マーケティング従事者にとって重要な仮説思考。しかし、業務を効果的に遂行する上で欠かせない思考法だとわかっていても、実際にはできていなかったり、そもそも仮説思考とは何かを知らない人もいらっしゃるでしょう。
今回、読者から「仮説思考に関する記事を読みたい」とのリクエストを受け、国内通信最大手のグループ企業でマーケティング戦略や中期経営計画の立案を担当するリサーチャーの菅原大介さんに、マーケティング従事者に役立つ仮説思考の方法について寄稿いただきました。
早速、今日から仮説思考に取り組んでみましょう。
目次
【寄稿】
はじめに
私はリサーチャー個人として調査依頼を頂戴することがあり、調査レポートを納品したお客様からこんな言葉をもらうことがあります。
「マーケットについての情報が初心者にもわかるようよくまとまっていて、まさにこれが見たいと思っていたデータでした。ビジネスにつながる示唆出しも豊富に入れてくださってとても助かります。菅原さんはもともとこの分野に詳しかったのですか?」
調査分野についてもともと詳しかったのか?―この答えはYESであることが多いですが、NOのこともかなりあります。初めて調べる物事、流行性が強い事象、こうしたテーマであっても、ピントが合っていないといけません。しかもワンチャンスの仕事で。
マーケティングの仕事では、自分や会社にとって未知の領域が必ず出てきます。多くの場合は専門分野・専業工程を設定してそれに対応していきますが、リサーチの場合は従事者が少ないこともあり、一人で様々な分野と機能に対応できる必要があります。
私がどんなテーマにも取り組む基礎になっているのが「仮説思考」です。仮説の定義は別途詳述しますが、いったん「気づきを得るためにアタリをつけること」とした上で、常に仮説出しを心がけるという点で思考法として捉えていただければと思います。
皆さんも仮説の概念に関しては、本などを通じてご存じかもしれません。しかし、いま現在どれほど使っているでしょうか?マーケティング領域では頻繁に見かける項目にもかかわらず、仕事で使っているか?と自問してみると機会は少ないかもしれません。
実際のところ、本やウェブでよく見かける仮説のPDCAプロセス(情報収集~仮説の設定~実行・検証)だけ知っていても、あまり役立つことはありません。いくらモデルを認知していても、マーケティングの文脈に沿っていないと有効に活用できないのです。
そこで本稿では、「マーケターにとっての仮説思考」を、仮説の定義、弱い仮説と強い仮説、仮説思考の身につけ方などのトピックスに沿って論じてみたいと思います。仮説の理解と実践が皆さんのキャリアをより豊かにしてくれることを祈念しています。
仮説思考とは
はじめに、参考図書『EXPERIMENTATION WORKS ビジネス実験の驚くべき威力』で、「仮説」の定義を確認しましょう。仮説についての説明は様々なところで目にすることができますが、「マーケティング文脈における仮説」を理解することが重要です。
マーケティング文脈における仮説の定義
出典:『EXPERIMENTATION WORKS ビジネス実験の驚くべき威力』(著:ステファン・H・トムキ、訳:野村マネジメント・スクール、日本経済新聞出版、2021年出版)
引用部の一番上の項目を見ると、仮説とは「検定可能な命題」であると定義されています。でもこのままだと抽象度が高くてまだ理解が難しいですよね。この本にはより具体的な理解につながる「強固なビジネス仮説」を説明している箇所があるので、続けてご覧ください。
強い仮説の条件
出典:『EXPERIMENTATION WORKS ビジネス実験の驚くべき威力』(著:ステファン・H・トムキ、訳:野村マネジメント・スクール、日本経済新聞出版、2021年出版)
上記の解説を通じて、今度ははっきりと仮説の概念を捉えることができました。あらためてマーケティング文脈で要約してみると、「強い仮説」の条件とは次のようなものです。
<強い仮説の条件>(要約)
- 調査や分析のデータで得られる
- 原因と結果を変数で特定できる
- 再現可能な形で検証調査できる
- 経営判断や目標指標に寄与する
これらの条件を常に意識して過ごす状態、それが仮説思考になります。逆に言うと、上記の条件から外れた仮説は誰でも立てられるため、自分の考えが「弱い仮説」になっていないか、常に自己点検していなければいけません。
「弱い仮説」は、会社などでの企画会議の場面を思い出していただけると、該当する状態をよく認識することができます。
たとえば、「売上を伸ばすにはどうしたらよいか?」という命題に対して、「売上金額が高いお客様ならさらに買ってくださるのでは?」という意見や、「未購入のお客様に少しでも買ってもらえばいいのでは?」という意見が出てきます。
