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インタビュー

6年ぶりの全面刷新!Indeed新マーケティング戦略の狙いと背景――Indeed Japan田尻祥一インタビュー

最終更新日:2026.10.26

The Marketing Native #57

Indeed Japan マーケティング本部 シニアディレクター

田尻 祥一

Indeed Japanの新しいマーケティング統括責任者として、デル・テクノロジーズでマーケティング本部長を務めていた田尻祥一さんが就任、約6年ぶりにブランドコンセプトを刷新しました。

それに合わせて、新たなマーケティング戦略のもと、新ブランドプロモーション「いい未来は探せる」をテレビCMやSNSなどで発信しています。

これまでのIndeedのマーケティング戦略とどこが違うのでしょうか。今回はIndeed Japanマーケティング本部 シニアディレクターの田尻祥一さんに話を聞きました。

(取材・文:Marketing Native編集部・早川 巧、撮影:矢島 宏樹)

目次

「認知獲得」止まりからフルファネルの戦略へ

――田尻さんがIndeedにジョインしたのは2022年11月とのこと。ジョインのきっかけから教えてください。

新たな挑戦をしたいと考えました。前職のデル・テクノロジーズには約13年在籍し、その間にマーケティング本部長を10年ほど務めています。成果としても、チームのメンバーや広告代理店さんの協力を得ながら、マーケティングのパフォーマンスやブランド力を一定のレベルで向上させることができました。そのため、自分の中で「やりきった」という思いがありました。

田尻祥一さん

マーケティングというと現在はP&Gさん出身の方の印象が強くて、さまざまな企業のマーケティング責任者として活躍していらっしゃいます。もちろん、すごいと思いますが、一方でプロのマーケターとしてP&Gさんとは少し異なる形で活躍する人がもっといてもいいと以前から感じていました。そこで、Indeedへのジョインを機に、自分がその課題にチャレンジしたいと考えたこともきっかけの一つです。

――面白いですね。Indeedにジョインしたとき、自分のバリューをどのように発揮できると感じましたか。

現在に至るまでIndeedのマーケティングやビジネスは、ある程度成功していると思います。これまでに手掛けた「♪ バイト探しはIndeed」という歌もののテレビCMや人気アニメコンテンツとのコラボ企画など、どのプロモーションも大きな話題になりました。

一方で、転職のお話を頂いたときにビジネスの詳細を見たところ、コンシューマー向けの認知獲得はよくできていて、「バイト探し」「仕事探し」のイメージは広く浸透している半面、「Indeedを利用するとどんな良いことがあるのか?」というお客さまにとってのベネフィットが今ひとつ明確に伝わっていないと気づきました。例えば、YouTubeにあるIndeedのチャンネルをチェックすると、テレビCMやコラボ企画と関連したクリエイティブの視聴回数は高い半面、Indeedの機能的特徴を解説した動画や、企業向けのIndeedの活用事例などの伸びは今ひとつです。

つまりマーケティングのファネルで考えた場合、本来はフルファネルで購買行動が流れるべきなのに、認知獲得のトップファネルだけ発達していて、理解を促して自分ごと化していただくミドルファネル以降については手薄になっており、そこに伸びしろがあると感じました。

――わかりました。現在はマーケティング本部 シニアディレクターという肩書きですが、仕事内容を教えてください。

主な仕事は、日本におけるtoC、toB両方のマーケティング活動全般に加えて、PR(広報)全体を見ることです。簡単に申し上げると、先ほどフルファネルのお話をしたように、求職者の方々の認知獲得からWebサイトの訪問、アプリのダウンロードなどを促して、実際にご利用いただくまでのマーケティング活動全般と、企業に求人広告を出稿いただくためのBtoBマーケティングを統括しています。

田尻祥一さん

ただの“求人検索エンジン”ではなく「人生や働き方を見つける場」

――今回、約6年ぶりにブランドコンセプトを全面刷新したとのこと。背景と狙いを教えてください。

繰り返しになりますが、Indeedは認知は非常に獲得できている一方で、ベネフィットが十分に浸透しておらず、お客さま(求職者)の利用意向を改善する必要性を感じていました。さらに分析すると、Indeedは“アルバイトやパート向けが中心のサービス”というイメージが強いこともわかりました。利用意向を見ると、「仕事を探したいときに何を使いますか?思いつくブランドを書いてください」との問いに、パートやアルバイト等の非正規雇用で働いている方の回答は「Indeed」も多いのですが、正社員等の正規雇用の方々になると競合ブランドを挙げる人も多く、Indeedはそこまで強くありませんでした。

