こんにちは!MarketingNative編集部でインターンをしているTです。ついにプロ野球が開幕しました!えっ、まだキャンプも始まってないって?違うんです。開幕したのはeスポーツのプロ野球「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」なんです。
みなさん、eスポーツってご存じですか?「単なるテレビゲームでしょ?」と侮ってはいけません。実は今、eスポーツの世界に日本のプロスポーツが参入していて、人気急上昇中なんです。
そこで大のプロ野球ファンでもある私Tが「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2018」の開幕戦を観戦してきました!実際の体験談を踏まえながら、プロ野球ファンの厳しい目でeスポーツの魅力や面白さ、人気の秘密に迫ります。
目次
eスポーツってゲーム?それともスポーツ!?
ⓒNippon Professional Baseball / ⓒKonami Digital Entertainment
「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2018」開幕戦が行われた会場は、東京・渋谷のイベントホール「ベルサール渋谷ガーデン」です。いつものプロ野球観戦なら、駅のホームからスタジアムにかけて、ご贔屓チームのユニフォームを身にまとったファンの行列がズラリと続いているものですが、渋谷駅から会場に向けて歩いていると、ここでもそんな人の姿をちらほら見掛け、気分が上がります。
会場に入場して、まず目に飛び込んできたのは、グリーンが目に鮮やかな人工芝のグラウンドではなく、イスとディスプレイが整然と並んだ大型スクリーンと、球場を模したステージでした。このあたりは普段のプロ野球観戦では目にしない光景で、不思議な感覚に陥ります。会場の入りは9割以上でしょう。予想した以上の観客が訪れていて、用意されたイスはほとんど埋まっていました。
※画像:Marketing Native編集部撮影
静かだった会場のボルテージが一気に上がったのは、選手の入場シーンです。ご贔屓球団のユニフォームを着た野球ファンや子ども連れのお父さんたちが、手拍子やスティックバルーンなど思い思いの方法で選手にエールを送ります。周りの熱気に押されたのか、私も興奮して、思わず選手に手を振っていました。両チームの選手が握手を交わした後、選手たちは緊張した面持ちで各々、自分のイスに腰を掛けます。特にこの試合でプレーする代表選手は真剣な表情でコントローラーを握ります。
「いざ、プレイボール!」
試合が開始されると観客はステージ上のスクリーンに釘づけになっていました。「試合観戦=スクリーンの映像を見る」というのは、eスポーツの特徴です。
スクリーン上で繰り広げられる戦いはコンピューターゲームとは思えないほど熱量があり、手に汗握る展開ばかりでした。さらに、試合を観戦しながら生の実況を聞けるのも、eスポーツならではの醍醐味です。この日の実況はプロ野球中継でおなじみのアナウンサー田中大貴さんや平岩康佑さんらが務め、解説はプロ野球OBの真中満さんと黒木知宏さん、『実況パワフルプロ野球』(以下『パワプロ』)のトップゲーマーであるハルさんら、錚々たるメンバーです。
ⓒNippon Professional Baseball / ⓒKonami Digital Entertainment
熱のこもった実況が会場を盛り上げ、プロ野球ファンなら誰もが知っているプロ野球OBたちが試合の駆け引きを解説。そこへ『パワプロ』のトップゲーマーたちがゲームならではの戦い方について切り込んでいきます。実況と解説がeスポーツ選手たちのプレーに色をつけ、ゾクゾクするような緊張と興奮が会場を包み込みました。
eBASEBALL にはもう一つ、観戦ポイントがあります。それはゲームを操作するeスポーツ選手たちの様子です。そう言うと「画面を見つめるeスポーツ選手をなぜ見るの?」と疑問を持たれるかもしれません。しかし、一度会場に足を運んで選手たちの真剣な眼差しを見てください。熱き闘志を内に秘め、勝利を目指して戦う選手たちの姿は、まさにアスリートです。窮地に立たされてもポーカーフェイスを保つ選手、逆転弾を放ったときの歓喜のガッツポーズ、試合後に熱戦を称え合う表情。どの場面を切り取っても、それはただのコンピューターゲームではなく、まさしく「スポーツ」そのものでした。
eスポーツって、そもそも何?
