毎年冬になると、アメリカでは「スーパーボウル」が開催されます。米国最大のスポーツイベントとして国民の多くが注目し、ニュースなどでも取り上げられます。そんなスーパーボウルが、数多くの大企業が広告を出稿するマーケティングイベントでもあるのをご存じでしょうか。
今回は、広告効果にまつわるデータや、今年話題になったCMなどとともに、NFLスーパーボウルの実態についてご紹介します。
目次
米国最大のスポーツイベント・NFLスーパーボウル
NFLスーパーボウルは、毎年注目を集めるアメリカ最大のスポーツイベントです。多くの企業がスポンサーとして広告を出し、マーケターにとっても一大イベントとなっています。
第52回はイーグルスが優勝
スーパーボウルはプロアメリカンフットボールリーグNFL(National Football League)の優勝決定戦で、第52回を迎える2018年は2月4日 (日本時間:2月5日)に開催されました。
今回の優勝決定戦は、2017年に優勝したAFC(American Football Conference)のニューイングランド・ペイトリオッツと、NFC(National Football Conference)のフィラデルフィア・イーグルスとの対決でした。試合はミネソタ州ミネアポリスで行われ、結果は41対33でイーグルスが勝利し、スーパーボウル初優勝を飾りました。
スーパーボウルはマーケターとしても最大のイベント
スーパーボウルは試合の結果だけでなく、スポンサー企業のCM広告も注目を浴びるため、マーケターにとっても一大イベントとなっています。
試合中に流れる広告はイベント前にも取り上げられることが多く、終わった後もFacebookやニュースメディアなど、あらゆるチャネルで拡散されます。そのため、スポンサー企業は専用のCMを作成したり、試合後のプロモーション企画を行ったりするなど、総合的なマーケティング戦略でブランド力の向上を図ります。
『USA Today』のAdmeterでは、というリアルタイムで放送された広告のアンケートを取っており、企業はその評価を見ることができます。
スーパーボウル広告の影響力
スーパーボウルに広告を出稿すると、どれくらいの影響力があるのか、現地で発表されているデータとともにご紹介します。
スーパーボウル広告枠の費用
Sports IllustratedのRichard Deitsch氏によると、スーパーボウルの試合中に流れる広告枠は、30秒単位で平均約500万ドル(約5億5,000万円) と、世界で最も高額のコマーシャル枠とされています。
An NBC Sports ad exec said today that the network will average more than $5 million for a 30-second spot for the Super Bowl.
— Richard Deitsch (@richarddeitsch) January 11, 2018
スーポーボウルの視聴者数は米国1位
2010年以降、スーパーボウルは米国最大のテレビイベントとして、毎年米国内だけでも1億人以上の視聴者数を抱えています。
また、TV By The Numbersの「2017年最も視聴されたテレビ番組」の調査では、スーパーボウルが約1億1,000万人で1位を獲得しています。
画像出典:The 100 most-watched TV programs of 2017: Super Bowl LI laps the field TvByTheNumbers
同月に開催されたアカデミー賞は4位で約3,300万人と、スーパーボウルの約1/3の視聴者数です。
また、調査会社のYouGovが2016年に実施した調査では、回答者1,000人のうち、26%の人がスーパーボウル最大の魅力について「The commercials(コマーシャル)」と答えています。
画像出典:Poll Results: Super Bowl YouGov
「The game itself(試合そのもの)」と答えた人(35%)に次いで選ばれるということは、視聴者の多くがコマーシャルにも注目してスーパーボウルを見ていると想定できます。
さらに、同じくYouGovが2017年に行った調査では、約50%の回答者がスーパーボウルで広告を放送するブランドに対してイメージが「高まった」答えています。そして、約29%の人が放送された広告を見て、商品を購入したと回答しています。
画像出典:Data shows why the Super Bowl is TV’s main event for advertisers YouGov
全年齢層で、半数近くの人のブランドイメージが向上したことがうかがえます。
画像出典:Data shows why the Super Bowl is TV’s main event for advertisers YouGov
18歳から54歳の回答者の30%以上が、広告により商品を購入したと答えています。