一方、実際のIndeedのビジネスは、非正規雇用の求人広告だけでなく、正規雇用向けの求人広告も法人のお客さまにたくさん掲載いただいています。そのギャップが課題であり、“アルバイトやパート向けが中心のサービス”というイメージを変えられれば正社員の求職者がもっと増えて、法人のお客さまも求人広告をもっと出稿してくださるのではないかと考えました。現状のままではIndeedのビジネスだけでなく、正社員の仕事を求めているお客さま(求職者)にとっても機会損失になります。そこで今回、そのギャップの改善を目指してブランドコンセプトの全面刷新に踏み切りました。

――「いい未来は探せる」とのメッセージを打ち出すことで、Indeedを単なる求人検索エンジンではなく、「人生や働き方を見つける場」として活用してほしいとの思いを込めたわけですね。素晴らしいと思う半面、過去のコンセプトに基づくプロモーションがテレビCMなどで大量に流れていただけに、イメージを変えるには時間がかかりそうです。

そうですね。ブランドのイメージは3カ月では変わらないでしょうし、少なくとも1~2年、もしかすると3年くらいの長期スパンで取り組むべき課題かもしれないと認識しています。

Indeed「いい未来は探せる(あやみの告白)」篇Indeed「いい未来は探せる(あやみの告白)」篇

――新しいCMをYouTubeで拝見しました。コミカルでわかりやすいと感じましたが、制作にあたって田尻さんが意識した点は何ですか。

大きくは2つの点を意識しました。1つは競合との差別化、もう1つはお客さま(求職者)のインサイトとIndeedのベネフィットをどう組み合わせてクリエイティブに落とし込むかです。面白いだけでなく、求職者が自分の将来を考えて、前向きに生きていくことをサポートできるブランドだと視聴者に伝える点に徹底してこだわりました。ただ明日の仕事を探すのではなく、人生や働き方の可能性を探すのに役立つサービスであること。そしてIndeedで仕事を検索しているうちに「こんな仕事もあるんだ」「もしかして自分に向いているかも」と思いがけない出合いや驚きの発見を得られる可能性があること。その組み合わせをわかりやすく、かつアテンションが取れるように落とし込めたと思います。

――これまではテレビCMがプロモーション施策の中心だったのを、SNSにも注力する方針に変更したとのこと。どのような背景を受けての意思決定ですか。

データを見ても、今は若年層を中心にテレビだけでなく、ソーシャルメディアに接触している時間が長くなっています。Indeedとしてもユーザーの年齢層をもう少し若年層にも寄せていきたい狙いもあり、リーチを考えるとテレビだけに絞るよりSNSを含めた複数のチャネルに手を広げたほうが投資効率は良くなると考えました。

それは単に、テレビと同じクリエイティブをInstagramやYouTubeでも展開するという意味ではありません。そうではなく、SNSではIndeedが伝えたい「いい未来は探せる」という考え方をお客さま(求職者)にもっと具体的に示して、実際に体感、体験していただきたいと思っています。まだあくまで1つの例ですが、「あなたの『いい未来』働き方体験ツアー」キャンペーン(8~9月実施)と銘打って、奄美大島の豪華ホテルで過ごす3泊4日の超絶景ワーケーション体験などをご用意しました。

Indeedの「あなたの『いい未来』働き方体験ツアー」キャンペーン(応募期間はすでに終了)Indeedの「あなたの『いい未来』働き方体験ツアー」キャンペーン(応募期間はすでに終了)

応募方法はIndeed Japanの公式X(旧Twitter)アカウント(https://twitter.com/IndeedJapan)をフォローやポスト(投稿)した上での選考になります(応募期間はすでに終了)。こうした取り組みを通して、単に「Indeedに来ると、何か仕事が見つかりますよ」と伝えるだけでなく、ブランドコンセプトである「いい未来は探せる」とはどんなことなのか、Indeedを利用するということは、他サイトとどこが違うのか、人生や働き方を探すとはどんなことなのか…などについての理解をSNSを通して促していきたいと思います。

