オウンドメディアを集客やブランディングなどマーケティングに活用する企業が増えています。オウンドメディアなら、広告のように直接的な宣伝表現を用いることなく、一般的な記事や動画コンテンツに興味を持った人を惹き寄せ、自社製品やサービスに関心を向けさせたり、自社が運営するECサイトなどへ誘導したりすることが可能です。
では、オウンドメディアはどのように活用するのが効果的なのでしょうか。この記事では、オウンドメディアが注目される理由をあらためて整理するとともに、効果的に活用している企業の成功事例をご紹介します。
目次
オウンドメディアが注目される理由
注目の企業が続々とオウンドメディアに参入する背景には、広告に対する消費者の拒否感と、優れたコンテンツを適切に評価する検索エンジンの精度向上があります。詳しく解説します。
従来の広告手段に対する拒否感
オウンドメディアが注目されるようになった背景には、広告に対する拒否反応を回避しつつ消費者に的確にリーチしたいという企業側の考えがあります。宣伝色や売り込み色の強い広告が繰り返し目に入ると、購入意欲を持っていたり、少しでも興味を抱いていたりする人以外、逆効果になる可能性があり、企業イメージに悪影響を与えかねません。広告という手段を取らずに、コンテンツによって効果的に消費者にリーチし、集客やブランディングに役立てたいという企業側の希望を反映したものがオウンドメディアと言えます。
コンテンツ評価の精度向上
Googleに代表される検索エンジンでは以前、キーワードを文章の中に過剰にちりばめたり、ツールで自動生成したりしたワードサラダのような、低品質コンテンツが検索上位に表示されることがありました。
しかし、Googleはその後、ユーザーに役立つコンテンツを高く評価するという指針を掲げ、アルゴリズムを度々変更。低品質コンテンツの検索順位を下げるとともに、ユーザーにとって利便性の高いコンテンツを上位表示させるように評価方法の精度を改善しました。その結果、ユーザーに役立つ情報が適切に網羅されたコンテンツが上位表示されるようになり、企業がオウンドメディアという形でコンテンツを集客やブランディングの有効な手段として活用し始めました。
広告費用の削減
PPC広告などの検索連動型広告はクリックされるたびに費用が発生します。多くの企業が出稿するような人気のキーワードになると、検索結果の1ページ目に表示させるには高額の費用がかかってしまうことがあります。
一方、オウンドメディアの制作・運用において必ず発生する費用は、サイト設立時のイニシャルコストやメンテナンス費用、コンテンツ制作費用、サーバー代などです。そのため、費用を抑えながら効率的にユーザーを集客できる点もオウンドメディアが注目される背景の一つになっています。
拡散効果への期待
役に立った記事、興味深い記事、感動した記事については、ユーザーがTwitterやFacebookなどのSNSでシェアをする可能性があります。つまり、そうした記事を作成すると、コストをあまりかけることなく、口コミによる拡散効果が期待できるということです。
また、ニュース配信アプリなどのキュレーションサービスの中には、SNSでのシェア数の多い記事を積極的に取り上げるものがあります。情報拡散力の強い有力なキュレーションサービスに掲載されれば、大きな露出と広告換算効果が見込める点も企業がオウンドメディアに注目する理由の一つです。
企業が活用できるトリプルメディアとは?
