2018.02.06

アメリカで話題のネットニュートラリティの動向とWebマーケティングに与える影響

アメリカで近年注目を集めているのが、「ネットニュートラリティ」という概念です。ユーザーの利用状況や企業の状況によって、配信されるコンテンツやユーザーのアクセスを制限してはならないとする考え方で、日本にはまだ影響はありません。しかし、今後のアメリカの動きによっては、日本のWebマーケティングにも影響が出る可能性があります。

そこで、今回は、ネットニュートラリティの歴史をはじめ、近年の撤廃に向けての動向、Webマーケティングに及ぼす影響について解説します。

目次

ネットニュートラリティ(インターネット中立性)とは

ネットニュートラリティという言葉は、どのような背景で登場したのでしょうか。基本的な考え方と、これまでの歴史についてご紹介します。

ネットニュートラリティの考え方

New York Timesによると、ネットニュートラリティとは、動画やアプリケーションを含むインターネット上のあらゆるコンテンツを平等に、つまり「ニュートラルに扱う」という考え方です。そのため、インターネットサービスプロバイダ(ISP)は、配信されるコンテンツによって制限をかけてはならないとされています。制限の内容としては、コンテンツによって表示速度が減少したり、利用料金が増減したり、アクセス拒否されたりといった例が挙げられます。

アメリカでネットニュートラリティの撤廃が起こると、企業が配信する情報量によってISP側でネットワーク利用料金を定めるなど、コンテンツの内容や利用している端末、アクセス方法により情報を差別化することが可能となります。すると、企業の規模やネットワーク料金の支払能力による待遇と競争率、ISPの判断基準でエンドユーザーが閲覧できるコンテンツが定められるようになります。配信側の費用増加に伴い、ユーザーにもインターネット料金やサービス料への影響が発生すると想定されています。

These companies can now slow down their competitors’ content or block political opinions they disagree with. They can charge extra fees to the few content companies that can afford to pay for preferential treatment — relegating everyone else to a slower tier of service.

出典:Net Neutrality: What You Need to Know Now Save The Internet

ISPが提供するインターネットサービスは、アメリカのFCC(連邦通信委員会)の管轄で規定が定められています(2018年2月時点)。

ネットニューニュートラリティの歴史

「ネットニュートラリティ」という単語自体は、コロンビア大学教授のティム・ウー氏が2003年に初めて使用した言葉です。しかし、その考え方の基本はラジオや電話回線の中立性を定めた1934年の「Communication Act of 1934」という法律にまでさかのぼります。

「Communications Act of 1934 Title II」では、電気通信のコモンキャリアを公共サービスとし、利用目的や内容についての差別を禁止しています。

インターネットの利用も同じ電気通信として区分されていましたが、2002年にケーブルモデムサービスの定義(情報サービスへ)が変更されたことにより、ISPはFCCの規定管轄外となりました。

2008年、大手ISP企業のComcast社は、ファイルシェアリングサービスBitTorrent利用者に対し、アクセス制限や速度制限を行いました。FCCはネットニュートラリティをもとにComcast社に妨害行為の禁止などを命じましたが、2010年に米連邦控訴裁判所で権限外として棄却されました。

2014年には、ComcastユーザーによるNetflixの通信速度の減少により、Netflix社からComcast社へ高速配信サービス料が支払われ、インターネット利用に関する企業別の取引が発生しています。

2015年2月、オバマ大統領政権下でインターネットサービスは公共サービスの一種となり、ISP企業はFCCの規定に従うことが裁判所の判断により下されました。FCCの新しい規定上、合法なコンテンツのアクセス制限およびブロードバンド速度の減少、企業用の有料高速レーンによる優先付けが禁止されています。

再び開始されたネットニュートラリティ撤廃の動き

トランプ大統領がFCC委員長に任命したアジット・パイ氏により、ネットニュートラリティ撤廃議論が再び巻き起こっています。

ネットニュートラリティの近年の動向

2017年1月、トランプ大統領によって、Verizon社の元弁護士などの経歴を持つアジット・パイ氏がFCCの委員長として任命されました。2017年4月、パイ氏はFCCによって2015年に下されたISPに対するネットニュートラリティの規定を撤廃する企画をスタートしました。

パイ氏は、「アメリカ政府のレギュレーションによるISP企業の規制ではなく、ISP企業の透明性によるインターネットサービスユーザーへの選択肢を広げる」
と発言しています。

“Under my proposal, the federal government will stop micromanaging the internet,” Mr. Pai said in a statement. “Instead, the F.C.C. would simply require internet service providers to be transparent about their practices so that consumers can buy the service plan that’s best for them.”

