2019.01.31

         

「たまごっち」が20年以上も売れ続けるのはなぜ?バンダイさんに聞いてきました!

1996年の発売から20年以上が経過した今でも、女子小学生を中心に売れ続けているおもちゃが「たまごっち」です。発売当初、日本中を巻き込んだ熱狂的なブームは記憶している方も多いのではないでしょうか。筆者自身も、幼少期にたまごっちを大切に育てた経験があります。

たまごっちが20年以上も売れ続けるのはなぜか――?その理由を探るべく、今回は株式会社バンダイ 広報チームの藤岡彩加さんに話を伺いました。

(取材・文・人物撮影・イラスト:Marketing Native編集長 佐藤綾美)

    

目次

低迷期を乗り越えた3つのアイデア

▲1996年に発売された、初代たまごっち

© BANDAI,WiZ

これまでに発売されたたまごっちの種類は、17タイトル(※1)。2018年3月末までに全世界で累計8200万個以上を売り上げ、日本のみならず、欧州や北米を中心とした海外の国でも人気を集めています。累計販売個数のうち4000万個以上は、1996年の発売から2年半ほどでの売り上げとなっており、当時のブームの凄さがうかがえます。

たまごっちがこれほどの販売数を誇るようになるまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。1998年後半にブームが終息してから2004年まで、たまごっちにはメーカーからの出荷が全くなかった期間があり、1999年度の期末決算では60億円の特別損失を計上しています。

そして、たまごっちは数年の低迷期を経た後、2004年に復活を遂げました。

バンダイ広報の藤岡さんによると、たまごっちが復活に至った背景には、3つのアイデアがあったと言います。それは、「ターゲット層の変更」「赤外線通信機能の導入」「キャラクタービジネスへの事業拡大」です。

ターゲット層を女子高生から女子小学生に変更

たまごっちの発売当初のターゲットユーザーは女子高生でした。2004年からは、女子小学生をメインターゲットにしています。

藤岡さん「たまごっちを復活させるにあたってコンセプトの一つとなっていたのが、『キャラクターとして育てていく』ということです。

たまごっちというデジタル玩具をキャラクターとして育てていく上で、ターゲットは女子高生で良いのか、フラットに見直す必要がありました。社内で検討した結果、キャラクターを好きになり、育ててくれる、最適なターゲットとしてたどり着いたのが女子小学生です」

大人のコミュニケーション方法を子ども用に落とし込んだ赤外線通信機能

2004年3月に発売された「かえってきた!たまごっちプラス」では、赤外線通信機能が追加され、たまごっち同士で通信できるようになりました。この機能が、子どもたちの好評を得たと言います。

藤岡さん「2004年当時、普及していたのが赤外線通信機能付きの携帯電話です。携帯電話を持つ大人たちは、赤外線通信機能を使用して、アドレス交換などを行っていました。

いつの時代の子どもたちにも、大人がしていることに対する憧れってありますよね。そこで、たまごっちに赤外線通信機能を搭載し、大人が行っているコミュニケーションを疑似体験できるようにしたのです」

▲2004年に発売された、「かえってきた!たまごっちプラス」

© BANDAI,WiZ

クロスメディア展開によりキャラクタービジネスを拡大

たまごっち発売後の1997年ごろにも、テレビアニメや映画、漫画への展開は行われていましたが、復活時にあらためて図られたのが、キャラクタービジネスの拡大です。

たまごっちをテレビアニメや映画、漫画といったクロスメディアで展開することにより、キャラクターが子どもたちに加速度的に浸透し、認知度の向上につながったと言います。

※1:コラボレーション企画なども、1タイトルの中でのコラボレーションとして換算。

自分だけのキャラクターをかわいがるように変化

近年のたまごっちを見ていて驚いたことの一つが、キャラクターの数です。現在では、数千万以上のパターンのたまごっちがいると言います。発売当初のたまごっちは、アダルトっち(最終的な成長段階のたまごっち)が「まめっち」「くちぱっち」「おやじっち」などの7種類程度でした。

数多くのキャラクターを編み出す上で大切にしていることを聞いたところ、「たまごっちらしい個性を大切にしています」(藤岡さん)とのこと。

▲今回お話ししてくれた、バンダイ 広報チームの藤岡さん

藤岡さん「たまごっちは実在しない生き物なので、発売当初から『犬でもなく猫でもない、よくわからない生物を育てる面白さ』がありました。そのため、たまごっちらしさは活かしつつも、それぞれが個性のあるキャラクターにしています。

子どもたちにもいろいろな個性の子がいます。子どもたち同士でたまごっちの話をするときに『○○っちって、△△ちゃんに似てるよね』といった会話が生まれるように、キャラクターにも個性を与え、親近感を持ってもらえるように気をつけています」

また、2016年に発売された「Tamagotchi m!x(たまごっちみくす)」から、たまごっちが結婚して子どもが生まれると、遺伝子を引き継ぐようになっています。

藤岡さん「『生き物を育てる』という発売以来のコンセプトに、どのような要素を加えれば、より『自分の』たまごっちとして愛着をもってもらえるかを検討したところ、『遺伝子をつなぐ』というキーワードが出てきました。