田尻祥一さん

P&Gのマーケティングだけが“正解”ではない

――ここからは田尻さん個人のことについてお聞きします。マーケティングに関わるきっかけや田尻さんが感じるマーケティングの魅力、面白さについて教えてください。

私はアクセンチュアで経営コンサルティング業務に従事した後、デルに転職し、経営企画室室長や法人向けビジネスのマーケティング本部長などを務めています。デルでのスタートはマーケティングではなかったのですが、あるとき、経営企画の観点ながら初めてBtoCを担当することになり、そこで初めてBtoCというビジネスにおけるマーケティングの重要性を認識しました。そのときに「今後のキャリアを考えると、マーケティングが面白そうだ」と感じたのです。

特に大企業になると、法人向けのビジネスはどうしても営業が主体になることが多いと思います。自分が戦略を考えても、最後に決めるのは多くの場合、営業です。一方、BtoCでは戦略を考えてマーケティングのチャネルに乗せ、実行するというサイクルが回りやすく、その際、ビジネスをコントロールするドライバーとしてマーケティングの力が大きく働きます。BtoCのマーケティングなら戦略から一気通貫で力を発揮でき、面白そうだと感じたことがマーケティングの世界に深く足を踏み入れるきっかけになりました。特に醍醐味を感じるのは、素材は良いのにあまり知られていなくて埋没しているプロダクトやサービスに、うまく光を当てて育てていくことです。

P&Gさんの場合は、ブランドマネージャーがPL(損益計算書)責任者として、プロダクトの設計・開発からブランドエクイティの構築まで含めて、文字通り損益の責任を担うと聞きます。私はP&Gさん出身の方による書籍をほとんど読んでいますし、発言もよくチェックしています。ある書籍によると、アイデアにはプロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアの主に2種類があり、プロダクトアイデアのほうがインパクトが強いとの趣旨が書かれています。それは私も基本、賛成です。例えばAppleさんを見ても「Think Different」のキャンペーンがすごかったから売れたというより、やはりマッキントッシュ(Mac)が強かったからキャンペーンも成功したのだと思います。

でもだからといって、ブランドマネージャーではないマーケターは何も仕事ができないかといえば、そんなことはないと思います。先ほど申し上げたように、埋もれているプロダクトやサービスにコミュニケーションによって光を当て、最終的な売り上げの伸びにつなげることは十分可能なはず。そこがマーケティングの面白さでもあると認識しています。マーケティングはP&Gさんのやり方だけでなく、コミュニケーションの観点でいくらでも工夫の余地があるというのが私の意見であり、これから示していきたいです。

――楽しみです。次に、これはMarketing Native恒例の質問なのですが、田尻さんのようなキャリアに憧れる若手マーケターもいると思いますので、「田尻さんが人より優れていたところ」、あるいは「他の人より頑張ったこと」を参考に教えてください。

まず、自分が優れていたとは思わないですね。どちらかというと、運が良かったと思います。

――運ですか。

運は大事ですよ。一般的にキャリアで結果を出すのはとても難しいことです。どんなに優秀な方でも、市場全体が冷え込んでいるタイミングでジョインしても結果を出すのは困難だと思います。逆に、市場全体がすごく伸びている事業や会社に参画したときは成果を上げやすいもの。しかしそれは果たしてどこまでその人の実力なのか…。単にビジネスモデルが優れているだけかもしれません。それなのに「自分は優秀なマーケターだ」とは自分なら思えないですね。

その上で、僭越ながらアドバイス的なことを言うとしたら、やはり自分が好きなことにフォーカスしたほうがいいと思います。決定的に駄目な欠点は直すべきですが、とはいえどんな領域においても、人は好きなことには夢中になれるし、努力も惜しみません。自分のキャリアを棚卸ししていく過程で、胸に手を当て、「自分は何が好きなのか?」「何をしているときが楽しいのか?」と自問自答を続け、ある程度見つかったらそれを仕事として続けられるように実績をつくり、周りからの信頼を獲得していくことが大事です。私自身、そのようにやってきました。あとは良き上司、良き仲間、良きお客さまに恵まれ、皆さんに助けていただいたのは本当に運が良かったと思います。

