事例研究
2020.12.10

「C CHANNEL」編集長・松崎美緒に聞く「人気がある動画の特徴と、ユーザーとのエンゲージメントを高めるポイント」

C CHANNEL(シーチャンネル)」は、F1層(20~34歳の女性)をターゲットにメイクやヘアアレンジ、レシピ、コスメなど幅広いカテゴリーの情報を発信する、日本最大級の分散型動画メディアです。2015年のサービス開始以降、縦型動画メディアの先駆者として数多くのコンテンツを配信し続け、その本数は10万本にも上ります。

今年(2020年)8月に発表されたアプリサービス終了のニュースは、大きな驚きをもって受け止められました。今後はSNSの運用強化と、インフルエンサーサービスの提供に集中すると言います。では、具体的にどのような取り組みを検討しているのでしょうか。

今回は「C CHANNEL」が人気の理由やほかのメディアとの違いに迫るべく、「C CHANNEL」の編集長を務める松崎美緒さんにコンテンツ制作で意識していることなどを伺いました。

(取材・文:Marketing Native編集長・佐藤綾美、撮影:海保竜平)

目次

5つのカテゴリーを主軸に、月間約100本の動画を配信

――松崎さんはメディア「C CHANNEL」のSNSアカウントの運用担当などを経て、編集長(メディア部長)に就任されたと聞いています。編集長になるまでの経歴と、現在のお仕事の内容を教えてください。

2016年2月にアルバイトとして入社し、当初はユーザーの方々から「C CHANNEL」に来るお問い合わせに対応したり、動画の編集や配信などのオペレーション業務を担当したりしていました。

その後、雇用形態が変わって正社員となり、「C CHANNEL」のSNSアカウントのグロースを3年ほど担当しました。現在は「C CHANNEL」の編集長として、副部長とともにメディアの運営チームとコンテンツの制作チームを統括しています。メディアの運営チームが社員とインターン生合わせて15名程度、コンテンツの制作チームが社員とインターン生合わせて10名程度のチームです。

そして、メディアの方針や戦略の策定、配信する動画の企画・編集の統括を行っているほか、SNSアカウントの運用についても見ています。

――御社で制作する動画だけでも相当な数があると思いますが、全部チェックされているのですね。

はい、弊社で制作する動画はすべてチェックしています。ヘアアレンジ・メイク・ネイル・レシピ・コスメの5カテゴリーを主軸に、月間で100本くらいの動画の撮影や編集、配信を行っています。

なお、「C CHANNEL」が抱えるクリエイターの方々が作成した動画も含めると、「C CHANNEL」には10万本ほどのコンテンツがあります。

――動画はどのような流れで制作していますか。

企画の立案後、ディレクターが動画の撮影・編集を行い、動画を配信します。動画を配信した後は効果測定や振り返りの会議を行い、次の企画に活かしていく…という流れです。大体2カ月のスパンで動いており、今作っている企画は翌月撮影し、配信するようなイメージです。

――「C CHANNEL」に掲載する動画を制作し、そちらをもとにプラットフォーム別に加工して配信するイメージで合っていますか。

はい。そのまま流すこともあれば、編集を加えて配信することもあります。SNSのプラットフォームごとに、ユーザーに受け入れられやすいトンマナやクリエイティブにアレンジし、配信しています。

例えば、Instagramのフォロワーには海外ユーザーが多いため、投稿するコンテンツはテロップにあまり頼らず、視覚的に理解できるように意識しています。一方YouTubeは、日本のユーザーに見ていただくことが多いため、情報がたくさん盛り込まれていることがわかるように、あえてテロップを多めにすることがあります。

画像出典:cchannel_food

――編集長をやっていて、大変だと思うことはありますか。

F1層をターゲットにコンテンツを制作しているので、トレンドの移り変わりが激しく、追い付くためには体力が必要だと感じています。それが楽しい面でもありますが、ソーシャルメディアの活用法はユーザーのライフスタイルの変化によって変わっていきますし、人気のコンテンツも移り変わりが速いです。

――トレンドは大体どれくらいの期間で移り変わるのでしょうか。

一概には言えないのですが、1年ほど続く息の長いトレンドがあれば、1カ月くらいで終わってしまう短いトレンドもあります。感度の高いユーザーの方々となると、2~3カ月前のメイクを紹介しても「これは○○でも見た」となって、良い反応が得られません。

