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インタビュー

再スタートから1年半。月間440万UUの『MERY』を支えるコンテンツ力とSNS運用術

最終更新日:2023.06.30

女性向け情報メディア『MERY』が2017年11月に再スタートしてから1年半。『MERY』は再び多くの読者に支持され、月間PV数1億4440万を誇る一大メディアへと成長しています。伸びているのはPV数だけでなく、InstagramやTwitter、FacebookなどのSNSフォロワーは全アカウントを合計して111万以上に上ります。

そんな『MERY』の成長を支えているのが、10代~20代の女性で構成される約100名の「MERY公認ライター」です。

今回は、「MERY公認ライター」のマネジメントを担う、MERY編集部の望月菜穂子さんに話を伺いました。
(取材・文・人物撮影・イラスト:Marketing Native編集長 佐藤綾美)

画像提供:MERY

目次

ライターの表現には正解を決めない

――『MERY』は1日に公開される記事が平均80本あるとのことですが、記事のテーマは公認ライターの方が提案しているのでしょうか?

はい、記事のテーマは公認ライターに自由にゆだねています。テーマの探し方は人によってさまざまです。雑誌を読みながら探したり、SNSで気になるテーマを見つけてきたり、友達との会話の中で探してきたり…。「絶対にここから見つければいい」という正解はありませんが、それぞれ自分の感じる「好き」や「かわいい」をきっかけに記事づくりの糸口を見つけていきます。

▲『MERY』の記事制作フロー。MERY公認ライター執筆後、校閲が事実関係を確認し、編集へ渡す。編集は権利関係の許可取りを行いつつ、公認ライターに修正を依頼する。再開当時は1本の記事を公開するまでに時間がかかっていたが、現在は校閲・編集チームとライターチームでやり取りを重ねつつ、優先度の高い記事は早く回すなどして運用している。校閲は専門の企業から派遣されたスタッフが常駐し、行うとのこと。

――公認ライターの方々が読者に近い世代だからこそ、それぞれの「好き」や「かわいい」という感覚にゆだねられるんですね。では、読者にとって等身大の記事を提供する上で、編集が大切にしていることは何ですか?

少し抽象的な話になってしまいますが、2つあります。

1つ目は、情報ではなく「体験」を届けることです。

記事の中で紹介されていることは「情報」ですが、それを読んだ女の子たちは実際に紹介されている商品を買ったり、日々の生活のちょっとした習慣を変えたり、新しいメイク方法に挑戦したりするでしょう。ユーザーの行動を変えること(=「体験」を届けること)を目的に、日々記事づくりと向き合っています。

具体的には、商品を紹介するときはすぐに購入できるように導線を付けたり、メイク方法を載せるときは動画やプロセスがわかりやすい画像を探したりと、丁寧な記事づくりを心がけています。表現の方法に正解はないので、「自分が読み手だったら、どうすれば行動に移すのか」を常にライターが模索しています。

2つ目は、書き手が感じる「好き」を届けることです。

書き手が楽しく記事をつくるからこそ、読み手にとって面白いコンテンツが生まれると思っています。だからライターには、「自分の好きなこと」「自分の興味があること」を大切にしてほしいと伝えています。

しかし、自分が「好き」だからといって、単純に表現するだけでは、どこか押し付けがましさが感じられる独りよがりの内容になってしまいます。記事づくりで大切なのは、「自分の好きなことを、ユーザーにとって魅力的に映る形にどう発信するか」です。ここを考え、表現の工夫を重ねるからこそ、それぞれのライターが「自分らしい記事」を生み出せるようになります。

多くのユーザーが興味のありそうなことを発信するのではなく、ライター自身が本当に良いと思ったものを届ける…だからこそ、『MERY』にはさまざまな記事が生まれます。

以上の2つを大切にしながら、『MERY』らしいテーマ選定や文章表現ができるように運用しています。

――100名以上の公認ライターをまとめていく中で、望月さんが大変に感じていることはありますか?

