信念と情熱の男でした。クラフトチョコレート「Minimal– Bean to Bar Chocolate –」(ミニマル)を展開する株式会社βace代表取締役の山下貴嗣さんです。
日本の現状と未来に対する問題意識の高まりからコンサル会社を飛び出し、「Bean to Bar」との出合いを経て起業。カカオ豆への徹底したこだわりと反省、そこから導き出した2階建ての考え方、男女両方の顧客を取り込む戦略、フェイス・トゥ・フェイスで行うコミュニケーションの重要性など、マーケターに役立つヒントをエネルギッシュに語っていただきました。
今回はMinimal-Bean to Bar Chocolate-代表(βace代表取締役)山下貴嗣さんのインタビューをお届けします。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)
目次
広告費ほぼゼロで、1500媒体に出演できた理由
――山下さんの記事は検索すると大量に見つかります。それもそのはずで、これまで1500媒体くらいに出演していて、しかも広告費は少数のプレスリリース以外、ほとんどかかっていないとのこと。なぜそんなにたくさんの露出が可能になったのでしょうか。
1つはラッキーな要素がありました。最初のプレスリリースは創業直後の2014年12月に配信したのですが、「Bean to Bar」(※)というスタイルが欧米で注目され始めたタイミングだったため、いきなり200~300媒体に掲載されたんです。当時は東京でしっかりと工房を構えているところがほとんどなく、私たちに取材が殺到したのだと思います。
※カカオ豆から板チョコレートができるまでの全工程を自社工房で一貫管理して製造する手法。
もう1つは切り口の工夫です。まずはチョコレートの世界で新しいポジションを取りたいと考え、Minimalの独自性を強調しました。例えば、正しいかどうかは別として、横軸に「日常」と「非日常」、縦軸に「モノ消費」と「コト消費」を設定し、「世の中にはこれまで2種類のチョコレートしかありませんでした。モノ消費の日常がコンビニなどで買える普通のお菓子、モノ消費の非日常が高級ブランドで、選択肢はモノ消費に限られていました。Minimalはモノではなくコト消費にポジションを置いていて、産地や作り手のストーリーで選ばれる新しい形のチョコレートを目指しています」と訴えたのです。その結果、「Bean to Bar」で第一想起のポジションを獲得できました。
創業4年目からはチョコレートだけに限定せず、ビジネスとしての側面をアピールする方向に戦略を移し、それまで控えていたビジネス、マーケティング、IT系のメディアへ露出するようにしました。結果的にチョコレート業界の枠を超えていろいろなチャネルからMinimalの存在が認知され、「面白そうだから取材しよう」という流れにつながったのだと思います。
――戦略的ですね。
2020年は「エシカル」という文脈で、すでにプレスリリースを配信しました。我々は今年を「エシカル元年」と位置づけています。日本ではこれまで「エシカル」「フェアトレード」という概念はあまり重視されてこなかったのですが、欧米ではミレニアム世代の人たちを中心に活発な動きがあります。日本でも「エシカルジュエリー」の経営者に話を聞くと、20代の人たちが「エシカル」という言葉を検索して来店する流れがこの1年ほど高まっているそうです。そのため、我々もチョコレートの世界で「エシカル」認知の1番目を取っておこうと考えました。すでに大手メディアに取り上げられるなど、反応も上々です。
Minimal訴求のポイントは「2階建て」
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