スポーツや音楽フェスなどのイベントに車で出かけたら駐車場が満車で周辺は大渋滞。子どもの習いごとで送り迎えするとき、近くに都合よく車を止められる場所がない――そんな困りごとの解決策として注目されるのが、駐車場マーケットプレイス「アキッパ」です。
アキッパは普段使用されていない月極駐車場や、個人が保有する駐車スペースを駐車場シェアサービスとして活用するもので、ユーザーは15分単位で利用可能。駐車場オーナーにもユーザーにも好都合なことから人気となり、今では累計会員数430万人、予約可能な駐車場数・常時4万5000件以上(いずれも2024年12月時点)となりました。
匿名マーケター・みる兄さんの「キーパーソン深掘り」。第6回はアキッパの成長と人気の背景について、akippa株式会社 代表取締役社長 CEOの金谷元気さんを取材しました。
(構成:Marketing Native編集部・早川 巧、写真:矢島 宏樹)
※社名=akippa、サービス名=アキッパと表示
目次
数字だけを追っていた日々の虚無感と創業のアイデア
みる兄さん 以前からアキッパのビジネスに注目していて、金谷さんのお話を伺いたいと思っていました。創業前のことを少しお聞きしますが、最初はサッカー選手を目指していて、そこからビジネスを志すようになったのですか。
金谷 起業前は関西サッカーリーグに所属するクラブの選手でした。クラブにはプロ選手がおらず、アマチュア契約でしたので、求人誌でアルバイトを探して働いていました。
金谷元気さん
アルバイトの面接はよく通るのですが、工場でピッキングの仕事などをするとミスが多く、普通に働くのは向いていないと悩んでいました。そんなとき、100均で売っていた傘を1本300円で売る体験をする機会があり、「面白い」と感じたのです。それから39円でジュースを仕入れて花火大会で150円で売るなどしているうちに、自分は営業が得意だとわかり、フルコミッションの営業代行の会社で働きました。当時は自分の練習以外に高校サッカー部のコーチもしていたので、好きな時間に回れる営業のフルコミッションの仕事は好都合でした。
私は話し方がうまいわけではありません。ただ、営業を重ねるうちに、大事なポイントに絞ってシンプルに説明すれば理解してもらえることがわかり、資料もシンプルでわかりやすくしたら、営業成績が上がりました。
みる兄さん akippa創業のアイデアはどんな感じで出てきたのですか。
金谷 akippaの前は営業代理店を立ち上げ、営業代行事業をしていたのですが、特に目的も見つけられず、いつしか営業数字だけを追うようになっていました。それでは会社が世の中のためになっていないし、何のために働いているのかわかりません。共同創業者からも「何のために会社をやっているのですか」と問われて、私が会社のミッションを作ることになりました。その際、電気が止まって不自由した経験を思い出し、電気のように暮らしに必要不可欠なサービスをつくりたいと考えて、ミッションを「”なくてはならぬ”をつくる」に制定しました。
その上で、当時の社員と一緒に生活の中の困りごとを解決するサービスを考えることにし、困りごとを皆で200個書きだしたら、そのうちの1つに「駐車場が現地に行ってから満車とわかるときがあり、困る」とありました。私自身、カズさん(三浦知良選手)が出場した2011年の「東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ」を見るために、大阪・長居スタジアムに行ったら、空いている駐車場が見つからなくて、中に入れたのが前半30分くらいだったことがあります(笑)。だから、アイデアにすぐピンときました。
みる兄さん
ドミナント戦略の成功と自社営業だけの限界
みる兄さん ビジネスをスタートするときに、駐車場の数をかなり増やす必要があると思いますが、初期はどのように動いていきましたか。
金谷 最初は私が新卒のメンバーと一緒に自転車で走り回り、月極駐車場の「空きあり」という看板を見つけたら電話をしてアポを取って訪問し、アキッパに掲載していただくという個別開拓を大阪と東京で同時に始めました。そのあとグロービス・キャピタル・パートナーズの今野(穣)さんという方にUberの事例を教えていただきました。Uberはサンフランシスコからビジネスを始め、その都市で成立したノウハウで他の都市にも展開し、成功させたそうです。だから、まず1つの都市にドミナント戦略を成立させることが大事だと言われ、地元大阪の環状線の中を約250~500メートル四方くらいに区切って、そこに駐車場を確保していきました。すると、比例するようにユーザー数が増え、それぞれの駐車場の稼働率が高まっていったのです。その結果、大阪だけ黒字化したので、違う都市にも同じ戦略で展開し始めました。
みる兄さん 金谷さんの周りにはスペシャリストの方々が多数集まってきている感じがします。それは当初からビジネスを成長させるためにスペシャリストの力を借りようと考えていたのか、それとも偶発的にすごい方々とお会いする機会があったのか、どちらですか。
金谷 正直に言うと、以前は“営業が全てであり、自分たちは世界で一番優秀”と思っていました(笑)。その後、toCのマーケットプレイスを手掛ける中で、DeNAさんから出資を受けて、3人の方に出向で来ていただいたのですが、「優秀とは、こういうことか」と気づかされました。そのうちの1人は、今ベースフード代表を務める橋本(舜)さんです。世の中にはこんな優秀な人がいるのかとわかり、私より優秀な人を採用しなければと気づきました。
みる兄さん 優秀だと思ったのは、データの見方や戦略など、どういうところですか。
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