Z世代を中心に、縦型のショートドラマが流行しています。TikTokでは企業によるコンテンツも続々と登場しており、カルビー「じゃがりこ」が運営する「あげりこ学園」もいち早く取り組んだ企業アカウントの1つです。
「あげりこ学園」は2022年12月から2023年2月上旬まで、人気TikTokクリエイター3人が扮する高校生を主人公にしたショートドラマを全12話で配信。アカウントの総再生回数は350万回、総いいね数は27万件を超えました(2023年5月2日時点)。人気のTikTokクリエイターを起用したとはいえ、開設から数カ月でこれほど再生回数を伸ばせたのは、なぜでしょうか。
今回は、施策を担当したカルビー株式会社 マーケティング本部 スナック3部 じゃがりこチームの永吉真衣さんと、コンテンツの制作を支援したテテマーチ株式会社 取締役の三島悠太さんに、成果のポイントについて聞きました。
(取材・文:Marketing Native編集長・佐藤 綾美、撮影:永山 昌克)
目次
共感と態度変容を狙い、学園もののショートドラマに挑戦
――「あげりこ学園」の「あげりこ」は、そもそもどのような経緯で誕生した言葉なのでしょうか。
永吉 2万人を対象に2022年1月に当社が行った「カジュアルギフト(※)に関する調査」で、容器にメッセージを書き込めたり、身近な店舗で購入しやすいなどの理由から女子高生がちょっとしたプレゼントとして「じゃがりこ」をあげているとわかり、そういうプレゼント行為に名前を付けることになりました。チームで検討したところ、「じゃがりこ」を「あげる」で「あげりこ」なら、気分を上げる「あげりこ」にもつながるので良いと考え、誕生した言葉です。「日常のちょっとした気持ちを伝えるツール」という「じゃがりこ」の新たな価値を提案し、より多くのお客さまに購入いただきたいとの理由から、2022年度より用いています。
※調査上の「カジュアルギフト」の定義:金額にして500円以下程度の気軽な気持ちで、家族や友人、知人、同僚に渡すギフトやプレゼントのこと。
▲カルビー株式会社 マーケティング本部 スナック3部 じゃがりこチーム 永吉真衣さん。
――「あげりこ学園」は「じゃがりこ」初のTikTokアカウントとのこと。「じゃがりこ」ブランドの中では、どのような位置づけで運用したのですか。
永吉 マスのプロモーションを補完する手段として活用しています。2022年度に「あげりこ」のプロモーションを大々的に行い、「じゃがりこ」のパッケージをメッセージが書き込める「あげりこ」仕様にしたり、「あげりこ」のサイトをオープンしたり、テレビCMを打ったりしました。最も規模が大きかったのはテレビCMですが、ターゲットとする女子高生には情報を届けきれないだろうと考え、補完するプロモーション案を代理店さんからご提案いただき、テテマーチさんのTikTok案を採用することになったのです。
▲2020年10月10日から全国で放映されていた「じゃがりこ」のテレビCM。「あげりこ 社会人」編(画像左)と「あげりこ 女子高生」編(画像右)の2パターン。
――「あげりこ学園」という名前でTikTokアカウントを立ち上げ、ショートドラマを配信することになった背景を教えてください。
三島 「あげりこ」について女子高生に共感してもらい、態度変容を促すことが目的と聞いたので、データで女子高生のユーザーが多いとわかっていたTikTokをプラットフォームに選びました。
▲テテマーチ株式会社 取締役 三島悠太さん。
コンテンツの形式としてショートドラマを選んだのは、2021年の終わり頃からTikTokでショートドラマが流行していたためです。加えて、物語を作り込めば共感されやすく、飽きずに見てもらいやすいことから視聴完了率が高くなり、再生回数も伸びる傾向にあるため、より多くの人にコンテンツを届けられるだろうと考えたのも背景としてあります。
「じゃがりこ」はそもそもの認知度が高いブランドです。そのため、プロモーションの主軸を「『あげりこ』という言葉を知ってもらうこと」にすると、見た人が「『じゃがりこ』がまた何かをやっているな」と感じる程度で終わってしまう可能性があります。そうではなく、女子高生に共感してもらい、「自分もやってみよう」と態度変容を促すには、ターゲットの日常生活に落とし込んだ題材が良いだろうと考え、学園もののショートドラマにしたのです。
永吉 企業のTikTokを活用したプロモーションの中には、ハッシュタグチャレンジのようにユーザーさんに投稿してもらう施策がありますが、企業側でコンテンツの内容をコントロールできなかったり、伝えたいことを伝えられなかったりするのが懸念点でした。また、「あげりこ」という言葉がまだ世の中に浸透していない状態でユーザーさんに「任せる」手法を採用した場合、本当に効果があるのかわからない不安もありました。それに比べると、ショートドラマは伝える内容を企業側でコントロールできますし、「ユーザーさんからの投稿が発生しないかもしれない」といった不安が少ない点もメリットと感じました。
ストーリーを続きものにしなかった理由
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