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2021.07.19

お笑い専門の音声メディア・GERA(ゲラ)が大人気! スポンサーをつけない意外なマネタイズ方法

Clubhouse、Voicy、radiko(ラジコ)など、有力なサービスが続々と登場しつつある音声メディア。そこに参入し、アプリの継続利用率70%以上を記録しているサービスがあります。それは、お笑いラジオアプリのGERAです。GERAのサイトのトップページには「ラジオを聴かなくても人生に何の支障もありません」と書かれています。人生に必要ないものなのに、なぜ多くのユーザーから人気を集めているのでしょうか。GERAを運営するファンコミュニケーションズの新規事業開発部GERAチームのマネジャー恩田貴大さんにお話を伺いました。

(取材・文 Marketing Native記者 梶塚美帆、画像提供:株式会社ファンコミュニケーションズ)

目次

アフィリエイト広告を扱う会社の強みを生かし、新規参入

GERAは、お笑いに特化したラジオアプリです。2019年12月にYouTubeでチャンネルを開設し、2020年4月にラジオアプリとしてリリース。現在は38番組を配信しています(2021年6月時点)。番組を持っているのは主にお笑い芸人で、中にはM-1グランプリやキングオブコントの出場経験者もいます。芸人に特化していますが、テレビで活躍している人や、舞台で活躍している人、賞レースで実績のある人などによる幅広いラインナップの番組が魅力です。

恩田さんによると、YouTubeでコンテンツの配信を開始した頃は、音声メディアはまだ広く認知されていなかったそう。当時あった音声配信サービスはradiko、ラジオクラウド、Radiotalk、Voicyなどで、「僕たちのようなテック系の企業で音声メディアを運営しているところは少なかった」と振り返ります。

GERAを運営するのは、アフィリエイト広告を中心にインターネット広告関連事業を展開するファンコミュニケーションズです。一見畑違いに見える会社がなぜ、GERAを立ち上げることになったのでしょうか。

「僕たちがサービスを開始した当時は、特定のポッドキャストアプリなどのアプリ名が前面に出ることはあまりありませんでした。一方で、例えば『オードリーのオールナイトニッポン 10周年全国ツアー』の開催など、人気のあるラジオ番組が一コンテンツとして業界内を賑わせていました。ですから、コンテンツに注力しながらアプリそのものにも知名度が出るようにしていけば、お笑いラジオアプリという他にはないジャンルとして収益化が望めるのではないかと考えました」(恩田さん)

「オードリーのオールナイトニッポン 10周年全国ツアー」とは、「オードリーのオールナイトニッポン」から生まれ、2019年3月に開催されたリアルイベントです。最後の公演は武道館で行われ、オフラインとライブビューイングを合わせると、約2万2000人もの動員数となり、話題になりました。

GERAの強みはテック企業であることです。その強みを生かして音声メディア市場に乗り出すことができていると言います。

「数値に対する意識は強いのかなと思います。例えば、聴いてもらいやすい番組の長さや、放送の第一回を聞いた人のうちどれだけの人が第二回を聴いてくれるのか、GERAでイベントを行うときにラジオを聴いてくれた人のうちどれだけ足を運んでくれるのか。データを取り、どこを改善すればよりよくなるのかを議論します。全てを数値化し、コンテンツに対してデータドリブンに運用していけるところは、弊社の強みだと思います」(恩田さん)

アプリ継続利用率70%の理由は、配信時間とアーカイブ

▲新規事業開発部GERAチームのマネジャー恩田貴大さん

GERAは毎日コンテンツを配信しています。番組ごとに配信される曜日が決まっていますが、配信時間は全て20時に固定。これが、継続して利用してもらうためのカギを握っているそうです。

「ラジオは日々の生活で生まれる隙間時間で聴かれることが多いので、習慣に左右されやすいメディアです。ですので、聴くことをいかに習慣化させるかを重要視しています。

全番組を同時刻に配信することも、習慣付けを促進して、継続して聴いてもらうようにするためです。

さらに、20時という時間帯は一般的にもゴールデンタイムですし、Twitterからのアクセスが多く、ユーザーの反応がいいです。配信時間や放送枠の数にとらわれないことも、GERAの強みです」(恩田さん)

イメージとしては、「毎週月曜日になったら『週刊少年ジャンプ』をコンビニに買いに行く」という感覚に近いと恩田さんは話します。実際に、配信後の20時の時間帯が最もアプリの利用率が高く、次が翌日の通勤時間だそうです。

さらに、GERAはオフラインの口コミでもユーザー数を増やしていきました。口コミが広がりやすい理由は、アーカイブがあることと、1回あたりの番組の短さにあると恩田さんは分析します。

「GERAは番組が1回あたり30分と短く、アーカイブも全て残っていて無料で聴くことができます。こうすることで、既存のラジオ番組よりも人におすすめしやすくなると考えました」(恩田さん)

