを中心にしていたビジネスモデルから、「バイクのことならバイク王」と言われるブランドへの進化を目指し、一般ユーザー向けのリテール販売を強化した点です。店舗数で言えば、62店舗中57店舗、ほぼ9割の店舗でリテール販売を行っておりまして(2020年12月17日現在)、この戦略の転換が業績を押し上げる要因になっています。

    もう1つは、「高市場価値車輌」という原付第2種(51~125cc)以上の取り扱いを増やしたことです。高市場価値車輌は業者間取引のオークションにおける値付きの相場が良く、その点も要因として影響しています。

    ――買い取り一辺倒から販売を含めた総合的なサービスを提供するビジネスモデルに転換したことと、高市場価値車輌を扱う割合を増やしたことが好調な決算の要因である、と。業績悪化に苦しむ業界が多い中で、コロナ禍においても好調な理由は何でしょうか。

    データがないので推測でしかありませんが、当社だけでなく、中古バイクの業者間取引では全体的に「玉不足」になっていると聞きます。「満員電車を避けて、バイク通勤に切り替えたい」とバイクの購入を考えている人、逆に「そのうち通勤でバイクを使うときが来るかもしれないから、今は手持ちのバイクを売るのをやめておこう」と売り控える人がいて、そのアンバランスさが値付きに影響しているのではないかと思います。

    競合との違いは、スキームと伝え方の理路整然さ

    ――集客についてお聞きします。現在はテレビCM、Web、ラジオを中心としつつも、マスメディアの媒体構成最適化を図っていると決算資料にはあります。これはテレビCMからWeb施策にリソースを移行しているという意味でしょうか。

    「顧客動向に合わせている」という表現が正解に近いと思います。買い取りで言いますと、以前はお客さまからの問い合わせ手段はほぼ電話だったのですが、5年以上前からメールが増え、現在の電話利用の割合は2割以下です。

    背景にはスマホの普及があります。買い取りの見積もり依頼は電話を使った口頭のコミュニケーションではなく、スマホで検索して出てきた当社の入力フォームからそのままメールでやりとりするだけで完結する時代になりました。お客さまが圧倒的にWeb経由に移行しているわけですから、当社の受付導線も必然的にお客さまが好むほうに変わっていったということです。ですから、テレビCMなどのマスメディアでお客さまにリーチをするという集客スタイルは今も変わっていません。

    ――テレビCMでバイク王を認知し、スマホで「バイク王」と指名検索する人が多いわけですね。つまり、広告・宣伝の手段はあくまでもCMであって、Webはその受け皿であると。その際、電話ならお客さまを説得する営業担当者の手腕が問われたと思うのですが、メールやLINEの場合はいかがですか。お客さまにバイクを売ってもらえるようテキストで説得するためのコツを教えてください。

    説得するというよりも、当社のスキームをお客さまに正しく理解していただくことが大切だと考えています。ですから、あくまでもバイク業界の相場に基づく買い取りの査定方法をわかりやすく説明することに焦点を当てています。

    ――コミュニケーションのコツのようなものはないのでしょうか。

    例えば、売るのか売らないのか、当社にするか他社にするのか、今日売るか後日に先延ばしするかなどの点でずっと悩んでいらっしゃる方に、どこかの段階で決断したほうがいいのではないかと暗にお伝えすることはあります。

    しかし、それ以上に踏み込むと無理な勧誘と受け取られてトラブルになったり、当社のイメージダウンになったりしかねません。ですから、お客さまが誤認されないようバイクをお売りいただくまでの流れの十分な理解促進に注力しています。

    買い取り査定のためにご自宅にお伺いするスキームですから、説明不足のまま自宅に来て強引にバイクを持っていかれたなんてことになったら大変です。そういうことがないように淡々と、かつ真摯に買い取り相場とスキームをご理解いただくことに努めています。

    ――「高価買取と謳っているけど、高価ではなかった」という類のクレームはこの種のビジネスでは付き物だと思います。それにはどのように対応しているのですか。

    対応するというよりも、申し上げている通り、あくまでもスキームを理解していただくだけです。買い取りの相場に基づき、それぞれのバイクのコンディションに合わせた適切な値段をお伝えするのみですから、それに対して高い、安いというお客さまの感覚値はあると思いますが、当社が出している値段のほうがスキームに基づいている分、当然統一感がありますので、その基準を理解していただくという認識です。

