生産者と消費者をつなぐ国内最大級の産直アプリ「ポケットマルシェ」を運営する株式会社ポケットマルシェは、2021年に注力して取り組んだ食品ロス削減に関する取り組みや動向についてまとめ、発表した。特設ページ「訳ありポケマルシェ」を公開したほか、販路が縮小した生産者の食材をこども食堂へ提供したり、社食提供として購入可能にしたりするなど、大きな動きがあった。
目次
食品ロスの本質は生産者と消費者、都市と地方の分断にある
本来食べられる食品が廃棄される「食品ロス」は、日本で年間約570万t発生している(注1)。食品ロスは気候変動にも大きな影響を与えていることから(注2)、削減が必要とされており、SDGsのターゲット12.3においても「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる」ことが掲げられている。
ポケットマルシェ代表取締役 高橋博之氏のコメントによると、野菜の見た目で価値が決まるのは、「大規模流通の都合で、形が不格好な野菜は規格外とされ、評価が下がるから」。一方で、消費者の中には見た目を気にせず購入したい人もいるため、同社では「食品ロスの本質は、生産者と消費者、都市と地方の分断にある」と考えていると言う。
生産者が消費者に直接販売する「ポケットマルシェ」では、流通しにくい規格外品なども説明付きで販売が可能で、消費者はそうした商品の購入を通じて、食品ロス削減に貢献することができる。2021年はコロナ禍で生産者の販路が縮小して行き場を失った食材が多数生まれたことから、ポケットマルシェは食品ロス削減に注力して取り組みを展開した。
注1:農林水産省・環境省による令和元年度推計値より
注2:IPCCが2019年に公表した報告書「Climate Change and Land(気候変動と土地)」より
ポケットマルシェの取り組み・動向
1. 特設ページ「訳ありポケマルシェ」を公開し、73.6tの「訳あり食材」を販売
食品ロス削減を目的に、「規格外の食材」「売り先がない食材」「賞味期限が近い食材」を集め、訳ありの理由とともに紹介する特設ページ「訳ありポケマルシェ」を公開した。2021年9月1日〜12月13日の期間で、1766品が出品され、73.6tを販売し(※)、食品ロスの削減につなげている。当該商品群に対する注文件数は計22,320件。
※「訳ありポケマルシェ」ページで特集した商品のうち、重量が明らかな商品の販売数量から算出
「訳ありポケマルシェ」掲載商品の例
・お得な家庭用サンふじ 約5kg
山形県東根市 寒河江司さん より 2160円(税込・送料別)。訳ありの理由には「今年は春先の霜害で初期生育不足により、通常の年よりもサビ果など外観が悪いりんごが多い傾向にあります。味に違いはないので自宅用におすすめです。」とある。
2. 「未利用魚」の検索回数は前年比13.0倍、売り上げは前年比24.1倍
未利用魚とは、「数量やサイズが揃わない」「傷がついている」「マイナーな魚種である」といった理由で、価値がつかず市場に出回らない魚のこと。ポケットマルシェ内における「未利用魚」を含むキーワードの検索回数は、2016年のサービス開始以降、2021年が過去最高となり、前年比13.0倍を記録。また、ポケットマルシェ内で「未利用魚」として出品されている商品の売り上げも2021年が過去最高で、前年比24.1倍になったと言う(※)。
※ 検索回数、売り上げともに2021年1月1日〜11月30日と2020年1月1日〜11月30日のデータを比較
「未利用魚」の商品例
・【未利用魚】匠の活〆!!季節の魚詰め合わせセット 小サイズ
北海道寿都郡寿都町 森貴紀さん より 2700円(税込・送料別)。商品説明には『お届けする魚の中には、聞いたことも見たこともない魚がいるかもしれません。そんな魚たちは、「市場で評価されづらい魚」なので、普段スーパーで見かけることほとんどありません。』とある。
3. 「#訳あってお買い得」タグのついた商品の売上は、前年比2.4倍の約8億1000万円
規格外品などをお得に販売したい生産者が出品の際にアピールでき、訳あり食材をお得に購入したい消費者が検索しやすいように、ポケットマルシェ内には「#訳あってお買い得」のタグが設置されている。2021年における「訳あってお買い得」タグのついた商品の売り上げは、前年比2.4倍の、約8億1000万円にのぼる(※)。
※ 2021年1月1日〜11月30日と2020年1月1日〜11月30日のデータを比較
4. 販路が縮小した生産者の食材を、129箇所のこども食堂へ提供
新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて販路が縮小した生産者の食材を、こども食堂に提供する取り組みを、農林水産省の事業に参画して実施。全国のこども食堂129カ所、想定11,113人に対して、4名の生産者の食材計約4.0tを提供し、食育の機会として、生産者が生産の様子や想いを語るビデオメッセージを届けた。
提供食材
- コシヒカリ:2,180kg
- 緑茶ティーバッグ:48kg
- ボイルホタテ 冷凍:1,190kg
- サーモン 冷凍:580kg
計 3,998kg
5. 「びずめし」運営のGigi株式会社と連携し、販路が縮小した生産者の食材を「社食」として購入可能に
企業の福利厚生である「社食」として飲食店を利用可能なサービス「びずめし」の運営元であるGigi株式会社と連携。コロナ禍の影響を受けて販路が縮小した生産者の食材を「社食」として「びずめし」上で購入可能にし、テレワーク中の従業員と生産者を同時に応援する実証実験を開始した。実証実験には、5名の生産者が参加している。
「びずめし」画面