これらの意見はもっともなのですが、誰もがわかりきっている事柄であり、そのままだと「弱い仮説」です。会議や商談の場では、その先が言えないとたぶん相手にされないでしょう。
同書では、「仮説の意義・重要性」を知るうえで役立つ、アマゾン創業者ジェフ・ベゾスのこんな言葉が引用されています。
失敗と発明は、切っても切れない仲の双子のようなものです。有効だということがすでにわかっているなら、それは実験ではありません
もし失敗の規模が拡大していないのなら、実際に評価指標の目盛りを動かすほどの発明力は育っていないことになります
出典:『EXPERIMENTATION WORKS ビジネス実験の驚くべき威力』(著:ステファン・H・トムキ、訳:野村マネジメント・スクール、日本経済新聞出版、2021年出版)
強い仮説を使ってどのように仕事に工夫を凝らすか?―ここが担当者の役割であり、仮説を駆使しないと成果を上げられない大きな仕事の醍醐味でもあります。そのためにも、日頃から仮説思考を自分の中に「常駐」させておきましょう。
仮説が弱い人や組織に見られる3つのパターン
前項の「弱い仮説」の例として登場したような「売上が伸びない」という命題に対して、「セールを実施したらいいのでは」「クーポンを配布したらいいのでは」「TVCMを打ったらいいのでは」という意見は、客観的に見て考えが浅いとわかります。
仮説が弱い人あるいは仮説が弱い組織には共通した特徴があります。仮説が弱いと言うと、マーケティングの文化が浸透していないからそうなっているようにも思えますが、意外にもデータ分析の知見や経験を有している場合にもこの傾向は見られます。
本項では、仮説が弱い人や組織に見られる3つの典型的なパターンを見ていきましょう。
※なお、以下の特徴は、状況によっては必要な考え方でもあり、決して全否定するものではありません。ただいずれも強い観念を含んでいるので、仮説思考を取り入れるにあたりバランスを取る必要があります。
仮説が弱い人や組織の特徴(1)
「数字ですべて判断する」
- 論理性を重んじる人や組織に多く見られる
- 目標値の改善=目標達成という考え方
- 自分たちの物差しで測れる仮説だけになる
論理性を重んじる人や組織に多く見られるのが、「数字ですべて判断する」という傾向です。数字による裏づけは仮説においても判断においても重要ですが、データ分析の場面ではそれが行き過ぎると逆に数字と論理が思考停止を呼び込むこともあります。
たとえば、事業目標や経営指標の中に、商品やサービスの推奨意向を問うNPS(Net Promoter Score。顧客ロイヤルティを測る指標)のスコアを設定している企業は多くあります。このスコアが前年比あるいは前月比をクリアしていると、「成長している!改善できている!」と自己評価につながっていきます。
NPSはユーザーアンケート結果をもとにモニタリングするため、スコアがポジティブに変化していることは確かに歓迎すべき状況です。しかし一方で、実際の店舗やお客様センターへの苦情の声が多いならば、微細な数値の変化に喜んでもいられません。
「目標値の改善=目標達成」という考え方が強いと、自分たちの物差し(設定指標)で測れる物事しか検討の視野に入らなくなるため、スコアがポジティブな時もネガティブな時も、実際には自分たちがその理由を把握できていないことが多々あります。
また、目標指標が複数存在している場合、概して担当者にはネガティブな項目を無くしたいという心理が働きます。それは心がけとして正しいのですが、取り組みの優先度が不得意な方に向かう懸念もあり、数字がもたらす情報には十分注意が必要です。
仮説が弱い人や組織の特徴(2)
「なぜ?と相手に委ねる」
- 自己研鑽に熱心な人や組織に多く見られる
- 答えは相手が持っているという考え方
- 既知の情報が集まり一般的な仮説に留まる
自己研鑽に熱心な人や組織に多いのが、「なぜ?と相手に聴けばわかる」という傾向です。まだ消費者自身も気づいていない内なる声に期待して、生活者・消費者に「なぜ?(そうするのか・しないのか)」とストレートに尋ねることを重んじる考え方です。
前提として、トヨタの実践で有名な「なぜなぜ分析」は、製造業の生産管理工程で生まれた考え方であることを理解しなければなりません。なぜ?と繰り返し尋ねて真因に迫るアプローチは、品質管理の場面で訓練された状態で使うには確かに役立ちます。
しかし、それをそのままマーケティングに応用するのは要注意です。「なぜ、あなたは使わない・買わないのですか?」と消費者に尋ねても、「もっと知られていたら使います」「もっと安かったら買います」などの答えが返ってくるのが通例だからです。