――トレンド情報はどのようにキャッチアップしていますか。

まず、トレンドには2つの種類があると考えていて、私たちは「規定型トレンド」と「自然発生型トレンド」と呼んでいます。「C CHANNEL」ではこの2つのトレンドを追いかけています。

「規定型トレンド」は、もともと決まっているトレンドのことです。ファッションやメイクは次に流行する色などがあらかじめ決まっています。それを海外ブランドやセレブ、雑誌が取り上げ、やがて百貨店、ファストファッションなどでもその色を取り入れたアイテムが販売されるようになり、ユーザーに届く仕組みです。

一方の「自然発生型トレンド」は、気が付いたらユーザーの中で流行していたようなトレンドを指します。

「規定型トレンド」については、百貨店に入っているアパレルブランドから、ファストファッションなどのその他ブランドに伝わっていく過程で、「C CHANNEL」のユーザーやターゲットに合いそうな情報をキャッチアップし、彼女たちが使いやすい形にして伝えます。

「自然発生型トレンド」は、SNS担当の社員やインターン生からヒアリングし、「こんな投稿が増えている」「これが少し流行し始めている」といった形で、各プラットフォームで流行しているものを教えてもらいます。特にヘアアレンジやメイクの企画では、メンバーからの情報を重宝しています。

また、弊社のインフルエンサー事業が運営するプラットフォーム「Lemon Square(レモンスクエア)」に所属するインフルエンサーの中には美容やファッションの情報に対する感度が高い方もいるので、アンケートを取ったり、意見を聞いたりしてトレンド情報をキャッチアップすることもあります。

動画の内容は「WOW(ワウ)」を重視

――カテゴリーや配信するプラットフォームによっても異なると思いますが、「C CHANNEL」で人気の動画コンテンツに共通する傾向はありますか。

全体的な傾向で申し上げると、情報のボリュームが多く、変化がわかりやすい動画は人気が出やすいです。

例えばメイクであれば、1つの動画で1つのメイクを紹介するよりも、異なる印象のメイクを3~4パターンほど取り上げ、情報になるべくボリューム感を持たせるようにしています。人によって好みのメイクは異なりますし、数種類を取り上げるほうが、参考になるポイントも多いと考えるためです。

▲マスクに合うメイクを3パターン紹介「目元が命!マスクメイクを盛る正解アイテム」(画像出典:C CHANNEL

また、ヘアアレンジやメイクでは、ビフォーアフターで印象が異なる、垢抜けてかわいくなるなど、変化のわかりやすい動画も人気です。レシピ系ですと、具材から想像していたものとは全く異なる料理が完成するなど、いい意味で予想を裏切る動画は人気が高い傾向にあります。こうした驚きを弊社では「WOW(ワウ)」と呼んでいて、「WOW」のある動画のほうが、よく視聴されています。



▲ビフォーアフターで変化のある動画。上から、「ジューシーなカラーメイク♡フルーツメイク3選」「メガネの時にもかわいい♡似合わせアレンジ3選」。

参考:
https://www.cchan.tv/watch/abbc3c6409264053b619baa4a66db49e/

https://www.cchan.tv/watch/90b21f64256d46a6811a9cc1fc1a08a1/



▲「wow」のあるレシピ動画。上から、「スプーンで食べる!! ビッグミニバーガー」「SNSでシェアしたくなる♡豪華で可愛い!!!!ポッキーケーキ」。

参考:
https://www.cchan.tv/watch/baac68bb49f4485ea793a07b8021ebcd/

https://www.cchan.tv/watch/12b26d65924f44d9b0e11e17e0d9ec18/

――ユーザーに興味を持ってもらえるように、動画制作で意識しているポイントはありますか。

配信した動画をユーザーの方々がご覧になったときに、メリットやベネフィットを感じていただけるかどうかを常に意識しています。「見てよかった」「知ってよかった」という気持ちだけでなく、「買ってみよう」「誰かに教えてあげたい」などのネクストアクションにつながるコンテンツを配信するのがポイントですね。

――コンテンツを視聴したユーザーの方が「買ってみたい」「誰かに教えたい」となるような態度変容を促すために、具体的にはどのようなことを行っていますか。

動画を配信した後、全プラットフォームの数値を一元化して、コンテンツの制作チームと振り返り、次の企画に活かしています。Facebookであればオーディエンスリテンション(視聴維持)で何%の方が動画を最後まで視聴してくれたかがわかります。Instagramならば、いいねやシェア、保存数、Twitterはリンクのクリック数、メディアのエンゲージメント率などをチェックしています。