企業がマーケティングに活用できるメディアには、オウンドメディア以外にも2つ存在します。オウンドメディアと2つのメディアを合わせて「トリプルメディア」と呼ぶこともあります。ここでは、その2つのメディアについてご説明します。
アーンドメディア
アーンドメディアとは、TwitterやFacebookなど個人で運用しているSNSやブログ(レビュー記事も含む)が代表例で、一般ユーザーが情報発信するメディアのことです。「アーンド」とは英語の「earned」で、「信用や評判を獲得する」ことを意味しています。たくさんのリツイートや「いいね!」を獲得した場合の情報拡散力が強く、一般ユーザーの投稿が情報の起点になるケースも頻繁に見られます。その半面、内容についても一般ユーザー任せであり、企業としてはややハンドリングがしづらいという点が課題でした。
しかし、近年では「インフルエンサー」と呼ばれる、特定の分野、または社会全体に大きな影響力を与える人物をマーケティングに活用する手法が注目されていて、企業がインフルエンサーの影響力を活用する形で宣伝や情報発信を行うことも一般的になっています。
ペイドメディア
ペイドメディアとは、企業が金銭を支払って情報を掲載するメディアのことで、簡単に言うと広告です。テレビのCMや新聞・雑誌の広告もペイドメディアに含まれます。インターネットの場合は、WebサイトやWebメディア、ブログ、FacebookなどのSNSに掲載されるバナー広告や動画広告、PPC広告が該当します。即時性がある上に、企業の製品やサービスに興味を持っていなかった不特定多数のユーザーにも情報が届きやすいという長所がある一方で、高額の費用がかかりがちな点がデメリットとして挙げられます。
アーンドメディアとペイドメディアについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:
アーンドメディアの基礎知識|ペイドメディア・オウンドメディアとの違い
ペイドメディアの種類と特徴|トリプルメディアはどう活用すべきか
オウンドメディアの活用ポイント
オウンドメディアはどのように活用すれば、企業にとって満足のいく効果を発揮できるのでしょうか。企業がオウンドメディアの運用にあたって注力すべきポイントを解説します。
顕在層と潜在層、それぞれに向けたコンテンツを提供する
顕在顧客層には悩み解決に役立つコンテンツを提供する
人は検索する際、何らかの目的を持っています。悩みを解決するための情報や方法を求めるのは検索目的の一つです。自社製品やサービスが特定の悩みを持った人を対象にしている場合、オウンドメディアにその検索意図に対するアンサー度の高いコンテンツ、つまり悩み解決に役立つ情報が網羅された記事や動画を掲載することで、製品やサービスに興味のある顕在顧客層を惹きつけ、コンバージョンへと導ける可能性があります。
潜在顧客層には読み応えのあるコンテンツ
特定の悩みを持っていない、つまりニーズが顕在化していない潜在顧客層には、まず興味を持ってもらえるようなコンテンツを作成し、オウンドメディアに集客することが大切です。コンテンツを読んでもらうことでオウンドメディアのPV数、セッション数が増加します。そうしたコンテンツを継続的に発信すれば、自社、ならびに自社製品やサービスへの興味関心を潜在顧客層に生じさせ、結果的に顕在顧客層へと育成して、購入や利用、会員登録といったコンバージョンへと導くことができます。つまり、潜在顧客層と顕在顧客層向け、両方のコンテンツを作成することで、幅広いユーザーを集客し、コンバージョンへとつなげる可能性を高めるというわけです。
役立つコンテンツを発信し続ける
自社のオウンドメディアに訪問してくれた人をつなぎ止めておくためには、ユーザーニーズに沿った、さまざまな切り口のコンテンツを発信し続ける必要があります。ユーザーがオウンドメディアを訪れたときに、「自分には必要ない記事が多い」「似たような記事が多くてマンネリ化している」などのネガティブな感情を抱かせてしまうと、そのイメージが先行して訪問回数が減少するおそれがあります。
また、メルマガの活用も効果的です。ユーザーの状態は常に変化しています。メルマガは適切な情報を適切なタイミングで届けることが可能なため、ユーザーをつなぎ止めるだけでなく、興味関心を育ててリピーターにすることもできるでしょう。
自社のブランディングで他社との差別化を行う
