バイラルマーケティングは「バイラル(viral:ウイルス性の)」という言葉からも想像できるように、人から人へ伝達されることによって、情報を拡散できるマーケティング手法です。耳にしたことはあっても、類似するマーケティング手法との違いがわかりづらい方もいるでしょう。
そこで今回は、バイラルマーケティングの基礎知識と成功事例をご紹介します。
目次
バイラルマーケティングの特徴とは?
まずはバイラルマーケティングの特徴と、注意点をご説明します。
2つに分けられるバイラルマーケティングの種類
バイラルマーケティングは分類すると、1次的バイラルマーケティングと2次的バイラルマーケティングの2つに大きく分けられます。
1次的バイラルマーケティング
1次的バイラルマーケティングでは、施策によって意図的に情報が拡散されるのではなく、顧客から知人へ自然と情報が広まっていきます。そのためには、良質な商品やサービスを提供し、顧客に広めたいと思ってもらう必要があります。
2次的バイラルマーケティング
顧客が情報を拡散したいと思うインセンティブを用意し、商品やサービスの紹介を喚起する手法が2次的バイラルマーケティングです。例えば、「お友達ご紹介特典」などの外的要因によって、情報の拡散を狙います。
バイラルマーケティングの注意点
バイラルマーケティングは、インターネットが発達し、企業サイトやブログなどの信頼性が高まったことを背景に登場したといわれています。成功すれば低コストで効率良く、より多くの顧客にリーチすることができます。しかし一方で、情報を拡散させる手段は口コミが主体となるため、広告のように出稿量を変化させて効果を調整するのは難しいという側面があります。また、場合によっては、企業の意図と反する情報が広まってしまうおそれもあり、注意が必要です。
類似するマーケティング手法との違い
バイラルマーケティングとよく似た手法として挙げられるのが、バズマーケティングとインフルエンサーマーケティングです。
バズマーケティング
バズマーケティングは、口コミによって商品・サービスの情報を伝播させ、消費者の認知を高め、興味を喚起させるマーケティング手法です。バズマーケティングは情報を発信する人の影響力や、情報そのもののインパクトなどを戦略的に利用し、人為的にユーザーの注目を集め、話題の総量を大きくしていきます。
なお、バズマーケティングについては、以下の記事で事例とともにご紹介しています。
インフルエンサーマーケティング
ターゲットが属するコミュニティに対し、影響力を持つ人物(インフルエンサー)に商品の好意的メッセージを発信してもらい、ユーザーの注目を集める手法がインフルエンサーマーケティングです。SNSの普及により、個人が主体的に情報を収集し、発信できるようになったことが、インフルエンサーマーケティング発達の背景にあります。
バイラルマーケティングの成功事例5選
ここでは、バイラルマーケティングの実際の事例をご紹介します。施策の参考にしてみてください。
TVを使わないプロモーションでターゲット層にリーチ
菓子メーカーの株式会社ロッテは、若年層のガム間口拡大のため、2017年に「Fit’s」のプロモーションであえてテレビCMを利用せず、YouTubeやTwitter を用いた戦略を展開。10代の若者をターゲットにYouTubeで動画「2年F組Fit’s組」を公開し、Twitter では動画の登場人物たちによるつぶやきを行いました。中高生に人気の俳優やアイドルを起用したこともあって、動画やTwitter は話題を呼び、映像の中に出てくるダンスを高校生が「踊ってみた」という動画も投稿されました。動画再生回数は、プロモーション開始後わずか1カ月で1000万回を超えました。
ユーザー同士の信頼関係を生かし、低コストで新規ユーザーを1200万人獲得
90年代にさかのぼりますが、アメリカの無料Eメールサービス「Hotmail」が既存ユーザーの送信メールを利用し、低予算でユーザー数の拡大に成功した事例があります。既存ユーザーがEメールを送信する際、文面の最後に自社サイトのURLと「Get your free email at Hotmail」というメッセージが添えられるようにし、拡散を狙いました。その結果、Hotmailは2年のうちに1200万人の新規ユーザーを獲得しました。プロモーションのためにかかった費用はわずか50万ドルで、対して競合会社は2000万ドルを費やして600万人程度のユーザーを獲得したと言います。
How Did Hotmail Get 12M Subscribers in 2 Years? Via the Email Signature of Course! xink
一般ユーザー向けに話題性のある動画を作成し、動画再生回数8900万回を突破
Volvo Trucksは、トラックオーナーやトラックを扱う企業が顧客の主体となっているヨーロッパのトラックメーカーです。一般ユーザー向けのエンターテインメントとして作成した動画でプロモーションを行い、話題となりました。動画の内容は、Volvo Trucks製品の性能を俳優やパフォーマーとコラボして実証するもので、シリーズ化して配信を行いました。特に、格闘家のジャン=クロード・ヴァン・ダムとのコラボ動画はYouTubeだけで8900万回以上も再生されています。
独自の着眼点を持つ動画に話題が沸騰
オランダのビール製造会社Heineken は、コミュニケーションを円滑にさせるビールの一面を紹介した動画を作成し、プロモーションに成功しています。
約4分半にわたる動画では、生い立ちや考えが異なる初対面の2人が共同作業を行います。2人は作業をしていく中でお互いの共通点を見つけていき、ハイネケンビールを飲みながら議論を交わし、理解していきます。動画はYouTubeで1400万回以上の再生を達成し、多くのユーザーの注目を集めました。
「真実これまで以上に重要」世論を巻き込んだ広告
アメリカのThe New York Timesは2017年、「The Truth Is Hard」と題したCMをアカデミー賞受賞式のTV放送で流し、話題を呼びました。
2017年はフェイクニュースが流行した年であり、「The truth is more important now than ever.」というメッセージが込められた広告キャンペーンは、TVCMだけでなく、ソーシャルメディアなどでも活用されました。このキャンペーンの影響だけではないものの、2017年第1四半期は27万6000人の購読者を獲得し、当時の過去最高記録を更新したと言います。
The Full New York Times Innovation Report SCRIBD
ターゲット層が共感し、拡散してくれる施策が必要
バイラルマーケティングには、低コストでも幅広く情報が拡散し、多くのユーザー獲得につながる可能性があります。TVCMのように高い費用を払い、コンテンツを配信するのではなく、主にユーザーの口コミを利用するためです。しかし、単に良質な商品やサービスを提供するだけでなく、受け取る側のユーザーが、ほかのユーザーと共有したいと思えるような、施策を考える必要があります。