株式会社博報堂DYホールディングスが今年(2022年)1月に発足させたグループ横断型の研究開発組織「Creative technology lab beat」(クリエイティブ・テクノロジー・ラボ・ビート)。その「Creative technology lab beat」の一員である株式会社アイレップが、独自の技術で開発したアイトラックAIを活用し、人の注視箇所を予測・可視化して訴求力の高い広告動画を制作するサービス「H-AI EYE TRACKER」(エイチ・エーアイ・アイ・トラッカー)を提供開始している。サービスの強みはどこなのか、担当者に聞いた。
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成果を可視化する測定・分析手法が複雑化する動画広告
「H-AI EYE TRACKER」は、アイトラッキングデータから人の注視傾向を学習したAIが、広告動画に対する注視箇所をヒートマップで予測・可視化する新しい動画制作サービスだ。
近年需要が高まりつつある動画広告は、静止画やテキストの広告に比べて情報量が多く、成果を可視化する測定・分析手法が複雑化している。そのため、効果的な動画広告について論理的に説明するのが難しく、手法や制作プロセスそのものに課題を抱える企業も少なくない。また、国内ではいまだ多くの企業で、ロウワーファネルでの顧客獲得と、マス広告を中心とするアッパーファネルでの認知・好意形成を分断して考える傾向にある。そこで、動画広告においてアッパーファネル中心のテレビCMからミドル・ロウワーファネル中心のデジタル広告まで幅広い制作を行うアイレップが、「H-AI EYE TRACKER」を開発・提供するに至ったと言う。
※本技術は、現在特許出願中(2022年2月9日時点)。
制作工程の段階で注視傾向の確認が可能に
動画クリエイティブの注視点調査は、ユーザー調査を行うことでこれまでも実現可能だったが、調査に時間を要し、コストもかかる。そのため、ユーザー調査を行う手法は、予算の大きい一部の案件に限り、オフライン編集などの動画編集プロセス内に組み込まれていた。株式会社アイレップ取締役の帷勝博(かたびら・かつひろ)さんは「H-AI EYE TRACKER」の強みについて次のように語る。
『「H-AI EYE TRACKER」最大の利点は従来の調査と比べて圧倒的に速いことです。即時に結果が出るので、従来の制作工程の仮編集などのタイミングに組み込んで何度も注視傾向を確認し、動画の精度を高めることができます』
つまり、出稿前に成果の最大化を図ることが可能となる。また、従来のデザイン違いのA/Bテストなどを不要にし、運用型テレビCMやデジタル動画広告において制作・配信コストの最適化も実現できると言う。
「H-AI EYE TRACKER」の活用は、特にどのような悩みを抱えるマーケターにとって有効な手立てとなりそうか、帷さんに尋ねた。
『期待した成果が出ていないものの、「どこが悪くて効果が出ていないのかがわからない」という方にご利用いただきたいです。制作した動画広告で価格やアプリの画面などが伝わっているのか、コピーが見えているのかを可視化し、改善の指示を出すことができます』
動画広告を制作して成果を出すことは、以前にも増して難しく、マーケターにとって悩みの種の一つになっているだろう。そうした人たちにとって、「H-AI EYE TRACKER」の活用は広告運用を一歩前進させるための有効な手立てとなるかもしれない。