ここで一旦試合から離れて、eスポーツとはそもそもどんなものなのかという点について触れておきたいと思います。
eスポーツの定義
eスポーツは「一般社団法人 日本eスポーツ連合」(JeSU)によって以下の定義がされています。
「eスポーツ(esports)」とは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称。
つまり、コンピューターゲームやテレビゲームなど電子機器を利用した競技性のある対戦型ゲームは、ほぼすべてeスポーツと捉えられるということです。そのためジャンルも、2チームに分かれて相手チームの本拠地を破壊する「マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ」(MOBA)をはじめ、本人がゲーム空間の中で武器などを手に敵と戦う「ファーストパーソン・シューティング」(FPS)、トレーディングカードを用いてカードゲームを行う「コレクタブルカードゲーム」(CCG)のほか、格闘ゲームやスマートフォンゲームも含めて多岐にわたります。
「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」開催の目的
「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2018」は日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)の共催で、2018年11月10日に開幕しました。NPBのeスポーツへの参入は、野球の新しい楽しみ方を提供し、野球ファンの裾野を拡大することを目的としたものです。
全国からオンライン予選や実技、面接などのプロテストを合格したプロ野球eスポーツ選手をプロ野球OBが出席した「eドラフト会議」によってチーム編成するという本格志向で、一気に注目を集めました。競技はプロ野球がオフシーズンになる11月から12月にかけて行われ、年明けには「e日本シリーズ」で日本一のプロ野球eスポーツチームが決定します。報酬総額が1200万円に上るなどNPBとKONAMIの本気度がうかがえます。
eスポーツの盛り上がり
海外ではすでにeスポーツは市民権を得ており、トップ層の中には億単位の高額賞金を稼ぐプロ選手たちが登場しています。
市場規模の拡大
総務省情報流通行政局情報流通振興課が公表した「eスポーツ産業に関する調査研究報告書」(平成30年3月)によると、海外におけるeスポーツの市場規模は700.9億円、オーディエンス数は3億3500万人(いずれも2017年)で、中には賞金額が26億円を超える大会もあります。
一方、国内を見ると、市場規模は5億円未満で、オーディエンスの規模も158万人にとどまっています。日本が「eスポーツ後進国」と言われているのは数字を見れば明らかですが、市場はこれから大きく拡大していくと見られています。
例えば、eスポーツ大会「RAGE」を開催するCyberZ 社が2018年9月に10代~60代の男女1200人を対象に行ったWeb調査によると、全世代の認知率は49.8%と約半数に上り、特に10代 から20代の男性では8割近くがeスポーツを知っているという結果が出ました。 前年度の認知率が26%だったことを考えると、約2倍の伸びを見せています(データ提供:株式会社CyberZ)。
出典:eスポーツ産業に関する調査研究報告書(総務省情報流通行政局情報流通振興課)
国体への参加が決定
eスポーツが今後さらに盛り上がっていくと考えられる根拠の一つが国体への登場です。2019年10月に茨城県で開催予定の第74回国民体育大会(国体)、第19回全国障害者スポーツ大会に、文化プログラムとして「都道府県対抗で行うeスポーツ大会」が行われることになりました。しかも日本サッカー協会(JFA)が共同主催者です。国体にeスポーツが登場することで、市場の活性化が期待されています。
アジア大会で日本人が金メダル獲得
2018年8月から9月にかけて、インドネシア・ジャカルタで開催された第18回アジア競技大会ではデモンストレーション競技としてeスポーツが採用されました。計6タイトルの種目のうち日本は5タイトルに選手を派遣。このうちサッカーの「ウイニングイレブン2018」では決勝でイランを破り、日本代表が初の金メダルを獲得しています。
学校の部活動で全国大会
eスポーツは学生の間でも広まりつつあります。角川ドワンゴ学園「N高等学校」のeスポーツ部発足をはじめ、高校のコンピューター部などが部活動の一環としてeスポーツに取り組むなど全国規模の広がりを見せています。2018年12月には毎日新聞社主催で「第1回全国高校eスポーツ選手権」も開催される予定で、80チームの応募がありました。
社会福祉への活用
eスポーツは社会福祉の観点からも期待されています。eスポーツなら体を大きく動かさなくても操作が可能な上、センシングなどを応用して寝たきりの人が目の動きでプレーできる技術の開発も進んでいます。健常者と障がい者の壁を超えた新しいスポーツの可能性として注目されます。
人気プロスポーツが参入