そうした数値を集計していると、Instagramなら保存数が高い動画の傾向、Twitterであればエンゲージメント率が高いクリエイティブの傾向など、共通点が見えてきますので、新しく作るコンテンツに反映するようにしています。

新しいユーザーとの出会いが生まれやすいプラットフォームに注力

――2020年9月末に「C CHANNEL」がアプリサービスを終了するニュースは、話題になりました。アプリサービス終了の背景をあらためて教えてください。

2015年のアプリサービス開始から5年が経ち、以前よりもSNSで情報を取得したり、動画を視聴したりすることが当たり前になりました。「C CHANNEL」のSNSアカウントは、もともとアプリで情報を取得していただくための入り口として運用していましたが、国内のフォロワー数が合計約2300万人を超え、情報の発信力が高まっています。そうした背景を踏まえて、今後はSNS運用の強化に注力したいと考えたのが、アプリサービス終了の背景です。

ユーザーの情報を取得するうえで、アプリは大いに活躍しましたから、「任期満了」と言って良いと思います。

2020年4月からは「Lemon Square」も始動していますので、自社で運営するSNSだけでなく、所属するクリエイターやインフルエンサーによる情報発信も強化し、より情報力の高いメディアとして成長していきたいと考えています。

――松崎さんは3年ほどSNSアカウントのグロースに携わった経験がありますが、「C CHANNEL」のSNSアカウントがここまでフォロワー数を伸ばすことができた理由をどのようにお考えですか。

まず、「C CHANNEL」のフォロワーの方がこんなにたくさんいらっしゃって、いつも見てくださっていることを本当にありがたいと思っています。

今まで順調にフォロワーを獲得できたかと言うとそうではなく、苦戦した時期ももちろんありました。そうした時期も乗り越えてここまでアカウントを伸ばすことができたのは、定量面と定性面の両軸から投稿内容を改善し、配信するプラットフォームごとに情報を咀嚼して伝えることを繰り返し行ってきたからではないかと考えています。

定量面の改善とは、先ほども申し上げたように、プラットフォームごとに配信の方法を変えたり、数値を見てクリエイティブを工夫したりすることです。加えて、「C CHANNEL」ではユーザーの方々からの意見やご指摘を一元化してまとめており、定性的な内容を踏まえた改善も行っています。ユーザーからのコメントやお問い合わせは1日に平均200件程度、多い日は400件ほど来ることがあります。「C CHANNEL」が始まってから今まで、コメントやお問い合わせにはすべてお返事してきました。

――1日に200件となると、コンテンツに反映できるご意見もあれば、そうでないものもあると思います。

そうですね。基本的に、ユーザーの皆さまからのコメントやお問い合わせは、すべてありがたいご意見として受け取っています。そのうち「動画のここがわかりづらい」「この部分をもっと見たかった」などの「C CHANNEL」で対処できる内容は、新たに作るコンテンツに活かしていきます。

例えば、YouTubeにアップした動画「ずっと見ていたいキラキラDIY7選」では、「背景が白くて途中よく見えない」といったご指摘を頂き、それからは背景色を意識するように改善しました。その後アップした動画「そのアイテムは意外すぎる。3Dネイル」では、改善のおかげで「コメントに対応してくれている」「C CHANNEL推せる」といったコメントを頂くことができました。


▲背景が白かった改善前の動画。


▲改善後の動画。背景を白から変更している。複数のネイルを紹介する別のまとめ動画で「ネイルごとに完成形を見たい」とコメントを受けたことを踏まえ、紹介するネイルごとに完成形を見せる構成に変えたのも好評だったと言う。

しかし、時には誹謗中傷にあたるコメントが来ることもあり、コメントを非公開にさせていただく場合もあります。コメントを書かれた方やインフルエンサーの方を守る意味ももちろんありますが、コメント欄をご覧になったユーザーの方に不快な思いをしていただきたくないとも考えているためです。

――SNSの中でも特に注力しているプラットフォームはどれでしょうか。

「C CHANNEL」の認知を上げることと、ユーザーの態度変容を促すことに注力したいと考えており、新しいユーザーとの出会いが起こりやすいTwitterやInstagram、YouTubeに特に力を入れています。

――数値指標は何を重視していますか。

リーチ数やインプレッション数、エンゲージメント率などのほか、一部で口コミ数やシェアされた数も追っています。毎朝、前日に配信したコンテンツの数値をチェックするほか、定期的に集計してもらっている各SNSのインサイトの数値もあるので、そちらをまとめたシートも確認しています。