出典:F.C.C. Plans Net Neutrality Repeal in a Victory for Telecoms The New York Times

デイ・オブ・アクション(2017年7月12日)

2017年7月12日、Apple、Google、Netflix、Reddit、Amazon、Twitter、Microsoft、Facebookなどの大手IT企業が、ネットニュートラリティの撤廃とFCCの決断に対して抗議活動を実施。各企業のWebサイトや掲示板で、ネットニュートラリティの撤廃に関する情報がポップアップやバナー、動画の配信などによって、ユーザーに拡散されました。大手IT企業はFCCに対し、オープンなインターネット環境の継続を訴え続けています。

Google

Googleは自社の公式ブログでネットニュートラリティによるインターネット上の平等な競争とその重要性を発言。

Facebook


Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグも自身のFacebookページでネットニュートラリティの保護を主張。

Twitter


Twitterも自社のブログでネットニュートラリティとイノベーションへの関連性を表明。

ネットニュートラリティの撤廃が承認

2017年12月14日、FCC内での採決により、2015年に定められたネットニュートラリティ規定の廃止が承認されました。ただし、新規定によるISPのサービス変更はまだ導入されておらず、カリフォルニア州やオレゴン州、ワシントン州など複数の州の法務長官による取り消し抗議が進行中です(2018年2月時点)。

州法によるネットニュートラリティの撤廃に対する採決を含め、今後もアメリカ国内での議論は続く模様です。

ネットニュートラリティがWebマーケティングに及ぼす影響

ネットニュートラリティは、まだアメリカ国内のみでの議論ですが、Moz社のランド・フィッシュキン氏は「ネットニュートラリティによるマーケティングへの影響は大いに考えられる」と発言しています。フィッシュキン氏は、ネットニュートラリティの廃止により、新興企業や中小企業の検索エンジンマーケティングの方針自体が変わる可能性を自社のブログで述べています。

閲覧可能なコンテンツへの影響

ISPが提供するサービス内容、および閲覧可能なコンテンツがユーザー別に選別された場合、企業がインターネット上で配信するコンテンツがユーザーに閲覧されない可能性があります。そのため、良質なコンテンツを配信するだけでは、サイトへの流入を獲得するのが困難になることが想定されます。そうした動きに伴い、今後作成されるコンテンツの種類自体の変動もあるかもしれません。

 マーケティング費用への影響

ユーザーに自社のコンテンツを閲覧してもらうため、企業別の有料高速レーンを活用することも想定されます。フィッシュキン氏によると、公平に情報を提供している検索エンジンも、今後は自社サイトのマーケティングを行うにあたって、有料高速レーンの使用による費用の見直しが求められる可能性があるといわれています。

企業同士の競争への影響

フィッシュキン氏は、ネットニュートラリティは企業同士の競争にも影響を与える可能性があると語っています。ユーザーが閲覧可能なコンテンツの選別や、有料高速レーンの活用によって、競合との差別化を図れる可能性があるためです。

しかし、新興企業や中小企業などにとっては、大手企業が占有する領域や分野で同等に競争するのが、資産上困難になる可能性があると主張している。

ネットニュートラリティを取り入れたブランディング

ハンバーガーチェーンのBurger King社は、自社のCMやブランディングコンテンツに、時事的に旬なネットニュートラリティの情報を取り入れています。ネットニュートラリティの情報を拡散するだけでなく、ユーザーの興味を引くバズコンテンツとしてPV数を獲得し、さらには自社の取る立場を示すことによって、視聴回数約400万回以上(2018年2月時点)という大きな反響を得ています。

Burger King | Whopper Neutrality

今後もネットニュートラリティの動向に注目が必要

ネットニュートラリティは、アメリカのインターネット環境を大いに変える可能性がある現在進行中の改革です。アメリカで最終的にどのような決断が下されるか、また、日本国内にどのような影響が及ぼされるかはまだ明確になっていません。しかし、2018年の動向によっては、Webマーケティングにも影響をもたらすことが予想されます。今後もネットニュートラリティの動向から目が離せません。

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