    もちろん、理解していただけない場合もありまして、査定のためにご自宅に伺ってから2割強の方は成約に至りません。その方々は自分のバイクはもっと高いのではないかとお考えなのかもしれないですね。それは致し方ないです。そこに対して、「いやいや、当社の査定は安くありませんよ」と堂々巡りの話をしたところで、お客さまの感覚が容易に変わるわけではないと思います。

    ――では、競合もたくさんある中で、お客さまがバイク王にバイクを売りたいと考えるポイントはどこにあるのでしょうか。

    理路整然としているからだと思います。例えば、私自身が以前、自動車を売った経験を思い返しますと、そのときは本当に何の説明もありませんでした。30分くらい待たされて、担当者に呼ばれて行ったら「○円です」で終わり。コンディションに関する説明もなし。非常に納得感が薄かったことを覚えています。

    その点、当社は問い合わせの段階から、お客さまのバイクは最高値がいくらで、そこからコンディションの劣化分だけ減算方式ですと単純な計算式をお伝えしていますので、わかりやすいのではないでしょうか。実際に当社にバイクを売っていただいたお客さまは、提示した金額に一定の納得感を得られたから決断されたのだと思います。


    ※2020年11月に公開されたバイク王の新CM「新しい相棒編 ロングver」

    「バイク王でもいいかな」と感じてもらうことの大切さ

    ――テレビCMについてお聞きします。11月13日から新CMが公開されました。最近のCMは以前のように「バイクを売るならバイク王」と直接的に訴求するものではなく、バイクのある生活の素晴らしさ、豊かさを訴えるストーリー性のある内容に変わっています。その辺りの変更のポイントやCM制作に対する考え方を教えてください。

    もともとCMに関しては2つの考え方がありまして、1つはレスポンスCM、もう1つがブランディングCMです。以前はほぼレスポンスCMのみでしたが、それはテレビCMの枠が15秒なり30秒なりと決まっていて、短尺で情緒的なブランディングCMを流しても効果が薄いのではないかと考えたためです。

    ところが最近ではYouTubeやTVer、AbemaTVなどのCM枠で、金額が同じなのに尺の自由度が高まる仕様変更がありましたので、以前から流したかったブランディングCMを流せるようになったというわけです。したがって、テレビでは基本的にレスポンスCM、長尺で時間を確保できるフォーマットに関してはブランディングCMという使い分けを行っています。

    ――レスポンスCMとブランディングCMで効果に違いはありますか。

    数字だけで明確に効果の有無を判断するのは難しいと思います。レスポンスCMのほうが即時的な効果は当然見られます。ただし、会社に対する印象は変わりにくく、バイク王に好意的な方は反応してくれますが、ニュートラル、あるいは否定的な方に関しては良い反応が得られにくいようです。

    一方、ブランディングCMは短期的にはレスポンスCMの3~4割のスコアだったとしても、中長期的に考えた場合、潜在的なお客さまにリーチして「バイク王でもいいかな」と思っていただける人を少しずつ増やしていく効果があると考えています。この「バイク王でもいいかな」という感覚が大事で、そんなふうに感じていただける層を積み上げていくことが将来的には当社の利益へと反映されていくと捉えています。

    ――Web施策について教えてください。「バイク 売る」「バイク 買取」で検索すると、リスティング広告ではバイク王がトップに出てきますが、オーガニック検索ですと、比較サイトが上位に来ることが多いようです。その辺りSEOについてはいかがですか。

    SEOを意識していないわけではありませんが、優先順位はリスティング広告よりは低めです。検索結果にリスティング枠が最上位で表示されることもありますし、オーガニック検索で最上位に表示されても、SEOに投じた金額や手数に比例する効果があるかというと、当社の場合、微妙かなと判定しています。優先順位は2~3番手ですね。