ここから導かれる仮説は、「TVCMを打てるとよい」「インフルエンサーに告知してもらえるとよい」「セールを実施するとよい」「クーポンを配布するとよい」のような、「一般的にはそうした手法が有効である」という程度の浅いものばかりになります。
このヒアリング方法は、皮肉にも目立って既知の情報が集まるため、出てくる仮説は他社と同質化していく流れに向かいます。それはマーケティング文脈における仮説の趣旨である「イノベーションを目指す」ことと矛盾してしまうので注意しましょう。
仮説が弱い人や組織の特徴(3)
「先入観を一切持たない」
- 完璧主義の人や組織に多く見られる
- すべてを理解して解説したいという考え方
- 時間がかかるうえ仮説の焦点がボケやすい
事業計画に完璧主義で臨む人や組織に見られやすいのが、「先入観を一切持たないようにする」傾向です。アンケート調査を行う時にも、「とりあえずひと通りのデータを見たい、それをもとにいろいろ考えたい」というプロジェクトオーナーは多くいます。
この考え方に則ったプロジェクトでは、調査・分析項目は無数に増えていきます。全領域、全地域、ファミリー・若年層、使う理由・使わない理由、自社のこと・他社のこと…すべてに網をかけて理解して、あわよくばすべて解決したいというねらいです。
このねらいはもっともなのですが、実際には時間がかかります。基本的には設定した項目数の分だけ分析・考察を行う負荷を伴いますし、情報量が膨大になるためデータの焦点がボケやすく、特別な技能者しか要点にまでたどり着けない懸念もあります。
データ分析では調査方式に合った思考法を取ります。マーケティング・リサーチはサンプル調査方式が主なので仮説思考を、データベースなどでのビッグデータ分析は全数調査方式が主なので網羅思考を、それぞれ思考法として使い分けるようにします。
先入観はすべての場面で一律に排除するのではなく、調査手法や分析手法に応じて注意します。調査自体は第三者の専門家に運営を託して、自分はできるだけプレーンな状態でデータと接する方法もあるので、仮説を取り込む余地は残しておきましょう。
仮説思考を身につける3つのメリット
私たちが日頃携わっているマーケティング業務において、仮説思考を身につけるメリットは次の3点に集約することができます。
仮説思考を身につけるメリット(1)
「優先度が明快になる」
- 思考や行動の選択肢を自分の中で整理できる
- 実行~検証に係る作業や時間を最適化できる
仮説思考では、まず自分の中で思考や行動の選択肢を発散・集約しながら整理することができます。そのため、同僚と企画や業務をすり合わせる時にも、実行~検証に係る作業や時間をどう振り分けるか、イニシアチブを持って調整することが可能です。
たとえばアンケート調査で言えば、テーマ・対象者・質問などの要素は仮説がなければどんどん膨れ上がったり、あるいは形を変えて何回も同じ調査を行う羽目になりますが、仮説により優先度が明快であれば必要な項目に集中して臨むことができます。
仮説思考を身につけるメリット(2)
「深い考察ができる」
- 企画や提案に寄与する示唆を多く導き出せる
- 示唆の充実が成果となり次の期待を呼び込む
仮説思考では、対象物を深く考察することが可能です。調査範囲を粒度の細かい部分に特化していても、その部分について考えるもとになる情報量があるため、企画や提案に寄与する示唆を多く導き出すことができ、ビジネスの出口側で成果を残せます。
仮に少し調査範囲を絞りすぎてしまう場合も問題ありません。その場合は追跡調査ですぐに情報を拡充するだけです。逆に広範に調べて何も示唆を出せなかった場合、「もうこの仕事はしなくていい」という評価になり、業務の継続が不可能になります。
仮説思考を身につけるメリット(3)
「決断経験値が上がる」
- 主体的な関わり方により決断経験値が上がる
- 独自色・補完色の振り幅を広く行き来できる
サイバーエージェントで長らく人事領域を管掌されている曽山哲人さんは、成功するマネジメント人材の要件に「決断経験値」を挙げています。リスクを取って自分で決めた判断に対して、その結果と向き合い続ける経験が成長の秘訣だということです。
仮説思考が備わっていると、自分の意見が常時あるため、主体的な関わり方により決断経験値を上げることができます。また、独自色を出すだけでなく、プロジェクトに足りないアイデアを補うこともできるので、補完色を出す動き方も可能になります。
仮説の立て方
ここまで、仮説の定義、仮説が弱い人や組織の特徴、仮説思考のメリットを説明してきました。では、仮説とはいったいどこから生まれてくるのでしょうか?
