横浜DeNAベイスターズは2019年、球団創設70年の節目を迎えます。ベイスターズはDeNAがオーナー会社になった2011年以降、観客動員数、ファンクラブの会員数などが右肩上がりに増え続け、今では「チケットが取りにくい」と言われるほどの人気球団へと成長しました。
躍進の背景には、正攻法のマーケティング戦略を着実に実行したことに加え、球場内にとどまっていたサービスの取り組みを球場の外にまで広げるという、文字通り発想の転換がありました。
ベイスターズという球団は2019年のシーズンをチームとともにどう戦い、これからどのように事業を拡大していこうとしているのでしょうか?
今回は横浜DeNAベイスターズ執行役員 事業本部本部長の木村洋太さんに話を聞きました。
(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、人物撮影:長谷 英史)
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限界を超えて、2019年をベイスターズの年に
――いよいよ2019年のシーズンが開幕です。横浜DeNAベイスターズにとって創設70年となる節目の年ですが、選手だけでなく、観客動員数が右肩上がりで成長を続ける球団経営側にとっても、勝負の年になりますね。
全ての面で、70年間で一番の状況を目指します。チームのシーズンスローガンも「Go Beyond the Limit.」、「限界を超えろ」 になりましたから、観客動員数などの数字面だけでなく、お客様の体験価値という点でも、「こんな感動、初めて!」という刺激や熱狂をご提供したいと考えております。
ⓒYDB
確かに2018年の観客動員数が球団初の200万人を突破したことで、「2018年は最高だった」という声もあります。一方でお客様の中には「1998年に日本一になったときの熱狂には、まだ届いていない」という声もたくさんあるんです。
ですから、自分たちが定量的に示せるようなデータや、想像の範囲内の施策だけでは弱いと考えています。そうではなく、横浜の街中がベイスターズの熱狂に包まれるような、いやもっと、日本中が「2019年はベイスターズの年だったね」と言われるような旋風を巻き起こすことが、70年の時を超えた「Go Beyond the Limit.」だと捉えています。
図版作成:Marketing Native編集部、データ提供:ⓒYDB
――それにしても、2011年にDeNAがオーナー会社になってから観客動員数は右肩上がりに増え、2018年は2011年の1.8倍となる200万人を突破。横浜スタジアムの動員率は97.4%に上り、「チケットが取りにくい」とまで言われています。ファンクラブの会員数も2011年の14.4倍に当たる92,461人に達しました。チームは2018年4位に終わったのに、一体どんな手を打ったのですか?
戦略ターゲットの設定と、「どのように見られたいか」という「ブランド像」の再定義という極めて正攻法のマーケティングを行い、そこから導き出された結果を社内に浸透させていっただけです。
戦略ターゲットの設定は2013年夏頃から取り組み始め、Webやモバイルを使ったアンケートをはじめ、対面インタビューを行って定量的なデータを集めました。その結果、我々が施策を打つべき戦略ターゲットは、20代後半から30代の比較的社交的な男性で、例えば週末にはスポーツ観戦だけでなく、家族でバーベキューやキャンプに行ったり、音楽フェスやライブに出掛けたりするアクティブな方々だという姿が見えてきました。我々は彼らを「アクティブサラリーマン」と名づけて、社内に浸透させ、イベントやプロモーションなどの集客施策をターゲットに向けて打っていきました。
「アクティブサラリーマン」は、球場に女性や子供を連れてきてくれるという点も大きなポイントです。これまで我々がさまざまな情報を発信しても女性や子供にダイレクトに届くことはあまりなかったのですが、施策実施後に増加した女性や子供のお客様に話を聞くと、「男性に誘われてきた」という回答を多数得られました。そのため、全体的な観客動員数の底上げを図るという意味でも、引き続き起点は「アクティブサラリーマン」に置くべきだと考えています。
ⓒYDB
ブランド像の再定義と、すり鉢状の興奮
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