誕生から101年を迎えた「カルピス」。多くの人が一度は「青春」や「初恋」などの言葉で形容される、あの甘酸っぱい味わいを口にした経験があるのではないでしょうか。
圧倒的な認知度を誇るロングセラー商品とあって、新規顧客の開拓、既存顧客の維持、ロイヤルティの強化には、長年受け継がれてきた戦略があり、時代の変化に合わせて新たな施策を取り入れながら独自のマーケティングを展開しているようです。
世紀を超えて、今なお飲まれ続ける「カルピス」は、一体どのようなマーケティングを行っているのでしょうか。
今回は30年以上にわたり、「カルピス」のマーケティングや販売に携わってきた、アサヒ飲料株式会社 常務執行役員マーケティング本部長の相生宏之さんに話を聞きました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、人物撮影:矢島 宏樹)
※肩書、内容などは記事公開時点のものです。
目次
マーケターの視野狭窄を防ぐ、各部門との密な連携
――「カルピス」は2020年で誕生から101年。マーケティングについては、世紀を超えるロングセラー商品ならではの強みや難しさがあると思います。アサヒ飲料の中でマーケティング本部はどのような役割を担い、本部長の相生さんはどんな仕事をしているのですか。
マーケティング本部は、ブランドの育成や強化を目的としたマーケティング活動全般を担う部署です。本部長としての私の役割は、主に短期・中長期の戦略立案と進捗管理、年次計画の実行ですが、特にこだわっているのが部門間の連携です。各部門の意思疎通が互いに腹落ちできるレベルでスムーズに行われないと十分な成果につながりませんので、マーケティング本部と営業部門の連携だけでなく、生産、研究、物流、企画などの各部門が個別最適ではなく全体最適になるよう調整するのが私の役目です。
――マーケティングと営業は一般的に何かと意見が衝突しやすいと聞きます。相生さんはアサヒ飲料販売の社長を務められた経験もありますので、双方の意見を理解できる適任者ですね。
議論が生じることは当然あります。営業現場の目線のほうがお客さまに近い上、お客さまに最も近い存在である小売さんからの情報も持っています。
一方、マーケターはこだわりが強すぎるが故に、視野が狭くなるケースがたまに見られると感じます。個々の施策がお客さまにどのような価値を提供しているのか、お客さまの意識との間にギャップが生じていないか、営業だけでなく各部門の意見を参考にしながら常に注意を払っています。
特に今はSNSの浸透によって、お客さま同士のコミュニケーションが活発になり、新しく発売した商品や企画、テレビCMに対する反応スピードが速くなっています。そのため、各部門の連携を密にして素早く対応することが求められます。
Twitterで話題を呼んだ夏限定パッケージ。3種類あり、いずれも飲む前は左のイラストのように1人だが、飲み切ると右のイラストのように2人が出会える仕掛けになっている。凹凸を極力除いて白い液色が見える面積を増やした「カルピスウォーター」独自のペットボトルだからこそ、より精巧な仕掛けが実現した。(画像提供:アサヒ飲料株式会社)
大成功した夏限定パッケージの背景とポイント
この記事は会員限定です。登録すると、続きをお読みいただけます。 ・生涯飲みたくなるような短期と中長期の強力な取り組み |