仮説は企画や提案など事のはじめに立てるものですが、仮説検証のプロセスだけを知っていても仮説のもとになるアイデアは生まれて来ません。そして肝心要のこの部分は、「情報収集力」「顧客理解力」などの言葉でよく濁されてしまいます。
実は「分析の観点」と「仮説の観点」はほぼ一致しています。すなわち分析時に気づきを得やすい観点を仮説に応用すればいいのです。初めのうちは、どんなテーマにも万能な観点である(1)人物、(2)生活・習慣、(3)言葉の3点を押さえておきましょう。
日頃から仕事に関する情報に接する時にこの3つの観点を意識しておきます。そしてプロジェクトの企画や提案を行う時には、この分析の観点を仮説の観点に取り込んでいきます。次のように自問自答してみると、スムーズに考えやすいです。
分析の観点=仮説の観点
- 人物=どのような属性・立場の人が対象となるか?
- 生活・習慣=どんな暮らしの中で、どんな物事が注目され、どんな工夫があるのか?
- 言葉=どんな社会的な関係性の中で、どんな表現や感情が生まれているか?
個人の立場でも簡単にできる仮説のトレーニング方法として、SNS上のUGCを意識して眺める方法はおすすめです。任意の関心テーマについての投稿を見ながら、「おそらくこういう人がハマっている・向いているのでは?」という仮説出しを行うのです。自分と関連性があり、具体的な事象を対象とするので練習に最適です。
一例を挙げると、私はInstagramでテーマに関する象徴的な画像を見ながら仮説出しを行うことをリサーチ活動に採り入れています。たとえば最近では、「グランピング」(キャンプの設備環境が整った施設でのアウトドア体験)を検索していました。流行の兆しはあるものの、体系化された記事情報は少なかったからです。
ハッシュタグ検索で画像の一覧を見ると、「ドーム型の施設」「夕方~夜の撮影」「周囲の冬景色」などが目立っています。これらの情報をもとに、次のようにマーケティング・ビジネス活動につながる仮説出しを行っていきました。(もちろん、検索時期のほか、検索時のアルゴリズムの影響をある程度考慮しています)
ハッシュタグ検索で得られた仮説
- ドーム型の施設→リゾート立地かつファミリータイプの宿泊設備を伴うので、キャンプ場でも客単価が高いのではないか?
- 夕方~夜の撮影→アウトドア施設の中でもさらに星空観察や夜景観賞に最適な環境になっているのではないか?
- 周囲の冬景色→キャンプのピーク期(夏・秋)ではない冬場にも利用ニーズがあるアウトドア業態なのではないか?
