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2020.12.03

【寄稿・西村マサヤ】組織の目的はリーダーの「不安を解消すること」ではない。失敗から学んだ「組織は戦略に従う」の鉄則

チームでマーケティング施策を実行し、成果を上げるには、リーダーのマネジメント能力が求められます。プロジェクトリーダーやマーケティング部門のリーダーなどを務め、成果を上げている人は、チーム運営においてどのような点を意識しているのでしょうか。

今回は、子宮頸がん検診啓発プロジェクト「Blue Star Project」や指輪を通じて関節リウマチを啓発するプロジェクト 「Ring Again」など、複数のプロジェクトリーダーの経験を持つDeNAの西村マサヤさんに、チームマネジメントをテーマに寄稿していただきました。

目次

【寄稿】
こんにちは、DeNAの西村マサヤです。子宮頸がん検診の受診率向上を目指す「Blue Star Project(ブルースタープロジェクト)」という疾患啓発プロジェクトの責任者をしています。

今回、Marketing Native編集部の方から、「成果を出すためのチーム運営の秘密」についてまとめていただきたい、というご連絡をいただいたのですが、私は困り果ててしまいました。

チーム運営、すなわち「マネジメント」と呼ばれる領域になりますが、実は私はマネジメントが大のニガテなのです(先日、会社の評価面談でも自己評価「×」で提出したほど…)。なのですが、そんな「マネジメント下手」な私が苦悩し、試行錯誤した過程をシェアすることで、同じくマネジメントに課題意識のあるマーケターの方々の力になれるかもしれないと思い、この記事を書くことにしました。

そもそも疾患啓発とは何か

あまり馴染みのない分野かと思いますので、まずは「疾患啓発」について簡単に説明いたします。

疾患啓発とは疾患についての正しい知識・理解の普及を通じて、早期発見・早期治療を促し、健康寿命の延伸を目的とした取り組みを指します。一般的にはTV CMやマス広告を中心に行われますが、DeNAではこれまで培ってきたインターネットマーケティングやコミュニティ施策のノウハウを活かし、主にSNSでのマーケティングに注力しています。

その中のひとつ、「Blue Star Project」がテーマとしている子宮頸がんは、毎年たくさんの人がなくなっているにもかかわらず、多くの人が検診を受けていない、という課題があります。

このような現状を変えるべく、2019年に啓発プロジェクトを立ち上げました。

リーダーの不安を解消するのがチームの目的ではない

とはいえ、Blue Star Projectの立ち上がりは順風満帆とは言えませんでした。一般的に、新しいマーケティングプロジェクトを立ち上げる際には、同カテゴリの事例や競合を調査し、ある程度の全体像を掴んだ上で、戦略を練っていきますが、我々が行っている疾患啓発、それも子宮頸がんの領域では参考になるベンチマークが全く存在しませんでした。そもそも、疾患啓発マーケティングに関する書籍やセミナーなどはほとんどなく、何もかもを自分たちで考え、0から構築していく必要がありました。

しかし、当時未熟だった私は、リーダーである自分がビッグピクチャーを描ききれていないにもかかわらず、「相談」と称していろんなマーケティングに関わる人達を会議に招集し、気づけば会議は大人数、誰が何の役割を担っているかもわからず、ゴールも戦略も曖昧なまま関係者が増えていく…という、完全な負のループにハマっていました。

このような事象、あなたの会社でもありませんか?

なぜ私は闇雲に関係者を増やしてしまったのか。それはひとえに、私の「不安の現れ」でした。人を増やし、いろんな意見を取り入れていけばいつしか戦略は見えてくるはず、そう考えていたように思います。しかし実際はそんなはずがなく、むしろ人が増え、指針もブレ続けた結果、戦略の完成とは程遠い状況…。

そんな私を救ってくれたのは、「ある言葉」でした。

「組織は戦略に従う」

迷走していた時期、何かヒントになるものはないかと参加したマーケティングセミナーで出会ったのがこの言葉です。

「組織は戦略に従う」

あとで調べてみたところ、この言葉は、ハーバード・ビジネススクール名誉教授のアルフレッド・チャンドラーという方の著書のタイトルのようでした。私はこの言葉を知って、脳がスパークしました(笑)。当時の私は、この言葉と真逆の方向に向かってしまっていたのです。

組織の目的は「戦略の遂行」です。なので、戦略の前に組織を作ることはあってはならないし、戦略の変更によって柔軟に組織形態も変わっていくべき。このシンプルな原理原則を、私は失敗を通じて学びました。