アメリカの総人口のうち約1/3が視聴者となるスーパーボウルは、スポンサー企業にとって、直接視聴者へリーチするだけでなく、SNS上での反響、商品購入に至るコンバージョンなども見込めることから、重大なイベントと認識されているのでしょう。
2018年に注目を集めたスーパーボウル広告
ここでは、スーパーボウル開催前と放送中に注目を浴びた広告を、11個ご紹介します。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は3つのコマーシャルをスーパーボウルで放送しています。
Good Odds
1つ目は、パラリンピックのアルペンスキーで金メダルを8度獲得している、カナダのローレン・ウールステンクロフト選手を紹介する内容です。2018年冬季オリンピックとパラリンピックをサポートしていることをアピールしています。
※動画は公式アカウントで現在非公開となっています(2021年2月時点)。
One Team
2つ目はハーフタイムショー直前に放映されたコマーシャルです。スーパーボウルやオリンピック、パラリンピックなど、スポーツを通じてアメリカが「一つのチーム」であることを伝えています。
Mobility Anthem
3つ目は、トヨタ自動車が取り組んでいる「すべての人にモビリティを」を紹介するコマーシャルです。
※動画は公式アカウントで現在非公開となっています(2021年2月時点)。
アマゾン
Alexa Loses Her Voice
AIアシスタントのAlexa(アレクサ)が声を失ったという設定のコマーシャルです。イギリスの俳優サー・アンソニー・ホプキンス、カリスマシェフのゴードン・ラムゼイ、オーストラリアの女優レベル・ウィルソン、ミュージシャンのカーディ・Bなど、わずか1分30秒の間に各界の著名人が登場します。
※公式アカウントでは、現在、一部のみ公開となっています(2019年2月時点)。
コカ・コーラ
The Wonder of Us
コカ・コーラは12年連続で、スーパーボウル広告を放映しています。「The Wonder of US」は試合の第4クオーターで放送されました。
※動画は公式アカウントで現在非公開となっています(2019年2月時点)。
PepsiCo
Pepsi Generations “This is the Pepsi”
次々と移り変わる場面に世代を代表するスターを登場させて、タイムスリップしたような感覚を演出。世代を超えて愛される存在としてペプシコーラが表現されています。また、ペプシコはペプシコーラブランドとは別に、Doritos(ドリトス)とMountain Dew(マウンテンデュー)を一つのCMで紹介しています。
※動画は公式アカウントで現在非公開となっています(2018年7月時点)。
DORITOS BLAZE vs. MTN DEW ICE
俳優のピーター・ディンクレージとラッパーのバスタ・ライムスによるDoritosの新商品紹介の後、モーガン・フリーマンがミッシー・エリオットとMountain Dewの新商品を紹介しています。
※動画は公式アカウントで現在非公開となっています(2021年2月時点)。
M&M’S
Human
M&M’Sは2014年以来5年ぶりにスーパーボウル広告を放送しました。俳優のダニー・デヴィートが登場する30秒のコマーシャルは、自社のYouTubeページで製作背景も公開されています。
※動画は公式アカウントで現在非公開となっています(2019年2月時点)。
Michelob Ultra
ビール製造会社のミケロブウルトラは3年連続でスーパーボウル広告を獲得しています。2パートに分かれた30秒のコマーシャルは、俳優クリス・プラットが主役として登場します。
1パート目:The Perfect Fit ft. Chris Pratt
2パート目:I Like Beer
※動画は公式アカウントで現在非公開となっています(2019年2月時点)。
Budweiser
Stand By You
2017年に起きた自然災害で被害を受けたカリフォルニア州やプエルトリコに、支援物資を送ったエピソードをもとにしたコマーシャルを放送しました。
※動画は公式アカウントで現在非公開となっています(2019年2月時点)。
Stella Artois
ステラアルトワは、俳優のマット・デイモンが共同創設者を務める非営利団体「Water.org」とのコラボレーションコマーシャルを放映しました。
スーパーボウル広告は一年に一度のマーケティングイベント
NFLのスーパーボウルは、アメリカンフットボールの優勝決定戦として全米で注目され、視聴者数の多さから、スポンサー企業のマーケターにとっても重大イベントとなっています。
各企業のブランドイメージやメッセージを考慮した上で、さまざまな広告が、試合が放送される約4時間に集約されます。
アメリカのコマーシャルが日本のテレビで放送される機会はあまりありません。しかし、スーパーボウルでの放送終了後もSNSやYouTubeを通じて拡散し、米国外にもつながっていく可能性は十分にあるでしょう。