数値が下がっている場合は、なぜ下がっているのかメンバー全員の意見をなるべく聞くようにしています。SNSアカウントをグロースさせる立場だけでなく、動画を制作するメンバーの意見にも耳を傾けてみると、自身では気づけなかった改善点が見つかることがあります。

ユーザー一人一人のかわいいを実現する情報を提供したい

――今後はSNS運用を強化されるとのことですが、具体的には何に取り組むのでしょうか。

近年、ライブやストーリー、フリートなど、即時的でリアルな情報を伝えやすく、コミュニケーション性の強い機能が各プラットフォームで登場し、注目されつつあります。また、同じプラットフォームでも、機能によって利用するユーザーのモチベーションや知りたい情報、活用の仕方が変化していると感じています。そのため、ストーリーを利用するユーザー、フリートを利用するユーザーなど、プラットフォームの機能ごとにユーザーのセグメントを細かく分け、より最適な情報を届けたいと考えています。そして、これまで培ってきたコンテンツ制作力やSNS運用力を活かし、「C CHANNEL」の認知やエンゲージメントの向上、ユーザーの態度変容の促進を目指したいです。

――動画コンテンツは今後も増えていき、5G時代にはその流れがより加速していくと思います。「C CHANNEL」はどのように差別化を図っていかれますか。

「C CHANNEL」が手掛けるコンテンツは、今や動画だけにとどまらず、ライブ配信やストーリー、イベントなど、多岐にわたります。また、コンテンツをご覧になっている方のエンゲージメント率が高く、「インターネットで検索してみた」「購入した」などの行動に移りやすい傾向にあるのも「C CHANNEL」の強みです。こうしたコンテンツ力の高さを活かし、F1層の女性向けマーケティングをリードするメディアを目指していきます。

――エンゲージメント率が高いとのことですが、単純に動画を配信するだけでは、エンゲージメントを高めるのは難しいように思います。何か工夫されていることはありますか。

これから考えている施策の一つですが、『「C CHANNEL」を見ていれば垢抜けられる』と感じていただけるような演出を、動画に積極的に加えていきたいと思っています。「簡単」「便利」「安い」といった情報もエンゲージメントは高い傾向にありますが、爆発的に高いと感じるのが、出演者が垢抜けたりかわいくなったりして、印象が変わる動画です。出演者の子たちが、気づいたらすごく垢抜けていて、「かわいくなったね」と「WOW」を感じていただけるような演出を積極的に取り入れていきたいです。

――最後に、松崎さんの今後の目標を教えてください。

「C CHANNEL」は「FIND YOUR “CAWAII”WAY!(あなただけのカワイイを見つけて!)」をメディアコンセプトに掲げ、かわいくなって人生が変わるほどの成功体験を提供することを目指しています。メディアの成長のためにも、今後はオンラインとオフラインの両方で、「C CHANNEL」を通じてかわいくなれる体験を提供したいと考えています。

今考えている一例としては、オンライン上でプロの方に自分に合ったメイクやヘアアレンジを教わることができる、パーソナライズ化されたメイクやヘアのサロンです。ヘアメイクの動画を見ても、髪質や毛量が異なるとうまく再現できず、人によっては参考にならない場合がどうしてもあります。認知獲得においては幅広い層に向けて情報を発信することも重要ですが、個々のユーザーとのエンゲージメントを高めるためには、パーソナライズ化された情報を最適な形で届けることが1つのポイントになると考えています。そして、「C CHANNEL」を通じて成功体験をする方が増えていただけたら、これほど嬉しいことはありません。

――オフラインのイベントがいつできるかわからない中で、オンラインで提供するメイクサロンやヘアサロンが実現すれば、良い反響を生みそうですね。本日はありがとうございました。

【Profile】
松崎 美緒(まつざき・みお)
C Channel 株式会社 C CHANNEL事業本部 メディア部長 メディア運営チームマネージャー。
2016年2月にC Channel株式会社にアルバイトとして入社。CSや動画編集などのオペレーション業務に従事した後、C Channelの社員となり、SNSアカウントのグロースなどを担当。現在はメディアの編集長として「C CHANNEL」全体を統括する。

佐藤綾美

記事執筆者

佐藤綾美

株式会社CINC社員、Marketing Native 編集長。大学卒業後、出版社にて教養カルチャー誌などの雑誌編集者を経験し、2016年より株式会社CINCにジョイン。
Twitter:@sleepy_as
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