ドラえもんのひみつ道具のひとつ「ほんやくコンニャク」は、食べるだけで様々な言語を理解し話すことができるアイテムです。そんな22世紀のひみつ道具に近い商品が、21世紀の現在、人気を得ています。それが、ソースネクスト株式会社が2017年から発売している「POCKETALK(ポケトーク)」です。
発売以来、国内のトップシェアを維持し続けており、2019年11月末には累計工場出荷台数で世界No.1となりました。そして、2020年1月に行われた世界最大級の家電見本市「CES 2020」では「ポケトークS」の海外展開を発表するなど、勢いを増しています。
もちろん、国内の他社からも音声翻訳機は数多く出ているのですが、ポケトークの国内シェアは発売以来、ほぼ90%以上と圧倒的です。なぜポケトークは、発売当初から国内トップシェアの座を維持し続けられているのでしょうか。
ソースネクスト株式会社の執行役員で、製品のマーケティングを統括する製品企画Group責任者でもある柳沼友香さんに話を伺いました。
(取材・文:Marketing Native編集部・岩崎多、撮影:海保竜平)
目次
ポケトークが生まれるまで
▲ポケトークSは全4色展開。本体と2年間のグローバル通信がセットで29800円(税別)。
――ポケトークの商品概要を教えて下さい。
簡単に申し上げますと、55言語を音声から音声に通訳しつつテキストを表示し、19言語では翻訳結果をテキストのみに表示してコミュニケーションができる製品です。言語の組み合わせは自由で、例えば、日本語から英語、英語から日本語はもちろん、中国語からフランス語という風に、日本語を介さない状態でも翻訳が可能です。
翻訳方法はボタンを押しながらポケトークに話しかけるだけです。例えば、日本語を英語に訳す場合は、次のような感じで言語間の翻訳ができるようになっています。
「ここから駅まで歩いてどのくらいかかりますか?」
↓
「How long does it take to walk from here to the station?」
現在発売中の最新シリーズ「ポケトークS」から画像を翻訳できる「カメラ翻訳」という機能がついています。これは外国語で書かれてあるレストランのメニューや看板なども、写真を撮るだけで翻訳できるようになっています。
この他にも新たに、AIと英会話レッスンできる機能も搭載しました。海外旅行でよくある6つのシーン(空港や機内、ホテル、レストランなど) 36レッスンを想定し、シーン別に会話のやり取りができるようになっています。
――ポケトークはそもそもどういう経緯で開発されたのですか?
はじめに、翻訳機を作りたいという構想自体は2001年頃からあったのですが、当時は翻訳エンジンの技術や通信環境などがまだ十分ではなく、実用に耐えうるプロタクトを作ることができませんでした。しかし、この3~4年、AIの飛躍的な進化に伴って、翻訳エンジンや音声認識エンジンの精度が高まってきたため、翻訳機の実現が現実味を帯びてきました。
すでにAI翻訳機を開発していたオランダのTravisという会社と出会い、2017年に一部共同開発した商品を初代ポケトークとして販売開始しました。しかし、初代ポケトークはOEMに近いモデルのため、対応言語や機能を簡単に増やすことができませんでした。そこで、完全自社開発を始め、できたのが2代目の「ポケトークW」です。これにより、初代ポケトークに寄せられた、お客様のさまざまなご意見を反映できるようになりました。最新の「ポケトークS」は3代目となり、2代目の「ポケトークW」に寄せられた改善点を受けて、さらに改良されています。
▲ポケトークS(写真中央)はスマートフォン(iPhone)よりも小さく、名刺とほぼ同サイズ。
シェアNo.1を得るためにこだわった機能
この記事は会員限定です。登録すると、続きをお読みいただけます。 ・社長をはじめ、全社員が店頭に立つ |