「組織は戦略に従う」と出会って以降、改めて戦略を考え、やることとやらないことを明確にした上で、DeNAのいろんなスペシャリストを招集しました。DeNAは、事業部や部署を超えてプロジェクトチームを作っていく文化があるのですが、そのおかげでゲームやスポーツなど、普段はヘルスケアとは異なる分野で活躍しているスペシャリストに助けてもらうことができました。(今これを書いていて思いましたが、目的ベースでプロジェクトチームが組成されていくDeNAの文化こそ「組織は戦略に従う」を体現しているように思います。なぜ私はそれを事前に学べなかったのか…)

そんなすったもんだを経て始まったBlue Star Projectですが、開始から約1年でInstagram上のハッシュタグ投稿が約4,500件を超え、少しずつではありますが、Blue Star Projectというブランドを応援いただけるようになってきました。また、Blue Star Projectは広告を通じたコミュニケーションではなく、ブランドを応援いただく方々の発信を軸としたコミュニケーションを展開しており、2カ月ごとに行っているキャンペーンではたくさんの方が子宮頸がん検診の重要性を「自分の言葉」で語ってくださっています。ヘルスケア系の広告は、表現の規制が厳しいため、どうしても刺さりづらくなってしまうのが課題なのですが、Blue Star Projectは広告ではなく、「応援いただく方々の発信」を促進することで、子宮頸がん検診についての「生の声」をソーシャル上に増やし、その発信を見た方々に意識変容・行動変容していただく、というコミュニケーションを基本戦略としています。

実はInstagramは、初期は注力していませんでした。ですが、開始以降Instagram上でプロジェクトを応援する投稿が徐々に増え始めた点に着目し、戦略を大きくピボットしました。この戦略変更も、リーダーである私が意思決定し、その後コミュニティマネジメントに長けたメンバーをアサイン、結果公式アカウントのフォロワー数が順調に増加するなど、まさに「組織は戦略に従う」を実行できたケースでした。

Blue Star Projectを応援する方々から集まった声

「ことに向かう」マーケティングチームであり続けるために

最後に、私が組織運営において心がけていることをシェアさせていただきます。それは、メンバーとのコミュニケーションにおいて「意見1 : 質問9」のルールを守ることです。

プロジェクトの責任を負う立場である以上、どうしても細部にまで意見したくなってしまうのがリーダーの心情。ですが、リーダーが細部について意見しすぎるようになってしまうと、メンバーはどんどん萎縮してしまいます。いわゆる「マイクロマネジメント」です。

このケースで最も恐ろしいのは、各メンバーが「一番良いと思うもの」ではなく、「リーダーである僕が良いと思いそうなもの」を提案するようになることです。これではチームを組んでいる意味がありません。
なので私は、「意見」ではなく「質問」をすることを心がけています。「どういうロジックでこの結論に至ったのか」「前回施策の振り返り、学びは何なのか」「そのアイデアはどんなビジネスドライバーに影響を与えるのか」とにかく質問をたくさんします。重要な論点について徹底的に質問した後に、「それらを踏まえると私はこうしたほうが良いと思う」と10%だけ意見を述べます。この比率と順序を履き違えないこと、これが「強いチーム」を作る秘訣だと私は考えています。(とは言ったものの、実は私が意見することは10%もなく、先のような質問をしていけば「そう考えるとA案よりB案のほうがいいですね」といった具合に、メンバー自身がより精度の高い解に気づいてくれることがほとんどです。こうした傾聴型のコミュニケーションを通じて、チーム全員の「考える力」を鍛えていくことも、リーダーの重要な役割だと考えています)

マーケティングに関わる方々、特に不安に押しつぶされそうなリーダーにとって、この記事が少しでも参考になることを願うとともに、チーム内レビューで「いや、あなた意見7割くらいしてますよ」とツッコまれないことを祈り、ペンを置きたいと思います。

参考記事
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Profile
西村マサヤ
大学卒業後、新卒で株式会社ディー・エヌ・エーに入社。健康経営推進部署・CHO(Chief Health Officer)室の立ち上げやウォーキングアプリのプランナーなどを経験。現在は「Blue Star Project」のほか、指輪を通じて関節リウマチを啓発するプロジェクト 「Ring Again」のリーダーも務める。Ring Againではローンチ日である11月22日に「#いい夫婦の指輪事情」をトレンド入りさせたほか、YouTubeで公開している動画は10日で4万再生を突破。
個人でもTwitterやnoteを中心にマーケティングに関する情報を発信しており、オンラインサロン「マーケ放送室」の運営も行う。
Twitter:@masayaquality
note:https://note.com/masayanishimura

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