『MERY』では、ライターが表現することに対して正解を決めていません。表現の仕方やタイトルの付け方など、ルールはできるだけ最小限に抑えていて、表記もライターにゆだねています。

ライターの表現に「正解」を決めないことは、「何でもあり」という意味ではありません。ライター一人一人が、「自分らしい表現」や「ユーザーのための表現」について考え続けてくれる環境をつくる必要があります。この環境をつくることが非常に難しく、今も悩みながら取り組んでいます。

例えば、ライター同士の勉強会を開催したり、記事に関するフィードバックをあらゆる形で届けたりしています。当たり前ではありますが、考えるきっかけは人によって異なるので、どんな人に対しても気づきを与えられるようにさまざまな打ち手を考えています。

また100人のチームとなると、ライターたちを平等に評価するための仕組みづくりや関係の構築が難しいと感じています。公認ライターの中には大学生やフリーターなど生活スタイルの異なる人がいて、境遇が異なれば働くモチベーションもさまざまです。出勤できる時間ひとつをとっても、人によって差が生まれます。そんな別々の立場の人が、最大限自分の力を発揮し、サービスに貢献できるようにするためには、日々ルールの見直しや現状をブラッシュアップしていく必要があるので、頭を悩ませながら進んでいます。

――「出勤」というキーワードが出てきたのですが、公認ライターの方々は『MERY』のオフィスに出勤して執筆しているんですね。

はい、そうです。在宅で依頼を受けて執筆している人はいません。

オフィスに出勤してもらうことの意味はいくつもあると思いますが、私が重要だと思っている点は2つあります。

1つ目は、ライターのその日の調子がわかることです。

MERYでは書き手が感じる「好き」を届けることを大切にしているので、ライターは出勤のたびに自分の中にある感情や気づきと向き合うことになります。調子が良ければたくさんアイデアが思い浮かんで記事を生み出すことができますが、調子が悪いと執筆がなかなか進まなかったり、記事の質に課題が残ったりしてしまいます。

もちろん、記事を読みながらライターの調子や様子を感じ取ることもできますが、直接会ってその人の空気を感じ取るほうが、早く変化に気づけます。ライターの調子が悪いときこそ、どう対応できるかが、チームを運営する上で大切だと思っています。

2つ目は、信頼関係が構築できることです。

気づきを与えるためのフィードバックも、考え続けるための環境づくりも、相手との信頼関係がなければライターには届きません。信頼関係は日々の何気ない会話の中で生まれると思っています。ライター同士が信頼関係を築くことも、同じサービスをつくる仲間として非常に重要です。「今日いつものメイクと違ってかわいいね!」「新しいワンピース買ったの?」といった日常のやりとりが、大人数のチームに一体感を生む重要なきっかけをつくっていると考えています。

――公認ライターの評価はどのような観点で行うのでしょうか?

評価制度は段階を設けています。例えば、記事に対する評価は「view数が高い」だけでなく、「LOVE(※)数が高い」「ライター同士の中で切り口やタイトルが評価されている」など、ひとつに絞らず、いろいろな軸を設けています。良い記事に正解はないので、それぞれのライターが、自分の得意なところを何かしらの部分で見つけることができるように評価制度を整えています。

また、「プチプラ」のように多くの人が関心の高いテーマの記事を書き、view数を稼ぐことはできますが、『MERY』はあえてそれはしません。さまざまな視点を評価することで記事のバリエーションが多くなり、多様な価値観のユーザーに支持されるコンテンツに近づけると考えています。

※LOVE:お気に入りの記事を保存する機能。『MERY』のアプリに搭載されている。

――何かしらで一番になれるなら、楽しく記事を書けそうですね。

そうなんです。やはり楽しく働けることと、自分が貢献できていると実感を持てることが大切で、記事を書いている人が楽しかったりやりがいを感じていたりしないと、読み手も「この記事はなんだか淡々と書いているな」とわかります。だから、記事を書いている人たち自身が楽しむことをとても大切にしています。

みんながそれぞれの得意分野を『MERY』で見つけ、自信を持って発信できるような環境をつくっていきたいです。

▲MERY編集部・望月菜穂子さん。MERY公認ライターの採用や研修、面談などのマネジメント、SNS運用の管理を行う。

Instagram上のニーズは細分化されている

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記事執筆者

佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。
X:@sleepy_as
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