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ラクスル×ワタミのポスティングの実証実験で、エリアごとに異なる需要が明らかに

最終更新日:2022.04.27

ラクスル株式会社と、ワタミ株式会社は、チラシのポスティングに関するOMOマーケティングの実証実験を行い、エリアによる商圏の傾向を発見した。両社は発見した傾向を活用し、ターゲット層と中食需要の仮説を立て、今後より具体的な実証実験を実施するとのこと。ラクスルとワタミの両社に、実証実験の意義や得られた知見などを伺った。

目次

効果が見えづらいチラシポスティング

ラクスルは、店舗運営を行う企業の販促宣伝活動を支援し、売上拡大に貢献したいものの、オフラインでの販促による成功パターンがないことから、情報提供ができていない点に課題意識を持っていたという。特にオフラインでの販促の代表格ともいえるチラシポスティングには、下記のような課題があった。

  • WEB広告などと比較した場合に効果が見えづらく、CPAが合わない
  • どのエリアにどのように予算投下をすることで売り上げに寄与するかが不明瞭

同様の問題をワタミも抱えていたことから、ポスティングの効果を可視化し、エリアによる商圏の傾向を見つけるための実証実験を2社共同で行うに至ったという。

実証実験の結果

ラクスルとワタミは2021年12月14日より、ワタミが運営する「から揚げの天才」にてポスティングのテストを実施。店舗業態(ロードサイド店、商店街内店舗など)ごとに商圏となるエリアを選定してチラシデザインのA/Bテストを行い、読み込まれた二次元コード、タイミングなどを分析し、傾向を調査した。

▲チラシデザインイメージ

【配布期間】12月14日~12月24日
【実施店舗】
1)ロードサイド店舗(関東)
2)駅前店舗(関東)
3)商店街内店舗(関東)
4)駅前店舗(関西)
【エリア分け】それぞれ店舗から、A:0~800m B:800~1,500m
【配布数】A:8,000部 B:8,000部

1)ロードサイド店舗(関東)

関東のロードサイド店舗では、チラシに掲載されたコンテンツ(二次元コード)へのアクセス傾向はA、Bともに同じ傾向が見られた。特にクリスマスメニューに関する関心が50%以上と高い。

2)駅前店舗(関東)

関東の駅前店舗では、エリアA、Bにより読み込まれるコンテンツ(二次元コード)に大きく差が発生した。エリアAではUber Eats、公式アプリの順、エリアBでは特別価格、クリスマスプレートメニューの順でアクセスが伸びている。駅前店舗(関東)のエリアAのみ、Uber Eatsへのアクセスが他エリアと比較して顕著に多い。

3)商店街内店舗(関東)

商店街に近いエリアに住んでいるAのユーザーは裏面に掲載された公式アプリへのアクセスが多く、情報収集をしたり、持ち帰りを検討したりしている傾向にあることがわかった。商店街から少し離れたエリアBのユーザーは「1」のロードサイド店舗と似た傾向ではあるものの、デリバリー需要が少し高いようだ。

4)駅前店舗(関西)

関西の駅前店舗では、エリアA、Bともに特別価格とクリスマスメニューへのアクセスで半数近くを占めることになった。エリアBではほかのエリアに比べ、出前館へのアクセスが多い傾向が見られる。

エリアごとのお客様の傾向を把握し、販促に活用

今回の実証実験の意義と得られた知見について、ワタミ株式会社 外食事業 マーケティング部 部長の竹下慎一さんと、ラクスル株式会社 ラクスル事業本部 グロース事業統括 事業インキュベーション部 デジタル事業責任者の近藤賢志さんに伺った。

まず、今回の実証実験から得られたことと、結果を活用した今後の展望についてワタミの竹下さんは次のように語る。

「ラクスルさんとの連携により、これまで効果計測が困難だったオフライン販促の成果の可視化に一歩近づくことができました。今回の実証実験から、立地はもちろん、店舗との距離によってもお客様の求めている情報に違いがあることが見えてきました。今後オフライン販促(ポスティング)を実施する際は、該当するエリアのお客様にとって最適かつ求められている内容を届けたいと考えています」

一方、ラクスルの近藤さんは、実証実験前に立てていた仮説を振り返りながら次のように話す。

「今回の実証実験を行うにあたり、我々は1つの仮説を立てていました。お客様が商品を購入する際に起こりうる検討プロセス――例えば欲しいと思う商品を見つけてくる場所、情報収集の仕方、購入のきっかけなどは人それぞれ異なります。しかし、そうしたプロセスの差を生み出すパーソナリティには、住んでいる地域がある程度関係するのではないかという仮説です。

今回の調査を通じて、店舗にはそれぞれ商圏があり、その商圏に住んでいる人たちは地域性を帯びていることがわかってきました。エリアごとにお客様の関心が高いコンテンツが異なるようですので、訴求ポイントやクリエイティブを変えたりしながら、集客効果の最大化を目指したいと考えています」

また、ワタミでは今後さらなる実証実験を重ねるという。

「エリアやクリエイティブを変更して継続実験を行うほか、オンライン広告やOOHと掛け合わせた際の反応、効果の違いを見つけていく予定です。最適な範囲とコストでオンライン・オフライン両方の広告が効果的に打てる状態を目指します」(ワタミ 竹下さん)

最後に、今回の実証実験の結果について他社にも応用できそうな知見を聞いてみた。

「これまでオフラインで打ち出した広告の効果を可視化するには、現場で戻ったチラシ枚数を数えたり、使われたクーポンの数を月末に計測したりといった方法くらいしかなかったと思います。しかし、今回の実証実験のように二次元コードを活用すれば、オフラインの販促においてもリアルタイムに効果を見ながら打ち手を変えられるのではないでしょうか」(ワタミ 竹下さん)

『今回の実証実験の結果ではエリアごとの傾向が顕著に出ており、元々立てていた仮説はかなり真に近づいたと考えています。都心店エリアのお客様は、チラシで一番推している「キャンペーン商品」の内容よりも、アプリで商品ラインナップをしっかり閲覧しています。一方別の地域では「キャンペーン商品」を見ている人が多い結果となりました。

エリアごとにお客様の傾向が異なる点をうまく活用すれば、その地域でビジネスを展開する際に「顧客の考えとズレない」マーケティングをスピーディにできるのではないかと考えています。例えば、「○○駅の周辺なら、お得感を訴求してオフライン中心に販促をしよう」、「このエリアならラインナップの豊富さを訴求してWeb中心に販促しよう」といった意思決定を適切にできるようになるでしょう』(ラクスル 近藤さん)

ラクスルとワタミの実証実験の結果を受けて、チラシのポスティング、ひいてはエリアマーケティングについて、日頃考えていたことが実証されていると感じた方もいるのではないだろうか。今後予定されている実証実験にも注目したい。

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