    キャンペーンは抽選ではなく、全員当選がポイント

    ――次にキャンペーンの話を教えてください。効果的なキャンペーンの特徴は何でしょうか。

    10年以上前からキャンペーンを行っていて、わかってきたことがあります。それは金額の多寡ではなく、全てのお客さまが対象になるキャンペーンのほうが反応が良いということです。

    以前、バイク王の買い取りサービスに申し込み、成約した人の中から抽選で1人に牛1頭をプレゼントするというキャンペーンも行いましたが、芳しい反応はありませんでした。調査した結果、それは賞品の問題ではなく、当選確率に原因があると気づいたんです。つまり100人に1人、もしくは10人に1人しか当選しないのであれば、自分は100人中99人、10人中9人になるかもしれない、どうせ応募しても当たらないと考えてしまう傾向があるということです。極端な話、「100人に1人、1万円が当たる」よりも、「100人全員に100円が当たる」のほうが反応は良いと思います。

    成約した全員の方に1万円を差し上げるキャンペーンもあるのですが、正直に申し上げると、売っていただいたバイクによっては当社の利益が1万円以上にならないお客さまもいて、その場合、当社は損になってしまいます。しかしそういうことは考えずに、一律でいこうと決めて、もう3年ほどになります。

    ――それは参考になりますね。1件ずつの損得ではなく、全体的な効果を見ているということですか。

    そうですね、キャンペーン全体として評価するようにしています。自分が対象になるかどうかわからない施策よりも、全員を対象にする方向性のほうがお客さまはキャンペーンが持つ「プラスアルファ」の要素を好意的に捉えていただけるようです。

    ※バイク王のオウンドメディア「Bike Life Lab」
    https://www.8190.jp/bikelifelab/

    ライダー人口の裾野を広げるオウンドメディアの取り組み

    ――今後の展望に関して、ライダー人口のことをお聞きします。これはバイク王の将来を左右する重要なポイントだと思いますが、ライダー人口は必ずしも順調に伸びているわけではないようです。例えば御社に入社する新卒の中にもバイクの免許を持っていない方がたまにいると聞きました。業界的にライダー人口の裾野を広げる努力が必要だと思うのですが、どのような取り組みをしていますか。

    一番簡単なのはオートバイに乗っていただくことです。乗っていただけると、「オートバイっていいものだな」と直接的に感じられます。現在、そういう取り組みを行っているかというと、絶版車の試乗会を少し実施しているだけで、多くの人に届くものではありません。

    そこで3年ほど前から新たに部署を立ち上げて始めたのが、オンライン上での取り組みです。「Bike Life Lab」(バイク・ライフ・ラボ)というオウンドメディアやInstagram、つるの剛士さんをイメージキャラクターに起用したYouTubeの「つるの剛士の乗るのたの士」などで、バイクに対するイメージアップを目的としたコンテンツの提供を重点的に行っています。

    ※週2回更新される「つるの剛士の乗るのたの士」(YouTube)
    https://www.youtube.com/channel/UCdEUmBBVkTKexqkF4fH2xTQ

    ――「Bike Life Lab」は、ニュース、コラム、動画などかなり手広く行っていますし、つるのさんのYouTube動画も更新頻度が高いですね。これだけ力を入れる背景と投資対効果はいかがでしょうか。

    背景はバイクのファン層を増やすこと、それ以外に何もありません。従業員によく言うのは「バイク王のファンを作るのではなく、バイクファンの裾野を広げることに注力してほしい」ということです。どうしてもコンテンツを出すたびに宣伝色を強めてしまいがちですが、なるべくバイク王の名前を前面に出さないように指示しています。

    ――オウンドメディアから直接売り上げにつなげようという考えはないのでしょうか。

    今のところはないですね。当社は業界内にある程度の占有面積を持っていますし、中古バイクの世界ではお客さまの利便性は一番高いと自負しています。そのため、バイクファンが増えていけば、中長期的に当社に振り向いていただける方も増えていくだろうと考えて、施策を実行しています。

    顧客満足度の高い「魅力ある店舗」とは何か

    ――オフラインの施策はいかがでしょうか。

    まだ計画段階ではありますが、来期からはおそらくオフライン施策としてリアルイベントを始める予定です。当社の販売店には広い敷地を保有するところがありますので、お子さま向けに電動バイクの試乗会を実施したいと考えています。

