facebook twitter hatena pocket 会員登録 会員登録(無料)
インタビュー

松本健太郎がグロースXで学んだことと、生成AI時代に対する考え方

最終更新日:2024.10.17

The Marketing Native #59

グロースX 執行役員 マーケティング責任者 兼 コンテンツ責任者

松本 健太郎

『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』などのヒット作で知られる松本健太郎さんが、18冊目の著書『マンガでわかる数式なしのデータ分析』を出版しました。副業で18冊もの著書を連続で執筆しているマーケターは、そういないのではないでしょうか。

一方、本業では今年(2023年)1月に人材育成のSaaSサービスなどを展開するグロースXへ入社、マーケティングとコンテンツの両責任者を兼任しています。代表取締役社長の津下本耕太郎さんをはじめ、取締役COOの山口義宏さん、取締役CMOの西井敏恭さんらが在籍するグロースXで、松本さんはどのような経験を積んでいるのでしょうか。1年近く働き、マーケティングに対する考え方などに何か変化はあったのでしょうか。

今回は、グロースX 執行役員 マーケティング責任者 兼 コンテンツ責任者の松本健太郎さんに、18冊目の著書の執筆背景をはじめ、グロースXでの仕事内容や入社後に学んだことなどを取材しました。生成AI時代に対する考えも聞いています。

(取材・文:和泉 ゆかり、構成:Marketing Native編集長・佐藤 綾美、撮影:永山 昌克)

目次

課題は目線や問題定義のズレにあり

――18冊目の著書『マンガでわかる数式なしのデータ分析』の刊行、おめでとうございます。執筆するに至った背景を教えてください。

昨年(2022年)出版した前著『データ分析力を育てる教室』で大きな反響をいただき、オーム社の方からオファーをもらったことがきっかけです。今回の著書は、前著を読んだ方々からいただいた感想を反映するなど、ブラッシュアップした内容になっています。

データサイエンティストというと、2012年にHarvard Business Review誌上で「21世紀で最もセクシーな職業」と言及されたこともあり、以前はスーパーマンのような人をイメージする人も一部でいらっしゃいました。しかし、そのような人材を外部から連れてくるのは多くの企業にとって難度が高いこともあり、コロナ禍に入った2020年頃から、社内でデータ分析ができる人材を育成するニーズが高まり始めました。データ分析に対する過度な期待が削ぎ落ちた分、地に足の着いた分析が求められるようになった流れの中で出版できたことが、前著のヒットにつながったのだと思います。

今回の『マンガでわかる数式なしのデータ分析』ではあらためて、データ分析はデータサイエンティストだけでなく、すべてのビジネスパーソンに必要であることと、決まった法則に則ってデータ分析を進めていけば、ビジネスの実務において高い成果を生み出せることを伝えています。

――今回の著書において、これまでと差別化したポイントはありますか。

具体と抽象の塩梅に独自性を持たせたことです。数式を一切使わないデータ分析について、前著はやや抽象度が高い内容になってしまったと感じているため、今回は漫画を通じて具体を表現しました。

――確かに漫画なので読みやすく、一気に読み進めることができました。数式に拒否反応がある人でも抵抗なく読めると思います。

データ分析というと「数学が苦手」「文系だから…」と苦手意識を持ってしまう人も多いのではないでしょうか。そんな苦手意識のあるような方でも、漫画によるストーリー要素をふんだんに盛り込んだことで、最後まで読みやすい一冊となっています。

本書の中でも説明していますが、データには数字だけでなく、言語や映像なども含まれます。つまり「数字が代表的だが、情報を表現できていて、解釈できるならどういった形式でもOK」なのです。

いざ社内でデータ分析に着手しようとなったとき、初めての際は何から始めればよいかわからない人も多いでしょう。まずはExcelを使って分析する方法を学ぼうとする人もいるかもしれません。しかし、ビジネスの実務に必要なデータ分析とは、意思決定を行うためのプロセスを指すので、問題を定義して問いを作成し、仮説を構築することが大切だと私は考えています。

――松本さんはこれまでも再三、データ分析における「問題」「問い」「仮説」構築の重要性について言及してきました。それらの点について、周囲のマーケターやアナリストを見る限り、どこに課題があると感じますか。

立場によってゴール設定が異なり、経営側と現場の目線が合いづらくなっていることが課題だと感じます。これはそれぞれの立場で、見ている世界や持っている情報量が異なるために生じることです。これまで私が副業で支援してきた企業も含めて、「何を問題とするか」が関係者間でかみ合っておらず、つまずいているケースが多く見られます。

例えば、ウェビナーを開催する際に、メール経由の申込者数が少ないケースを考えてみましょう。申込者数だけに注目すれば、情報が届く人を増やし、参加を再考してもらうために、追加でメールを送信するといった施策をとるかもしれません。しかし、経営者の考えるゴールが「お客さまに最適かつ重要な情報を届けること」だとしたらどうでしょうか。この場合「ウェビナーの申込者数が少ない=お客さまが求めている情報(ウェビナーの内容)を届けられていない」と考え、やみくもに申込者数を増やそうとするのではなく、異なるテーマのウェビナーを企画するといった選択肢をとるかもしれません。

問題を解決する際は、自分が知っている範囲で解こうとするのではなく、関連する部署の情報も仕入れ、俯瞰して取り組むことが大切です。これは、会社の規模、あるいは解決しようとしている問題の大きさを問わず当てはまります。大企業になるほど部門ごとに壁ができやすいものですが、そうした壁を壊して、みんなで問題に向き合っていくことが重要です。そうしたほうが、より効率的に問題を解決できると思います。

人格と結果を分離させ、フィードバックが回る組織へ

――グロースXでも、「問題の定義がかみ合っていない」「部門間に壁がある」などの課題はありましたか。

私が入社した当初は、部門をまたいだ課題解決に時間がかかる場面もありました。よく言えば自分の部署で全力を尽くす、悪く言えば組織の壁を理由に越境しきれていないところがありました。

私は日頃から「マーケティングのクオリティを高めるためには、プロダクトのクオリティを高める必要がある」と考えているので、自ら率先してeラーニング用コンテンツの制作を担当したいと申し出ました。現在はコンテンツ制作とマーケティングの仕事に半々くらいのバランスで携わっています。

――組織の現在の状況はどうでしょうか。

この記事は会員限定です。無料の会員に登録すると、続きをお読みいただけます。
残り5,165文字

・あらためて感じる「凡事徹底力」の大切さ
・生成AIによる劇的な変化は機械が浸透した後

記事執筆者

和泉ゆかり

いずみ・ゆかり
IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。
執筆記事一覧
週2メルマガ

最新情報がメールで届く

登録

登録