自社の特徴やイメージをオウンドメディアのUI、コンテンツの内容などに反映することで、ブランディング効果を高めることが可能です。オウンドメディアが自社のコンセプトに基づいてブランディングされていると、同種類の製品・サービスであっても、競合他社と明確な差別化を図ることができます。
例えば化粧品メーカーなら、自社の化粧品を使ったメイクの方法やコンセプトを反映したおしゃれな動画コンテンツを作成することでブランディングを行い、視聴者のファン化と購買につなげています。
オウンドメディア成功事例
オウンドメディアを効果的にマーケティングに活用している事例をご紹介します。
サイボウズ式
社内の情報共有やコミュニケーションを促進する「サイボウズOffice」「サイボウズ ガルーン」などのグループウェアを開発しているサイボウズ株式会社のオウンドメディアです。コンセプトは『「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイト』。多くのビジネスパーソンに親しまれる普遍性の高いコラムやインタビュー、対談などを中心に発信しています。自社サービス導入などのコンバージョンを直接狙うのではなく、自社の認知度や世界観の普及、クライアントとの関係性強化を一次的なテーマとしています。「サイボウズ式」がビジネスパーソンに広く浸透した結果、販売促進、新卒・中途採用などの点において良い影響が出ています。
※画像出典:サイボウズ式
北欧、暮らしの道具店
株式会社クラシコムが運営するオウンドメディアです。コンセプトについてサイトでは、「北欧のライフスタイルに魅かれ、そのスタイルの本質を取り入れ、自分たちらしく表現する」としています。オウンドメディアとECサイトが一体化しているのが特徴で、コンテンツは「読みもの」と「お買いもの」にカテゴリーが分かれています。平日は毎日、新着コンテンツが発信されていて、内容はインテリアや収納に関する実用的な記事から、新商品のお知らせ、編集部スタッフのコラムまで多岐にわたり、読者を飽きさせない工夫が凝らされています。コンバージョンはECの販売促進です。「雑貨」「北欧」「北欧 雑貨」のキーワードで検索上位になっており、オウンドメディア活用の代表的な成功事例として知られています。
※画像出典:北欧、暮らしの道具店
BBQ GO!
日本ハム株式会社が運営するバーベキュー情報サイトで、食品メーカーが手掛けるオウンドメディアの成功事例として知られています。サイトの公開は2015年3月。ニッポンハムグループの企業理念である「食べる喜び」をバーベキューを通じて消費者に発信するとともに、ブランディング・マーケティングに活用することを目的に設立されました。発信する情報はすべて1次情報で、自分たちで企画・取材し、作り上げたコンテンツにこだわることで、独自性を実現しています。BBQ GO!のKPIについて同社は、「すでにバーベキューというテーマでは国内で最も生活者が利用するサイトに成長しておりますので、現在のポジションを維持し、アクセスシェアを拡大し続けることを一つのKPIとして意識しています」と説明しています。また、全国の多くのバーベキュー場で広告入りの「BBQ GO!うちわ」を設備として置いてもらえるようになったといい、サイトのみならず、リアルな活動展開も積極的に進めていく方針です。
Lidea
「クリニカ」「キレイキレイ」「トップ」「バファリン」などのブランドで有名なライオン株式会社のオウンドメディアです。「くらしとココロに、彩りを。」のコンセプトのもと、「お洗濯」「お掃除」「キッチン」「歯とお口の健康」「健康・美容」「子育て」のカテゴリーごとに役立つコンテンツを発信しています。作成・監修者はライオンが「暮らしのマイスター」と呼ぶ専門知識の豊富な人なので、信頼性と納得感があり、安心して読める内容で構成されています。また、ユーザーが会員登録をすると暮らしのマイスターへ質問したり、会員限定のキャンペーンに応募したりできる点も特徴で、コミュニケーションを活性化させることで、エンゲージメントの強化や商品開発、プロモーション、販売促進に活用しています。
※画像出典:Lidea
目的や効果に合わせて自社に最適なメディア運営を
目的や効果をどこに設定するかによって、オウンドメディアの活用方法は異なります。検索エンジンやSNSからの集客、コンバージョンの活性化やブランディングの向上を検討している企業のマーケティング担当の方は、成功事例を参考にオウンドメディアの運用を始めてみてはいかがでしょうか。また、オウンドメディアに加えてアーンドメディアやペイドメディアを合わせたトリプルメディアを活用することで、さらなる効果が期待できるでしょう。