観察で得たこれらの情報を、今度は統計データと突き合わせていきます。すると、キャンプ場としては高単価の利用料であること(平均でも約2万円)、星空観察が人気アクティビティであること(バーベキュー・キャンプファイヤーに次ぐ順位)、冬場でも利用意向が安定していることや年越しキャンプでの利用が上昇していることがわかってきました。
こうして前出の分析の観点:(1)人物(どのような属性・立場の人が対象となるか)、(2)生活・習慣(どんな暮らしの中で、どんな物事が注目され、どんな工夫があるのか)、(3)言葉(どんな社会的な関係性の中で、どんな表現や感情が生まれているか)を意識して仮説出しを行い、人気の要因をデータで検証していくことで、ビジネスにつながる示唆を得ることができました。(実際に私はアウトドア情報の広報活動により、リサーチを通じた業務指標であるメディア露出実績などを得ています)
※詳細は以下に記載する私のnoteをご覧ください。(note運営公式の「マーケティング記事まとめ」にも選ばれています)
▼リサーチャーが毎日行っている、「調べる習慣」の身に付け方
https://note.com/diisuket/n/n80b79847745f
仮説を立てる時には、このように背景・文化・思想・育ちなどを読み取ろうとするアプローチを重視します。最終的には数値で論理的に検証していきますが、そのデータを企画する観点は人々や物事の動向に沿った強い仮説であるべきです。
上記の例で見ていただいた仮説思考は、実際の調査シーンでは設計・集計・分析すべてに作用していきます。世の中のすべての事象に目を向けるのは難しいので、まずは関心テーマを設定するところから始めてみてください。
おわりに
本稿の最後に、仮説を磨くためのリサーチの方法論についても触れたいと思います。情報を集める時の方法や経路がワンパターンだと、集まる情報もワンパターンになっていきます。強い仮説をつくるにあたりこの状態は避けたいもの。定性調査のリサーチャーから評判が高い『消費者理解のための 定性的マーケティング・リサーチ』には、次のような一文があります。
大きな方法論的道具箱をつくりあげて、取り掛かっている問題またはリサーチ・クエスチョンに適したツールを選択しなさい。自分の道具箱の中にハンマーしか入っていないときは、それで叩くしかないという古いことわざがあるが、問題の内容にかかわらず、ここでも言えることである。完全な道具箱には、観察、深層インタビュー、投影法、エスノグラフィー、ビデオグラフィー、ネトノグラフィー、内容分析、データマイニングなど、ここで説明された定性法はもちろんのこと、定量ツールも含まれる。
出典:『消費者理解のための 定性的マーケティング・リサーチ』(著:ラッセル・ベルク/アイリーン・フィッシャー/ロバート・V・コジネッツ、訳:松井剛、碩学舎・中央経済社、2016年出版)
このように、私たちは様々な調査の方法論を認識して、そして使い分けていく必要があります。たとえ自分自身がすべての手法に精通していなくても、それぞれの専門家と連携したり、他の方法を代用しながら対応の幅を広げていくことが大事です。
マーケティングのツールや分析法はとても便利なものですが、それ自体は意味を成しません。リサーチ活動とは、自分が立てた企画の答え合わせであり、消費者との知恵比べです。そのベーシックスキルとしての仮説思考を磨き上げていきましょう。
Profile
菅原 大介(すがわら・だいすけ)
リサーチャー。
上智大学文学部新聞学科卒業。新卒で株式会社学研ホールディングスを経て、株式会社マクロミルで月次500問以上の調査を運用するリサーチ業務に従事。現在は国内通信最大手のグループ企業でマーケティング戦略・中期経営計画の立案を担当する。
会社では小売・サービスの分野を中心に年間1,000ページ超のレポートを作成しており、従業員数100名~1,000名の企業におけるリサーチ組織の立ち上げ経験があるほか、自身でもセレクトショップの開業事業部長を務め、調査と事業の両輪を担う技量を併せ持つ。
個人でも「リサーチハック」をキーワードに、ビジネスや日常生活で使えるリサーチスキルを普及させる活動に取り組み、noteや講習会、マーケティング・調査メディアでの連載が好評を得ている。主な著書に『売れるしくみをつくる マーケットリサーチ大全』『新・箇条書き思考』(ともに、明日香出版社)がある。
Twitter:@diisuket
note:https://note.com/diisuket
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCF3YJLv0X_Lf3A0rdjNoR-A
参考図書
『EXPERIMENTATION WORKS ビジネス実験の驚くべき威力』(著:ステファン・H・トムキ、訳:野村マネジメント・スクール、日本経済新聞出版、2021年出版)
『消費者理解のための 定性的マーケティング・リサーチ』(著:ラッセル・ベルク/アイリーン・フィッシャー/ロバート・V・コジネッツ、訳:松井剛、碩学舎・中央経済社、2016年出版)
『最強のNo.2』(著・曽山哲人、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2013年出版)