マーケティングは企業がビジネスをリードするうえで、欠かせない重要な要素です。商品やサービスを購入する際に誰もが売り手のマーケティングを体験していますが、それを実践するには、体系化された理論を理解しておく必要があります。
この記事は、『ドリルを売るには穴を売れ』の著者で、ストラテジー&タクティクス株式会社 代表取締役社長の佐藤義典さんに監修いただき、マーケターに必要な基礎知識と押さえておきたい4つの基本理論について解説します。
目次
マーケティングとは?
マーケティングについて、世の中にはさまざまな考え方や定義があります。まずは、マーケティングの言葉の意味と、進化してきた歴史を説明します。
「マーケティング」の意味
マーケティングとは、わかりやすく言うと、お客様の「買いたい」気持ちを作ることです。お客様に「あなたから買いたい」と思っていただいた結果として、あなたの「売り上げ」が上がるのです。
マーケティングと言われてプロモーションのことを思い浮かべる方がいるかもしれませんが、「広告宣伝=マーケティング」ではありません。市場調査、広告制作、営業戦略など、お客様の「買いたい」に関わる全てがマーケティング活動に含まれます。企業のマーケティング部門だけがマーケティングを担っているのではなく、販売企画部や製造部、営業部、宣伝部など、売ることに関わる全ての社員がマーケティングに関わっているのです。
あなたが何か商品・サービスを購入しようとするときは、売り手にとってのマーケティングが起こっています。例えば、昼食に何を食べるか考えたときに、選択肢としてコンビニや近所の定食屋、チェーン系のレストランを思い浮かべ、最終的に「コンビニで弁当を購入しよう」と決めた場合、コンビニのマーケティングが成功していると言えます。
参考:フィリップ・コトラーやピーター・ドラッカーのマーケティングの定義は?
マーケティングと言えば、「マーケティングの神様」などと評されるフィリップ・コトラーや、「知の巨人」として知られるピーター・ドラッカーの定義を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。コトラーとドラッカーがそれぞれどのように定義しているのか、2人の著書から引用し、参考として紹介します。
コトラーは、マーケティングについて次のように述べています。
どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げること。
出典:『コトラーのマーケティング・マネジメント -ミレニアム版』(ピアソン・エデュケーション、フィリップ・コトラー著、恩藏 直人訳)
一方ドラッカーは、著書『マネジメント』で「真のマーケティングは顧客からスタートする」としたうえで、次のように述べています。
実のところ、販売とマーケティングは逆である。同じ意味でないことはもちろん、補い合う部分さえない。もちろんなんらかの販売は必要である。だがマーケティングの理想は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。
出典:『マネジメント[エッセンシャル版]』(ダイヤモンド社、P・F・ドラッカー著、上田惇生訳)
進化するマーケティング
そもそもマーケティングという言葉は、19世紀のアメリカで生まれたと言われています。当時のアメリカは、産業革命や鉄道による輸送網の発展を受け、製品の大量生産ができるようになっていました。大量生産した製品を大量に販売するため、需要を作り出し、効率的に売る工夫をする必要があったのです。そうしてマーケティングの考え方が発展し、理論化、体系化されていきました。日本にマーケティングという言葉 が入ってきたのは、第二次世界大戦終了後と言われています。
インターネットやスマートフォンの普及、ソーシャルメディアの発達などに伴って消費者の行動も変化しており、時代とともにマーケティングもアップデートされています。そうした時代ごとに変化するマーケティングをフィリップ・コトラーが表現したのが、「マーケティング1.0」「マーケティング2.0」「マーケティング3.0」「マーケティング4.0」です。
- マーケティング1.0:製品中心のマーケティング(1900年~1960年代)
- マーケティング2.0:消費者志向のマーケティング(1970年~1980年代)
- マーケティング3.0:価値主導(人間中心)のマーケティング(1990年~2000年代)
- マーケティング4.0:自己実現のマーケティング(2010年代~)
2021年1月には、コトラーの新たな著書『Marketing 5.0: Technology for Humanity』が発売され、「マーケティング5.0」について触れられています。日本語訳はまだ登場していませんが、ビッグデータやAR、機械学習などを活用したマーケティングについて書かれているようです。
ただ、細かい部分での進化はありますが、マーケティングの本質は変わりません。『お客様に価値を提供し、お客様の「買いたい」を作る』という本質をおさえておくことが一番大事です。お客様が「買いたい」と感じた結果として、「売り上げ」が上がるわけです。
マーケティングを考えるうえで重要な4つの理論
マーケティングを実践するには、体系化された理論を理解しておく必要があります。実践や応用に進む前に、まず押さえておきたい基本的な理論は以下の4つです。
- ベネフィット
- セグメンテーションとターゲティング
- 強み・差別化
- 4P
このほかにも知っておいたほうが良い理論や考え方はありますが、マーケティング活動は上記4つの基本理論が土台となっています。
マーケティングの基本1【ベネフィット】
マーケティングの基本となる理論の1つめは「ベネフィット」です。ベネフィットはマーケティングの中心的な概念であり、最も重要と考えられています。
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