1997年の創業当時、従業員数わずか6人のベンチャー企業だった楽天は、今や世界約30の国と地域でおよそ2万人が働くグローバル企業へと成長しました。
河野奈保さんは楽天に2003年に中途入社し、2013年に女性としては最年少の執行役員に就任。2017年には当時最年少で常務執行役員に昇格、現在はCMOも務めています。
河野さんは、世界中から優秀な人材が集う楽天でどのような仕事をしてきたのでしょうか。
今回は楽天の常務執行役員CMO、河野奈保さんに話を聞きました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)
目次
「One Rakuten」を目指し、ユーザーのクロスユースを促進
――多くの社員を擁する楽天で若くして昇進され、現在CMOを務めていらっしゃるとのこと。キャリアが注目される機会も多いと思いますので、あらためて経歴を教えてください。
CMOとしては、少し変わったキャリアを歩んでいるのではないかと思います。CMOの役職には一般的に、メーカーや広告代理店でマーケティング関連の部署を長く経験し、高い実績を残された方が就任することが多いのではないでしょうか。
私はもともとマーケティング志望で楽天に中途入社したものの、最初の2年間は営業、その後は編成部でクリエイティブのUI・UXに携わりました。その後も開発、事業戦略、マーケティングなどさまざまな部署を幅広く経験しながら、現在に至ります。そのため、マーケティングのフレームワークを基にユーザーや競合を分析して戦略を立案するというマーケターの思考ではなく、「マーケティングは経営に近い」という発想のもと、楽天の経営魂、経営の方向性を見極めながらいろいろな部署を横断的に跨いで横串を刺し、企業価値と利益の最大化に取り組んでいます。
――これだけ事業ドメインが幅広く、グループ会社もたくさんある中で、楽天CMOの仕事をひと言で表現すると何でしょうか。
「One Rakuten」の促進です。楽天には現在、70以上の事業が存在しています。ただしユーザーさんからすると、70事業あっても楽天は楽天。ユーザーさんがどこで楽天と接点を持ったとしても、楽天のブランディングや体験は1つであるべきで、それが「One Rakuten」の考え方です。
「One Rakuten」を最も象徴するのが、楽天IDと楽天スーパーポイントです。ユーザーさんがどのサービスで楽天IDを取得し、楽天スーパーポイントを獲得したとしても、それぞれの体験は楽天ならではの個性と高いクオリティで統一されるべきだと考えます。各事業にマーケティング関連の部署は存在しており、それぞれに事業促進を展開していますが、私はそれらの事業を包括的に統括し、横串を刺すことで、1つのサービスではなく、楽天としての統一された体験をユーザーさんに提供できるよう注力しています。それは例えば、UI・UXのガイドラインを作ったり、1つのサービスをご利用いただいているユーザーさんを育成して、楽天エコシステム(経済圏)内の他事業へとつなげるクロスユース促進のきっかけをつくったりすることです。
マーケティングツールの核は楽天スーパーポイント
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