――田尻さんが好きなことはマーケティングであった、と。

そうですね。私は本質的に戦略を考えることが好きなのだと思います。戦略というと、難しく感じるかもしれませんが、要するに自分が先頭に立って物事を決めたいか、誰かの決めたことに従って進むのが好きかの違いという気がします。もう少し平たく言うと、遠足に行くときに先頭を歩くのが好きか、後ろを付いていくのが好きかの違いで、私は先頭を歩いて、どこへ行くかを考えるのが好きなのです。あとは遠足の領域が営業なのかマーケティングなのか、それとも人事・総務なのかの違いだけで、私の場合はマーケティングであり、その理由は戦略策定から施策の実行まで一気通貫で行えて、PDCAのサイクルを回しながら成果を上げることに面白さを感じるからです。

田尻祥一さん

良いマーケターになるための3つのアドバイス

――続けて、良いマーケターになるために学んだり取り組んだりしたほうがいいことを教えてください。

大きくは3つあります。1つめは、私も昔よく言われたのですが、他者から学ぶことです。マーケティングが成功している企業の事例を興味を持って調べたり、分析したりすると、たくさん学びを得られると思います。対象はBtoC、BtoB、D2Cなど幅広く捉えて構いません。よく「どのようにマーケティングの勉強をすればいいですか?」と聞かれるのですが、最初はうまくいっている企業やブランドのマーケティングに興味関心を持ち、観察することから始めてはどうでしょうか。

2つめはやはり勉強することです。先ほどの遠足の話に例えるなら、地図の読み方を知らない人の後ろには誰も並びたくないはず。だから、自分が興味関心を持った知識はどんどん勉強して吸収していくことが大切です。そうすると、最終的には「Connecting The Dots」で知識がつながり、強力な武器になると思います。

3つめは、自分が扱っている商材を好きになることです。

――好きじゃない人もいるんですね。

好きではないというより、あまり関心がない人はいますね。それは良くないと思います。自分が扱う商材を徹底的に好きになり、使ってみる。そうしないと、お客さまの気持ちになるのは難しいものです。お客さまの気持ちになれなかったら、お客さまのインサイトもわからないままでしょう。それではマーケターとして成果を上げるのは困難です。

――ありがとうございます。最後に、少子高齢化に伴う深刻な人手不足や生成AIの進化による産業革命、それに伴って失われる仕事…など、求人業界はこれからさらに複雑で不確実性が高い時代になっていくと思われます。その中で田尻さんはIndeed Japanをどのように進化させ、バリューを発揮していきたいとお考えですか。

まず、変化はチャンスだと思います。例えば、政府は日本経済再生へ向けて打ち出した労働市場改革の一環で、労働者のリスキリング促進とともに、終身雇用や年功序列制度の本格的な見直しを掲げています。日本は今、変革期を迎えていて、これまでの終身雇用を前提とした社会システムが大きく変わろうとしています。

これから予想もつかない変化が世の中に起きるでしょう。その中で何が心配かというと、やはり「どのように生計を立てていくのか」を挙げる人が多いのではないでしょうか。まさにそこがIndeedとしてお手伝いできるところです。つまり明日、明後日の仕事を一時的に探すこともできれば、すぐに応募しなくても中長期の観点でIndeedのサイトを訪問し掲載されている仕事を見ることで、「こんな仕事もあるのか」「もしかしたら、この仕事や環境は自分に向いているかも」と日頃から頭の片隅に入れておくことにも役立ちます。

したがって、「Indeedの事業をこれからどう進化させていきたいか」との問いには、労働市場の変革、社会システムの変化が本格的に起きようとする時代に、新しい働き方を探している求職者の皆さまへ、Indeedが提供できるバリューをきちんと伝えることで、求職者の方の機会損失ができる限りないように努めることです。それが我々の使命であり、これから確実に実行していきます。

――本日はありがとうございました。

田尻祥一さん

Profile
田尻 祥一(たじり・しょういち)
Indeed Japan株式会社 マーケティング本部 シニアディレクター。
2004年アクセンチュア入社。国内外のさまざまな経営戦略・事業改革プロジェクトに従事。2009年デル・テクノロジーズ入社。アジア太平洋地域における営業企画や日本法人経営企画室室長を歴任。2013年からマーケティング統括本部にて本部長としてBtoBおよびBtoC向けマーケティングを統括。2022年11月Indeed Japan入社、現在に至る。

Indeed
https://jp.indeed.com/

 

記事執筆者

早川巧

株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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