eスポーツに参入したプロスポーツは、プロ野球だけではありません。Jリーグは2018年3月から5月にかけて、eスポーツ大会「明治安田生命eJ.LEAGUE」を開催しました。この大会は国際サッカー連盟(FIFA)が主催する「FIFA eWorld Cup 2018」の世界予選「EA SPORTS™ FIFA 18 Global Series Playoffs」(プレーオフ)の出場権を懸けた戦いで、総勢182名が参加し、白熱した戦いが繰り広げられました。
プレーオフはオランダ・アムステルダムで同年5月から6月にかけて行われ、勝ち抜いた選手1人がイギリス・ロンドンで同年8月に開催された「FIFA eWorld Cup 2018」に出場。決勝トーナメント進出こそ逃したものの、欧州クラブチームへの移籍が噂されています。
また、サッカー総合専門学校「JAPANサッカーカレッジ」は2020年4月からサッカービジネス科に「eスポーツマネジメントコース」を新設する予定です。あくまでeスポーツ選手の育成ではなく、eスポーツの運営に携わる人材の育成を行うコースで、今後のeスポーツ市場の拡大を見込んだものです。
このようにサッカー界はプロリーグとしての参戦だけでなく、eスポーツに特化した育成体制の構築にも力を入れるなど、本格的にeスポーツ事業の発展に力を入れています。
eBASEBALLの魅力に迫る
最後にあらためて、私TがeBASEBALLパワプロ・プロリーグの開幕戦を観戦して感じたeスポーツとしてのプロ野球の魅力や楽しみ方をご紹介します。
野球ファンも満足!臨場感あるゲーム展開
球場で野球観戦をする魅力は生のプレーの臨場感や熱量を体感できることでしょう。その点、eスポーツはどうなんだろうと疑問に思う人がいるかもしれません。
ご心配には及びません。eBASEBALLの臨場感や熱量もまた、迫力あるものでした。選手間の駆け引きなどは実際のプロ野球さながらです。例えば、塁上にランナーがいる場合は牽制をしたり投球テンポをずらしたりして盗塁をさせにくくしたり、あえてバントの構えを行って揺さぶりをかけたりなど、グラウンドでのプレー同様、緊張感のある心理戦が展開されています。
ⓒNippon Professional Baseball / ⓒKonami Digital Entertainment
さらに、操作を行うeスポーツ選手の表情を肉眼で捉えられるため、選手の緊張感や興奮が生々しく伝わってきて、手に汗握りながら観戦できます。逆転弾を放った選手のガッツポーズや敗戦した選手の悔しがる表情を生で見られるのは貴重な体験でした。
eスポーツならではの魅力
通常のプロ野球にはない、eBASEBALLならではの魅力があります。それは選手データ全てが観客に見える状態になっていることです。「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」では選手の調子、スタミナ、特殊能力などのデータが表示されています。eスポーツ選手は試合直前、それらのデータをもとに観客の前でオーダーや戦略を考えます。観客側もデータを見ながら、選手の意図や戦略を予想したり、予想外のオーダーに一喜一憂したりして知的な観戦の仕方を楽しめます。実際、中日VSヤクルトの第2試合ではあえて調子が良い長距離砲の選手をスターティングメンバーから外すという、観客、実況、解説者を驚かせるオーダーが組まれました。その長距離砲の選手は「代打」の特殊能力を持っており、その特殊能力を発揮しやすい状況で起用するという戦略でした。結果、ここぞという場面で長距離砲が代打に起用され、見事に逆転ホームラン!会場に大きなどよめきが起こったことは言うまでもありません。
全国のファンと交流できる!?
私が観戦した開幕戦はメイン1つとサブ2つの計3つのステージで行われ、各ステージで同時に試合が進行されました。ステージ間を自由に行き来して、観戦したい試合を好きな時間に見ることができました。開催中のeペナントレースは、土曜日はセ・リーグ、日曜日はパ・リーグの試合が行われており、一日に複数の試合を楽しむことができます。
また、通常のプロ野球観戦の場合、客席はホームとビジターの2球団のファンで構成されますが、eスポーツプロ野球では一日に同じ会場で複数の球団が試合を行うため、オールスターゲームのように各球団のファンが一堂に会します。普段はあまり交流機会のない球団のファンと交流して、新たなつながりや仲間をつくるきっかけになるかもしれません。
まずは会場に足を運んでeスポーツの魅力体感を
ここまでeスポーツの魅力を説明してきましたが、それでもeスポーツを観戦することにイメージが湧かないという人もいるでしょう。しかし、eスポーツの熱量は普通のスポーツと何ら変わりなく、率直にまた観戦したいと思えるものでした。今後、観戦方法やゲームタイトルなどにおいて、より魅力的なものが増加していけば、エンターテインメントの一種として日本でもこれまで以上に市民権を得られる日が遠くない将来に来ると思います。
また、健常者と障がい者の壁を超えるスポーツとしても期待されていて、アスリートの新たな選択肢となる可能性もあります。今後eスポーツを体感できるイベントはさらに増えていくでしょう。まずは会場に足を運んで、eスポーツの熱気と迫力を体験してみてはいかがでしょうか。