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インタビュー

オンラインカウンセリングサービス「cotree(コトリー)」が日本最大級となった理由とは?COO・平山和樹インタビュー

最終更新日:2023.06.08

cotree COO

平山 和樹

日本最大級のオンラインカウンセリングサービス「cotree(コトリー)」はスマートフォンやPCを通して、悩みや不安を気軽に相談できるサービスとして、2014年の事業開始から成長を続けています。登録しているカウンセラーの種類は臨床心理士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントなど多様で、悩みの内容に合わせて、利用者が自ら選ぶことができます。cotreeはこれまで日本ではあまり重視されてこなかったメンタルヘルスケア事業に、早くから取り組んでいるITベンチャーです。

株式会社cotreeでCOOを務める平山和樹さんは、会社の認知度を上げるためグロースハック担当として2018年に参画。その成果もあって「オンラインカウンセリング」で入力すると、検索結果では1番目に「cotree」が表示されるようになっています(9月10日現在) 。

平山さんはオンラインとオフラインによる施策で、会社の成長に貢献しましたが、そこにはどのようなマーケティング戦略があったのでしょうか。今回は株式会社cotreeのCOO・平山和樹さんに話を伺いました。

(取材・文:Marketing Native編集部・岩崎 多、人物撮影:豊田 哲也)

目次

カウンセリングを自分事にしてもらう工夫

――仕事や対人関係、人生の悩みなどを、オンラインで相談できるカウンセリングサービスとして有名なcotreeですが、あらためてサービス概要を教えてください。

cotreeはオンラインカウンセリングとコーチングのマッチングプラットフォームを運営しています。登録しているカウンセラーは180人以上、サービスを利用している会員は約3万名ほどです。ビデオ通話による「話すカウンセリング」と、専属のカウンセラーにメッセージ形式で相談できる「書くカウンセリング」の2タイプに大きく分かれます。オンラインカウンセリングを手掛けている会社は10社ほど存在しますが、業界のサービスとしては最大級にあたります。

――平山さんはCOOを務めながら、会社全体のマーケティングも統括されているそうですが、cotreeのマーケティング戦略で重視していることは何でしょうか

ひと言で表現すると、cotreeの世界観を伝えたり、新しい文化や習慣を作ったりすることを重視しています。

そもそも日本では、カウンセリングといってもそれほど馴染みがあるものではなく、利用者は一部に限られていて、市場規模も約300億~350億円とまだ小さいものです。ただ、カウンセリングは仕事や対人関係の悩みなどを自ら掘り下げ整理していく手助けをする作業であり、多くの人にメリットがあります。そのためマーケティングの役割は、多くの人にカウンセリングを「自分事化」してもらい、毎月利用したくなるような新しい習慣を作っていくことになります。

今の市場だけでは限界がありますので、市場の中でパイを取り合うよりも、いかに市場を拡大できるかが基本戦略だと思っています。

また、カウンセリングという業態は、実際に使った人が口コミのように伝えていくかたちのほうが向いていると感じています。弊社がコンテンツを数多く発信して流入を増やす方法も行っていますが、利用者の方たちとともにサービスを普及させていくほうが、結果的に利用者数を伸ばしていけると考えています。

理由としては、UGCによりインプレッションが増加すること、利用者と近いつながりの人たちへの自然なレコメンドがされることが挙げられます。また、カウンセリングやコーチングは、使った人の主観的な体験を元に価値を作るため、ユーザー自身によって語られる言葉のほうが、適切な効果を示していることも理由の一つです。

もちろんメインのキーワードに対してSEOやSNS、出稿のようにビジネスセオリーとして押さえておかなければいけない施策は、粛々とやっていく前提での話です。

――世界観を伝えたり、新しい文化や習慣を作ったりするために、具体的に行っていることは何ですか。

会社のビジョンやミッションに紐付いた発信をしていくことです。例えば、不定期にユーザー会を開いています。我々のサービスを利用してくれた方と、興味はあるけどまだ利用していない人を10~20人ほどお呼びして利用者の感想を自由に話してもらう集まりです。

ユーザー会では利用者ひとりひとりがサービスを使った理由や感想を伝えます。カウンセリングというサービスの性質上、同じ悩みを持つ人が利用したとしても、それぞれ背景や性格などは変わるため、百人いれば百人が異なる感想を持つことになります。そのようにひとりひとりの個別なエピソードのほうが伝わりやすく、新たな利用者獲得につながる傾向にあります。弊社のミッションは「ひとりひとりが自分の物語をよりよく生きるための支えとなる」であり、これにも合致すると考えています。

もちろん、運営側のSNS発信も強化しています。というのも、この業界は利用者のセンシティブな内容をお聞きする仕事なので、運営側の人たちへの信頼が問われます。我々はSNSで仕事にかける思いや新たな事業が生まれるまでの経緯などを発信していますが、これも人となりを理解してもらうことで、サービスに安心感を持ってもらい信頼していただくことが目的です。

――ユーザー会などのオフラインイベントの効果はどう測定していますか。

我々はオフラインイベントの参加者数など定量的なKPIは特に設けていません。申し込み件数を増やすことがメインの狙いではなく、cotreeのサービスを使ったことのある人と使っていない人をつなげることがユーザー会を開く目的です。参加したもののcotreeのサービスを申し込まない人がいても構いません。

今のところ、ユーザー会を開催するたびに、イベント参加者の方から自発的にUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)を発信していただけています。運営側ではなく、参加者の発言だからこそ届く層もありますので、そこから利用者数を広げていけますし、イベントを続けていけば複利的に効果が出てくるだろうと考えています。イベント会場は自社で行うため、運営準備に掛かった時間やコストは少なく済みます。コストがあまりかからないので、ポジティブなUGCの発生は見合うリターンであり、今後もユーザー会は継続していく予定です。

また、参加者の中には「運営側と一度話してみて、様子を見て良さそうであれば申し込もうと思っていた」という方が割といらっしゃいます。オフラインイベントを行えば、そういう方たちがサービスを利用する機会を見過ごさずに済み利用者数の増加が見込めるため、会社にとってもメリットがあります。

さらに、ユーザー会でいただける意見がすごく貴重で、そこから新しいサービス内容を作成するヒントが得られることも多くあります。例えば、cotreeでは先に複数回の利用分をまとめて購入するセット売りのプランがあります。これはユーザー会で出た「3回くらい使って慣れてみないと、自分なりのカウンセリングの使い方が確立できない」という要望に応えたものです。

第一想起を得るための工夫と指標

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・コロナ収束後も持続可能なサービス設計
・利用件数と満足度の両方を担保する

記事執筆者

岩崎多

いわさき・まさる
出版社2社でビジネス誌やモノ・グッズ誌の編集、週刊誌の編集記者を経験し、2019年1月CINCにジョイン。編集長として文房具ムックシリーズを立ち上げ、累計30万部以上を記録。
X:@iwasaki_mn
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