    イメージは遊園地のゴーカートです。時速は5㎞から20㎞くらいで、それほどスピードが出るわけではありません。安全性をしっかりと担保した上で、レースではなく、純粋に試乗をしていただいて、「ああ楽しいな」「自転車よりオートバイのほうがいいな」と感じてもらえれば、「将来オートバイに乗りたい」と思っていただけるようになるかもしれません。そんなふうにライダー人口を増やすきっかけをオンライン、オフライン両面で行っていきたいと計画しています。

    ――オフライン施策の舞台となる販売店についてですが、決算資料にも魅力ある店舗づくりに関する言及があります。魅力ある店舗とは何ですか。

    現在の店舗には魅力がある部分と不十分な部分があると考えています。中古のオートバイを購入しに来る方のための店舗ですから、一番大事なのは品揃えであり、その点では他社と比較しても圧倒的に勝っていると思います。

    ただ、品揃えが良ければいいのであれば、極端な話、自動販売機で済んでしまいます。そこで大事なのが販売員のクオリティです。お客さまの欲している内容をヒアリングしたり、オートバイの値段やコンディションに関する不安を払拭する説明をしたりしながら最適な商品を提案する力が求められます。そうした点はこれからも高めていく必要があるとはいえ、ある程度はできていると思います。

    しかし、それだけでは魅力ある店舗とは言えません。例えば、休日にお父さんが1人で来店されるかというと、意外とそうではなく、家族連れや友達同士、カップルで来られる方もいらっしゃいます。そうすると、お父さんは興味津々でも、他の人は暇で仕方がない。「なぜ私が付き合わなきゃならないの?」と不満を感じる人もいるでしょうし、お子さまなら退屈してしまうかもしれません。

    そんなときに、先ほど申し上げたようなオフラインのイベントが販売店で行われていれば、きっと来店した皆さんで楽しんでいただけるのではないでしょうか。

    ――電動バイクの試乗会のようなリアルイベントですね。

    そうですね。試乗会に加えて、焼きそばやホットドッグを売っているフードトラックが何台か並んでいるようなイベントにしたいですね。家族で休日に遊びに来て、興味があればオートバイも買っていただく。そんなふうにお客さまがみんなで楽しめる場所になれれば、「魅力ある店舗」に一歩近づけるのではないでしょうか。それが将来的なライダー人口の裾野を広げることにもつながると考えています。

    ――最後に、今後の方向性を教えてください。海外はバイクの巨大マーケットが広がっていそうですね。

    海外は確かに活況かもしれないですが、ほぼ東南アジアに限って申し上げますと、原付のような低排気量で低価格帯のバイクが多く、当社が主力として扱う高排気量タイプは街中を見渡してもほとんど走っていないのではないかと思います。そのため、将来的にはわかりませんが、現状ではそこまで注力する気は持っていません。

    それよりも国内マーケットの強化に力を入れています。もともと「バイクを売るならバイク王」だったキャッチコピーが今では「バイクのことならバイク王」に変わりました。しかし、当社の店舗数は全国で62店舗しかなく、他社と比較しても多いとは言えません。また、バイクの買い取りや販売はそれなりに知られていても、バイク用品や中古パーツの販売、バイクの修理などトータルでバイクを楽しんでいただく取り組みが十分にできているかといえば、できていないことが多岐にわたります。まず、こうした点を本当にやり切れていると言えるレベルまで持っていきたい。それが当面の目標ではないかと思います。

    ――本日はありがとうございました。

    Profile
    大谷 真樹(おおたに・まき)
    株式会社バイク王&カンパニー取締役常務執行役員。
    1971年生まれ。外食企業を経て95年以降、バイク王&カンパニーのグループ会社3社の設立に参加し、取締役、代表取締役に就任。グループ会社統合に伴い、2000年株式会社アイケイコーポレーション(現バイク王&カンパニー)に入社。2001年取締役、2014年常務取締役に就任、現在に至る。コンタクトセンター管掌。

    早川巧

    記事執筆者

    早川巧

    株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
    Twitter:@hayakawaMN
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