前編に続き、スターバックス コーヒー ジャパンCMO森井久恵さんのインタビューをお届けします。
後編では森井さんがこの先、注力していきたいパートナー(従業員)エンゲージメントの強化や、スターバックスが抱える課題解決への取り組みを中心に話を聞いています。
インタビュアーは引き続き、CINC取締役 アナリティクス事業本部 本部長の山地竜太が務めます。
(構成・文:Marketing Native編集部・早川 巧 人物撮影:矢島 宏樹)
※肩書、内容などは記事公開時点のものです。
目次
CMOとして重視するチームビルディングのポイント
山地 ここからはマーケター、CMOとしての在り方を中心にお伺いしていきます。まず、森井さんがマーケターとして物事を推進していく上で、日頃意識して行動したり、あるいは学習や勉強のように取り組まれていたりすることはございますか。他メディアの記事では、ビジネスコーチを35歳くらいから付けられているというお話を拝見しました。
森井 ビジネスコーチは続けています。心の拠りどころというか、何でも言える、相談できる場所をつくっておくのは私にとって大事なことです。そのビジネスコーチはマーケティング業界の人ではなく、ビジネスパーソンとしてのコーチですが、もともとマーケティングはゼネラルで幅が広いですし、壁打ちできる人の存在は貴重だと感じます。
森井久恵さん
ほかに注力しているのは、チームの強化です。具体的には組織としてこの先、付けなければならないケイパビリティ(能力)は何かを考え、チームを編成したり、トレーニングを取り入れたりしています。生成AIのように新しいテクノロジーが次々と出てきますが、その全てに私が対応するのは限界がありますので、自分にあまり知見がない領域に強みを持つチームを育成しながら私自身も学ぶことで、最終的に良いアウトプットにつながっている実感があります。
山地 チームビルディングの採用に関わる以上、要件を書くにもある程度前提知識が必要になると思います。その辺は調べたり、実際に候補者と会ったりして、チームに入れ、コミュニケーションを取る中で知識やノウハウを深めていくイメージですか。
森井 そうですね。もう1つ気をつけているのは、採用に関わるマネージャーらと一緒に編成したい組織像や採用したい人物像、それに伴って必要となるケイパビリティについて明確に言語化してから採用に臨むことです。採用に際しての判断は意外とロジカルではなく、「良さそう」「何か違う」と判断しがち。フィーリングも大事にしつつ、必要な要素をあえて言語化することで、より定量的な採用や組織づくりにつなげられると思います。
山地 この5年間を振り返ると、組織設計やチームビルディングはうまくいっているというご認識ですか。
森井 うまくいっているところも、これからのところもあります。全部一度にはできないので、優先順位はつけざるを得ません。順番も大事です。ですから注力したところはそれなりにできていますし、これから強化すべきところもあります。例えば、デジタル施策に関しては注力しましたので、チーム・サポート体制が強化され、成果も上がっています。
会社として、ブランドとして何が求められるかを見極め、そこに対してそれぞれのチームや組織の編成をどうつくり上げていくかを考えるのは、私の仕事の中でも大きなウエートを占めています。CMOには常に経営視点、全体を俯瞰して行動するマインドが必要だと思います。
スーパーマーケターで、みんなを引っ張っていくデザイナー的なCMOもいるかもしれませんが、私の場合、先頭に立つこともあるものの、みんなをサポートするところも大いにあります。飲食で一人一人の思いが違うお客さまに応えていくには多様性が必要です。誰しも得意不得意はありますので、チームを強化し、自分だけではなくみんなで考える体制を整えることでバランスを取っています。
山地竜太
離職率の低さを支える「ワーク・ライフ・ブレンド」の考え方
山地 次に育成の観点をお聞きします。自社のマーケティング部署を見て、将来的にCMOになれそう、もしくはマーケターとして成長しそうと感じる優秀な人の特徴はどんなところだと思われますか。
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