子どものときはお父さん似だったたまごっちが、大人になったらお母さんに似たり、双子だけどそれぞれ微妙に違ったり…と、遺伝の要素はいろいろあります。

親から子どもへ遺伝していったときに、それぞれのビジュアルが個性的でないと、何が遺伝したのか、わかりづらくなってしまいます。目や耳、輪郭といったパーツだけを見ても、キャラクターごとのアイデンティティが受け継がれているとわかるよう、デザインしています」

たまごっちを育てるという行為は、発売当初に比べてより生き物らしく、リアルになっています。筆者がたまごっちで遊んでいた当時は「おやじっちになってしまった…」「くちぱっちにするにはどうすればいいのか」といった話題がよく出ていましたが、今の子どもたちには「○○っち」という概念がないそうです。

藤岡さん「m!xによっていろいろな見た目のたまごっちが生まれるので、今の子どもたちは自分だけの『○○っち』(“ナウたま”と呼んでいます)をかわいがっている状態へと変化してきています」

幅広い世代に愛される商品へ

2004年の復活後、たまごっちは継続的に販売されており、発売当初ほどのブームではないものの、コンスタントに売れる状態が続いています。

たまごっちの2004年以降のメインユーザーは一貫して女子小学生ですが、長年販売し続けてきたことにより、ターゲット以外の層からも反響があり、幅広い世代のユーザーを獲得していると言います。例えば、20代から30代の、かつて子どもだった大人たちです。

藤岡さん「2017年に『祝20しゅーねん!たまごっち』や『祝 20しゅーねん!新種発見!!たまごっち』といった復刻版を発売した際に、懐かしさから手に取ってくれた方が多くいたようです。普段おもちゃに触れる機会がない世代にも情報が届いたのは、積極的に情報を拡散してくれた方々がいたおかげでもあります。海外セレブの方がファッションとして身に着けている姿も話題になりました。

私たちが20年以上もたまごっちを販売し続けてきたことにより、どの世代の方にも、その方ならではの『たまごっちとの思い出』があります。『いつもうんちを溜めていた…』『お母さんに預けていたら、死なせちゃった』といった感じで、初対面の方とも話が弾むケースは多いです。

たまごっちとの思い出がコミュニケーションの一つのきっかけになるくらい、商品が成長できたのではないかと思います」

2019年1月26日に発売されたばかりの新商品「イーブイ×たまごっち」では、『ポケットモンスター』シリーズに登場するポケモン・イーブイとコラボレーションしています。通常とは異なり、過去にたまごっちやポケモンで遊んだ経験のある20代~30代の女性がメインターゲットです。

▲20代~30代の女性をターゲットにした「イーブイ×たまごっち」

©BANDAI,WiZ
©2019 Pokémon.
©1995-2019 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.

藤岡さん「今回のコラボレーションでイーブイを採用したのは、ブースターやシャワーズといったさまざまな姿に進化するポケモンだからです。“どんな姿になるかがわからない”という点で、たまごっちの商品コンセプトと合致すると感じました。あえてモノクロ画面なのも、ターゲットの方たちが遊んでいた当時の懐かしさを演出するためです」

たまごっちがこれからもブレずに貫きたいこと

2018年11月に発売された「たまごっちみーつ」では、新たにアプリも展開。たまごっちみーつで育てた、“ナウたま”でもアプリ内に連れていけるようになっています。

▲「たまごっちみーつ」では、アプリと通信できるようになっている

© BANDAI,WiZ

藤岡さん「アプリ内を訪れると、常にどこかの誰かの“ナウたま”がいます。遠く離れた友だちの“ナウたま”を見に行ったり、コミュニケーションをとったりといった、私たちの目指したかったことが、きちんとユーザーにも届いていて、遊んでくれているのだと実感しています」

カラー液晶になっていたり、アプリでも遊べるようになっていたりと、現在のたまごっちは初代に比べて機能も追加され、進化しています。「今後もその時代の流れに合わせて進化し続けられるようにしたい」と藤岡さんは言います。

最後に、たまごっちをプロモーションする上で、常に大切にしているポイントを聞いてみました。

藤岡さん「たまごっちの新商品をお知らせするときは、変わらない部分と変わっている部分をきちんと分けてお伝えしています。たまごっちは、発売当時から全く変わっていないところと、進化しているところが明確に分かれているからです。

例えば、『卵型』『四角い画面』『3つのボタン』というビジュアルは、発売当初から現在まで変わっていない部分です。

また、ほかのゲームと違って、たまごっちには現在もオンオフ機能が付いていません。たまごっちは生き物だからです。『命として商品を作っていく』というところは、20年以上変えていません。

一方で、通信機能やカラー液晶、アプリといった進化している部分もあります。進化した部分だけを見せていくと初期のたまごっちからブレていくので、生き物を育てる育成ゲームであることを軸にプロモーションするようにしています」

「生き物を育てること」は時代も国境も超えて愛される

生き物を育てたり、愛でたりといった行為は、世代も国境も関係なく、人々を魅了するところがあります。たまごっちが20年以上も愛されているのは、「生き物を育てること」をテーマとして貫いているからでしょう。

発売以来ブレない軸と魅力的なキャラクター、そして、時代に沿った新機能がたまごっちの強さであると感じました。

ネットで発見!!たまごっち公式ホームページ

             

記事執筆者

佐藤綾美

佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。

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