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インタビュー

花王「メリット」が50年守り続ける価値と、コロナ禍で新たに打ち出したコミュニケーションのポイント

最終更新日:2023.04.07

ロングセラーを訪ねて #04

花王株式会社 コンシューマープロダクツ事業部門 ヘアケア事業部

篠原健吾

台所用洗剤やヘアケア用品、化粧品など、私たちの生活に深くなじむ商品を数多く提供しているのが、花王株式会社です。発売開始から今年(2020年)で50年を迎えたヘアケアシリーズ「メリット」は、同社の歴史の中でも屈指のロングセラー商品となっています。

グリーンのボトルでおなじみのこの定番シャンプーが、半世紀にわたって売れ続けてきたのはなぜでしょうか。

ロングセラーブランドの秘密に迫る連載「ロングセラーを訪ねて」第4回は、花王株式会社 コンシューマープロダクツ事業部門 ヘアケア事業部「メリット」マーケティング担当の篠原健吾さんに「メリット」の変遷とユーザーインサイトのつかみ方、テレビCMとSNSの使い分けについて伺いました。

(文:椎原よしき、取材:Marketing Native編集部・岩崎 多、構成:Marketing Native編集長・佐藤綾美、画像提供:花王株式会社)

目次

50年不変の基本価値と、時代の変遷に合わせた変化

――今年(2020年)は、メリットシャンプーが発売開始されてから50年ということで、大きな節目になる年だと思いますが、なにか特別なイベントなどは行っていますか。

弊社メリットのブランドサイトに「メリット50年の想い」として特設ページを立ち上げ、当時の出来事や生活様式などの時代背景とともにメリットの歴史をご紹介しております。また、同じく今年50周年を迎えるキャラクターとコラボレーションした限定デザインボトルなども発売しました。

50年を記念した特別なイベントなどはほとんど行っておりませんが、節目の年ということで、新聞やメディアで取材を受ける機会を多くいただき、あらためてこのような形で話題にしていただいております。これは、ロングセラーブランドへの信頼感があるからこそだと思いますので、これからも守っていかなければと感じています。

――50年という長い年月の中でブランドを維持していくためには、変わらずに守り続けた部分と、時代の変化に応じて変えてきた部分の両方があったのではないかと思います。まず、変わっていない部分はどんなところでしょうか。

メリットシャンプーが発売されたのは1970年ですが、当時は内風呂の普及率が低かったこともあり、毎日洗髪する方は少数派でした。1980年ごろまで、せいぜい週に2~3回の洗髪が一般的だったのです。そうすると、どうしても地肌のかゆみやフケなどに悩まされることになります。そういった当時多かったお悩みに対して「地肌をケアするシャンプー」をご提供しようとしたのが、メリットが生まれた背景でした。

▲1970年3月に発売されたときのパッケージ。

フケ症が皮膚の病気のように捉えられていた時代に、「きちんと洗髪すれば対処できるものですよ」と提案する形で、フケを抑える成分「ZPT(ジンクピリチオン)」を配合したメリットシャンプーを発売し、市場に広く受け入れられました。それから、時代が進むにつれて商品も進化し、成分を変えたり、ラインナップを増やしたりして、市場への訴求の仕方も変化させながらも、「地肌をケアするシャンプー」という基本部分は受け継いできています。

▲画像上:発売当初の新聞広告、画像下:1973年~1975年当時の中つり広告

――「地肌をケアするシャンプー」の基本は踏襲しながら、変化させてきた部分はどんなことですか。

時代の変化による市場ニーズに合わせて、商品を変えてきました。順を追って見ていくと、まず1980年~90年代になると、内風呂や洗面化粧台が普及して、いわゆる「朝シャン」がブームになるなど、洗髪頻度が増加します。その結果、毎日洗髪して清潔にしていることが当たり前になりました。そこで、より短時間で手軽にシャンプーできる「メリット リンスのいらないシャンプー」を発売します。また、あらゆる方に使用しやすいデザインを採用するユニバーサルデザインの考え方が普及したことに伴い、触っただけでシャンプーとリンスの区別がつく、ギザギザのついたボトルを考案したことも、大きな変化の1つと言えます。この触覚識別は、今やJIS規格だけでなく、国際規格にもなっています。

▲1991年に発売された「メリット リンスのいらないシャンプー」。

――1970年の発売当時とは、清潔に対する感じ方が大きく変化したということですが、シャンプーに対するニーズも変わったのでしょうか。

1990年代は、清潔なのはもう当たり前になっていて、プラスの価値として、髪自体を美しく見せる、いわゆる美髪を訴求する海外ブランドの競合商品が伸長した時代でもあります。また、パーマやカラーリングが増えたこともあって、髪の傷みや髪そのものをケアするニーズが高まりました。そういう背景の中で、フケかゆみを防ぐコンセプトのメリットは、少し勢いが落ちていました。

――勢いが落ちてきたことに対して、どのような打開策を打ち出したのでしょうか。

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