確かに、アーカイブを残していないラジオ番組は多く、アーカイブを残しているとしても人気の番組になると何年も続いているので全部で何百回もあります。すると、「この番組が面白い」と人から勧められても、どれから聴いたらいいのか悩んでしまうリスナーもいるでしょう。さらに、長いラジオ番組ですと1回あたりの放送時間が2時間にも及びます。そうなると、新しく聴いてみたい人にとって、ハードルが高くなりがちです。

「ネットのコンテンツでは当たり前のことですが、アーカイブを残すなどの基本をしっかり押さえながらコンテンツに注力することで、アプリ継続利用率70%を維持できているのだと思います」(恩田さん)

法人のスポンサーに頼らず、個人が番組を支える

▲リスナーが購入できる番組のスポンサー権利

現在、GERAの収益は、法人の広告収入に頼っていません。リスナーによる番組スポンサー権利の購入、応援ボタン、番組グッズの販売でマネタイズしています。

番組スポンサー権利とは、一般のリスナーがスポンサーになり、番組内で名前を呼んでもらうことができる権利です。1100円(税込価格)から購入ができます。

次に応援ボタンは、番組再生中に押すとCM動画が流れるボタンです。リスナーがこのCM動画の広告を見ることで、番組側にお金が入ります。CMが流れている間も番組はバックグラウンド再生されるので、音声が途切れることはありません。

最後に、番組グッズはキーホルダーやトートバックなど、約80商品を扱っています(2021年6月時点)。現在は制作から発送まで、全て自分たちで行っています。芸人やリスナーの希望をヒアリングし、できるだけ両者のニーズをキャッチアップできるようにしているそうです。

中でも番組スポンサー権利と応援ボタンはほかの音声メディアではあまり見られない仕組みです。どのようにアイデアが生まれたのでしょうか。

「これからは『個人が個人を応援する』時代になっていくと考えています。YouTubeなども、個人が応援できるように投げ銭機能が付いています。そう考えたときに、番組スポンサーが個人でもいいのではないか、という仮説を立てました。また、応援ボタンは、漫画アプリの仕組みを参考にしています。CM動画を見ると漫画の次の話が読める仕組みがあるので、それをラジオに応用しました」(恩田さん)

しかし、法人の広告収入に頼らないことにこだわっているわけではないそうです。

「スポンサーに対して忖度をして、面白いことができなくなるのではないかという懸念があったので、これまではスポンサーに頼らずにトライしていました。でも、GERAの『ファンが支える』というコンセプトに沿っていれば、個人も法人も関係ありません。スポンサーのためではなくユーザーのためのコンテンツ作りができて、一緒にファンになって盛り上がってくださるような関係性を、法人とも築いていければと思っています」(恩田さん)

GERAの収益化は課題でもあるとのこと。今後はイベントの開催やファンクラブの結成なども視野に入れ、データに強いファンコミュニケーションズの特性を生かしながらコンテンツを設計していくのだそうです。

目標は週間で100万回再生 そのために街をジャックする!?

▲アプリのトップ画面

GERAでは、テレビでよく見る人気の芸人が番組を持っています。例えば、「女芸人No.1決定戦 THE W」で2020年に優勝した吉住さん。2020年に史上最年長でM-1グランプリファイナリストとなった錦鯉さんなどです。錦鯉さんの番組は、M-1で話題になる前の2020年5月から続いています。

なぜ人気の芸人を見つけてこられるのかを尋ねると、「お笑い好きのスタッフの意見や調査を参考にしています」とのこと。

GERAのスタッフには、GERAとお笑いを愛する人たちが集まっています。デザイナーや開発スタッフを含む運営8人、現場ディレクター4人で38番組を支えているそう。彼らが劇場やライブハウスに足を運び、そこで人気の芸人は誰なのか、アンテナを張って情報収集しているのです。また、昔からのお笑い好きのスタッフもおり、「古くからのファンが多いかどうか」も知っているようです。

最後に、恩田さんにGERAの今後の展開を聞きました。

「アプリ全体での週間の再生回数100万回が目標です(現在の再生回数は非公開)。ユーザー数を伸ばしていくために、僕たちが得意とするインターネット広告以外のこともやっていきたい。例えば、Netflixの『全裸監督 シーズン2』では、宣伝カーを走らせたり、全長約20メートルの山田孝之さんをARで登場させたりと、渋谷の街全体をジャックしていました。そのように、インターネットに頼らずに、ユーザーに知ってもらい、コンテンツを届ける方法を追求していきたいです。偉そうに色々言ってしまいましたが、まだ何も成し遂げていないので精進します」(恩田さん)

インターネット広告の会社が生み出した音声メディア・GERA。事業が大きくなっていっても、ユーザーファーストの文化を保ち続けてくれそうです。お笑いが好きなスタッフたちが生み出すコンテンツと今後の展開に期待します。

 

梶塚美帆

記事執筆者

梶塚美帆

かじつか・みほ
編集者・ライター。児童書専門の編集プロダクションや、昭文社「ことりっぷWEB」編集部、日経BP「日経ウーマンオンライン」編集部に所属。2016年に株式会社ミアキスを立ち上げ、児童書、実用書、web記事などの編集や執筆を行う。
Twitter:@ kajipon__
ミアキス Webサイト:https://miacis.me/
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